国境越え2
フーガの手には、空き瓶にカビの生えた小麦粉がたっぷり入っているものが二つ握られていた。
サーシャは空き瓶にネズミと昆虫の死骸を入れたものを一つ、怖々とした様子で持っていた。
「最初に、サーシャがそれを兵士達の前に投げる。そして、兵士がそれに気を取られた時、俺がこれを投げて煙幕代わりにする」
「……それでその隙に逃げる。……行けるかなぁ……」
「行くしかない」
「そ、そうだよね」
自信なさげに呟くサーシャに、フーガは強気に答えた。
なんとしてでも越える。
フーガは強い意志を持っていた。
「絶対にはぐれるなよ」
「う、うん」
フーガはサーシャに念を押す。サーシャも大きく頷いて、意志を示した。
「さっき決めた合図でやろう」
「分かった」
フーガがタイミングを見計らってサーシャに指示を出した。
サーシャは瓶を投げた。
瓶の割れた音が響き、散らばったものを見て、兵士達がザワザワと声を上げる。
その時、中身を見に集まっていた兵士達を目掛けて、フーガが瓶を投げた。
二回続けて音が鳴り、小麦粉が割れた衝撃と風で舞い上がる。
辺りが白くなった。
兵士達がむせる。
その隙に、フーガはサーシャの手を引き、兵士達の横を走り抜ける。
白い視界の中を通り抜けたあとも、足を止めずに二人は走り続けた。
「……気づいてない……かな……っ?」
「分からない! でも今のうちに、できるだけ、離れておこうっ!」
「……そう、だね」
走りながら、フーガとサーシャは言葉を交わす。
二人は既に森の中へ入っていた。
視界が悪く土もぬかるんでいる。
走りにくいが追っ手が来ても気づかれにくい。
二人にとっては格好の舞台だった。
「……けっこう、離れた……ね」
「ひとまず……追いかけて来ては、ない……みたいだな」
走り続け上がった息を整える。
無事、国境を抜けた。
木の幹に寄りかかり、二人はつかの間の休憩を取っていた。




