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幕間:真の聖女の暗躍

「どうしてうまくいかないのよ!」

「詰めの甘さが思い切り作戦に出たな……」

「それを言うならあなたもよ! チェスター!

 私に連絡する前に、さっさとあの子を逃がせばよかったでしょ!

 赤い若獅子の名が聞いてあきれるわね!」

「思いのほか見張りが多かったんだよ……傷の手当中もテントの外にいるし、おはようからおやすみまでずっと四六時中ついて回ってやがった

 それに、隙を見て逃がそうにも、シャーリーちゃん自身が戻ってきそうだったしな……」

「あーもう! うるさい! うるさい!」


 があっと淑女とは思えない程の暴言で、クラリスはチェスターを罵るだけ罵ると、大きくため息をついて心を落ちつけさせる。


「まったく……教会が聖女とか変なシステムを作るなんて……」


 王族と癒着している教会は、彼らから資金を得る代わりに兵力を回復ないし増強するシステムを考えていた。そこでおとぎ話に出てくる聖女を持ち出してきた。教会から認められてやって来た聖女の能力が高ければ信者も増える。

だから、シャーリーという潜在的に能力の高い少女が、真っ先に餌食になったのだろう。クラリスが探らせたときには既に遅く、シャーリーは聖女として戦場に放り出されてしまったのだ。

 兵士たちを回復できれば御の字、仮に死んでしまっても、身よりの居ない少女であれば問題ないという、非人道的な行為にクラリスは大いに腹を立てた。

 そりゃもう、魔法を使って敷地内で暴れ回るほどに。


 だからクラリスは自分の蓄えていた資金(当然血税ではない)から王族よりも多額の金を握らせ、自身の能力を持ってして、無理やり聖女という席に潜り込んだ。シャーリーは聖女ではないと告げ、自分の助手としておくことで、保護。そういった救出を目論んだのだ。

最も、金を握らせていたはずの聖職者に裏切られ、目を離した隙に連れ去られてしまったのだから――聞けば、止めた兵士は皆、リハビリ中で身体を満足に動かせなかったと聞く――目も当てられないのだが。


「とにかく、シャーリーちゃんを探すのが先決だな……」

「ええ……王城に囚われていたら助け出せるけど……」


 ――あのバカな王様に殺されていないといいのだけど……


 言いかかった言葉と嫌な予感を振り払い、傍にいたクラリスの私兵にシャーリーを探すように伝える。彼女を連れ去ってのこのこ戻ってきた厚顔無恥な聖職者は、この世から永遠におさらばしてもらった。この場にいる兵士たちで、定期的に教会側に虚偽の報告をしている状態だ。


「それで、首尾は?」

「上々だ

 アルス皇国からは停戦の許可を貰っている

 他も同様の報告を貰っているさ」

「そう」


 クラリス・エインズワースの家は、チェスター・フリント同様に領地を守り、王の為に剣を取ってきた家だった。

少なくとも先の王が存命していた頃の話だが。


 王や王子が面白半分で兵を動かし、他国との争いは日常茶飯事。おまけにそのしわ寄せを民たちが重い税を支払う事でどうにかなっている。

 果物が熟すどころか中から腐り酷い悪臭がしているのが、今のウィルクス王国という訳だ。


 そんなもの到底許されるはずもない。


 すでに無辜の民が大勢犠牲になっている。立ち上がるには遅すぎたくらいだ。


「なんとしても、このくだらない王国を終わらせるわよ」


 だからこそ、クラリスはこうなったのは自分たちの責任だと発起したのだ。王を殺し、国に平穏をもたらすまで。

エインズワース家歴代最高の魔法使いであるクラリスの目には、確かに怒りが宿っていた。


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