第6話
「セリアッ‼ フェアタイディゲンの追跡、どうなっとんやッ⁉」
ミケさんが、苛立ち紛れに荒い声で聞く。
ミケさんたちのKGたちを、
マカロニさんが急ピッチながら、何とか修理し終わって、
トニーさんが、『せめて自分の機体は整備します』と、
アウスブレンデンを整備し終わって数刻。
ソルファージュから、かなり先行して逃げているフェアタイディゲンを、
何とか索敵し、レーダーで追える範囲ギリギリで、
追跡している現状なうっていうところ。
「依然、同じ方角に向かって逃走しています。
このまま行くと、丁度、アルセカーナの町に到着しますね。」
ミケさんへの質問へのセリアさんの答えに、
「何であのG²、
そっちに逃げているのかな?」
リッドさんが疑問の声を上げる。
「あれだけの技量の自動戦闘ができる、
高性能AIなのですから、
もしかしたら自己修復機能もあるのではないかとボクは考えます。
そして、自己修復の為にアルセカーナの町の、
Gショップなどで、
パーツを得ようとしているのではないかとも考えます。」
マカロニさんが自己分析の仮説を述べる。
「何にしても、うちらのKGは、
もうマカロニが直してくれて万全なんやし、
早よ、アイツに追い付いて、
今度こそ完膚なきまでに叩き潰したるんやッ‼
フッ……フフフ……クククッ…ッ‼」
不気味な笑い声を出すミケさん。
マジ怖いっス…!
「リーダーが燃えているッ⁉」
引き気味にユリンさんが言う。
「あの~……やっぱり、
あのG²に関わると、
損害しか出なさそうっスし、
ここは、もう諦めて、
放っておくって選択肢も……」
「あんッ⁉」
ミケさんが、
ギロッ!て音が鳴りそうなくらいに、
睨みつけてくるッ!
「ヒッ⁉」
オイラ、ビビる、ビビる。
「止めとけ、ロクスリー。
金絡みのもつれの時は、姐さんには逆らうな。」
ケビンさんが小声で言って来てくれる。
「まあ、メカニックの観点から言わせて頂ければ、本当はボクもロクスリー君の意見に賛成なのですけどね。でも、ミケさんがああですしね……。」
マカロニさんも小声でフォローの言葉を送ってくれる。
「まあ……仕方ないっスよね……。」
ケビンさんとマカロニさんに、オイラも小声で答える。
「リーダー、
フェアタイディゲンがアルセカーナの町に到着した模様です。
機体反応ロスト。
町の自警団の施していると思われるジャミングで、
レーダーでは探知できなくなりました。どうしますか?」
セリアさんが、これからの指針をミケさんに尋ねる。
「当然、追い掛けて町に入って、
しらみつぶしに町内を探索して、
見付けてブッ潰すッ!」
強気に言い放つミケさん。
「アルセカーナって、
一度、私たちが町の自警団のFGを強奪したところだし、
私たちが入ったら自警団たちに目の敵にされて攻撃されるんじゃないの?」
ユリンさんが、大丈夫なの?と、言外にミケさんに尋ねる。
「だよなぁ……。
流石に雑魚の集まりの自警団たちでも、
あのG²を相手にしながら、
挟撃されたら最悪じゃないですか、姐さん?」
ケビンさんも続いてミケさんに聞く。
ちょッ⁉
あんな化け物みたいに強いG²と戦う上に、
町の自警団にも襲われるとか、マジ勘弁なんだけどッ⁉
「マカロニが、さっき言った、
町のGショップを襲って、
パーツを漁って自己修復しとるっちゅう推測は、
多分、合っとるやろう。
で、それやったら、町の連中からしても、
あのG²は敵や。
それをわざわざ倒したるんやから、町の連中からしたら、
うちらがあのG²と戦う分には、
渡りに船のはずや。
ホンマやったら、
せっかくやから町の自警団のG倉庫の、
FGを強奪とかしたいところやけど、
今回は、こっちも向こうも見逃しや。
前に、あの町の自警団を襲ったのを差し引いても、
町を荒らすG²いう驚異に、
町の不甲斐ない自警団の代わりに戦ってやるんや。
喜ばれこそすれ、攻撃される事はないやろ。
仮に、前の時の恨みが、まだ残っとったとしても、
G²に、
町を襲われてテンヤワンヤの所で、
一度、負かされたうちらに攻撃してくる余裕があるとも思えんしな。
そやから、町ん中に入って、
あのG²を探すでッ!
町に入ったら、みんなで出撃やッ‼」
と、ミケさんが、意外に冷静な分析をし、述べる。
ああ、なるほど。
確かに、そういう状況なら、
自警団も、オイラたちを攻撃しないかもだね。
でも、
あの化け物G²と戦うのは、
回避不可の模様……。
それだけでも涙がチョチョ切れるんですけど……。
「まっ仕方ないですね。了解しましたよ、姐さん!」
「リーダーは、言い出したら聞かないし、仕方ないよね。こっちもOKよ。」
「メカニックとしてはムダな損害は極力避けたいのですけどね。
まあ、こちらも了解ですよ。」
「ホントは、こんな野良試合なんてほっといて、
奴さんに、直ぐにでも合流しなきゃ行けねぇんだが、
幸い、あれから奴さんからの催促もねぇし、
まあ、うちの姫さんは癇癪を起したら聞かねぇからな。
仕方ねぇ、リッド、ソルファージュ、アルセカーナに向けて、全速前進だ!」
バーダック艦長が操舵のリッドさんに指示を出す。
「了解です! ソルファージュ、全速前進!」
と、小気味良く答えるリッドさん。
全速で死地に向かうソルファージュ。
嫌な予感がするので、ダメ元で言っとこう。
「あの~……。
前の、G²との戦闘で分かると思うんスけど、
オイラが出ても……」
と、ミケさんにオイラの無力さを伝えようとするが、
ビキビキッ!と音が鳴りそうなキレギレの鋭い目で、
ミケさんが睨みつけてくる。
「……何とかするしかないんスよね……。
ああ……あの化け物G²と再戦とか、
死亡フラグとしか思えない……。」
嘆くオイラ……。
てか、これ、何て罰ゲームなのッ⁉
オイラが戦々恐々としていると、
「まあ、あのG²がヤベェ相手なのは、
分かってっからフォローは入れてやんよ。」
ケビンさんが小声でフォローの声を掛けてくれる。
「今のリーダーは何を言ってもダメだしね。
まあ、機体の修理と補給は任せてよ。」
ユリンさんも小声ながら、
親指を立て、にこやかに話してくれる。
「フェアタイディゲンの性能はボクらも分かっていますからね。ロクスリー君が撃墜されそうにならないようにできるだけフォローしますよ。」
マカロニさんも、優しい声を掛けてくれる。
「皆さん、感謝っス!」
嬉し涙を浮かべつつ、オイラも出来るだけの笑顔で皆さんに返す。
その時、
「ヌッ⁉
アルセカーナの町の方から、いくつか煙が上がっているぞッ⁉
野郎、ホントにドンパチ始めやがったか⁉」
ソルファージュのモニターの先の、
白煙を見咎めて、
バーダック艦長が驚きの声を上げる。
「とにかく町に入りましょう。
推測より、実際に見て知るべきです!」
マカロニさんが焦りながらも冷静に徹して言う。
「リーダー、アルセカーナの町に入りました。」
セリアさんがアルセカーナへの到着の旨を告げる。
「うぉッ⁉
何か、あちこちの建物が壊されているみてーだぞッ⁉
あちこちで煙が出ているぜッ⁉」
モニターの先の、白煙を上げる町の建物たちを見て、
ケビンさんも驚きの声を上げる。
「町の自警団のだったっぽいFGの残骸も、
転がっているわねッ⁉」
ユリンさんのその言葉通り、
モニターの先には、FGの残骸も転々としている。
マジですかッ⁉
これ、あのG²がやったんだよねッ⁉
こんな惨憺たる有様を作り出すGと、
また戦わないといけないとか、マジ、罰ゲームなんだけどッ⁉
「Gショップだったと思われる場所が、
重点的に襲われた様ですね。
どうも、ボクの推測が当たっていた様ですね。
フェアタイディゲンが町内のGショップを襲って、
補修パーツを強奪して、その際に、
町の自警団のFGと交戦。
そして自警団が敗北。
この残骸はフェアタイディゲンに負けた跡でしょうね。
で、フェアタイディゲンは、
今は、どこかに隠れて自己修復中。
と、いったところでしょうね。」
マカロニさんが冷静に分析する。
「とにかく、みんなで出撃やッ‼」
「あいさ、姐さん!」
「OK、リーダー!」
「了解です、ミケさん!」
「分りました、ミケさん!」
「ああ……無事に生きて帰れるんだろうか……?」
ミケさんの号令の下、出撃するオイラたち。
「町のジャミングで通常センサーは使えんけど、
熱感知センサーで1機だけ他と離れとる奴が、
あのG²やッ‼
町の自警団のFGは、
もう粗方やられたみたいやし、
居るとしても、普通は固まって集団で行動するはずやッ‼
そやから、1機だけ他から離れて居る奴を探すでッ‼
みんな散開ッ‼
……と、言いたいところやけどやッ‼
正直、1対1で、あのG²の相手は厳しいッ‼
うちのとこにはケビンとユリンが来いッ‼」
「了解だ、姐さん!」
「OKよ、リーダー!」
ケビンさんとユリンさんが、ミケさんの指示に応える。
「ソルファージュも、うちらと同伴やッ!!」
「了解だ、ミケ!」
バーダック艦長もミケさんに応える。
「マカロニは、ロクスリー君とトニー君を連れて別ルートから探索やッ‼」
「了解です、ミケさん!」
「マカロニ!
ロクスリー君とトニー君は新人や!
アイツに逢っても、まずはうち等に連絡して招集!
無理に先行して戦わんように!
逆に、うちらが先にアイツを見つけた場合は先に斬り込んどく!
ロクスリー君とトニー君は、
マカロニの指示を良う聞きやッ‼」
「分りました、ミケさん!」
「了解っス、ミケさん!」
「ほな、みんな、行くでッ‼」
ミケさんの号令一下、
2つのチームに分かれて探索に従事するオイラたち。
ミケさんたちと分かれ、
しばらく進むと他のところより少し大きめの建物から、
白煙が上がっていた。
「Gショップだったらしき建物から煙が上がっていますね」
トニーさんが、
白煙の上がるGショップを見咎めて言う。
「こ……これはッ⁉」
急に、マカロニさんが驚きの声を上げるッ⁉
「うぇッ!? もしかしてG²が居たのッ⁉」
怯えるオイラ。
「メーカー品のマガジンはゴッソリ奪われているのに対して、
安価なバルク品のマガジンには全くの手付かずですッ‼
どうやら奴は相当なグルメの様ですッ‼」
マカロニさんが、驚愕の声で言って来るが、
「いやッ!
そんなどうでもいい事で、いちいち驚かれてもッ⁉」
驚くとこ、オカシクないッ⁉
それを尻目に、
「……………………………………………………。」
トニーさんが、通信で、
マカロニさんを無言で見つめ続ける。
「何なの、この無言の間ッ⁉
トニーさん、怖いッスよッ⁉」
何で、ここで無言なのよッ⁉
もっとツッコミ入れるとこなんじゃないのッ⁉
「アッ⁉
あっちの方でもGショップだったらしき所から、
煙が上がっていますッ‼」
トニーさんが言いながら、そっちに進む。
「アレッ⁉ オイラのツッコミはスルーで、そっちに行っちゃうのッ⁉」
ダメ元で再度ツッコミを入れてみる。
「ああぁ……ッ⁉」
マカロニさんが、また驚きの声を上げる。
「今度は何なのッ⁉
今度こそG²が居たのッ⁉
それとも、またどうでも良い事で驚かれているのッ⁉」
嫌な予感を感じつつも、一応、ツッコミを入れてみる。
「メーカー品の装甲板はゴッソリ無くなっているのに対して、
安価なバルク品の装甲板は、これまた全くの手付かずですッ‼
奴はグルメなだけではなくオシャレさんでもある様ですッ‼」
マカロニさんが声を大にして驚きを伝えて来る。
「また、そういうとこなのッ⁉
明らかに驚く点とか、
探している点とかがオカシイよねッ⁉」
何で、そんなどうでも良い所を探しているのよ、アナタはッ⁉
そして、
「……………………………………………………。」
また、通信で、トニーさんが、再度マカロニさんを無言で見つめ続ける。
「だから、この間は一体何なのッ⁉
トニーさん、それ怖いってばッ⁉」
無言の圧力、マジ怖いんですけどッ⁉
「オイ、マカロニら! 良う聞き!」
いきなり、今までの分隊通信用のパーティーチャンネルではなく、
全体通信のチームチャンネルで、ミケさんが声を掛けて来る。
「何なのッ⁉
ミケさんまで何か変なボケとかやって来ているのッ⁉
てか、こっちのパーティーの人たちって本来はツッコミ属性よねッ⁉
何で、みんな、ボケに走っていて、
オイラが一人で捌いているのッ⁉
明らかにオカシイし、役者不足だよねッ⁉」
オイラが激情の捲し立てると、
「うわッ⁉
何やねん、ロクスリー君、いきなりッ⁉
いや、それよりッ‼
フェアタイディゲンをこっちで補足したから、
地図データを送るッ‼
君らも早よ来いッ‼
じゃあ、こっちは先に仕掛けとくッ‼
後の通信は、合流してからやッ‼ ほんならなッ‼」
と、ミケさんが言って、通信を切る。
「あ~、良かった。
ミケさんまでボケに走っていたらどうしようと、
……って、全然良くないよッ‼
このまま地図データ通りに行ったら、
またあの化け物G²と、
遭遇してデッドループだからッ‼」
あの化け物G²と、
またクロスコンバットとか、マジ勘弁なんだけどッ⁉
「大丈夫ですよ、ロクスリーさん。
フェアタイェイゲンは、
Aトライバレルを盗んで所持してるとはいえ、
他は汎用兵器のみの武装です。
A・Jの性能で、
実弾兵器と格闘兵器は切り払われる危険がありますが、
遠距離からのレーザー兵器なら、
相手の虚を突いてアウトレンジから一方的に攻撃できます。
レーザー兵器でも、
切り払いで軌道を逸らされる事もありますが、
先日の様に、四方から同時にレーザーを撃てば攻撃を当てられますよ。
ロクスリーさんのゲズC²には、
遠距離から届くレーザー兵器がありませんし、
ボクのアウスブレンデンは、実弾兵器ばかりな上、
Gではなく、戦闘機なので、
武装に互換性が無い為に武装をお貸しできませんが、
マカロニさんのフェストゥングの、
遠距離用レーザーキャノンを借りて運用されると良いと思います。
せっかくFGと、
KGで互換性があるのですし、
使わない手は無いと思いますよ?
マカロニさんには、
フェストゥングの肩の大型レーザーレールキャノンを、
使って貰えれば、
マカロニさんもアウトレンジからレーザーで攻撃できますし、
試さない手は無いと思います。
少なくともボクが同じ立場でしたら、そうしますしね。」
トニーさんが冷静に状況を分析し、提案して来る。
「素晴らしいアイデアですね!
ボクもそのアイデアに賛成です。
では、遠距離用大型レーザーキャノンを渡しますね。
ハイ、どうぞ、ロクスリー君。」
マカロニさんが遠距離用大型レーザーキャノンを渡して来る。
「アレッ⁉
二人とも、ボケ倒し続けるんじゃなかったのッ⁉
ここに来て、いきなり、いつも通りの解説サポートキャラに戻るのッ⁉
さっきまでのボケまくりから、
いきなり的確なアドバイス係りに戻られて、
ハッキリ言って困惑するんだけどッ⁉ 何、コレッ⁉」
困惑するオイラ。
「何を良く分からない事を言っているのですか?
早く装備して下さい。」
マカロニさんが急かして来る。
「ロクスリーさん、早くしないとまたミケさんにどやされますよ?」
トニーさんにも急かされるオイラ。
「あ……もう二人とも、ボケとか変な間とかは辞めたのね。
……って、確かに早く行かないとミケさんに怒られちゃうよ!
でも、またデッドループは嫌だぞ!
マカロニさん! トニーさん!
オイラ、絶対にアウトレンジからからだけじゃないと撃たないっスからねッ⁉
あの化け物G²の射程に入るのは勘弁よッ⁉」
懇願するオイラ。
もう痛いのは嫌なのッ‼
「いまいち、言っている事が分かりませんが、
無理をして前線に出る必要は無いと思いますよ。
カベ役には恐らく、
ミケさんとケビンさんたちが既になってくれていると思います。
ユリンさんは恐らく中衛からのサポート中でしょうね。
そして、ソルファージュは後方からの支援射撃中だと思います。
ですから、
ボクたちは着き次第、
ソルファージュやユリンさんたちと連携を取って、
こちらもソルファージュと共に支援射撃をし、
それに徹するのが良いでしょうね。」
トニーさんが、冷静に状況分析して案を述べる。
「それが妥当なところでしょうね。
それなら、仮に当てられなくても、
牽制射撃となって、
ミケさんたちを援護できますしね。」
マカロニさんも、トニーさんの案に賛同する。
「おお!
アウトレンジから撃つだけな上に、
外しても良いんスね!
それ良いっスね!
その案で行きましょう!」
オイラも賛同の声を上げる。
遠距離から撃って、外してもOKなんて、最高だよねッ‼
「では、2人とも、
ミケさんが送ってくれた地図ナビゲート通りに、
ボクに続いて進んで下さい。」
マカロニさんが言い、
3人で、送られた地図ナビゲート通りに進む。
「でも、トニーさん、頭良いっスね。
フェストゥングの装備を借りて、
ゲズC²で使うってのは、
オイラじゃ絶対に思い付かなかったっスよ。
言われてみればGって、
ほとんどみんな互換性があるんスから、
できるよねって思うけど、そこに辿り着けるのが凄いっスよ。
目からウロコって感じっしたよ!」
トニーさんに賞賛の言葉を掛けてみる。
「そんな、たまたま思い浮かんだだけですよ。
そんなに褒めて頂だけて恐縮ですし、
何も返して上げられませんし、ちょっとムズ痒くなりますね。」
トニーさんが照れながら、鼻の頭を掻きつつ言う。
「と、話は、そこまでですよ!
ミケさんたちとフェアタイディゲンが見えて来ました!
ここからはパーティーチャンネルではなく、
チームチャンネルに通信を切り替えます!」
マカロニさんが鋭く言って来る。
「了解っス、マカロニさん!」
「分りました、マカロニさん!」
了承の旨を伝える、オイラとトニーさん。
到着したのは、住宅地を抜けて、ぽっかり空いた様な広い敷地の公園。
その中の、フェアタイディゲンが身を潜めていたっぽい、
Gガレージ…。
外部から公園に来た客のGを、
一時停めるスペース、
…っぽい建物が白煙を上げている。
フェアタイディゲンの奴、
隠れていたところを、
ミケさんたちに燻し出されたんだ!
既にフェアタイディゲンと戦っていた、
ミケさんたちのKGは、
またも、オイラが見てないうちに被弾していた様で、
ラーゼンレーヴェがアリーエルスラスターのメイン部とも言える脚部を、エンジェルシードが補給装置を積んだバックパックを損傷しているッ!?
うがッ⁉ 各機、一番痛いところを叩かれているッ⁉
フェアタイディゲンの奴、こっちの急所を学習しているんだ!
被弾してないのは、タイニーダンサーだけの様で、
ソルファージュも、甲板が、一部損傷している!
フェアタイディゲンの方は、
ミケさんにやられた胸部コックピット部分の損傷個所が、
半田ゴテで無理やり溶接したみたいな感じで、
ジーナのっぽい装甲に変わっている。
本当にマカロニさんが予想した通り、
自己修復したんだ、アイツ!
元から頭部がジーナ頭なせいで、
パチモノ臭かった外見が、更にジーナに近くなって、
よりパチモノ臭さがしているけど、あの見た目に騙されちゃダメだ!
ラーゼンレーヴェやエンジェルシードにダメージを負わすくらいの超性能!
油断しているとオイラなんて、この前の様に一瞬でやられる!
オイラ、今回は、後衛から一歩も前に出ないぞ!
「ミケさん! マカロニ隊です! 到着しました!
今から、ソルファージュと連携を取って後方から支援射撃を行います!
こちらからのレーザー射撃に当たらない様に注意しつつ、
フェアタイディゲンを引き付けて下さい!
バーダック艦長! 連携、お願いします!」
マカロニさんがテキパキと報告をする。
「おお! 了解や、マカロニ!
よし、ユリン! 散開!
このG²相手やと、
味方の応急修理で固まるのも危ない!
オッサン! マカロニたちと連携頼むで!
ケビン! 引き続き、うちと一緒に、この赤いのを追い詰めるで!」
ミケさんも、テキパキと指示を出す。
『了解!』
ミケさんの指示に、みんなが応える。
「セリア! 3連装大型レーザーランチャー、
垂直、水平ミサイル、掃射!」
「了解!
3連装大型レーザーランチャー、
垂直、水平ミサイル、
発射します!」
ソルファージュからの艦砲射撃が、
フェアタイディゲンに向かって放たれる!
しかし、フェアタイゲンが、
スラスターを噴かして加速し、難なく回避する!
流石に、戦艦の攻撃は回避するか!
「アウスブレンデンには実弾兵器しかありませんが!」
トニーさんが、キャノン砲を放つ!
そのキャノン砲を、相変わらず、
化け物染みた反応速度で
切り払うフェアタイディゲン!
更に、
背部垂直ミサイルを、
お釣りとばかりに、
アウスブレンデンに向けて放つ!
「クッ…!」
何とか回避しようとするが、
数発が胴体部に着弾し
アウスブレンデンが失速する!
「トニーさん⁉
クッ…でも…オイラだって牽制射撃くらい!」
オイラも、マカロニさんから借りたばかりの、
遠距離用大型レーザーキャノンを放つ!
難なく回避するフェアタイディゲン!
でも!
それで、コンマでも隙ができただろ?
だったら!
「フェストゥングの砲撃、舐めて貰っては困りますね。」
マカロニさんのフェストゥングの肩の大型レーザーレールキャノンが、
フェアタイディゲンの右肩部を掠める!
オシイ! でも、この感じなら、今回はイケルぞッ‼
「ケビン! ユリン! 同時攻撃で行くでッ!」
「あいさ、姐さん!
脚部のアリーエルスラスターが使えなくても!
燃費度外視だ! 行くぜ! オサフネ!」
ラーゼンレーヴェがオサフネを振りかぶる!
「ユリンちゃん! 砲撃! 行っくよ~!」
エンジェルシードがLトライバレルからレーザーを放つ!
「1機ずつやったら、直ぐに捌かれるやろうけど、
この連撃で! トライバレル! レーザーソードや!」
トロイメンカッツェのKG部隊の連撃が、
フェアタイディゲンを襲う!
しかし、まず、
ラーゼンレーヴェのオサフネに、
フェアタイディゲンが艦内から奪った、
Aトライバレルの、
レーザーソードの刃を滑らせ、
躱し、いなす!
もう、切り払うまでもなく、
軌道を読んで逸らしたっていうの⁉
そのまま、ラーゼンレーヴェが蹴りを叩き込まれ、吹き飛ばされる!
「グッ…ッ⁉ クソッ! コックピットが揺れやがるッ⁉」
更に、エンジェルシードの、
Lトライバレルのレーザーを、
盾防御で抑えつつ、
Aトライバレルのレーザーを、
エンジェルシードの右腕部に、
お釣りとばかりに当てて返す!
「あうッ⁉
スーパー砲撃超人のユリンちゃんが、
逆に砲撃を食らっちゃっているッ⁉」
そのままの流れる様な動きで、
Aトライバレルの先端にレーザーソードを形成し、
タイニーダンサーのレーザーソードが振るわれる前に、
脚部のグレネードを目くらましにしつつ、
頭部バルカンを、キッチリ、タイニーダンサーの胴体部に当ててくる!
「クッ…なんちゅぅ反応速度やッ⁉
それに、こっちの動きを学習しとる!
こら、長期戦はヤバい、一気に決着付けるで!
みんな、この前と同じで行く!
四方から、1、2の、3で……」
と、そこで、ミケさんが指示を言い終わる前に、オープンチャンネルで、
「その機影たちッ‼ 見忘れはせんぞッ‼
アヴァドンのミケの、
極悪TSチ-ムの、
トロイメンカッツェたちだなッ‼
我等の町に、
今度はどんな災厄を行いに来たッ‼」
と、アルセカーナの自警団とおぼしき人が、
オイラたちに向けて通信して来たッ⁉
「見たら分かるやろッ⁉
不甲斐ないオマエらに代わって、この町を襲っとる、
この赤いG²と戦ったっとるんや!
今回はオマエらと敵対するつもりも何かを奪うつもりもない!
まあ、もちろん、
前にオマエらから奪ったFGを、
売った金を返すつもりもないけどな!
そやけどや!
G²相手に、
オマエらやったら荷が勝ち過ぎとる!
こっちは個人的に、
あのG²に恨みがあるんや!
オマエらには何もせえへんし、
あのG²はキッチリ倒したるさかい、
オマエらは黙って見とき!
既にアイツにボロ負けしたっぽいオマエらからしたら、
渡りに船やろうがッ⁉」
フェアタイディゲンが放つ、
垂直ミサイルを、
空中で、後方に、高速飛行で避けつつ、
ミケさんが巻くし立てる!
「クッ……確かに、それが本当なら、我々としても渡りに船だ。
だが、オマエは、アヴァドンとまで呼ばれるほど、
貪欲に強奪を繰り返す極悪人だ!
それに、オマエたちは、既に1度、
我々からFGを強奪した過去がある!
そんなオマエたちをすんなりとは信じられんな!」
尚も食い下がる自警団の方。
このクソ忙しい時に、勘弁して欲しいんスけど……ッ⁉
「いちいち食い下がるなぁ……。
もし、うちらが本当に強奪しにこの町に来たんやったら、
このG²が、
この町を襲っとる混乱に乗じて、
自警団倉庫やGショップを襲って、
既にガッポリ奪った挙句に、もうとっくに逃げとるやろがッ⁉
逆に言うと、ここで、こうして、
この赤いG²と未だに戦っとる時点で、
うちらが今はこの町から強奪する気がないんが、
普通に考える頭があるんやったら分かるやろが!
いちいち食い下がって邪魔せんと、そこで大人しく黙って見とき!
それと、本当に邪魔やから、
うちらが有利になったらオマエらも助かるんやから、
センサージャマーも切って貰おうかッ⁉」
しつこく食い下がる自警団の方に、ミケさんが鋭く切り返す。
「クッ……確かに理に適っている……。
分かった。こちらとしても、これ以上の損害を出したくはない。
オマエたちが、
その赤いG²を倒して、
大人しくこの町から出て行って貰えれば言う事はない。
センサージャマーも、ここは切ろう。
だが、少しでも、おかしな挙動をすれば、
後ろから狙い撃つと覚えておけ!」
と、自警団の方が言い、オープンチャンネルの通信を切る。
直後、センサージャマーが解除されたみたいで、
センサーにフェアタイディゲンと、
自警団たちのFGの信号が映る。
「フンッ! 始めっからそうしとったら良いんや!
よし! 話は付いた!
後は、
この赤いのを完膚なきまでに、
メッタメッタにブッ壊すだけや!」
ミケさんが、
フェアタイディゲンにトライバレルのバレットを、
牽制に放ちつつ、
強気に言い放つ。
「この化け物G²だけじゃなくて、
この町の自警団とも戦う事になったらどうしようと思ったっスけど、
話が上手くまとまって穏便に済んで良かったっス。」
ホッと胸を撫で下ろすオイラ。
「よし、ほなら、さっきの続きや!
この前と同じで、1、2の、3で、みんなで四方からレーザー射撃や!」
『了解!』
ミケさんの号令の下、みんなで、フェアタイディゲンの四方を囲む!
「いくで、みんな! 1、2の、3ッ‼」
最初に飛んだソルファージュの3連装大型レーザーランチャーを、
フェアタイディゲンが、スラスターを噴かし、回避する!
次弾で飛んだアウスブレンデンのキャノン砲を切り払う!
更に、
オイラの放った遠距離用大型レーザーキャノンが、
空を切ったところで、
四方からミケさんたちトロイメンカッツェの、
4機のKGのレーザー攻撃が、
フェアタイディゲンを襲う!
コンマの差で、次弾で来た、
タイニーダンサーのレーザーを切り払って、
軌道を変えて回避し、
ラーゼンレーヴェのAトライバレルのレーザーを、
盾防御というか、
盾で防ぎつつ、
盾を滑らせて躱す!
更に、エンジェルシードの、
Lトライバレルのレーザーの一撃を、
背部垂直ミサイルで。
迎撃して軌道を逸らしたッ⁉
レーザーをミサイルで軌道を逸らすなんて、
どういう防御性能なんだッ⁉
でも、流石のG²でも、そこまで!
マカロニさんのフェストゥングの、
大型レーザーレールキャノンの一撃を、
最後のあがきで頭部バルカンで迎撃しようとするが、
流石に、これは通るッ!
フェアタイディゲンの頭部に着弾し、頭部が破裂するッ!
「ほんなら、そろそろトドメや!」
タイニーダンサーが、
トライバレルを左腰部にマウントし、
「フランメ! 二刀流や!」
タイニーダンサーの内腕部から、
短剣の柄だけのモノ、
フランメと呼ばれた短剣型レーザーセイバーと思われるモノを、
左右で1本ずつ出し、両手に1本ずつ握る。
「必殺! 剣の舞や!」
タイニーダンサーが、
短剣の柄を両手にそれぞれ逆手に持ち、
空を飛びつつ、機体の両腰の位置に添えて、
時計で言う2時の方角より突撃し、
反時計回りに回りつつ、
下方8時の方角に右手で横周りに斬る!
「ほうらッ!」
更に、地上に降りてステップを踏み、
フランメを両腰に添えた逆手持ちのままで、
踊る様に、そのまま反時計回りに回転して、
更に左手で横周りに斬り!
「そらそらぁーッ‼」
今度は回転方向を反対に変えて、
左腰に添えた左の逆手に構えたフランメで、
時計回りに回りつつ左下から右上に斬り!
「これが…ッ!」
更に踊る様に回転して斬っている途中で、
右手のフランメを腰に添えるのを辞め、
右手をフェアタイディゲンの居る方角に持って行き!
フェアタイディゲンを真正面に見据える位置まで回転し、
そこから左手のフランメも腰に添えるのを辞め、
下に潜らせる様に、6時の方角に回し、
更に3時の方角…右方向に回して、右中央に配置し!
「ホンマの…ッ!」
そこから右手を逆手のまま、
左下から右上に、斬り上げ!
同時に、左手も逆手のままで、
右中央から左中央に、斬るッ!
剣の舞のフランメの連撃で、
フェアタイディゲンの身体が、
大ダメージに悲鳴を上げる様に、よろけッ‼
「ドヤ顔や…ッ‼」
最後に、上方から、逆手のまま両手で、
下方に×の字に斬り抜く!
そして、その斬撃の嵐の後に、
ドヤッ!と言わんばかりに、決まったという顔をする‼
既にボロボロだったフェアタイディゲンの胴体部が、
×の字に切り裂かれ、
更にバラバラになるッ‼
これで決まりだッ‼
「やった! やったでッ‼ やったったでッ‼
これでアイツのせいでお釈迦にされた、
FGたちの分のサイフも浮かばれるッ‼
やった! やったったんやッ‼ うおっしゃーッ‼」
歓喜の声を上げるミケさん。
しかし、そこで、
ミケさんのタイニーダンサーに、
バズーカとミサイルが降り注ぐッ⁉
虚を付かれた為、
PBLHを搭載した左手が被弾してしまうッ⁉
うがっ! 何なのよ、一体ッ⁉
「な……何やッ⁉」
驚くミケさん。
そりゃそうだよ! オイラも驚いているよ!
「ちょっ……、
フェアタイディゲンを倒したのに、
どこから攻撃が来たのッ⁉」
戦々恐々とするオイラ。
「やはり図り事をしていたな、アヴァドンッ‼」
アルセカーナの自警団の方たちが言いつつ、
FGに乗って、
バズーカやミサイルを掃射しつつ、
迫って来るッ⁉
「えっ、何でッ⁉
オイラたち、あの人たちの代わりに、
フェアタイディゲンを倒して、
この町を救った、いわば英雄よッ⁉
それが何で攻撃されているのッ⁉」
驚きの展開に、疑問を叫ぶオイラ!
「うちにも分からんぞッ⁉」
ミケさんも、謎の超展開に、
驚きながら叫ぶ!
「でも、何か、凄く敵意を向けられているわよねッ⁉」
ユリンさんも、驚きのままに、
今の状況を伝えてくる!
「クッ……一体どうなってやがんるだッ⁉」
いつも沈着冷静な、
バーダック艦長すら、驚きの声を上げる!
「他の地から、
この町に着た流しのTHから、
オマエたちのGSから、
さっきの赤いG²が、
出撃するのを見たと聞いたぞ!」
と、アルセカーナの自警団の団長とおぼしき方が言って来る。
「うあっちゃー……。」
ケビンさんが、嘆きの声を上げる!
「何で、そんなピンポイントなとこ見ているのッ⁉」
マジで、何でよッ⁉
オイラの叫びを無視して、
「きっと、さっきの赤いG²と戦っていたのも、
八百長の茶番劇だったのだろうがッ⁉
我々が油断したところでGを強奪する算段だったのだろうがッ⁉
姑息な真似をしおってッ‼
そんな事だろうと始めから思っていたぞッ‼
騙し通される前に気付けて良かったわッ‼
アヴァドンのミケと、その手下ども!
この町に、1度ならず2度も強奪に来おって!
我々を謀り、
この町を襲った報いを受けるが良い!
例えオマエたちが高性能なKG使いたちだとしても、
その腕や足の一本だけでも折ってやるぞッ‼」
と、自警団の団長と思われる人物が捲くし立てる!
「強烈な勘違いだけど、
私たち、叩けばホコリの出てくるとこだし、
確かに、この町も前に1回強奪しに来たものね。
リーダー、これどうするの?」
「えーい、しゃーない!
売られたケンカは買う主義や!
こうなったらコイツらの誤解をホンマにしたる!
コイツら殲滅して、
自警団倉庫から奪えるだけFGを奪ったるッ‼」
ヤケクソ気味に、ミケさんが言い放つ!
「ちょッ⁉
あのG²との戦闘で消耗しているのに、
更に自警団と戦うとか、マジ勘弁なんスけどッ⁉」
余りの無謀な展開に、涙目で叫ぶオイラ!
「ロクスリー君、ちなみに言っとくけど、
前にウチらがコイツらからFGを強奪する時に、
コイツら……このアルセカーナの町の自警団たちも下調べしたんやけど、
キミの居とったファトス村の自警団と同じで、
コイツらも新入団員たちをホルモンしとったからな?」
ミケさんが、あえて敵味方オープン通信のオープンチャンネルで、
残酷にも告げる。
「うぇッ⁉」
戦慄の声を上げるオイラ。
「ロクスリー君ってリバOKっぽいから、
もし彼らに負けて捕まりでもしたら、
人気者になりそうだね!」
と、ユリンがニコニコ笑顔で、凄く楽しそうに言って来る。
「ちょッ⁉ マジそんなの勘弁なんだけどッ⁉」
そんな展開、怖すぎるわッ‼
そのやり取りを見ていたアルセカーナの自警団の団員たちが、
オープンチャンネルで、次々に赤らめた顔を見せるッ⁉
それが、引き金になった。
「何を……」
ゲズC²の脚部のホバーをオフにし、
ライドブレードを稼動させ、舗装された市街地の道を、
ブースターを噴かせ、一番近い自警団のジーナに一気に駆け寄り、
レーザーソードで斬り付け、戦線から吹き飛ばす!
「顔を赤らめて……」
さっきフッ飛ばしたジーナの横に居たガトナスを、
スタンアンカーでスタンさせる!
「やがんだ、テメェらッ⁉」
スタンさせたガトナスの更に横に居たザヌスを、
レーザーガトリングガンで攻撃する!
「そら、こうなったら、もちろん、ブッ放するわッ‼」
叫びながら、
同じザヌスに向かって追撃で、
マカロニさんから借りた、
遠距離用大型レーザーキャノンを撃って撃墜する!
そして、距離を取って、
マカロニさんのフェストゥングと、
トニーさんのアウスブレンデン、
ユリンさんのエンジェルシードと、
バーダック艦長たちのソルファージュたちから、
援護防御を取って貰える位置までライドブレードを稼動させ、
火花を散らしながら移動する!
「スゴイ……ロクスリーさん……。」
感嘆の声を漏らすトニーさん。
「ヒュー! やるじゃねぇか兄弟!」
ケビンさんが口笛を吹きつつ賞賛する。
「いつも縮こまってやがるが、やれば出来んじゃねーか!」
バーダック艦長も、賞賛の言葉を述べる。
「火事場のバカ力というモノかもですね。よっぽど嫌だったのでしょうね、アレ。」
マカロニさんが中指でメガネをクイッと上げながら冷静に言う。
「でも、
ムサ苦しい自警団の人たちに、
無理やりホルモンされるロクスリー君ってシュチエーションも、
私的には断然アリよ?
ハァ…ハァ…。
ヤバッ⁉
ちょっと想像したら萌えて来ちゃった……ッ‼」
と、鼻血をボトボトと垂れ流しながら、
恍惚の表情で言うユリンさん。
「ネェーよッ‼ 怖ぇーよッ‼
それだけは絶対にゴメン被るッ‼」
マジ、そんなの、勘弁ッ‼
「ハッ⁉ 出してない! 出してないよ⁉
花も恥じらう純情乙女のユリンちゃんが、鼻血なんて出してないよッ⁉」
だから、何でアナタは、それで鼻血がバレてないと思えるのッ⁉
「えーい! 辞めんか、ユリン!
でも、ようやったでロクスリー君!
これで、自警団たちは浮き足立ったで!」
と、ユリンさんを咎めつつ、
オイラを労うミケさん。
「クッ……。
ちょっとタイプだから、
オープンチャンネルのモニター越しの姿に気を取られたが、
もう手加減はせんぞ!」
自警団の団長さんっぽい人が、
ちょっと頬を赤く染めながら言って来る。
「何、ツンデレっぽくなってんのッ⁉
そういうの、マジ辞めてッ‼」
フェアタイディゲンに迫られた時よりも、
恐ろしい気配を感じて叫ぶオイラ。
この自警団たちからは、ドス黒い畏怖を感じるッ‼
「とにかく見た目がゲズだからというところでも油断したが、
逆に、今ので、そっちがエースと見た!
となれば、外張りから埋めるべきだ!
みんな! 他のKGから潰して追い詰めるぞ!」
と、自警団の団長さんが言い放ち、
『了解です、団長!』
と、それに応える団員の方々。
「ええい! 相手はやる気マンマンや!
なら! こっちは、相手を完膚なきまで潰すだけや!
みんな、売られたケンカは買うで‼」
と、ミケさんが言い放つ!
その言葉が、開戦の合図となった!
「いくぞ、皆のモノ!
KGたちに向けて一斉掃射!」
自警団のFG部隊が、
バズーカやレーザーライフルや垂直ミサイルなどを、
一斉に放つ!
さっきの自警団の団長の言葉通り、
オイラを無視して、ミケさんたちのKG部隊に、
その照準を絞って放って来る!
「クッ…脚部のアリーエルスラスターが死んでいるから……ッ‼」
いつもなら、アリーエルスラスターの超加速で、
難なく回避するラーゼンレーヴェだが、
脚部のアリーエルスラスターを、
フェアタイディゲンに損傷させられ使えない為、
苦しげに盾で防御する!
「空を飛べると言っても、
オレたちザヌス隊のガトリングの掃射の前では!」
更に、ザヌス隊のレーザーガトリングガンが、
中空のタイニーダンサーに掃射される!
「クッ……さっきの不意の一撃で、左手を損傷したから、
PBLHが使えへん……ッ⁉」
PBLHを使えない為、
僅かだが胴体部の装甲にガトリングが通る!
「そこの鈍重KGコンビ!
オレたちがその首、貰い受ける!」
エンジェルシードとフェストゥングに向かって、
ゲズとジーナがバズーカとレーザーライフルを、
掃射しつつ、迫り、
ガトナスがレーザーソードを構えて突撃して行く!
「クッ……こんなに近づかれたら……ッ⁉」
「マズいですね……。」
フェアタイディゲンと戦っているところを、
背後から自警団に襲われたせいで、
いつもなら得意の砲撃で敵の接近を許さない、
エンジェルシ-ドとフェストゥングが、
至近距離から襲われる!
「クッ……ユリンちゃん、
近接格闘戦だけは苦手なのに……ッ‼」
エンジェルシードが、
Lトライバレルの先端にレーザーソードを形成し、
自警団のガトナスに振るうが、至近距離なのに、丸で当たらないッ⁉
ユリンさんの叫びの通り、
ユリンさん、格闘戦は不得手なんだッ‼
そのユリンさんのエンジェルシードに、反撃とばかりに、
「喰らえ! 鈍重KG!」
ガトナスが蹴りを繰り出し、
エンジェルシードがよろけたところに、
スタンアンカーを振るって来る!
そのスタンアンカーを、ユリンさんが、レーザーソードで何とか切り払う!
「チッ! だが、これで!」
更に、ガトナスが連撃で、
レーザーソードを振るって来るが、
その攻撃を、ユリンさんが、切り払って回避する!
アレ⁉ ユリンさん、切り払いは、メチャ上手いぞッ⁉
そのままの勢いで、
エンジェルシードがレーザーソードを振るうが、
何故か、あさっての方向に放たれ、むなしく空を切る!
この人、
格闘兵装で防御するのはメチャ上手いけど、
攻撃するのは壊滅的に苦手なんだ!
「クッ……ユリンちゃん、大ピンチ! 誰か、ヘルプ~ッ‼」
ユリンさんが、涙目で、救援コールを送ってくる。
「ボクもショートレンジは得意ではないのですがッ!」
マカロニさんのフェストゥングが、
ショートレンジ用の
90mmパラベラム機銃を、
エンジェルシ-ドを襲うガトナスに放つ!
いつものフェストゥングの砲撃から比べれば、
一見、ショボい攻撃に見えるけど、
軽装甲のガトナスにとっては脅威の攻撃!
「クッ……ッ! 弾幕が厚いッ⁉」
胸部装甲を撃ち抜かれ、
たまらず後方に下がるガトナス!
「ユリンさん! マカロニさん! 援護します!」
トニーさんのアウスブレンデンが、
中空からグレネードランチャーを掃射する!
「オイラだって、牽制射撃くらい!」
垂直ミサイルを展開しつつ、
大型バズーカを掃射!
ガトナスの他に迫っていたジーナやゲズの部隊も、
オイラたちの射撃を嫌って後方に退避する!
「みんな、ナイス! アリガトね!
そこのガトナス! よくもボコってくれたわね!
ユリンちゃんから距離を取るなんて、
叩いてくれって言っている様なモノよ!
その位置は、ユリンちゃんの十八番なんだからッ‼」
ユリンさんの叫びに呼応して、
エンジェルシードのLトライバレルのレーザーの一撃が、
ガトナスの脚部を襲う!
「グッ……足をやられた!」
呻くガトナスのパイロット!
「足をやられた格闘戦機体くらい、オイラでも!」
オイラの遠距離用大型レーザーキャノンの一撃が、
ガトナスの胴体部を貫く!
「クソッ! だ…脱出するッ!」
ガトナスの人が脱出ポッドで逃げる!
「スーパー砲撃超人ユリンちゃん! 本領発揮! 砲撃開始~!」
ユリンさんのLトライバレルのバレットとレーザーが、
交互に放たれ、
距離を取ったゲズやジーナの腕部や脚部に炸裂する!
これは行けるぞ!
「ケビン!
長期戦は、損傷している、うちらやと不利や!
アレ行くで、アレ!」
「了解だ、姐さん!」
脚部を損傷し、
脚部のアリーエルスラスターを使えず、
苦戦していたラーゼンレーヴェと、
左手を損傷し、PBLHを使えず苦戦していたタイニーダンサーが、
敵陣の中央に突入して集まり、トライバレルを構え、背中合わせになり、
『合体攻撃! ガンスリンガーパレード!』
2機揃ってローリングしながら、
チャージした偏向レーザーを自警団たちに向かって撃つ!
タイニーダンサーたちを襲っていたザヌス部隊やゲズやジーナ部隊が、
見る見る被弾して行く!
「クッ……何て威力のパルスレーザーだッ⁉」
隊長機の角突きのザヌスが吠える!
最初はフェアタイディゲン戦の損傷で苦戦したけど、これなら行ける!
このまま畳み掛ければッ!
そこで、
「リーダー、3時の方角から、未知の機体反応多数!
こちらに向かって来ます! 数、およそ、50!」
セリアさんが無茶苦茶な報告をして来たッ⁉
「ご…50ッ⁉ なに、その大部隊ッ⁉」
余りの無茶な数の報告に、
戦々恐々とするオイラ。
「未知の反応が50やとッ⁉
1部隊で、それだけの数を揃えられる部隊っちゅうのは、
今のティアナやと1つだけや!
クッ……厄介な奴らが来おった……。」
ミケさんには、何が着たのか、想像が付く模様。
と、そこで、3時の方角から、続々と、
FGにしては見かけない、
Gの大部隊が到着したッ⁉
その中の先頭に居たGのパイロットが、オープンチャンネルで、
「アルセカーナの自警団の皆様!
TSに襲われ、困難な状況ですね?
アナタたちが、我等、
新統合へ寄り添って頂けるなら、
そのTS、
我等が下し、アナタたちの町を救ってみせましょう!」
と、言い出したッ⁉
「な…何スか、この人たち⁉」
「新ティアナ統合軍……。
15年前の戦争を起こしたティアナ統合軍の流れを汲む、
現ティアナの最大勢力や。
その首領のグランヴァルニア=エルスターク将軍は、
洗脳めいた言を使って人民を誑かす。
その上で、町や村などへの、
TSなどの脅威で弱った人々と、
『寄り添う』と言って、
新統合の言う事を無理矢理に聞く様に、
洗脳して行くっちゅう性質の悪い勢力や!
洗脳した相手からは、
金と人的労力を、
搾り取れるだけ搾り取り、
更に、自分たちに都合よく従うモノたちには、
権力を与えて抑制するっちゅう、
悪辣な手段を使う!
現ティアナで最大の勢力であると同時に、
現ティアナで一番、性質の悪い勢力や!
Gの反応が未知で、
目視でも、あんな見た事ないGっちゅう事は、
あれが巷で噂されていた、
新統合の新型の、
量産型Gっちゅう事か……。
新統合は、
Gを自力で量産できる能力を得たっちゅう事や…。
なんちゅう厄介な……。」
ミケさんが苦しげに言って来る。
今のティアナでの最大勢力って、そんなヤバい相手なのッ⁉
ちょッ⁉ マジ勘弁なんだけどッ⁉
「クッ……、我々、自警団に、オマエたちの軍門に下れと言うのか⁉」
「そうではありません。
これは、あくまでも、
アナタ方が我等に寄り添って頂けた場合の話であり、
その場合、そのTSの脅威から、
アナタ方を庇護する用意が、
我等にはある…という話です。
そして、アナタたち自警団が、
我等の庇護下に入る事を、
了承するならば、
アナタたちには、特権を与えよう…という事です…。
食糧の優先確保権。住宅の優先確保権。
一般市民より1階級上の地位を与える…という用意が、
我等にはあるという事です…。お判りでしょうか?」
なッ…⁉ 何言ってんの、この人たちッ⁉
「その、寄り添うという行為をしなかった場合は?」
「それは、アナタたちが決める事です。
我等は、決して、
我等の庇護下に入る者を強要しません。
しかし、我等は、既に、
アナタ方、自警団の皆様が、
我等、新統合軍に寄り添って頂ける、
素晴らしい回答をして頂けるモノと、確信しております。
どうか、御英断を、お願いしたく存じます。」
「何、言っているの、この人たち⁉
口だけ上手いけど、買収話をする上に、
特権とかを餌にして、無理やり従わせようとしてるじゃん…ッ⁉」
新統合の余りの横暴ぶりに、思わず、目が点になるオイラ。
何なんだ、コイツらッ⁉ マジで無茶苦茶だッ⁉ 横暴過ぎるッ⁉
「クッ……では、我々自警団が、
そなたらに寄り添うという選択をした場合、
このアルセカーナは助けてくれるのかッ⁉
何か他の条件もあるのかッ⁉」
「条件というより、協力要請事項です。
アルセカーナのGショップなどの商店は、
売り上げ金の一部を新統合に寄付頂けるならば、
アナタ方、自警団の皆様に、広い敷地を与えます!
また、町長が、我等、新統合と、
蜜に連携して頂けると約束して頂けるならば、
町長や、自警団の方々、Gショップなどの方がtには、
今以上の地位と収入を与える事、お約束しましょう!
そう、自警団の皆さんにも、他と同様に、
我等とこれから、蜜に連携頂けるなら、
今以上の地位と収入は、確保しましょう!」
新統合の部隊長が、
メチャクチャな条件を、ツラツラと述べ終わるまで、
オイラは、目が点のままだった。
「何度も尋ねるが、貴殿らに寄り添わなければ、
我等は破滅…という事に相違ないか…?」
と、自警団の団長さんっぽい人が聞くが、
「それは、アナタ方が決める事と述べた通りです。
仮に、ここで、我等に寄り添って頂けなければ、
アヴァドンのミケに蹂躙……、
という未来が待ってますが、我らに寄り添って頂ければ、
回避できる脅威であると、我等は思っております。
その上で、更なる待遇も確保いたします……。
何を迷う必要がありましょうか?」
「無茶苦茶過ぎる!
ミケさんの名の通りを利用して不安を煽って、
自警団の皆さんに、
自分たち新統合に従わなければ破滅なんて条件、
飲まざるを得なくするなんて!
こんなの、話し合いって言っているだけで、
ただの脅迫だ!」
思わず、叫んでしまうオイラ。
だって、マジで無茶苦茶なんだもん!
コイツら、あのスナッチャーザインよりも、よっぽど性質が悪い!
「少年…。それは違いますよ?
我等は、物事の本質を、
分かり易く説いているだけですよ?
アルセカーナの自警団の方々にも、
アルセカーナの町長の方にも、
ひいては、アルセカーナの全住民の方々にも、
我等に寄り添って頂き、
より良い世界を、共に開拓して行きましょうと、
我等は、提案させて頂いただけ。
選ぶのは、アルセカーナの皆さんですよ?」
と、新統合の、
この部隊の隊長らしき、この人物が、
ニッコリと、清々しい笑顔で応えて来る。
その清々しさが、逆に毒づいて感じられて、本当に気持ち悪い…ッ‼
コイツらからは、ダメ人間なオイラでも、
相容れないモノを感じるぞッ‼
「クッ…分った。
我等、自警団は、
新統合の軍門に下ろう。
町長や、ショップ関係者にも、話は通そう。
だから、まずは、
この極悪TSの、
アヴァドン共を、倒してくれ!」
自警団の団長さんが、
新統合軍に、
かしずく意を述べるッ⁉
「了解ました。
この場は、我等、新統合にお任せ下さい。
TSの皆さん。
このSG、
ダギナスの性能……存分に味わって下さい…!」
そう新統合の部隊長が言ったかと思うと、
新統合のダギナスと呼ばれた、
SGとかいう、
新種のGたちが一気に爆ぜた!
水平ミサイルを乱射しながら、
右外腕部から、
ガトリングガンを放って接近してくるッ⁉
「クッ…!
脚部のアリーエルスラスターが死んでいるからッ⁉」
ラーゼンレーヴェが、襲い来るミサイルを、
オサフネで切り払いつつ、ガトリングガンを回避しようとするが、
脚部のアリーエルスラスターの超加速が使えない為、
回避し切れず、胴体部に、モロに当たるッ⁉
「グッ…! モロに食らってもうとる…ッ⁉」
中空を飛ぶタイニーダンサーも、
PBLHが使えないせいで、
ガトリングの掃射で、胴体部が、モロに被弾する!
「ケビン⁉ リーダー⁉
クッ……いま、ユリンちゃんが助けるからねッ!」
ユリンさんが、Lトライバレルのバレットを、
ミケさんたちを襲う群れに掃射する!
その攻撃で、ダギナスの先頭の数機が、
腕部や、脚部などを損傷するが!
「味方陣営への被害を確認! 応戦します!」
ダギナスの反撃のレーザーライフルの一撃が、
エンジェルシードを襲う!
「キャッ!?」
ユリンさんが、胴体部への攻撃を、右手で庇う!
しかし、無敵装甲のはずのエンジェルシードの右腕が被弾により、
大きく抉れる⁉
あのエンジェルシードの装甲を、あんなに損傷させるなんてッ⁉
あのレーザーライフル、トライバレル並みの出力なのかッ⁉
「食らえ! 鈍重KG!」
ダギナスたちが、エンジェルシードに、
追撃のレーザーライフルを放つ!
その攻撃を、
「ユリン!」
フェストクングが肩代わりし、レーザーを相殺する!
「マカロニ! サンキュ…」
ユリンさんが、感謝の言葉を掛けようとした、その刹那!
「レーザーを相殺できてもなぁッ!」
ダギナスが、両外腕部から、ガトリングをフェストゥングとエンジェルシードに掃射する!
「あぅッ⁉」
「クッ…こう実弾で来られては…ッ⁉」
レーザーなら無敵なフェストゥングも、実弾の雨あられで身動きが取れないッ⁉
タイニーダンサーが、ラーゼンレーヴェが、
エンジェルシードが、フェストゥングが、
ダギナスたちのガトリングの十字砲火で、
少しずつ、だけど、確実にダメージを蓄積していくッ⁉
「クッ……、
このままみんながやられるのを黙って見ているだけなんて嫌だ!
だったら、オイラが! オイラだってッ‼」
手近のエンジェルシードとフェストゥングに、
ガトリングを掃射するダギナスの部隊に、
垂直ミサイルを射出!
大型バズーカを乱射しつつ近づく!
ミサイルもバズーカも、ことごとく回避されるが、これでエンジェルシードたちへの攻撃が止んだだろ! だったら!
「ユリンさん! マカロニさん!
距離を取って砲撃を!
ここはオイラが盾に……」
と、指示を言い終わる前に。
「はしゃぐな! このカラフルゲズ如きが!」
オイラの攻撃をいなしたダギナスの部隊が、
あの超出力のレーザーライフルを、
ゲズC²の、
オイラが乗っている胸部コックピット部に直撃させたッ⁉
「思い出した。死ぬってこんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「ええい! 相手はやる気マンマンや!
なら! こっちは、相手を完膚なきまで潰すだけや!
みんな、売られたケンカは買うで‼」
と、ミケさんが言い放つ!
ここからなのッ⁉
メチャクチャ、前に戻っているんだけどッ⁉
でも、ここに戻ったって事は……、
新統合が来るだけで、
詰みって事なんだッ‼
「ミケさん!
ここに、新統合の部隊が50機、
向かっています!」
「何やてッ⁉」
オイラの突然の叫びに、目を丸くするミケさん。
「奴らが来たら、
フェアタイディゲン戦で疲弊したオイラたちじゃ絶対に勝てないっス!
自警団たちとも、
殲滅を目標に戦っている時間的な余裕が無いです!
新統合は、3時の方角から来ます!
だから、逆の9時の方角に全力ダッシュ!
ミケさんとケビンさんは、まずは、
ガンスリンガーパレードで自警団を牽制!
その後、オイラたち後衛と合流!
で、ダッシュで逃げるっス!」
このオイラの発言を聞いて、
「また、ロクスリー君の既視感かッ⁉
良し! 了解や!
君の、その感の鋭さには何度も助けれらてきた!
だから信じられる!」
全幅の信頼を寄せてくれるミケさん!
しかし、
「ちょッ⁉ ソルファージュ! セリア!
レーダーで、それ、捉えれているの⁉」
ユリンさんが、ソルファージュのセリアさんに、
矢継ぎ早に聞く!
「いえ、ソルファージュのレーダーでも、
まだ、新統合の部隊と思われる反応は、
捉えれていません!」
セリアさんが、冷静に状況を報告してくる。
「ちょッ! リーダー!
ソルファージュのレーダーでも捉えれてないのに、信じるのッ⁉
こんな混戦中に逃走なんて、後ろから狙い撃たれるだけじゃないッ⁉」
ユリンさんが、非難の声を上げるが!
『ユリンさん。
マスターは、普段は弱腰で、逃げも隠れもしますし、
ウソもよく吐きます。
ですが、こういう、
ここぞという時にウソを吐く人ではありません。
どうか、マスターを……信じて下さい!』
38が、
例の3Dアバターの姿で、
健気にユリンさんに告げる。
「38……。」
その38の言葉に、
切羽詰っていたオイラの胸が、ふっと軽くなるのを感じた。
「38ちゃん……。」
ユリンさんが38の言葉に、
何かを感じた様子を見せた後に、
「そういう事や! ユリン!
ロクスリー君の指示に従い!
これはリーダー命令や!
こうなった時のロクスリー君の感は、ピカイチなんや!」
ミケさんが、ダメ押しで、リーダー特権の強制命令を発動する。
「もう!
言い出したら聞かないんだから、リーダーは!
仕方ない! ロクスリー君、私たちの初動の指示は⁉」
オイラを全面的に信じたかはともかく、
なるようになっちゃえ、という感じで、
ユリンさんが聞いて来る。
「自警団のFG部隊が、
ユリンさんたちの間近に迫っています!
ユリンさん、近接格闘戦は苦手って事っすけど、
格闘兵器を当てるのは苦手でも、
格闘兵器で斬り払うのは得意なんすから、
何とか、相手の攻撃を斬り払って回避して下さい!
その間に、トニーさんとオイラで、
エンジェルシードとフェストゥングに群がる相手を、
牽制射撃!
距離を取ったところで、
ユリンさんとマカロニさんの砲撃で更に牽制!
その後、ミケさんたち前衛と合流!
ダメ押しで、ソルファージュの艦砲射撃で、
牽制!
そのまま、ソルファージュに乗り込んで、
全力ダッシュで、ブッチ切りで逃走っす!」
そこまでのオイラの指示を聞いて、
ユリンさんどころか、ケビンさんも、マカロニさんも、
ポカンとした顔で、モニター越しのオイラを見る。
「ど…どうして、
ユリンちゃんが近接格闘戦、
超絶苦手なの知っているの、ロクスリー君⁉」
慄くユリンさん。
「しかも、何で、
格闘兵器での斬り払いは上手いって、
詳細まで知ってんだよ⁉」
ケビンさんも、目が点と言った感じで、
驚きの声を上げる。
「これは…ミケさんの判断…、
あながち間違いじゃないかも知れませんね。
実に興味深い。」
マカロニさんが、中指で、メガネをクイッと上げつつ、
真実、興味深そうに言って来る。
「とにかく、皆さん、お願いします!」
「OKや、ロクスリー君! みんなも頼むで!」
「分かったぜ、兄弟! 姐さん!」
「ボクも、ロクスリーさんの指示に従います!」
「どうなっているのか分かんないけど、
こうなったら、ユリンちゃん、やっちゃうんだから!」
「こちらも、OKです。
ミケさんの認めるロクスリー君の能力の片鱗、
見せてもらいますよ!」
みんなが了承の声を挙げたところで、
「何をゴチャゴチャ言ってやがる!」
自警団のうち、エンジェルシードの近くのガトナスが、
レーザーソードを構えて爆ぜた!
「ユリンさん!」
「了解だよ!」
エンジェルシードが、
Lトライバレルのレーザーソードを形成し、
ガトナスの一撃を斬り払う!
「トニーさん! オイラと一緒に!」
「了解です!」
ガトナスを先頭に、
エンジェルシードとフェストゥングに向かってきた、
自警団のFG部隊に、
オイラのゲズC²の大型バズーカと、
トニーさんのアウスブレンデンのキャノン砲の砲撃が、
雨あられと降る!
「クッ…弾幕が厚い!」
堪らず、後ろに下がるガトナスたち!
そこに!
「その距離は、ユリンちゃんの十八番なんだから!」
エンジェルシ-ドのLトライバレルのバレットの一撃が、
ガトナスの頭部を破砕する!
「グアッ⁉ 頭部をやられた⁉」
呻く自警団!
更に、
「ボクも忘れられては困りますね!」
フェストゥングの大型レーザーレールキャノンの砲撃が、
後方に下がったFG部隊の中のうちの、
一機のゲズの胴体部を貫通する!
「ケビン! こっちも行くで!」
「あいさ! 姐さん!」
ラーゼンレーヴェとタイニーダンサーが、
トライバレルを構え、背中合わせになり、
『合体攻撃! ガンスリンガーパレード!』
2機揃ってローリングしながら、
チャージした偏向レーザーを自警団たちに向かって撃つ!
タイニーダンサーたちに接近していたザヌス部隊やゲズやジーナ部隊が、
見る見る被弾して行く!
「グ…ッ!? 何て威力のパルスレーザーなんだッ⁉」
呻く自警団団長!
「よし、牽制射撃は、
こんなモンで良いやろ!
ケビン! みんなのとこに行くで!」
「了解だ! 姐さん!」
ミケさんとケビンさんが、後衛のオイラたちに合流!
「バーダック艦長! お願いっス!」
「任せとけ! セリア!
3連装大型レーザーランチャー!
垂直、水平ミサイル!
発射!」
「了解!
3連装大型レーザーランチャー!
垂直、水平ミサイル!
発射します!」
ソルファージュの艦砲射撃が、自警団たちを襲う!
ガンスリンガーパレ-ドで被弾していた自警団たちが、
更に被弾して行く!
「よし、良い頃合いやね!
トロイメンカッツェ、撤収ッ‼」
『了解!』
全員で、ソルファージュに乗り込む!
みんながソルファージュの甲板に上ったところで、
「ユリンちゃん、ダメ押し!
Lトライバレル、
レーザー、行っくよ~!」
エンジェルシードが、
Lトライバレルのレーザーを掃射する!
「グ……ッ!?
見す見す、見逃すなど⁉
クッ……! アヴァドンッ‼」
自警団団長が、恨みがましい声を出すが、もう遅い!
ソルファージュの全速のダッシュで、
見る見るアルセカーナの町が遠くなって行く。
その時、
「リーダー!
3時の方角に、未知の機体反応多数! その数……50ッ⁉
ロクスリー君の言っていた、
新統合の部隊の模様ですッ‼」
新統合の反応に、
セリアさんが、緊迫の声を上げた!
「凄い…ロクスリーさんの言った通りになりましたね!」
「マジかよッ⁉ ロクスリー、オマエ、エスパーか何かかッ⁉」
「ほ…ホントになるなんて⁉ ユリンちゃんビックリッ⁉」
「ボクがカスタマイズしたとはいえ、
ゲズC²に、
ここまでの索敵能力はないはずなのですが、
いやはや、これは凄いですね。」
口々に驚きの声を上げる皆さん。
「いや、そういう話は、後で良いんで! リッドさん! 全速で逃げて下さい!」
「了解、ロクスリー君! ソルファージュ、全速前進!」
ソルファージュが、一際大きな振動を起こす程に加速する!
「新統合の反応ロスト。
索敵圏外に脱出できた模様。」
セリアさんがホッとした声で、報告して来る。
「た…助かった……。」
緊張の糸が解け、脱力するオイラ。
そのオイラに向かって、
「すげぇ! すげぇよ、兄弟!」
「ロクスリー君、
どうしてこうなるって分ったのッ⁉」
「とても興味深いですね。」
皆さんが、興味津々という顔で、
モニター越しのオイラをマジマジと見てくる。
「えと……説明が難しいんスけど……」
と、オイラがしどろもどろになっていると。
「ロクスリー君、前も、説明が難しいって悩んどったけど、
うちの見立てやと、ロクスリー君には、
危険が迫った時に危険を探知できる、
危機探知能力、
みたいなモンがあるんかもやね!」
と、ミケさんが、締めくくる。
「危機探知能力!
すげぇじゃん、兄弟!」
「いつも、逃げ腰なイメージだったけど、こんな特技があったんだね!」
「凄いです、ロクスリーさん!」
「非常に興味深い。是非、
G工学に応用できないか試してみたいところですね。」
皆さんが、やんやの喝采を上げてくる。
「う~ん……、
そういうのとは違う気がするんスけど、
もうそれで良いっスよ。」
とりあえず、説明は諦めたけど、
皆さんからの余りの褒められ様に、
慣れてない為に、気恥ずかしくなって、
鼻の下をポリポリ掻くオイラ。
『マスター。
私は、マスターを信じていましたよ。
ユリンさんや、皆さんも、今回のことで、
マスターが、ここぞという時には、ウソを言わない方だと、
分かって下さったと思います。』
「38……、
悪ぃ! ありがと!」
中空に浮かぶ38の3Dアバターの頭部を、
触れられない事を分かった上で、撫でてやる。
すると、本当に触れたワケでもないけど、
38のアバターが、
気持ち良さそうに目を伏せた。
「うんうん。ロクスリー君と38は、
相変わらず仲良過ぎて、ちょい妬けてまうね!」
ミケさんが、ニッコリ笑顔で、そう言ってから、
「でも、まあ、ロクスリー君の特技も見られたし、
新統合とも距離取れたし、
とりあえず、一息吐こうか!
ブリッジに上がって、セリアに、
何か飲みモンでも貰お!」
と、言い出した。
そのミケさんの一言で、全員、ブリッジに移動。
「おっ! 来たな、ロクスリー!」
「ロクスリー君、凄かったよ!」
「ソルファージュの、
索敵範囲外の、
新統合の反応に気付くなんて、
ロクスリー君、凄いね!」
ブリッジに着くと、バーダック艦長たちにも、
ヤンヤの喝采を送られるオイラ。
何か、こんなに褒められた事、今まで無かったから、恐縮しちゃうっス。
「まあ、その話は、また後で。とりあえず、
セリア、飲みモン頼む。今日は疲れたでぇ~。」
ミケさんが、ブリッジのリビングスペースのイスに座って、
机につっぷして、グデ~っとなる。
「は~い。
みんなも、コーヒーなんてどう?
ホッと一息吐けるわよ?」
セリアさんのその言葉を聞き、
「じゃあ、オレ、ブルーマウンテンな、セリア!」
「ユリンちゃん、モカ!」
「ボクはエメラルドマウンテンをお願いします。」
「セリア、オレにはグアテマラ、エスプレッソで頼むわ。」
「セリアちゃん、ボク、キリマンジャロで。」
「ぼ…ボクは、何でも良いです。」
次々に皆さんが、セリアさんに注文を頼む。
「あ、じゃあ、オイラ、スマトラで。」
オイラも、お願いしてみる。
「はぁ~い。みんな、順番ねぇ~。あ、これ、リーダーに。」
セリアさんが、1つのカップを手近に居たトニーさんに渡す。
「これは……?
ホットミル…ク…?
……にしては、ぬるいですね?」
「ミケはコーヒーが苦手なんだ。
その上、猫舌と来ている。
淹れ立てのコーヒーが飲めんとは、
人生の半分を棒に振っている様なモンだってのに、
うちの姫さんのお子様舌と来たら。」
バーダック艦長が、ヤレヤレという感じで、大げさに被りを振る。
「ほっとき! うちが、何が苦手でも、アンタに迷惑掛けてへんやろうが!」
「ハッ、こんな事で、カッカ来るなんて、やっぱりお子様だな。
これからは姫さんじゃなく、オシメ様と呼んでやろうか?」
「ムキー!
おっさん、いっぺん、そのヒゲ引っぺがして、
特徴の無いのっぺりした顔にしたろうかッ⁉」
「まあまあ、リーダー、艦長。
せっかくセリアちゃんが入れてくれた飲み物が冷えちゃうよ?」
ヒートアップしたお二人を、リッドさんが、いなしてくれる。
「むっ…コホン。
オレが淹れ立てを飲めなくて、
どうするって事だよな。」
「ま…まぁ、ぬる目が好きやけど、冷めるんはあかんな。」
お二人が、矛を収めてくれました!
リッドさん、スゲー!
普段、影薄いけど、ここぞっていう時に、
締めてくれる方だったんだ、この人!
「はい、ロクスリー君。スマトラだよ。」
セリアさんが、コーヒーを渡してくれる。
「あ、はい…って……うん?
いま、ふと思ったんスけど、
あの……アルセカーナの町に、
新統合が行ったって事は、
もしかして、アルセカーナの自警団は、
新統合に、
オイラたちの事を報告しちゃったりしているんしょうか……?」
ふと、嫌な予感に、背中が寒くなる。
「十中八九、
報告されて、指名手配されとるやろうね。」
ミケさんが、あっけらかんと言う。
だけど、それってッ⁉
「うがッ……ッ⁉ 最ッ悪ッ‼ 一部隊で50機ッ‼
しかも、ソルファージュのOSでも分からない、
未知のGで構成されているっていう、
勢力の人たちに目を付けられたなんて、最悪過ぎるッ‼」
叫ぶオイラ!
ちょッ!? マジ勘弁‼
「いまさら、何、言っているのよ、ロクスリー君?
ロクスリー君には、
『ロクスリー君が、私たちトロイメンカッツェのエースパイロットだ』、
っていう情報が流れて、
新統合に、要注意人物として、
エース待遇で迎えられるっていう素敵プレゼントも、漏れなく付いて来るんだよ?」
ユリンさんが、嬉々として、ニッコリ笑顔で告げるッ⁉
「うがッ‼ 最ッ悪ッ過ぎて気が遠くなるッ‼」
涙で前が見えませんッ‼
「まあ、今日ので、
兄弟はヤレば出来るって分かったし、何とかなんだろ?」
ケビンさんも、ニコニコ笑顔だッ‼
「誤解から生まれた誤情報とは言え、
新統合から、
要注意人物として注目されるなんて、
ハクが付いたってもんだ! 良い事じゃねぇか?」
バーダック艦長も、人ごとだと思ってッ‼
「まあ、諦め。いざとなったらウチらがフォローしたるしな。」
…ミケさんが締めの言葉を告げる……。
ああ、天国の父さん、母さん。
オイラは、今日、故郷の人たちから指名手配された人から、
ティアナで一番凄いとこから、
要注意人物として指名手配された人に、
クラスアップしました。
全く嬉しくありません。
涙が出ちゃいます。
これからオイラ……、
本当に……どうなっちゃうの…ッ⁉