表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Februa〜仮想世界では俺が最強〜  作者: ドラーク・ヒルノミー
1/1

1.仮想世界『Forum』

はじめまして。在日日本人のドラーク・ヒルノミーと申します。今回は私の作品に目を向けてくださりありがとうございます。是非楽しんでいって下さい。

 「よっしゃ!今日の投稿完了っと」


 男はおもいっきり伸びをし、長い編集作業で固まった身体を伸ばす。骨からポキポキという気持ちの良い音がした。


 「ボブ、カフェオレ持ってきてくれ」


 男が誰かに話しかけるような素振りをみせる。


 「畏まりました、旦那様」


 スーッと滑るように現れたのは、空中に浮遊するロボットだ。

 ボブと言うのは男が付けた名前である。

 製品名はMr.アミークス。ダルク社が開発した汎用ロボットだ。まあ、非売品だし、一点ものだが。

 ボブの胸部がパカっと開き、カフェオレが差し出される。


 「ありがとうボブ」


 「礼には及びません。私の仕事ですから」


 そう言うとクルリと翻し、

 「失礼します」

 と言って部屋を出ていった。


 男はゴクリとカフェオレを飲むと「美味い」と零した。


 「コメント欄を確認して、今日は寝るかな」


 男はデスクの前に移動すると、それに反応してホログラムの画面が投影される。


 手元に浮かんだキーボードを扱い、直ぐに目当ての画面へと辿り着く。


 MyTube。世界最大の動画投稿サイトであり、男はそこに動画投稿を行うMyTuberの1人だった。


 男は本名、犬神剣徳をもじったイヌトクという名前で活動している。


 チャンネル登録者は30万人を突破したばかり、ようやく中堅といえるまで辿りついた。大学1年から投稿し続け、5年かけてやっとだ。

 主にゲーム実況というジャンルの動画を投稿している。


 片手間に始めたMyTubeだったが、すっかりハマってしまい編集の勉強なども自分で行った。


 先程上げたばかりの動画も既に2万再生もされている。

 コメント欄に寄せられたコメントは、“待っていました”や“面白いです”などの嬉しいコメントが多い。


 そしてその次に多いのが、リクエストである。


 このゲームを実況してほしいという要望が数多く寄せられている。

 そして剣徳がずっと言われ続けていた要望が『Forum』をして下さい。というものだった。


 『Forum』


 これは世界中の人物が集う仮想世界。電脳空間。

 ゲームではないのだ。しかし、視聴者が勘違いするのも無理はない。

 この仮想世界には数多くのゲームが組み込まれているのだ。今現在発売されているゲームのほとんどがこの『Forum』内にある。よって『Forum』のモードの一つとして考えられているのだ。

 

 これには理由がある。


 この『Forum』は約10年前、突然サービス開始された。

 自分の分身となるアバターを作り、世界中の人と交流しよう、というコンセプトだった。

 その時この世界は正体不明の病気が蔓延していた。そのため家に居たまま仕事をする人がほとんどであった。子供達も家から出る事が出来ず、大変ストレスの溜まる環境であったのだ。


 そこに『Forum』なる仮想世界が現れたのだ。それはまさに革命だった。仕事も実際に仮想世界で顔を合わせて行える。友達とも会える。


 世界中の人々がこぞって『Forum』に入り、あっという間に世界のほとんどの人が利用するようになった。


 これによりまったくの無名だったフェブルオー社は世界一の企業へと大躍進を遂げたのだ。


 この『Forum』がその後すぐにアップデートで追加した機能が、いくつかのゲームモードだった。FPSが主であり、世界中の人々はこれにハマった。この恩恵にあやかろうと世界中の企業がゲームを『Forum』に連携させた。


 だが、剣徳は『Forum』を頑なに利用しようとはしなかった。『Forum』に入り浸る人々を見て、一緒になりたくないと思ったのだ。ただ少しの嫌悪感だったのだが、次第に意地へと変わり、それから数年間意地を張り続けている。


 「そろそろ、俺もやるべきかもな」


 視聴者もイヌトクが『Forum』を利用するのを望んでいる。登録者を増やす為にも『Forum』を利用しよう。そう決心した。


 「ボブ」


 「はい、なんでしょう」


 剣徳の呼び掛けに直ぐに答えるボブ。


 「最新のダイブカプセルを購入しといてくれ。そしてそれに『Forum』をインストールしてくれ」


 「畏まりました。カプセル代190万と、『Forum』の月額5000円が発生致しますが、宜しいでしょうか」


 「構わない。なるべく急いで頼む」


 「承知いたしました」


 ボブはチカチカと光りながら、退出していった。


 「仮想世界『Forum』か………」


 剣徳は部屋の窓に手を当て、夜景を眺めた。

 地上40階から見えるTOKYOの夜景は、大変美しかった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 あれから数日後、剣徳の家にはダイブカプセルが届いていた。既にボブが完全にセッティングしてくれた。

 カプセルは中々大きく、この為に部屋を一つ使う事となった。部屋はまだ余っているから構わないが。


 「『Forum』のインストールも完了しております。初期設定も全て完了。アバター作成からすぐにスタートすることが可能です」


 ボブはかなり優秀で剣徳は助かっている。

 いつもボブに感謝を忘れることはない。


 「ありがとうボブ。じゃあ行ってくる。来客や緊急の事態があったら呼んでくれ」


 「畏まりました」


 カプセルはプシューという音とともに開いた。

 

 「仮想世界入場といこうか」


 剣徳はカプセル内に横たわった。

 

 「ダイブカプセル起動」


 の声に反応してカプセルの電源が立ち上がる。

 

 「ダイブ開始」


 剣徳がそう言うと、カプセル内で光が瞬き、渦巻いた。


 [意識を接続しています]


 [犬神剣徳の生体認証成功]


 [健康状態良好]


 [仮想世界『Forum』にアクセスします]


 [読み込み完了]


 [意識を『Forum』へと移行します]


 [移行シークエンス開始]


 [………]


 [完了]


 [仮想世界『Forum』へ入場します]


 [………]







 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 【ようこそ『Forum』へ】


 私たちは貴方を歓迎します。

 

 先ずは貴方の分身となるアバターを作りましょう。







 剣徳は真っ白な部屋に浮かんでいた。

 目の前にはメッセージが浮かんでおり、剣徳を歓迎してくれているみたいだ。


 「チュートリアルのようなものか」


 目の前のメッセージは消えて、次に浮かんだのはアバターの設定画面であった。


 この世界でのアバターとは自らの分身であり、自分でパーツを選択して作成する。


 アバターは人間ではなく、動物の姿である。デフォルメされたかわいい二足歩行の動物キャラだ。


 頭、胴体、腰、脚、腕のパーツをそれぞれ選び、作成するのだ。以前剣徳が見たものだと、顔はサイでそれ以外はゴリラというなんとも力の強そうなアバターなどがあった。


 しかし、面白いのが『Forum』の中で走る動作を取る際に四足歩行するとスピードが上がるだけで無く、デフォルメされていないリアルな動物の姿になるのだ。

 これをフェラル態と呼ぶらしい。


 剣徳は犬神の姓に似合った、犬をアバターにした。

 パーツは弄らずに、色と犬の種類のみ変更した。

 黒色の凛々しい犬だ。


 アバター作成完了すると、新たにメッセージが表示される。





 【チュートリアル“アバター作成”を完了】


 次は動作確認に参りましょう。





 すると風景が変わり、何処かの屋上のような場所になった。

 青空がとても澄んでいる。とても仮想世界とは思えない。


 自由に動いてみろとの指示があったので軽く歩いたり、跳ねてみたり、二足歩行ではしったり。フェラル態になってみたり。色々動いてみた。

 これがまた不思議なもので、現実世界とは異なり何処かふわふわとした違和感が存在していたのだが、しだいにその感覚は薄れて現実の動きと変わりないものになった。





 【チュートリアル“動作モーションの同期”完了】


 現実の動作とリンクさせ調整しました。


 違和感はありませんか?




 そんなメッセージが浮かぶので、剣徳は「はい」と返事してやる。

 すると、またもや風景が変わる。

 今度はなんと発展した街並みが現れた。

 

 


 【チュートリアルオールクリア】


 お疲れ様でした。チュートリアルはこれで完了です。


 何かお困りの事があれば、ヘルプと呼んでください。




 そんなメッセージが浮かんでキラキラと光るエフェクトが巻き起こる。

 

 今現在剣徳がいる場所は『Forum』における中心部だ。

 科学的な街並みではあるが、非常にカラフルで、すこし眩しい程である。空を見上げると青空に浮かぶ雲と共に、見た事の無いカラフルな物体が浮かんで流れていく。


 周りには他の『Forum』利用者が賑やかに暮らしている。どうやら皆、服を着ているようだ。この街の何処かで購入できるらしい。


 「俺だけ裸というのもなんだかな」


 初期から1000カネというこの世界の通貨が持たされている。これで買えるだけ買ったほうが良い。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 服は一通り揃える事が出来た。

 普通のパーカーに普通のズボンだ。靴もスニーカー。なんとも現代的なものだ。

 そして分かった事が一つ。服を着ていても、四足歩行で走ると服は消えて、ただの動物のようになってしまうのだ。たしかにリアルな動物がパーカーなんかを着ているのは違和感が凄いだろう。


 「さて、録画を始めるか」


 身なりも整ったところで早速動画を回す。

 『Forum』の中で最もポピュラーなゲームである、『Forum guns』というものを初見プレイしていく。

 この『Forum guns』は他企業が連携させたゲームであり、『Forum』は関係ない。名前に『Forum』とつくのも『Forum』内でプレイするからといった単純な理由であろう。


 ルールは簡単で銃器を使って、5対5のバトルを行うのだ。何度でもリスポーンできるが、スコアが上限に達したらそのチームの勝利となる。他にも相手の陣地を奪うモードや全員が敵のバトルロワイヤル。


 そういった事を視聴者に向けて説明しながら、ゲームを始める剣徳。

 しかし、あまりにひどいプレイだったためダイジェストでの紹介となる。



 ーーーーー


 「なんか飛んできた。……グレネードだ!」


 ドカン。


 ーーーーー


 「はっはぁ!今日がお前の、あの、その、逆誕生日だ!」


 (命日と言いたかった)


 ドカン。

 リスポーン。


 ーーーーー


 「死ねぇ!……地雷だ!」


 ドカン。


 ーーーーー


 などなど、大変ひどい有り様となっている。

 意地になって一日中『Forum guns』をプレイした結果。キルはたったの12。デスに関して言えば数えきれない。しかも、その12のキルは適当に投げたグレネードとナイフキルだった。銃を使ってのキルは一つもない。


 「今日はこのくらいにしといてやるぜ」


 なんとも小物臭のするセリフを残して録画を終了した。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 「おかえりなさいませ旦那様」


 現実世界へと戻ってきた剣徳をボブが出迎える。

 複数のアームを使って器用に掃除をしながら。


 「ただいまボブ」


 ボブは何も言わずにカフェオレを差し出す。

 

 「ああ、気が利くな」


 「それ程でも」


 「さては俺のプレイを確認したな」


 「……なんの事でしょう」


 何やら同情するような目を向ける高性能ロボット。

 まあ、いくら高性能といっても目はないのだが。


 「まあ、良い。ボブ。俺はどうすれば敵を倒せるようになると思う?」


 とボブに問いかける。


 「そんなこと聞かれましても」


 「俺が作ったロボットだ。出来ない筈はない。分析してくれ」

 

 「畏まりました」


 そう言うと、ボブはスーッと何処かへ行ってしまった。


 「さて、編集して今日は寝るか」


 


 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 #1【実況】確実に向いてない【Forum guns】

 イヌトク・123万回視聴・1日前




 なんと次の日の朝動画を確認すると、過去最大の視聴回数を記録していた。しかもたった一日でだ。


 「急上昇ランキングも1位みたいですね」


 これはうれしい事だ。

 

 「なんて良い朝なんだ。ボブ、カフェオレを」


 「どうぞ旦那様。ミルクと砂糖はいつもより多めにしております」


 「なんて気が利くロボットなんだ」


 剣徳はカフェオレを一気に飲み干す。

 

 「今日も一日、良い日になりそうだ!」








 ーーーーーー



 コメント 1.2万



 しゅう・1日前

 下手くそすぎんか?ww

 

 パパイヤ・1日前

 こんな下手な人間が存在していたのか


 T S ・1日前

 12:35 奇跡のグレネード

 

 aaa・1日前

 グレネードと地雷でやられすぎw


 さかい・1日前

 初見ですが、面白いですねw

 ありえないくらい下手で笑いました


 K・1日前

 下手すぎ


 あ・1日前

 声がきらい


 airi tanaka・1日前

 地雷踏んだ時のこえ草


 3件の返信



 ーーーーーー







読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字のご指摘や、感想などをコメントを頂ければ今後の励みとなります。

自分は書き溜めはせずに、思いつくままに書き綴るタイプなので、更新は遅くなると思います。

エタらせてしまう事があるかも知れないのでご了承ください。


最後まで読んで頂きありがとうございました。ストックなしに思いつくまま執筆してるので更新は不定期となります。感想など聞かせてもらえればモチベーション維持に繋がりますし、作者が喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ