第8話
「すごぉーい、トニー君!」
「やるじゃん兄弟!」
「なんと! コレは、コレは!」
やんやの喝采が、
Gデッキで、
ゲズC²以外の、
チームの全てのGを、
見事に整備し、補給も終えた、トニーさんに贈られる。
あれから、丸一日、
ミケさんは医務室で、グッスリと休養し、
しっかりと体調の回復に努め、
今日の昼現在、昨日の惨状が嘘のように、
すっかりと元気になってくれた。
更に、
休養を終えて直ぐに、ミケさんが、
『うちは、もう大丈夫やから、
みんな、もう心配せんでええ、
やから、いつも通りで、お願いな!』
と、皆さんをなだめた為、
皆さんも、ミケさんを気遣い過ぎない様に、
できるだけ普通に接する様に戻った。
その間、トニーさんが、
本職のメカニックのマカロニさんにも劣らないような、
凄い早さと精巧さで、整備と補給をし、見事に終わらせた。
「良い腕しとるね、トニー君!
これやったらGの整備と補給だけやったら、
いつでもトニー君に全機任せられそうやね。」
医務室での休養を終え、
脳震盪も収まったミケさんが、溢
《あふ》れんばかりのニッコリの笑顔で、
トニーさんを称える。
「そんな。
チームのG全機の修理を担当されてらっしゃる、
マカロニさんに比べたら、ボクなんてまだまだですよ。」
右手で頭を搔きつつ、
まだまだと言う割には、
嬉しそうな笑顔で応えるトニーさん。
「あとは、そこのダメ男くんが、
ゲズC²1機だけくらい、
マトモに整備と補給が出来ているかが心配で仕方ないわよね。」
「迂闊に触って、
逆に壊したとかねぇだろうな!」
「ボクの仕事が、また増えるのも、もう覚悟済みですよ。
何を壊されたやら。」
トロイメンカッツェのKG部隊員が、
挙って嫌味の声を挙げてくる…。
「ユリン! ケビン! マカロニ!」
ミケさんが3人を咎めるが…。
「その…ゲズC²の整備と補給…。
何とか…壊さず…終わりました。」
何とか、ゲズC²だけは、
どこも壊さず整備と補給ができたけど…。
「確かに、一応、壊さず整備も補給も出来ていますが、
これで、また調子に乗って勝手に整備や補給を行って、
Gを壊さないで下さいよ?」
「は…ハイ…。」
「チッ! このクズ野郎の顔を見るだけでムカ付くぜ!
トニーのやってくれた作業も見届けたし、
このクズ野郎をこれ以上、見ないで済むようにオレは部屋に戻るぜ!」
1秒でも顔を見たくないと言わんばかりに、
怒りを募らせ自室に戻るケビンさん…。
「ケビンさん…。」
うつむくオイラに…。
「ケビンは、ウチを気遣い過ぎて、
勢いが付き過ぎてるだけやねん…。
ロクスリー君。
あんまり気にせんと、同じ失敗をせんようにして、
今度は、一人で突っ走る事が無いようにしたらええ。」
ミケさんが、温かい言葉を掛けてくれる。
「ハイ…。なんとか、もう同じ事が無いように気を付けます…。」
何とか言葉を紡ぐオイラだが、
ケビンさんだけでなく、ユリンさんとマカロニさんも、
ミケさんに気遣って、
オイラへの更なる叱責の言葉こそ掛けないが、
オイラを見つめるその眼は見つめるというより睨みつけており、
二人もケビンさんと同じで、オイラを到底容認できないと、
眼で訴えている。
厳しい視線の嵐に縮こまり……。
「あの…ゲズC²だけは…。
この機体の整備と補給だけは…これからもオイラがやります…。」
そう皆に声を掛けるのが精一杯なオイラ……。
ユリンさんとマカロニさんの二人は、
無言のまま、未だに厳しい視線を送ってくるが、
「わかった。ガンバりや、ロクスリー君!
そういう小さな積み重ねを重ねれば、信頼もまた取り戻せる!
今は、皆は、ウチを気遣い過ぎて、
想いが前面に出過ぎてるから、ロクスリー君からしたら厳しいやろう。
そやけどや!
こういう状態から回復した信頼は、普通の絆より強い絆になる!
そうなったら、皆、前より仲良しになる!
そやから……ガンバり!」
ミケさんからのこの温かい言葉に、
「は…ハイ!」
泣きこそしないが、
涙が溢れんばかりのオイラ……。
その時! Gデッキ内にアラートが響き渡った!
「前方より機体反応多数!
これは……スナッチャーザインの部隊の……ラフィンスカルの反応です!
前回のように部下たちだけではなく、
今回は、頭目のザインも居ます!」
アラート音を響かせながら、
セリアさんがGデッキ内のコンソールのモニターに通信を入れてくる!
「姐さん!」
すぐさまGデッキに戻り、
ミケさんを呼ぶケビンさんに、
「まだ懲りひんみたいやな!
ああいう奴は徹底的に叩かんと彼我の実力の差に気付かん!
そやから、徹底的に、ぶっ潰すで!」
拳を握って、ザインさんの撃破に気合を入れ、ミケさんが答え、
「あいさ、姐さん!
ケビン=ブロッサム! ラーゼンレーヴェ! 出るぜ!」
ミケさんに応え返し、勢い勇んで、ケビンさんがラーゼンレーヴェで出撃する!
「ユリンちゃんも、
ちょっとムシャクシャしてるとこだったから、
スキッとさせてもらいに、砲撃戦に出撃しちゃうんだから!
ユリン=エメラルド! エンジェルシード! しゅっぱーーッつ!」
オイラへの怒りであろう、怒りを晴らしに行くと、勢い付き、
ユリンさんが出撃して行く!
「やれやれ、
メカニックとしては、仕事を増やすのは辞めて欲しいのですが、
ボク個人としては、ユリンと同じで、
ちょっと鬱憤が溜まっている所なので、
それを晴らさせて貰うのに、
丁度良い的になってくれて、
ありがたいところですね!
今日のボクの砲撃は痛いですよ?
ロイド=ノーマン! フェストゥング! 出ます!」
マカロニさんも、オイラへの鬱憤であろう、
鬱憤を晴らすためと、
勢い勇み出撃して行く!
「今回は、殿はボクがやってみます!
ミケさんとロクスリーさんは、先に出撃して下さい!」
トニーさんが、殿は任せて欲しいと声を掛けてくれる。
「了解や! ほな、ウチから行こうか!
ミケ=スターライト! タイニーダンサー! 出るで!」
トニーさんに殿を任せ、
まず自分からと、ミケさんが出撃して行く!
「オイラが出て、逆に足を引っ張る可能性もあるかもしれない…。
けど…ッ! だけど…ッ!
少しでも……皆の役に立つ様にガンバるんだ…ッ!
ロック=ロクスリー!
ゲズC²! 出ますッ!」
オイラが出ても、どうなるかは分からない…。
分からないけど……。
オイラが出なかったら……。
ここでオイラが出ずに、閉じこもって逃げたら……ッ。
何も変わらないんだ……ッ!
だから、オイラは、出撃する…ッ‼
「トニー=スミス! 出ました!」
トニーさんが、オイラの後に、殿で出撃する!
「アヴァドン!」
オイラたちより前方少し離れた場所から、
ザインさんが、待っていましたと言わんばかりに、
オイラ達を迎え撃つ姿勢で待つ!
「懲りずに来たな、ザイン!
各機、ラフィンスカルを迎撃!
ケビン! ウチと一緒に前面に出てザインを抑えるで!
ユリンは中衛で砲撃しつつ周りをサポート!
マカロニ!
思う処はあるやろうけど、
ロクスリー君たちと後方で砲撃!
で、ロクスリー君とトニー君も、後方で砲撃支援!
おっさん!
マカロニたちと一緒に、砲撃、頼む!」
トロイメンカッツェ各機に指示を出すミケさん。
「あいさ、姐さん!
今日はオレも、クズ野郎のせいでムシャクシャしてるんで、
前衛で思う存分、暴れさせて貰いますよ!
行くぜ! アリーエルスラスター!」
オイラへの鬱憤を晴らすためにであろう、
フルスロットルとも思える位の、
勢いを付けてのアリーエルスラスターを起動し、
一気にザインさんたちに詰め寄るケビンさん!
「いつもなら、ムサいザインたちをタチで、
リッドやトニー君たちをネコで、ご飯3杯どころか、
5杯くらい余裕のユリンちゃんなんだけど、
今日のユリンちゃんは、ギシアンじゃなく、スカッとするために、
徹底的に砲撃でザインたちをブッ飛ばしちゃうんだから!
Lトライバレル! レーザー!」
相変わらずの謎世界が構築されるユリンさんの発言だが、
謎世界を大いに構築しつつも、
Lトライバレルのレーザーで、
ユリンさんの怒りを晴らすために、
ラフィンスカルのFG部隊たちを
徹底的に砲撃して行く!
「まあ、前衛や中衛を任されるよりは助かりますが…。
彼と同じ戦列というのは、正直気乗りしませんね…。
ですが、任されたからには、徹底的に、叩かせて貰いますよ!」
怒りを募らせながらも、
遠距離用大型レーザーキャノンでラフィンスカルに砲撃を行い、
更に、レーザーランチャーで相手部隊に追撃を行うマカロニさん。
「撃たなきゃ、どっちにしても当たらないんだ!
だったら! 外れても、まず撃つ!」
ダメだから何もせず逃げるなんてしてたら、何も変わらないんだ!
今のオイラは本当に最低の状態だ!
だから……だから…ッ!
ここから、全てを、積み重ねて行く…ッ‼
「ボクも、キャノン砲で!」
トニーさんも、アウスブレンデンの砲撃で、
ラフィンスカルたちの前面に出ているガトナスを迎撃する!
「セリア!
ソルファージュ! 3連装大型レーザーランチャー!
垂直! 水平ミサイル! 掃射!」
テキパキと攻撃指示をセリアさんに出すバーダック艦長!
「了解!
3連装大型レーザーランチャー!
垂直! 水平ミサイル!
掃射します!」
セリアさんも、素早く攻撃を遂行する!
「ウチも前に出る! トライバレル、レーザーや!」
ケビンさんと並んで、前面に出て、
トライバレルのレーザーを、
ラフィンスカルの、前面に居るザヌスに、
すかさず砲撃するミケさん!
「クッ…。
さすがはアヴァドンの部隊の弾幕ってワケだ…。」
トロイメンカッツェの弾幕に圧倒されるラフィンスカル!
「だがな!
今日は、いつもと同じだと思わない方が良いぜ、アヴァドン!」
ザインさんが、そう叫んだ直後に!
「な…なんだ⁉
アリーエルスラスターが使えねぇどころか、
ラジエールエンジンそのものが止まって、
G自体が動かねぇ⁉」
いきなり、ラジエールエンジンが止まって、
ラーゼンレーヴェが動かない⁉
「な…なにコレ⁉ ユリンちゃんピンチ!
ラジエールエンジンが、何かやられて、
エンジェルシードが全く動かないんですけどッ⁉」
エンジェルシードも、
同じく、急に止まって全く動けない⁉
「クッ…フェストゥングも同じ状態です…。」
フェストゥングも、まるで動かず⁉
「クッ…。
タイニーダンサーもや…。」
「まさか…コレは…ッ⁉ そんな事が…ッ⁉ ですが…ッ⁉」
自身の推理に、到底信じたくないと、
慌てふためくマカロニさん!
「ウチも疑いたくは無いけど、
これは、そうとしか思えん!」
疑いたくない…! 疑いたくなんてない…‼ だけど…でも…ッ‼
「流石にメカニックのマカロニや、
アヴァドンには分かるか?」
ラフィンスカルの部隊に、
アウスブレンデンを合流させつつ⁉
「さて、ご依頼通り、
KGは全機エンジンダウン。
この雑魚のFGには、
エンジンダウンの工作を依頼されませんでしたし、
仕掛けるのが面倒だったので、そのままですが…。
まさか、この雑魚FG1機を、
エンジンダウンさせなかった事だけで負けるほど、
弱くは、無いでしょうね、クライアント?」
トロイメンカッツェの全KGを、
依頼で全てエンジンダウンさせたと語るトニーさん⁉
「フッ、流石に、
そんな雑魚1機くらい問題ねぇよ、ザ・パーファクト!」
と、満足そうな声で、喜び叫ぶザインさん!
そのザインさんの言葉に!
「ザ・パーフェクト…⁉ ザ・パーフェクトだと…ッ⁉ トニーが…ッ⁉」
そんな事が有り得るのか⁉と、
言わんばかりの驚きぶりのケビンさん!
「な、なんスか、ザ・パーフェクトって⁉」
「シュメル=ウェイン…。
どんな依頼も、依頼された通りに完璧に遂行するっちゅう、
裏の世界でも有名な、ティアナで一番の何でも屋や!
その依頼遂行率は、未だに100%を下回らんらしい…。
それで、付いたアダナが、ザ・パーフェクト…。
そやけどや、どんな依頼も受けて100%やから、
ダーティーな依頼も、依頼されれば遂行する!
遂行したダーティーな依頼も、極多数や!
やから…相当危険な奴ではあるッ‼」
い…依頼遂行率100%ッ⁉
それも……ダーティーな依頼込みで…ッ⁉
「と…とにかく動けるようにしないとヤバイよ!」
何とか動けるようにしないと危険過ぎると、
今の危なさを皆に訴えるユリンさん!
「ですが、
G修理環境のある、
Gデッキのある、ソルファージュ内ならともかく、
艦の外から、しかも戦闘中に、これらの工作を打破するのは…ッ‼」
マカロニさんでも、これらの工作を打破するのは、艦外ではッ‼ 戦闘中ではッ‼
「へへへ!
じゃあ、そろそろ、
アヴァドンのとこのKGたちを全機頂いて行くぜ!」
喜び勇みながら、ザインさんがブッサルトを走らせながら!
「フフフ! まずはラーゼンレーヴェから頂くぜ!」
そう叫び、ミサイルポッドを射出しつつ、
ラーゼンレーヴェのコックピットのある胸部を、
レーザーバズーカで撃ち抜く!
「クッ…! こ…こんな事でッ‼」
コックピットを撃ち抜かれ…、
ケビンさんが……し…死んだ…ッ⁉
「タイニーダンサーは最後のディナーだ!
次! エンジェルシード!」
更にブッサルトを走らせ、
エンジェルシードに近づく!
「クッ…でも、
エンジェルシードは動けなくたって、
スーパー重装甲なんだから!」
例え窮地でも、
エンジェルシードの装甲ならと、
身構えるユリンさん!
「例え重装甲だろうと、、
コックピット部分のある個所を、
レーザーソードで串刺しにされりゃ、
パイロットは持つはず……ねぇよなぁ…ッ⁉」
そう叫び、ザインさんが、
エンジェルシードのコックピット部分に、
レーザーソードを突き刺した⁉
「きゃッ⁉ そんなッ⁉ ああああ…ッ⁉」
突き刺され、ユリンさんが、
エンジェルシードのコックピットごと焼かれ蒸発して行く⁉
「次ッ! フェストゥングッ‼
いつもAフィールドバリアに守られているから、
レーザーには無敵だっただろうが、
エンジンストップでそれが使えない今なら、
例え多少装甲が厚くても、どうにもならねぇだろ…ッ⁉」
喜び叫びながら、ロケットランチャーを頭部に放ち、破砕!
次に、胸部をレーザーバズーカで抉る!
更に、追い打ちで、
レーザーキャノンで胸部を抉り切る!
「クッ…こ…こんな…ッ⁉
あああ…ミ…ミケさん…ッ⁉」
ミケさんを呼ぶ断末魔を上げ、
マカロニさんが融け落ちて行く⁉
「ケビンッ⁉ ユリンッ⁉ マカロニッ⁉」
ミケさんが皆さんを呼ぶが……皆さんはッ……も…もう…ッ⁉
ブッサルトが、こっちに向かって、オイラの前で止まる⁉
「さて、
一応、この雑魚も仕留めとくか!」
ゲズC²の方を向いて、
レーザーバズーカを構える⁉
「あああ…ッ⁉
せ…せめてガトリングで…ッ⁉」
何とかガトリングで少しでも反撃を!
「この雑魚がッ!
いちいち歯向かうんじゃねぇよッ‼」
ブッサルトが、ガトリングを盾で防御しつつ、
ゲズC²のコックピット部分に、
レーザーソードを突き立てて来る…ッ⁉
「思い出した。死ぬってこんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した景色は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「前方より機体反応多数!
これは……スナッチャーザインの部隊の……ラフィンスカルの反応です!
前回のように部下たちだけじゃなく、
今回は、頭目のザインも居ます!」
良かったッ! 出撃前の、ここならッ‼
「皆さん! 出撃しちゃダメッス!」
とにかく、出撃する前に、
皆さんを引き留めないと‼
「アン⁉ 何だ、このクズ野郎!
またぞろワケわかんねぇ事、
言い出しやがって‼」
「KG全機に細工がされてるんスよ!
トニーさんが、実は、
ザ・パーフェクトのシュメル=ウェインで、
ザインさんに雇われて、
ミケさんたちのKG全機に細工したんスよ!」
「な……なんやと…ッ⁉」
とにかく、ありのままに伝えてみたけど!
「ロクスリー君!
それは流石に最低なんじゃないかな!」
「いくら自分の人気が全く無くて、
トニー君の人気が高いからといって、
トニー君の人気を落とす為に、
そういう流言を流すというのは、
流石に酷過ぎて言葉も出ませんね。」
「テメェ!
人の人気が羨ましいからって、
そういうやり方しかできねぇのか⁉
このド最低クズ野郎‼」
ケビンさんと、ユリンさんと、マカロニさんが、
オイラがトニーさんの人気が羨ましくて、
ウソを流したと勘違いし、すっごく怒ってる…ッ⁉
「いや、本当なんですって!
KGたちは、全機ダメッス!
ゲズC²だけは、
雑魚扱いを受けて細工されなかったんで、
どうしても出撃が必要なら、オイラが出撃します!
だから! マカロニさんは、KGたちを修理して下さい!
で! シュメルを、ふん縛って、暴れ出さない様にして下さい!」
とにかく!
今、出撃させちゃダメだし!
全機、細工を解いて貰わないとダメだ!
そして、シュメルを捕まえといて貰わないと危険だ!
「ロクスリーさん。
ボクは、シュメルなんて人じゃないですよ。
それに、ロクスリーさんのゲズC²だけじゃ、
ラフィンスカルを抑えるのは厳しいですよ?
ボクはKGに細工なんてしていませんし、
皆さんで出撃した方が、効率良く戦えると思いますよ?
どうでしょうか、ミケさん?」
シュメルがウソを吐きまくって来る⁉
こ…こんなッ⁉ もし、ミケさんが、シュメルのウソを信じたら…ッ⁉
「ゲズC²と、
アウスブレンデン出撃ッ!
他は一旦マカロニに見て貰って待機ッ‼」
「ミケさん⁉」
「姐さん⁉」
「リーダー⁉」
「ミケさん⁉」
「ミケさん⁉」
シュメルや皆どころか、
オイラも驚く!?
KG全機は、
マカロニさんに見て貰って、
KGメンバーは全員待機って指令なのに、
ゲズC²と……、
アウスブレンデンも…出撃…ッ⁉
「こういうロクスリー君の既視感は信じられるッ!
やから、KGは、全機マカロニに見て貰って、
KGメンバーは全員待機やッ‼」
「あ…ありがとうッス! ミケさん‼」
良かった。
何とか、ミケさんは、
オイラの事、信じてくれた…。
「けどやッ! 信じられるけどやッ‼ ウチは……トニー君も信じたい…ッ‼」
「え…ッ!?」
シュ…シュメルの事も…信じる…ッ⁉
「やから、
ゲズC²だけやなく、
アウスブレンデンにも出撃してもらう!」
「ありがとうございます! ミケさん!」
喜びの笑顔をミケさんに向けるシュメル!
「けどやッ!
最悪、トニー君が、
シュメル=ウェインである可能性も、ウチは考えはするッ‼
やから、もしもの時は、ソルファージュで、
後ろから撃たせて貰う…ッ‼」
「え…ッ⁉」
喜びの笑顔から一転、
その笑顔を凍り付かせ、
驚愕の表情に変わるシュメル‼
「でもやッ!
今日まで一緒に過ごしたトニー君との日々が、
全て演技やったとは思いたくない…ッ!
やから…‼ 頼むで……トニー君…ッ‼」
一心にシュメルを見つめ、
共に過ごした日々が本物で有る事を願うミケさん!
「クッ……ッ! ボクは…ッ‼
…ッ…………分かりました……ッ。
……トニー=スミス……。
アウスブレンデン……。
何とか…ラフィンスカルを……。
足止め…して来ます…ッ‼」
苦虫を噛み潰した様な、
顔をしつつも、
アウスブレンデンに乗り込み、
出撃するシュメル!
「ロクスリー君も、頼むでッ!
最悪の場合、君一人で、ソルファージュを守る事になるかもしれへん…。
でもや…ッ‼
もし、ロクスリー君一人で戦う様な事になっても、
何とかガンバって耐え切って欲しい…ッ‼
頼むで…ッ‼ ロクスリー君…ッ‼」
願いを込めた眼差しで、ミケさんが、オイラを送り出すッ‼
「は…ハイッス! ミケさん‼
どうなるか分かんないッスけど……。
ロック=ロクスリーッ‼
ゲズC²ッ‼
何とかラフィンスカルたちを…ッ‼
足止めして来ます…ッ‼」
そのまま出撃し、ザインさんたちの前に立ち塞がる!
怖い…ッ‼ 逃げたい…ッ‼
こんな数の……こんな凄い人たち……オイラが相手にできるワケ…ッ⁉
しかも……いつシュメルが本性を現して……後ろから撃って来るか…ッ⁉
周りは、シュメル含みで、皆、敵…ッ!
味方は、ソルファージュのみ…ッ!
だけど……だけど……。
たった一握り……。
たった一握りで良い…ッ!
オイラに……こんなオイラにでも…ッ!
逃げも隠れもするし…嘘だって…いくらでも吐く……、
こんなオイラにでも…ッ!
たった……、
たった一握りだけで良い……、
オイラにでも……勇気があるなら…ッ!
ここで使わなくて……どこで使うって言うんだ…ッ‼
だから………だから…オイラは…ッ‼
「来い! ザイン!
オイラが相手になってやるッス!」
大型バズーカを右腰から取り!
ザインさんのブッサルトに向けて構える!
ほんの……ちっぽけだけど……。
在りったけの……。
在りったけの勇気を込めて…ッ‼
「テメェは、お呼びじゃねぇんだよ、雑魚野郎ッ‼
アヴァドンだ! アヴァドンッ‼ アヴァドンのミケを出せってんだよ…ッ‼」
イラ付いた声で、
ザインさんがミケさんの登場を求み叫ぶッ‼
「ミケさんたちは、オマエらの相手をしている暇が無いそうッス!
オマエらなんか…ッ! オイラだけで十分ッス…ッ‼」
叫び、大型バズーカを構え直すオイラッ‼
「フンッ!
頭の湧いたアホウの相手を、
ワザワザ、オレがするのもバカらしいなッ!
野郎共ッ! このアホウの相手をしてやりな…ッ‼」
「了解だッ! ボスッ!」
「へへへッ!
さぁ、どういう風に、
このアホウを甚振ってやろうか…? へへッ!」
舌なめずりをしながら、ラフィンスカルのメンバーさんたちが、
こちらとの間合いを詰めて来る…ッ‼
「来る! でも!
オイラで…! オイラでもッ‼
ここで! 足止めするんだ…ッ‼」
じりじり間合いを詰めて来るラフィンスカルたちに向けてッ!
垂直ミサイルを発射ッ‼
「チッ! 抵抗すんな雑魚がッ!」
先頭のジーナが、こちらの弾丸を回避しつつ、
レーザーライフルを掃射して来る!
「クゥ…ッ‼ だけど…ッ‼」
胸部に少し被弾しつつ、
何とか掠る程度で躱し、
次に、大型バズーカ発射ッ‼
だけどッ‼
オイラが下手過ぎて、
バズーカは明後日の方向に飛ぶ…ッ⁉
「どこ狙ってやがんだよ…ッ⁉ クズが…ッ‼」
「この程度で……!
オレたちラフィンスカルに歯向かいやがって…ッ‼」
歯向かって来たのが、
余りに下手過ぎる雑魚の中の雑魚のオイラな事に、
ラフィンスカルの面々が怒りだし、
次々に、レーザーライフルやバズーカ等で応戦して来るッ‼
この間も、
予想通り、シュメルからの援護は全く無い!
だけど…ッ‼ ここで…ッ‼ アリーエルホバー起動…ッ‼
「チッ…ッ⁉ ゲズがアリーエルホバー付きッ⁉」
ダッシュしながら、
レーザーガトリング掃射…ッ‼
「クソが…ッ‼」
「雑魚だってのに……、
いちいち歯向かいやがって…ッ‼」
更に、
すれ違い様にスタンアンカー発動ッ‼
「くぅ…ッ⁉ アンカーまで…ッ⁉
雑魚のクズゲズなのに…ッ⁉」
何とか、一番前のジーナだけは止めたッ‼
ラフィンスカルの部隊に、
出来る限りの反撃はした!
けど!
「もう許さねぇッ‼」
「クズは、クズらしく…ッ‼
大人しく、やられろってんだ…ッ‼」
いつの間にかラフィンスカルのメンバーのジーナたちが、
四方を囲んでいて、レーザーライフルの十字砲火をしてくる…ッ⁉
咄嗟で、
何とか、盾で防ごうとするけど……。
オイラの盾の扱いが下手過ぎて……、
攻撃に盾が間に合わない…ッ⁉
「オマケだッ‼」
「食らえよッ‼ 雑魚野郎ッ‼」
み…ミサイルが……来る…ッ⁉
クッ…だけど…ッ‼
間に合わなくても……、
何とか防げる分だけでもバルカンで…ッ‼
「アァァァ……ッ⁉」
ボロボロに被弾しながらも、
何とか2、3発のミサイルをバルカンで迎撃しながら、
残りのミサイルを食らいつつ、
少しでも、ダッシュで距離を取るッ‼
その絶望的な激戦の最中!
「こ…これは⁉
本当にフェストゥングのラジエールエンジンに細工がされていますッ⁉」
よし…ッ‼ マカロニさんがシュメルの細工を発見してくれた…ッ‼
「な…何だとッ⁉」
驚愕する、バーダック艦長‼
「そ…そんなッ⁉」
大きく、驚きの声を上げるケビンさん!
「ほ…本当だったの⁉」
まさか、本当にあり得るなんてと、
驚愕の表情のリッドさん!
「そ…そんな事って…⁉」
到底信じられないと言わんばかりの、
驚きの表情のユリンさん!
「クッ…ホンマやったか…。」
信じたくは無かったが、本当だったかと、
諦めの表情のミケさん!
「じゃ…じゃあ……トニー君は本当に…ッ⁉」
シュメル=ウェインじゃないか、
と、焦りの声で、
セリアさんが叫ぶ!
そこで……。
「頃合いか…。」
ア…アウスブレンデンが…ッ⁉
ソルファージュに向けて……発砲した…ッ⁉
被弾しながらも、
「化けの皮が剥がれたかッ!
セリア! トニー……いや、シュメルに向けて、
3連装大型レーザーランチャー掃射…ッ‼」
セリアさんに、
シュメルへの攻撃指示を出すバーダック艦長!
「了解
3連装大型レーザーランチャー掃射‼」
セリアさんの的確な砲撃に、
被弾した……、
様に見えたアウスブレンデン…の装甲が…ッ⁉
ぱ……パージした…ッ⁉
中から、
手足の無い飛行機型のGのCGが、
現れたかと思ったら……、
な…KGに変形した…ッ⁉
父さんの持っていたみたいな……、
CGと、
KG間を可変できる、KGって言われている、
TKGって奴だっていうの…ッ⁉
「ほ…本当に、
化けの皮が剥がれやがった…ッ⁉」
装甲をパージして、アウスブレンデンの中から現れた、
TKGに、驚くバーダック艦長‼
「どうした、ザ・パーフェクト?
依頼遂行率100%じゃなくなったんじゃないか?」
にやけた声で、
シュメルを、からかう様に声を掛けるザインさん!
「イレギュラーが居たんですよッ‼
…………クライアント…ッ‼
トロイメンカッツェのKGたち全機の、
エンジンダウンの細工は発見されましたが!
KG全機をクライアントが倒せる様に、
何とかします! しますから…ッ‼
部下たちに任せていた、
その雑魚一匹、
オレに譲って下さい…ッ‼
譲ってくれれば、KG全機を、
クライアントの手で倒せる様に、
ちゃんと仕事はした上で、
報酬を本来の報酬の三分の二、返金しますッ‼
このクズのッ! このクズのせいで…ッ‼
オレの…ッ! オレの完璧な経歴が…ッ‼ クライアント…ッ‼」
依頼遂行率100%を下回らされたのが、よほど悔しいらしく、
オイラに並々ならぬ敵意を向け、
ザインさんに、オイラを譲ってくれと懇願するシュメル!
「仕方ねぇな、シュメル=ウェイン!
その雑魚は譲ってやる!
だから、後の仕事と返金は、ちゃんとしろよ?」
再度、にやけた声で、シュメルに声を掛けるザインさん!
「OK…ッ! クライアント…ッ‼」
オイラを譲って貰えたのが、
余程嬉しいらしく、
喜びの声で、ザインさんに返事をするシュメル‼
「クッ…! シュメル…ッ‼ アンタは…ッ‼」
とにかく、皆が出撃できる様になるまで、
シュメルだけでもオイラだけで足止めしないと!
「でも……ッ! オイラが…ッ‼ オイラがァ…ッ‼」
まず、ミサイルをラフィンスカル達に放つ…ッ‼
次に、大型バズーカをシュメルに向けて連射…ッ‼
「まだ、こっちにも撃って来やがる…ッ⁉」
「このクズが…ッ⁉」
ラフィンスカルたちには、幾つかミサイルが当たった…ッ‼
けど…ッ‼
「この程度で……ッ!
この程度だというのに……ッ!
オレの…オレの経歴を…ッッ‼」
大型バズーカは、
シュメルに、ことごとく、回避されるッ⁉
そして、オイラを見据え!
「ロクスリー!
オレがKG達に細工した事も!
ゴミ機体のゲズC²にだけ細工しなかった事も!
オレがシュメル=ウェインである事までもッ‼
何故、オマエの様なゴミクズが見破れた…ッッ⁉」
ここまでのオイラへの疑問を、
一気に吐き出し、問い詰めるシュメル…ッ‼
「分かんないッスよ…ッ!
1回死んで……ッ!
何が在るか見て生き返って…ッ!
それで分かっただけで…ッ!
何で、そんな事が起きるのかまでは……ッ!
オイラにも分かんないんスよ…ッッ‼」
とにかく、体験した事を、そのまま伝えながら、
更に大型バズーカをシュメルに向けて速射するが…ッ!
「き……キサマァ…ッ‼
ムチャクチャな話で、オレを混乱させて、
オレを愚弄する気か…ッ⁉」
お…オイラの放ったバズーカの連弾を、
全弾、アサルトレーザーライフルで……、
う…撃ち落として来る…ッ⁉
「クッ…! 良いだろう…ッ!
このTKG……グラオザームリヒターと…ッ!
ザ・パーフェクトだった…このオレの力…ッ!
キサマの…そのゴミ機体に…ッ! タップリと刻んでやる…ッ‼」
そう叫んだかと思うと、
グラオザームリヒターと呼ばれたTKGが、
KGモードから、
飛行機形態のCGモードに変形し、
アサルトレーザーライフルを掃射して来る‼
「しゅ……シュメル…ッ‼ グッ……ァァァ…ッ⁉」
アサルトレーザーライフルを、
何とか盾防御しようと、
試みるけど…ッ!
ダメだ⁉ オイラの腕じゃ防ぎきれない…ッ⁉
頭部がヤラレて、メインカメラが…ッ⁉
「オレのクライアントから今回受けた依頼は、
トロイメンカッツェの全パイロットと、
Gを直接クライアントの手で、
全て撃墜できる様にする事ッ‼」
素早い動きで間近まで飛んで来て、
KGモードに戻り、
前からゲズC²の胸部を蹴り飛ばして来る⁉
「クッ……ウゥゥ…ッ⁉」
何とか両手を地面について、
こちらも素早く起き上がり距離を取るッ‼
「全パイロットとGという事だから、
前回オマエが、情報屋の上手い話にホイホイ乗った時は、
オマエに勝手に野たれ死なれると依頼失敗になるという事で、
嫌だったが、あの時は、依頼の為に嫌々助けた‼」
きょ……距離を取ったら……ッ⁉
ミサイルポッドを…撃たれた…ッ⁉
「アァ…ッ⁉ こ…こんな…ッ⁉」
盾で逃げながら、
ガトリングで落とすが、幾つか被弾するッ⁉
「そんなイレギュラーな事態でも、
オレは依頼遂行の為に、
あの偽装戦闘機アウスブレンデンのままでも、
オマエの様なクズでも助けれたッ‼
更に、その逆境を生かし、
暴走したオマエを助ける事に尽力したとして、
オレへの信頼が向くようにし、
更に、オマエへの信頼を落とした上で、
トロイメンカッツェ内の、
全KGに、
マンマと、エンジンダウンの仕掛けをした!」
ミサイルポッドを、
更に射出するシュメルに、
何とかレーザーガトリングを返し、
こちらもミサイルを射出するがッ‼
「こ…こんな…ッ⁉ アァ…ッ⁉」
あ…アサルトレーザーライフルで……ッ⁉
ミサイルを迎撃されて……ッ⁉
更なる掃射で……ッ‼
み……右腕が…ヤラれる…ッ⁉
「他の今までの仕事でも、どんな依頼だろうと、
オレは何であろうと、完璧にこなして来たッ!
だから、オレは、今まで、
ザ・パーフェクトの名を欲しいままにして来たッ‼」
急接近して来て、レーザーソードを振るおうとするグラオザームリヒターに、
残った左腕のガトリングで牽制しつつ、
更に、左手の甲から起死回生でスタンアンカーを放つ…ッ‼
……けど……ッ⁉ こ…これすら……見切られた…ッ⁉
そして、
「あァァ…ッ⁉ ひ…左腕まで…ッ⁉」
左腕まで、
レーザーソードで切り落とされて。
ダルマにされた…ッ⁉
「なのに…ッ! ……なのに…ッ‼
……このクズが…ッ!
……キサマのせいで……、
オレの完璧な経歴は汚された…ッ‼」
何とか背部ミサイルで牽制しようとするが、
素早い動きで、横っ腹から蹴り飛ばされ、
吹っ飛ばされ、倒される…ッ⁉
「アァ…ッ⁉ う…動けない…ッ⁉」
両手の無いダルマ状態の為に、
起き上がれない…ッ⁉
「だから…ッ!
ロック=ロクスリー…ッ‼ このクズが…ッ‼
……このグラオザームリヒターの…ッ‼
……アクセラレートレーザーキャノンで…ッ‼」
グラオザームリヒターが、背部から右肩に、
アクセラレートレーザーキャノンと呼ばれた、
キャノン砲をジョイントさせッ‼
「キサマの存在を…ッ‼
オレが…この手で完璧に抹殺してやる…ッ‼」
地面に転がって倒れているゲズC²に向けて…ッ‼
「疾く逝け…ッ‼」
必殺の一撃を…放つ…ッ‼
「う…動いてくれ…ッ‼ 動いてくれ…ッ‼
ゲズC²……ッ‼
……アァ…ッ⁉」
ゲズC²に着弾し…ッ‼
そこで……オイラの意識は……。
『マスター…ッ! マスター…ッ‼
脱出ポッド、起動しましたッ‼
何とか、ミケさんたちに回収して貰えるまで…ッ‼
生き抜いて下さい…ッ‼ マスター…ッ‼』
必死にロクスリーに呼び掛ける38!
脱出ポッドは起動したが、
ポッドの中にまでダメージが及んでおり、
破壊された機体の破片が腹部に刺さり、
大きな深い傷となり、意識を失い倒れるロクスリー‼
そこで、ソルファージュから4機のKGが全機出撃する!
「ロ…ロクスリー君…ッ⁉」
通信モニターに映る、
機体の破片が腹部に刺さった重傷のロクスリーを見て、
ユリンが驚愕し…ッ‼
「アァァ…ッ⁉」
ミケが絶句する…ッ‼
『ミケさん…ッ! 皆さん…ッ!
マスターを…ッ‼ どうかマスターを救って下さい…ッ‼
どうか…ッ‼ どうか…ッ‼ お願いします…ッ‼』
必死に、切実に、
ロクスリーの救助を懇願する38…ッ‼
「分かりました…ッ!
急ぎ、ポッドを回収し、
ロクスリー君をソルファージュの医務室に…ッ‼」
焦りの表情を浮かべながらも、
ロクスリーを回収しようとするマカロニ!
「クッ…トニー…ッ! いや…シュメル…ッ! テメェ…ッ‼」
信じたくない、しかし、信じざるを得ない現実に、
ケビンの怒りの炎が、瞳の中に熱く燃え盛るッ‼
「チッ…!
雑魚は倒したが……、
4機のKGが、
全機万全の状態で挑んで来るってのは不利だ…ッ!
シュメル…ッ! 幕だ…ッ‼」
そう叫びつつ、ザインが右指を大きく鳴らす!
「OK! クライアント!」
そうシュメルが叫ぶと同時に、
ソルファージュで、警報が多数発生…ッ⁉
更に、ソルファージュが、
急な動きで不時着した…ッ⁉
「クッ…! どうした…セリア…ッ!?」
すかさず、バーダックがセリアに訊ねる‼
「ソルファージュ、メインエンジン、非常用エンジン、共に停止…ッ!
シュメルにソルファージュ内も細工された様で、
艦内で爆発多数…ッ!
各所で火災発生ッ‼」
焦り、状況を報告するセリア!
「何やと…ッ⁉」
ミケも、焦りの声を返す‼
「と…とにかく!
セリアは、直ぐに艦内を消火だ‼」
早急に指示を出すバーダック‼
「了解!
艦内各所、迅速に、
できる限り、消火します‼」
急ぎながらも冷静に務め、
各所の消火を行うセリア‼
「メインエンジンが停止したから、とにかく何とか不時着したよ!
でも、非常用エンジンまでも停止しているから、
まず、今の状態だと、ソルファージュを飛ばすのは無理だよ‼」
急ぎ、迅速に報告するリッド!
「クッ……、
ここまでソルファージュが動けんようにされたら…ッ‼」
焦りの色を濃く顔に浮かべ、沈黙するミケ…。
そのミケに対し、
「アヴァドン…ッ! ここは一旦、引き下がる!
だがなぁ‼ オマエたちは、もう動けねぇ‼
いつ襲われるか怯えながら、
最後の時を過ごしな! へへへ…ッ‼」
そうザインが叫び、シュメルと共に、
ザインたちラフィンスカルが、
悠然と撤退して行く!
「テメェら! 待ちやがれ‼」
叫び、直ぐに、
シュメルと、ザインたち、
ラフィンスカルを追い掛けようとするケビン!
「あかん! ケビン‼」
そのケビンを、急ぎ呼びとめるミケ!
「でも、姐さん…ッ!
見す見す、
ザインやシュメルたちを逃すのは…ッ⁉」
ミケに対してでも、食い下がって、
シュメルたちを追おうと促す、ケビン‼
だが、
「ダメです、ケビン…ッ!」
急ぎ、マカロニが叫ぶ!
「何だよ…ッ⁉」
イラ付きながら、返すケビンに、
「まず、早くロクスリー君を助けないと、
ポッドにまでダメージが及んでいて、
最悪、彼の命の危険も有るんです…ッ‼」
切実に、ロクスリーの容体を、
ケビンにマカロニが訴え掛けるが!
「じゃあ、そんなクズ野郎を、そんなに助けたきゃ、
オマエが助けりゃ良いだろうが‼
オレはザインやシュメルたちを追うぜ‼」
直も、
ミケを危険な目に遭わせたロクスリーに、
怒りが湧くらしく、
ロクスリーを助ける事より、
シュメルたちを追う事に、想いが廻る、ケビン!
「ダメだって、ケビン!
ロクスリー君の事だけじゃやなく、
ソルファージュが、火災いっぱい、損傷いっぱいで、
早く私たちで何とかしないと、
私たちのお家が下手したら無くなっちゃうんだって‼」
必死に、ユリンが、ロクスリーの状態だけでなく、
ソルファージュの現状を何とかケビンに伝えようとする。
「クッ…!
スプリンクラーだけじゃ、
艦内の全部の消火は無理か…!
チッ…! ケビン=ブロッサム! 帰還する!」
無人のスプリンクラーだけでは、艦内の細かい消火作業は無理ッ!
スプリンクラーでの消火だけで消えない所は、人力で消火器などで消すしかない!
流石のケビンでも、
ソルファージュが火の海で帰る所が無いというのは、
何としてでも、避けたい事態だったようだ!
「ケビンも…やっと分かってくれた……!
けど…ッ! ヤバイって…コレ…ッ! ヤバ過ぎるって…!」
ケビンを説けたのは良かったものの、
ロクスリーとソルファージュのダブルの惨状に、
恐慌状態のユリン!
「ロクスリー君と、38さんのポッド、回収しました!
ですが、ポッドにまで損傷が及んでいて、
38さんは大丈夫そうですが、
ロクスリー君にまでダメージが及んでいます!
ロイド=ノーマン…!
二人を連れて、直ちに、帰還します‼」
ロクスリーと38の入ったポッドを、
マカロニのフェストゥングが回収し、直ぐに帰還する!
「ユリン=エメラルド…ッ!
御飯10杯の、超絶カワイイ、ネコに…!
御飯10杯の、超絶カッコイイ、タチが…!
ギシアンする直前って聞いた時の様な、
スゴイ急ぎで…! スゴイ勢いで…!
こっちも、ソルファージュに、直ぐに帰還します…‼」
相変わらず、発言の深い意味は謎だが、
ユリンもソルファージュに、急ぎ、帰還する!
「クッ…! ロクスリー君…ッ!
…クッ…ウゥゥ……ッ! …シュメル……ッ!
…やけど…ッ! やけど…とにかく…ッ!
ソルファージュを何とかせんと…ッ!
ミケ=スターライト! 帰還する‼」
ロクスリーの生還を祈り、
シュメルへの激しい怒りを燃やし、
ミケのタイニーダンサーも、ソルファージュに帰還する!
ミケが帰還すると、
ソルファージュ艦内は、騒然としていた!
各所では、火の手が上がっており、
それを消すために、
セリアが動かしてくれたのであろう、
天井からのスプリンクラーや、
バーダック、リッド、ケビン、ユリン、マカロニの使う、
消火器での、迅速な消火作業中で、
火の手は、まだ上がっている所もあるが、
迅速に消火されて行き、
かなり火の勢いは弱まっている!
「救急室付近の消火は済みました!
他の消火は、やっておきます!
ですから! セリア! ロクスリー君を‼」
焦り、叫びつつ、
ロクスリーを救急室に担ぎ込み、
セリアを呼ぶ、マカロニ!
「分かりました!
執刀します!
皆には、各所の消火を、お願いします‼」
皆に、消火を任せ、
直ちに、執刀の準備を始めるセリア!
『セリアさん! どうか! 何としても!
マスターを救って下さい‼』
何としてでもロクスリーを助けてくれと、
切実に38が、セリアに懇願する!
「分かりました、38さん!
何としてでも、ロクスリー君は、救ってみせます‼」
38の懇願を聞き、
更にロクスリーの執刀の意欲を高め、
更なる準備を進めるセリア!
「頼むで、セリア!
ソルファージュは、ウチらに任せ!
やから、ロクスリー君を…‼」
周囲を更に消火する準備をし、
消火器を構える用意をしつつ、
セリアに、急ぎ、ロクスリーへの対応を願うミケ!
「ハイ! リーダー!
ソルファージュの消火の方は、お任せします!
ですから、ロクスリー君の執刀は、
何とかやり切ってみせます‼」
ミケの頼みを聞き、ソルファージュはミケたちに任せ、
ロクスリーを何とか救い切ると誓うセリア!
「姐さん! ブリッジは被害なし!
居住区に、
かなり火の手が上がってたから、
リッドと一緒に、全部、消火しときました!」
ケビンが急ぎ、ミケの前に駆けつけ、
ブリッジの無事と、居住区の鎮火を報告する!
「良し! ほな、Gデッキの被害確認‼
火災が発生してたら、火災発生箇所の各所を消火!」
迅速に、ミケが指示を出し、
「リーダー!
Gデッキ、
もう、バーダック艦長と一緒に見ておいたよ!
Gデッキは、昔にGに火の手が上がって、
損害が出た時の影響で、リーダーが細かい所までスプリンクラーを、
徹底的に配備していたから、
幾つか損傷はあるけど、
火災的な被害は、ほぼ無し!
消火終了! シュタイガーンバオアー、損害無しだよ!」
ユリンが、投げ返す様に、迅速な成果を報告をする!
だが……。
「ミケ! メインエンジン! 非常用エンジン!
どちらも、大分、ヤバイくらいに損傷しているぞッ⁉」
バーダックが、ソルファージュの各エンジンの損傷を報告!
「クッ…。とにかく!
エンジンとかの、各部の重要箇所は、消火できたんか⁉」
損傷は分かったから、火災の消火自体は、できたのかと、バーダックに聞くミケ!
「とりあえず、火災だけは、何とか消したが……、
エンジン系は…もう大分ヤバイな…。
とりあえず、メインエンジン、非常用エンジン、共に停止だ!
ソルファージュは航行不能! どうする、ミケ⁉」
とにかく、消火自体は出来たのは報告したが、
エンジン停止によるソルファージュの航行不能も報告するバーダック。
「とにかく、非常用エンジンを修理や!
メインエンジンは、機構が複雑過ぎる。
まずは、機構が簡略化された、
非常用エンジンの方から直すべきや!
頼むで! マカロニ‼」
対応の指示をミケがマカロニに伝えるが。
「自己判断で、指示を聞く前に、
非常用エンジンから、できる限りで修理して行ったのですが、
ポートティリアでG等を売却した為に部品が足りません!
このままでは、メインエンジンも、非常用エンジンも、修理できません!」
既に修理は試したが、
物理的に部品が足りないと告げて来るマカロニ!
「クッ…。
メインエンジンどころか、非常用エンジンすら損傷…。
更に、修理しようにも、部品が足りん…。
だが、まさか、この状況で、部品を買出しに行くワケにもいかん…。
どうする、ミケ!?
このままじゃ、後手に回らざるを得んぞ⁉」
エンジン系の修理が、部品が足りなくて出来ない以上、
このままでは、どうあっても後手に回る事をミケに問うバーダック!
「後手に回るんはしゃあない!
相手はKG1機と、
TKGっての1機ずつだけ!
他は有象無象の、
FGの部隊!
こっちは4機のKG!
数では負けるけど、質では負けへん!
ロクスリー君の敵討ちも含めて、
ソルファージュ防衛戦や‼」
ソルファージュのエンジン系が、
各部、絶望的な中、
ロクスリーの敵討ち込みで、
ソルファージュ防衛戦!
この防衛で…ッ!
ラフィンスカルを…ッ!
ザインも…ッ!
ザ・パーフェクトも…ッ!
迎撃で…ッ!
逆に全て滅ぼし尽くす気で…ッ!
防衛しきる…ッッ‼