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王子とルミナの策略

 フーガとサーシャが城を脱出し、街へ抜け出た頃、王子の元へ知らせが入った。


 そこで初めて、王子とルミナはサーシャの脱走を使用人から伝え聞いた。



「……あの地下室を、脱走……?」

「なんですって!?」



 サーシャは鎖で身動きをできないようにしていたはず。一人で出られるわけが無い。


 つまり、誰かが脱走の手助けをした。内部の人間か、はたまた外部の人間か。どちらかはともかく手助けをした者がいるのは確かだ。


 王子はそう考えた。



「……必ず、共犯者がいるはずだ! その共犯者もろとも見つけて殺せ!」

「わ、わかりました……っ」



 使用人は王子の怒号に怯えながら、返事を返した。


 ルミナはそんな王子の様子を見てほくそ笑んでいた。


 だが、そんな様子は表面には一切出さずに甘えるような猫なで声で王子に話しかける。



「怖いですわ……あんな恐ろしい女が脱走しただなんて……」

「大丈夫だ。必ず見つけ出して処分する。どんな手を使ってでもな」

「王子様……そう言ってくださると心強いですわ」



 ルミナは王子にすり寄る。王子はルミナの腰に手を回し、顔を撫でた。



「ところで、具体的にはどのような策を取るおつもりですか?」

「……報告から少し時間が経っている。城から出た可能性も高い。念の為、城の中を捜索させつつ、街の警備も強くする。なにより力を割くべきなのは国境を越えさせないようにすることだ。そこに多くの兵士を派遣しようと考えている」

「流石、王子様ですわ! それならあの女も逃げられないでしょうね……」

「もちろん、逃がさないさ。ルミナは俺が守ってやる」

「王子様……ありがとうございます」



 ルミナは王子の腰にしがみついた。王子は嬉しそうな誇らしそうな顔をし、ルミナを受け止める。


 ルミナが抱いている黒い大きな感情を知らぬまま。


 ああ、やっと優しいフリした偽善者を断罪できる。処刑が決まった瞬間に逃げ出すなんて想像していなかったけれど……でも、もうこれで終わり。逃げ場はない。


 善人を装っているくせに、私を見下した態度をとるあのサーシャという女。


 騙されている人もいたみたいだけれど……私は真っ先に本性に気づいていた。


 性悪で、意地汚い。いくら綺麗にことばを尽くしても言葉の端々から滲み出ている。使用人や私みたいな身分が低い者に対する傲慢さがね。


 同じように思っている人がいたからこそ、少し話を盛っただけでここまで上手くいったのよ。自業自得、ざまぁみなさい。


 ルミナはサーシャとのこれまでの会話を思い出し、サーシャを心の内で罵りながら、黒い感情を増幅させていった。

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