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0.出逢い‐和久丸side
桜を見ながら語らう。それはなによりも大切なモノ。誰よりも大切なモノ。きっと、春は誰にとっても出逢いの季節。だからこそ、より、この季節を大事にしたい。味わいたい。
「貴方、準備できましたよ」
その声に反応し、振り向く玖九良城の城主、和久丸。そこにはお酒がお猪口に注がれたいた。
「今年も始まったな……、この季節が……」
「えぇ……、私達の出逢いの季節」
玖九良城の最上階で城主──和久丸とその奥方──芽和がお花見をしている。それは“桜の夜の催し事”が、玖九良城とその城下町で始まった事を示していた。
今年もまた、誰かと誰かが出逢い、結ばれる季節がやって来ていた。