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第6話

「セリアッ‼ フェアタイディゲンの追跡、どうなっとんやッ⁉」

 ミケさんが、苛立ち紛れに荒い声で聞く。




 ミケさんたちのKG(ナイトギア)たちを、

 マカロニさんが急ピッチながら、何とか修理し終わって、

 トニーさんが、『せめて自分の機体は整備します』と、

 アウスブレンデンを整備し終わって数刻すうこく




 ソルファージュから、かなり先行して逃げているフェアタイディゲンを、

 何とか索敵し、レーダーで追える範囲ギリギリで、

 追跡している現状なうっていうところ。









依然いぜん、同じ方角に向かって逃走しています。

 このまま行くと、丁度、アルセカーナの町に到着しますね。」

 ミケさんへの質問へのセリアさんの答えに、




「何であのG(ジェネラル)²(ギア)

 そっちに逃げているのかな?」

 リッドさんが疑問の声を上げる。




「あれだけの技量の自動戦闘ができる、

 高性能AI(エーアイ)なのですから、

 もしかしたら自己修復機能もあるのではないかとボクは考えます。

 そして、自己修復の為にアルセカーナの町の、

 G(ギア)ショップなどで、

 パーツを得ようとしているのではないかとも考えます。」

 マカロニさんが自己分析の仮説を述べる。









「何にしても、うちらのKG(ナイトギア)は、

 もうマカロニが直してくれて万全なんやし、

 早よ、アイツに追い付いて、

 今度こそ完膚なきまでに叩き潰したるんやッ‼

 フッ……フフフ……クククッ…ッ‼」

 不気味な笑い声を出すミケさん。




 マジ怖いっス…!




「リーダーが燃えているッ⁉」

 引き気味にユリンさんが言う。









「あの~……やっぱり、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)に関わると、

 損害しか出なさそうっスし、

 ここは、もうあきらめて、

 ほうっておくって選択肢も……」



「あんッ⁉」

 ミケさんが、

 ギロッ!て音が鳴りそうなくらいに、

 にらみつけてくるッ!




「ヒッ⁉」

 オイラ、ビビる、ビビる。









「止めとけ、ロクスリー。

 金絡かねがらみのもつれの時は、あねさんには逆らうな。」

 ケビンさんが小声で言って来てくれる。




「まあ、メカニックの観点から言わせて頂ければ、本当はボクもロクスリー君の意見に賛成なのですけどね。でも、ミケさんがああですしね……。」

 マカロニさんも小声でフォローの言葉を送ってくれる。




「まあ……仕方ないっスよね……。」

 ケビンさんとマカロニさんに、オイラも小声で答える。








「リーダー、

 フェアタイディゲンがアルセカーナの町に到着した模様です。



 機体反応ロスト。

 町の自警団のほどこしていると思われるジャミングで、

 レーダーでは探知できなくなりました。どうしますか?」

 セリアさんが、これからの指針をミケさんにたずねる。




「当然、追い掛けて町に入って、

 しらみつぶしに町内を探索して、

 見付けてブッつぶすッ!」

 強気にはなつミケさん。




「アルセカーナって、

 一度、私たちが町の自警団のFG(ファイターギア)を強奪したところだし、

 私たちが入ったら自警団たちに目の敵にされて攻撃されるんじゃないの?」

 ユリンさんが、大丈夫なの?と、言外にミケさんにたずねる。



「だよなぁ……。

 流石さすが雑魚ざこの集まりの自警団たちでも、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)を相手にしながら、

 挟撃きょうげきされたら最悪じゃないですか、あねさん?」

 ケビンさんも続いてミケさんに聞く。




 ちょッ⁉

 あんな化け物みたいに強いG(ジェネラル)²(ギア)と戦う上に、

 町の自警団にもおそわれるとか、マジ勘弁なんだけどッ⁉





「マカロニが、さっき言った、

 町のG(ギア)ショップをおそって、

 パーツを漁って自己修復しとるっちゅう推測すいそくは、

 多分、合っとるやろう。



 で、それやったら、町の連中からしても、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)は敵や。



 それをわざわざ倒したるんやから、町の連中からしたら、

 うちらがあのG(ジェネラル)²(ギア)と戦う分には、

 渡りに船のはずや。



 ホンマやったら、

 せっかくやから町の自警団のG(ギア)倉庫の、

 FG(ファイターギア)を強奪とかしたいところやけど、

 今回は、こっちも向こうも見逃しや。



 前に、あの町の自警団をおそったのを差し引いても、

 町を荒らすG(ジェネラル)²(ギア)いう驚異きょういに、

 町の不甲斐ない自警団の代わりに戦ってやるんや。

 喜ばれこそすれ、攻撃される事はないやろ。



 仮に、前の時の恨みが、まだ残っとったとしても、

 G(ジェネラル)²(ギア)に、

 町をおそわれてテンヤワンヤの所で、

 一度、負かされたうちらに攻撃してくる余裕があるとも思えんしな。



 そやから、町ん中に入って、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)を探すでッ!

 町に入ったら、みんなで出撃やッ‼」

 と、ミケさんが、意外に冷静な分析をし、述べる。




 ああ、なるほど。

 確かに、そういう状況なら、

 自警団も、オイラたちを攻撃しないかもだね。




 でも、

 あの化け物G(ジェネラル)²(ギア)と戦うのは、

 回避不可の模様……。

 それだけでも涙がチョチョ切れるんですけど……。








「まっ仕方ないですね。了解しましたよ、あねさん!」




「リーダーは、言い出したら聞かないし、仕方ないよね。こっちもOKよ。」




「メカニックとしてはムダな損害は極力避けたいのですけどね。

 まあ、こちらも了解ですよ。」




「ホントは、こんな野良試合なんてほっといて、

 やっこさんに、直ぐにでも合流しなきゃ行けねぇんだが、

 幸い、あれからやっこさんからの催促さいそくもねぇし、

 まあ、うちの姫さんは癇癪かんしゃくを起したら聞かねぇからな。

 仕方ねぇ、リッド、ソルファージュ、アルセカーナに向けて、全速前進だ!」

 バーダック艦長が操舵そうだのリッドさんに指示を出す。




「了解です! ソルファージュ、全速前進!」

 と、小気味良こきみよこたえるリッドさん。

 全速で死地に向かうソルファージュ。





 嫌な予感がするので、ダメもとで言っとこう。

「あの~……。

 前の、G(ジェネラル)²(ギア)との戦闘で分かると思うんスけど、

 オイラが出ても……」

 と、ミケさんにオイラの無力さを伝えようとするが、

 ビキビキッ!と音がりそうなキレギレの鋭い目で、

 ミケさんが睨みつけてくる。




「……何とかするしかないんスよね……。

 ああ……あの化け物G(ジェネラル)²(ギア)と再戦とか、

 死亡フラグとしか思えない……。」

 なげくオイラ……。




 てか、これ、何て罰ゲームなのッ⁉





 オイラが戦々(せんせん)恐々(きょうきょう)としていると、

「まあ、あのG(ジェネラル)²(ギア)がヤベェ相手なのは、

 分かってっからフォローは入れてやんよ。」

 ケビンさんが小声でフォローの声を掛けてくれる。




「今のリーダーは何を言ってもダメだしね。

 まあ、機体の修理と補給は任せてよ。」

 ユリンさんも小声ながら、

 親指を立て、にこやかに話してくれる。




「フェアタイディゲンの性能はボクらも分かっていますからね。ロクスリー君が撃墜されそうにならないようにできるだけフォローしますよ。」

 マカロニさんも、優しい声を掛けてくれる。




「皆さん、感謝っス!」

 嬉し涙を浮かべつつ、オイラも出来るだけの笑顔で皆さんに返す。









 その時、

「ヌッ⁉

 アルセカーナの町の方から、いくつか煙が上がっているぞッ⁉

 野郎、ホントにドンパチ始めやがったか⁉」

 ソルファージュのモニターの先の、

 白煙はくえん見咎みとがめて、

 バーダック艦長がおどろきの声を上げる。




「とにかく町に入りましょう。

 推測すいそくより、実際に見て知るべきです!」

 マカロニさんがあせりながらも冷静にてっして言う。










「リーダー、アルセカーナの町に入りました。」

 セリアさんがアルセカーナへの到着のむねを告げる。




「うぉッ⁉

 何か、あちこちの建物が壊されているみてーだぞッ⁉

 あちこちで煙が出ているぜッ⁉」

 モニターの先の、白煙はくえんを上げる町の建物たちを見て、

 ケビンさんもおどろきの声を上げる。




「町の自警団のだったっぽいFG(ファイターギア)残骸ざんがいも、

 転がっているわねッ⁉」

 ユリンさんのその言葉通り、

 モニターの先には、FG(ファイターギア)の残骸も転々としている。




 マジですかッ⁉


 これ、あのG(ジェネラル)²(ギア)がやったんだよねッ⁉


 こんな惨憺さんたんたる有様を作り出すG(ギア)と、

 また戦わないといけないとか、マジ、罰ゲームなんだけどッ⁉










G(ギア)ショップだったと思われる場所が、

 重点的におそわれた様ですね。



 どうも、ボクの推測が当たっていた様ですね。

 フェアタイディゲンが町内のG(ギア)ショップをおそって、

 補修パーツを強奪して、その際に、

 町の自警団のFG(ファイターギア)と交戦。

 そして自警団が敗北。



 この残骸はフェアタイディゲンに負けた跡でしょうね。



 で、フェアタイディゲンは、

 今は、どこかに隠れて自己修復中。



 と、いったところでしょうね。」

 マカロニさんが冷静に分析する。








「とにかく、みんなで出撃やッ‼」




「あいさ、あねさん!」




「OK、リーダー!」




「了解です、ミケさん!」




「分りました、ミケさん!」




「ああ……無事に生きて帰れるんだろうか……?」

 ミケさんの号令ごうれいもと、出撃するオイラたち。





「町のジャミングで通常センサーは使えんけど、

 熱感知センサーで1機だけ他と離れとる奴が、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)やッ‼



 町の自警団のFG(ファイターギア)は、

 もう粗方あらかたやられたみたいやし、

 るとしても、普通は固まって集団で行動するはずやッ‼

 


 そやから、1機だけ他から離れてる奴を探すでッ‼

 みんな散開ッ‼

 ……と、言いたいところやけどやッ‼

 正直、1対1で、あのG(ジェネラル)²(ギア)の相手は厳しいッ‼

 うちのとこにはケビンとユリンがいッ‼」






「了解だ、あねさん!」




「OKよ、リーダー!」

 ケビンさんとユリンさんが、ミケさんの指示に応える。




「ソルファージュも、うちらと同伴やッ!!」




「了解だ、ミケ!」

 バーダック艦長もミケさんに応える。









「マカロニは、ロクスリー君とトニー君を連れて別ルートから探索やッ‼」




「了解です、ミケさん!」




「マカロニ!

 ロクスリー君とトニー君は新人や!

 アイツに逢っても、まずはうち等に連絡して招集しょうしゅう

 無理に先行して戦わんように!



 逆に、うちらが先にアイツを見つけた場合は先に斬り込んどく!



 ロクスリー君とトニー君は、

 マカロニの指示をきやッ‼」




「分りました、ミケさん!」




「了解っス、ミケさん!」









「ほな、みんな、行くでッ‼」

 ミケさんの号令一下ごうれいいっか

 2つのチームに分かれて探索に従事じゅうじするオイラたち。








 ミケさんたちと分かれ、

 しばらく進むと他のところより少し大きめの建物から、

 白煙はくえんが上がっていた。




G(ギア)ショップだったらしき建物から煙が上がっていますね」

 トニーさんが、

 白煙はくえんの上がるG(ギア)ショップを見咎みとがめて言う。








「こ……これはッ⁉」

 急に、マカロニさんがおどろきの声を上げるッ⁉




「うぇッ!? もしかしてG(ジェネラル)²(ギア)が居たのッ⁉」

 おびえるオイラ。




「メーカー品のマガジンはゴッソリ奪われているのに対して、

 安価なバルク品のマガジンには全くの手付かずですッ‼

 どうやら奴は相当なグルメの様ですッ‼」

 マカロニさんが、驚愕きょうがくの声で言って来るが、




「いやッ!

 そんなどうでもいい事で、いちいちおどろかれてもッ⁉」

 おどろくとこ、オカシクないッ⁉









 それを尻目に、

「……………………………………………………。」

 トニーさんが、通信で、

 マカロニさんを無言で見つめ続ける。



「何なの、この無言のッ⁉

 トニーさん、怖いッスよッ⁉」

 何で、ここで無言なのよッ⁉

 もっとツッコミ入れるとこなんじゃないのッ⁉









「アッ⁉

 あっちの方でもG(ギア)ショップだったらしき所から、

 煙が上がっていますッ‼」

 トニーさんが言いながら、そっちに進む。




「アレッ⁉ オイラのツッコミはスルーで、そっちに行っちゃうのッ⁉」

 ダメもとで再度ツッコミを入れてみる。








「ああぁ……ッ⁉」

 マカロニさんが、またおどろきの声を上げる。




「今度は何なのッ⁉

 今度こそG(ジェネラル)²(ギア)が居たのッ⁉

 それとも、またどうでも良い事でおどろかれているのッ⁉」

 嫌な予感を感じつつも、一応、ツッコミを入れてみる。




「メーカー品の装甲板はゴッソリ無くなっているのに対して、

 安価なバルク品の装甲板は、これまた全くの手付かずですッ‼

 奴はグルメなだけではなくオシャレさんでもある様ですッ‼」

 マカロニさんが声を大にしておどろきを伝えて来る。




「また、そういうとこなのッ⁉

 明らかにおどろく点とか、

 探している点とかがオカシイよねッ⁉」

 何で、そんなどうでも良い所を探しているのよ、アナタはッ⁉





 そして、

「……………………………………………………。」

 また、通信で、トニーさんが、再度マカロニさんを無言で見つめ続ける。




「だから、このは一体何なのッ⁉

 トニーさん、それ怖いってばッ⁉」

 無言の圧力、マジ怖いんですけどッ⁉









「オイ、マカロニら! き!」

 いきなり、今までの分隊通信用のパーティーチャンネルではなく、

 全体通信のチームチャンネルで、ミケさんが声を掛けて来る。



「何なのッ⁉

 ミケさんまで何か変なボケとかやって来ているのッ⁉

 てか、こっちのパーティーの人たちって本来はツッコミ属性よねッ⁉

 何で、みんな、ボケに走っていて、

 オイラが一人でさばいているのッ⁉

 明らかにオカシイし、役者不足だよねッ⁉」

 オイラが激情のまくてると、









「うわッ⁉

 何やねん、ロクスリー君、いきなりッ⁉



 いや、それよりッ‼

 フェアタイディゲンをこっちで補足したから、

 地図マップデータを送るッ‼



 君らもいッ‼

 じゃあ、こっちは先に仕掛けとくッ‼

 後の通信は、合流してからやッ‼ ほんならなッ‼」

 と、ミケさんが言って、通信を切る。





「あ~、良かった。

 ミケさんまでボケに走っていたらどうしようと、

 ……って、全然良くないよッ‼



 このまま地図マップデータ通りに行ったら、

 またあの化け物G(ジェネラル)²(ギア)と、

 遭遇してデッドループだからッ‼」

 あの化け物G(ジェネラル)²(ギア)と、

 またクロスコンバットとか、マジ勘弁かんべんなんだけどッ⁉




「大丈夫ですよ、ロクスリーさん。



 フェアタイェイゲンは、

 A(アサルト)トライバレルを盗んで所持してるとはいえ、

 他は汎用兵器のみの武装です。



 A(アズラエル)J(ジョブズ)の性能で、

 実弾兵器と格闘兵器は切り払われる危険がありますが、

 遠距離からのレーザー兵器なら、

 相手のきょを突いてアウトレンジから一方的に攻撃できます。



 レーザー兵器でも、

 切り払いで軌道きどうらされる事もありますが、

 先日の様に、四方から同時にレーザーを撃てば攻撃を当てられますよ。



 ロクスリーさんのゲズC(ツイン)²(カスタム)には、

 遠距離から届くレーザー兵器がありませんし、



 ボクのアウスブレンデンは、実弾兵器ばかりな上、

 G(ギア)ではなく、戦闘機なので、

 武装に互換性が無い為に武装をお貸しできませんが、

 マカロニさんのフェストゥングの、

 遠距離用レーザーキャノンを借りて運用されると良いと思います。



 せっかくFG(ファイターギア)と、

 KG(ナイトギア)で互換性があるのですし、

 使わない手は無いと思いますよ?



 マカロニさんには、

 フェストゥングの肩の大型レーザーレールキャノンを、

 使ってもらえれば、

 マカロニさんもアウトレンジからレーザーで攻撃できますし、

 試さない手は無いと思います。



 少なくともボクが同じ立場でしたら、そうしますしね。」

 トニーさんが冷静に状況を分析し、提案して来る。




「素晴らしいアイデアですね!

 ボクもそのアイデアに賛成です。


 

 では、遠距離用大型レーザーキャノンを渡しますね。

 ハイ、どうぞ、ロクスリー君。」

 マカロニさんが遠距離用大型レーザーキャノンを渡して来る。




「アレッ⁉

 二人とも、ボケ倒し続けるんじゃなかったのッ⁉

 ここに来て、いきなり、いつも通りの解説サポートキャラに戻るのッ⁉

 さっきまでのボケまくりから、

 いきなり的確なアドバイス係りに戻られて、

 ハッキリ言って困惑するんだけどッ⁉ 何、コレッ⁉」

 困惑するオイラ。




「何を良く分からない事を言っているのですか?

 早く装備して下さい。」

 マカロニさんが急かして来る。




「ロクスリーさん、早くしないとまたミケさんにどやされますよ?」

 トニーさんにも急かされるオイラ。




「あ……もう二人とも、ボケとか変なとかは辞めたのね。



 ……って、確かに早く行かないとミケさんに怒られちゃうよ!

 でも、またデッドループは嫌だぞ!



 マカロニさん! トニーさん!

 オイラ、絶対にアウトレンジからからだけじゃないと撃たないっスからねッ⁉

 あの化け物G(ジェネラル)²(ギア)の射程に入るのは勘弁よッ⁉」

 懇願こんがんするオイラ。




 もう痛いのは嫌なのッ‼








「いまいち、言っている事が分かりませんが、

 無理をして前線に出る必要は無いと思いますよ。



 カベ役には恐らく、

 ミケさんとケビンさんたちが既になってくれていると思います。



 ユリンさんは恐らく中衛ちゅうえいからのサポート中でしょうね。



 そして、ソルファージュは後方からの支援射撃中だと思います。



 ですから、

 ボクたちは次第しだい

 ソルファージュやユリンさんたちと連携を取って、

 こちらもソルファージュと共に支援射撃をし、

 それにてっするのが良いでしょうね。」

 トニーさんが、冷静に状況分析して案を述べる。




「それが妥当だとうなところでしょうね。

 それなら、仮に当てられなくても、

 牽制けんせい射撃しゃげきとなって、

 ミケさんたちを援護できますしね。」

 マカロニさんも、トニーさんの案に賛同する。




「おお!

 アウトレンジから撃つだけな上に、

 外しても良いんスね!

 それ良いっスね!

 その案で行きましょう!」

 オイラも賛同の声を上げる。

 遠距離から撃って、外してもOKなんて、最高だよねッ‼





「では、2人とも、

 ミケさんが送ってくれた地図マップナビゲート通りに、

 ボクに続いて進んで下さい。」

 マカロニさんが言い、

 3人で、送られた地図マップナビゲート通りに進む。





「でも、トニーさん、頭良いっスね。



 フェストゥングの装備を借りて、

 ゲズC(ツイン)²(カスタム)で使うってのは、

 オイラじゃ絶対に思い付かなかったっスよ。



 言われてみればG(ギア)って、

 ほとんどみんな互換性があるんスから、

 できるよねって思うけど、そこに辿り着けるのが凄いっスよ。

 目からウロコって感じっしたよ!」

 トニーさんに賞賛の言葉を掛けてみる。




「そんな、たまたま思い浮かんだだけですよ。

 そんなにめていただだけて恐縮きょうしゅくですし、

 何も返して上げられませんし、ちょっとムズがゆくなりますね。」

 トニーさんが照れながら、鼻の頭をきつつ言う。










「と、話は、そこまでですよ!

 ミケさんたちとフェアタイディゲンが見えて来ました!

 ここからはパーティーチャンネルではなく、

 チームチャンネルに通信を切り替えます!」

 マカロニさんが鋭く言って来る。




「了解っス、マカロニさん!」




「分りました、マカロニさん!」

 了承の旨を伝える、オイラとトニーさん。








 到着したのは、住宅地を抜けて、ぽっかり空いた様な広い敷地の公園。




 その中の、フェアタイディゲンがひそめていたっぽい、

 G(ギア)ガレージ…。




 外部から公園に来た客のG(ギア)を、

 一時停いちじとめるスペース、

 …っぽい建物が白煙はくえんを上げている。








 フェアタイディゲンの奴、

 隠れていたところを、

 ミケさんたちにいぶされたんだ!




 すでにフェアタイディゲンと戦っていた、

 ミケさんたちのKG(ナイトギア)は、

 またも、オイラが見てないうちに被弾していた様で、

 ラーゼンレーヴェがアリーエルスラスターのメイン部とも言える脚部きゃくぶを、エンジェルシードが補給装置を積んだバックパックを損傷しているッ!?







 うがッ⁉ 各機、一番痛いところを叩かれているッ⁉




 フェアタイディゲンの奴、こっちの急所を学習しているんだ!






 被弾してないのは、タイニーダンサーだけの様で、

 ソルファージュも、甲板が、一部損傷している!




 フェアタイディゲンの方は、

 ミケさんにやられた胸部コックピット部分の損傷個所が、

 半田はんだゴテで無理やり溶接ようせつしたみたいな感じで、

 ジーナのっぽい装甲に変わっている。




 本当にマカロニさんが予想した通り、

 自己修復したんだ、アイツ!







 もとから頭部がジーナ頭なせいで、

 パチモノ臭かった外見が、さらにジーナに近くなって、

 よりパチモノ臭さがしているけど、あの見た目に騙されちゃダメだ!




 ラーゼンレーヴェやエンジェルシードにダメージを負わすくらいの超性能!




 油断しているとオイラなんて、この前の様に一瞬でやられる!




 オイラ、今回は、後衛から一歩も前に出ないぞ!









「ミケさん! マカロニ隊です! 到着しました!

 今から、ソルファージュと連携を取って後方から支援射撃を行います!

 こちらからのレーザー射撃に当たらない様に注意しつつ、

 フェアタイディゲンを引き付けて下さい!

 バーダック艦長! 連携、お願いします!」

 マカロニさんがテキパキと報告をする。




「おお! 了解や、マカロニ!



 よし、ユリン! 散開!

 このG(ジェネラル)²(ギア)相手やと、

 味方の応急修理で固まるのも危ない!

 オッサン! マカロニたちと連携頼むで!

 ケビン! 引き続き、うちと一緒に、この赤いのを追い詰めるで!」

 ミケさんも、テキパキと指示を出す。







『了解!』

 ミケさんの指示に、みんなが応える。




「セリア! 3連装大型レーザーランチャー、

 垂直すいちょく水平すいへいミサイル、掃射そうしゃ!」




「了解!

 3連装大型レーザーランチャー、

 垂直すいちょく水平すいへいミサイル、

 発射はっしゃします!」

 ソルファージュからの艦砲射撃が、

 フェアタイディゲンに向かってはなたれる!



 しかし、フェアタイゲンが、

 スラスターをかして加速し、難なく回避する!




 流石に、戦艦の攻撃は回避するか!








「アウスブレンデンには実弾兵器しかありませんが!」

 トニーさんが、キャノン砲をはなつ!




 そのキャノン砲を、相変わらず、

 化け物染みた反応速度で

 切り払うフェアタイディゲン!




 さらに、

 背部垂直はいぶすいちょくミサイルを、

 おりとばかりに、

 アウスブレンデンにけてはなつ!





「クッ…!」

 何とか回避しようとするが、

 数発が胴体部に着弾し

 アウスブレンデンが失速する!




「トニーさん⁉

 クッ…でも…オイラだって牽制けんせい射撃しゃげきくらい!」

 オイラも、マカロニさんから借りたばかりの、

 遠距離用大型レーザーキャノンをはなつ!




 難なく回避するフェアタイディゲン!




 でも!

 それで、コンマでもすきができただろ?

 だったら!





「フェストゥングの砲撃、舐めて貰っては困りますね。」

 マカロニさんのフェストゥングの肩の大型レーザーレールキャノンが、

 フェアタイディゲンの右肩部うけんぶかすめる!




 オシイ! でも、この感じなら、今回はイケルぞッ‼








「ケビン! ユリン! 同時攻撃で行くでッ!」




「あいさ、あねさん!

 脚部きゃくぶのアリーエルスラスターが使えなくても!

 燃費度外視ねんぴどがいしだ! 行くぜ! オサフネ!」

 ラーゼンレーヴェがオサフネを振りかぶる!




「ユリンちゃん! 砲撃! 行っくよ~!」

 エンジェルシードがL(ライト)トライバレルからレーザーをはなつ!




「1機ずつやったら、ぐにさばかれるやろうけど、

 この連撃で! トライバレル! レーザーソードや!」

 トロイメンカッツェのKG(ナイトギア)部隊の連撃が、

 フェアタイディゲンをおそう!




 しかし、まず、

 ラーゼンレーヴェのオサフネに、

 フェアタイディゲンが艦内から奪った、

 A(アサルト)トライバレルの、

 レーザーソードのやいばを滑らせ、

 かわし、いなす!




 もう、切り払うまでもなく、

 軌道きどうを読んでらしたっていうの⁉




 そのまま、ラーゼンレーヴェが蹴りを叩き込まれ、吹き飛ばされる!

「グッ…ッ⁉ クソッ! コックピットが揺れやがるッ⁉」

 さらに、エンジェルシードの、

 L(ライト)トライバレルのレーザーを、

 盾防御シールドぼうぎょおさえつつ、

 A(アサルト)トライバレルのレーザーを、

 エンジェルシードの右腕部うわんぶに、

 おりとばかりに当てて返す!




「あうッ⁉

 スーパー砲撃超人のユリンちゃんが、

 逆に砲撃を食らっちゃっているッ⁉」

 そのままの流れる様な動きで、

 A(アサルト)トライバレルの先端にレーザーソードを形成し、

 タイニーダンサーのレーザーソードが振るわれる前に、

 脚部きゃくぶのグレネードを目くらましにしつつ、

 頭部バルカンを、キッチリ、タイニーダンサーの胴体部に当ててくる!








「クッ…なんちゅぅ反応速度やッ⁉

 それに、こっちの動きを学習しとる!

 こら、長期戦はヤバい、一気に決着付けるで!

 みんな、この前と同じで行く!

 四方から、1、2の、3で……」





 と、そこで、ミケさんが指示を言い終わる前に、オープンチャンネルで、

「その機影たちッ‼ 見忘れはせんぞッ‼



 アヴァドンのミケの、

 極悪ごくあくTSトレジャースティーラーチ-ムの、

 トロイメンカッツェたちだなッ‼



 我等われらの町に、

 今度はどんな災厄さいやくおこないにたッ‼」

 と、アルセカーナの自警団とおぼしき人が、

 オイラたちに向けて通信して来たッ⁉





「見たら分かるやろッ⁉

 不甲斐ないオマエらに代わって、この町をおそっとる、

 この赤いG(ジェネラル)²(ギア)と戦ったっとるんや!



 今回はオマエらと敵対するつもりも何かを奪うつもりもない!



 まあ、もちろん、

 前にオマエらから奪ったFG(ファイターギア)を、

 売った金を返すつもりもないけどな!



 そやけどや!

 G(ジェネラル)²(ギア)相手に、

 オマエらやったらぎとる!


 こっちは個人的に、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)に恨みがあるんや!



 オマエらには何もせえへんし、

 あのG(ジェネラル)²(ギア)はキッチリ倒したるさかい、

 オマエらは黙って見とき!



 既にアイツにボロ負けしたっぽいオマエらからしたら、

 渡りに船やろうがッ⁉」

 フェアタイディゲンがはなつ、

 垂直すいちょくミサイルを、

 空中で、後方に、高速飛行で避けつつ、

 ミケさんが巻くし立てる!









「クッ……確かに、それが本当なら、我々としても渡りに船だ。



 だが、オマエは、アヴァドンとまで呼ばれるほど、

 貪欲に強奪を繰り返す極悪人だ!



 それに、オマエたちは、既に1度、

 我々からFG(ファイターギア)を強奪した過去がある!

 そんなオマエたちをすんなりとは信じられんな!」

 なおも食い下がる自警団の方。




 このクソ忙しい時に、勘弁して欲しいんスけど……ッ⁉





「いちいち食い下がるなぁ……。



 もし、うちらが本当に強奪しにこの町に来たんやったら、

 このG(ジェネラル)²(ギア)が、

 この町をおそっとる混乱に乗じて、

 自警団倉庫やG(ギア)ショップをおそって、

 既にガッポリ奪った挙句に、もうとっくに逃げとるやろがッ⁉



 逆に言うと、ここで、こうして、

 この赤いG(ジェネラル)²(ギア)と未だに戦っとる時点で、

 うちらが今はこの町から強奪する気がないんが、

 普通に考える頭があるんやったら分かるやろが!



 いちいち食い下がって邪魔せんと、そこで大人しく黙って見とき!



 それと、本当に邪魔やから、

 うちらが有利になったらオマエらも助かるんやから、

 センサージャマーも切って貰おうかッ⁉」

 しつこく食い下がる自警団の方に、ミケさんが鋭く切り返す。







「クッ……確かにかなっている……。

 分かった。こちらとしても、これ以上の損害を出したくはない。



 オマエたちが、

 その赤いG(ジェネラル)²(ギア)を倒して、

 大人しくこの町から出て行ってもらえれば言う事はない。



 センサージャマーも、ここは切ろう。

 だが、少しでも、おかしな挙動きょどうをすれば、

 後ろから狙い撃つと覚えておけ!」

 と、自警団の方が言い、オープンチャンネルの通信を切る。







 直後、センサージャマーが解除されたみたいで、

 センサーにフェアタイディゲンと、

 自警団たちのFG(ファイターギア)の信号がうつる。




「フンッ! 始めっからそうしとったら良いんや!

 よし! はなしいた!




 後は、

 この赤いのを完膚かんぷなきまでに、

 メッタメッタにブッ壊すだけや!」

 ミケさんが、

 フェアタイディゲンにトライバレルのバレットを、

 牽制けんせいはなちつつ、

 強気にはなつ。












「この化け物G(ジェネラル)²(ギア)だけじゃなくて、

 この町の自警団とも戦う事になったらどうしようと思ったっスけど、

 話が上手くまとまって穏便に済んで良かったっス。」

 ホッとむねろすオイラ。




「よし、ほなら、さっきの続きや!

 この前と同じで、1、2の、3で、みんなで四方からレーザー射撃や!」



『了解!』









 ミケさんの号令の下、みんなで、フェアタイディゲンの四方を囲む!

「いくで、みんな! 1、2の、3ッ‼」

 最初に飛んだソルファージュの3連装大型レーザーランチャーを、

 フェアタイディゲンが、スラスターをかし、回避する!




 次弾で飛んだアウスブレンデンのキャノン砲を切り払う!




 さらに、

 オイラのはなった遠距離用大型レーザーキャノンが、

 空を切ったところで、

 四方からミケさんたちトロイメンカッツェの、

 4機のKG(ナイトギア)のレーザー攻撃が、

 フェアタイディゲンをおそう!




 コンマの差で、次弾で来た、

 タイニーダンサーのレーザーを切り払って、

 軌道きどうを変えて回避し、

 ラーゼンレーヴェのA(アサルト)トライバレルのレーザーを、

 盾防御シールドぼうぎょというか、

 シールドふせぎつつ、

 シールドすべらせてかわす!




 さらに、エンジェルシードの、

 L(ライト)トライバレルのレーザーの一撃を、

 背部垂直はいぶすいちょくミサイルで。

 迎撃げいげきして軌道きどうらしたッ⁉




 レーザーをミサイルで軌道きどうらすなんて、

 どういう防御性能なんだッ⁉




 でも、流石のG(ジェネラル)²(ギア)でも、そこまで!




 マカロニさんのフェストゥングの、

 大型レーザーレールキャノンの一撃を、

 最後のあがきで頭部バルカンで迎撃げいげきしようとするが、

 流石に、これは通るッ!




 フェアタイディゲンの頭部に着弾し、頭部が破裂するッ!








「ほんなら、そろそろトドメや!」

 タイニーダンサーが、

 トライバレルを左腰部さようぶにマウントし、




「フランメ! 二刀流や!」

 タイニーダンサーの内腕部ないわんぶから、

 短剣のつかだけのモノ、

 フランメと呼ばれた短剣型レーザーセイバーと思われるモノを、

 左右で1本ずつ出し、両手に1本ずつ握る。








「必殺! 剣の舞や!」

 タイニーダンサーが、

 短剣のつかを両手にそれぞれ逆手に持ち、

 空を飛びつつ、機体の両腰の位置にえて、

 時計で言う2時の方角より突撃し、

 反時計回りに回りつつ、

 下方8時の方角に右手で横周りに斬る!



 


「ほうらッ!」

 さらに、地上にりてステップを踏み、

 フランメを両腰にえた逆手持ちのままで、

 踊るように、そのまま反時計回りに回転して、

 更に左手で横周りに斬り!




「そらそらぁーッ‼」

 今度は回転方向を反対に変えて、

 左腰にえた左の逆手に構えたフランメで、

 時計回りに回りつつ左下から右上に斬り!




「これが…ッ!」

 さらに踊るように回転して斬っている途中で、

 右手のフランメを腰にえるのを辞め、

 右手をフェアタイディゲンの居る方角に持って行き!




 フェアタイディゲンを真正面に見据みすえる位置まで回転し、

 そこから左手のフランメも腰にえるのを辞め、

 したくぐらせるように、6時の方角に回し、

 さらに3時の方角…右方向に回して、右中央に配置し!




「ホンマの…ッ!」

 そこから右手を逆手のまま、

 左下から右上に、斬り上げ!




 同時に、左手も逆手のままで、

 右中央から左中央に、斬るッ!





 剣の舞のフランメの連撃で、

 フェアタイディゲンの身体ボディーが、

 大ダメージに悲鳴を上げるように、よろけッ‼





「ドヤ顔や…ッ‼」

 最後に、上方から、逆手のまま両手で、

 下方に×(ばつ)に斬り抜く!




 そして、その斬撃ざんげきの嵐の後に、

 ドヤッ!と言わんばかりに、決まったという顔をする‼




 既にボロボロだったフェアタイディゲンの胴体部が、

 ×(ばつ)に切り裂かれ、

 さらにバラバラになるッ‼




 これで決まりだッ‼










「やった! やったでッ‼ やったったでッ‼

 これでアイツのせいでお釈迦しゃかにされた、

 FG(ファイターギア)たちの分のサイフも浮かばれるッ‼

 やった! やったったんやッ‼ うおっしゃーッ‼」

 歓喜の声を上げるミケさん。







 しかし、そこで、

 ミケさんのタイニーダンサーに、

 バズーカとミサイルが降り注ぐッ⁉




 虚を付かれた為、

 PBLH(ピブレハ)を搭載した左手が被弾してしまうッ⁉




 うがっ! 何なのよ、一体ッ⁉








「な……何やッ⁉」

 おどろくミケさん。




 そりゃそうだよ! オイラもおどろいているよ!





「ちょっ……、

 フェアタイディゲンを倒したのに、

 どこから攻撃が来たのッ⁉」

 戦々(せんせん)恐々(きょうきょう)とするオイラ。





「やはりはかごとをしていたな、アヴァドンッ‼」

 アルセカーナの自警団の方たちが言いつつ、

 FG(ファイターギア)に乗って、

 バズーカやミサイルを掃射そうしゃしつつ、

 せまってるッ⁉








「えっ、何でッ⁉

 オイラたち、あの人たちの代わりに、

 フェアタイディゲンを倒して、

 この町を救った、いわば英雄よッ⁉

 それが何で攻撃されているのッ⁉」

 おどろきの展開てんかいに、疑問を叫ぶオイラ!




「うちにも分からんぞッ⁉」

 ミケさんも、謎の超展開ちょうてんかいに、

 おどろきながら叫ぶ!



「でも、何か、凄く敵意を向けられているわよねッ⁉」

 ユリンさんも、おどろきのままに、

 今の状況を伝えてくる!



「クッ……一体どうなってやがんるだッ⁉」

 いつも沈着ちんちゃく冷静れいせいな、

 バーダック艦長すら、おどろきの声を上げる!





ほかから、

 この町に着た流しのTH(トレジャーハンター)から、

 オマエたちのGS(ギアシップ)から、

 さっきの赤いG(ジェネラル)²(ギア)が、

 出撃するのを見たと聞いたぞ!」

 と、アルセカーナの自警団の団長とおぼしき方が言って来る。




「うあっちゃー……。」

 ケビンさんが、なげきの声を上げる!



「何で、そんなピンポイントなとこ見ているのッ⁉」

 マジで、何でよッ⁉










 オイラの叫びを無視して、

「きっと、さっきの赤いG(ジェネラル)²(ギア)と戦っていたのも、

 八百長やおちょう茶番劇ちゃばんげきだったのだろうがッ⁉



 我々が油断したところでG(ギア)を強奪する算段だったのだろうがッ⁉



 姑息こそく真似まねをしおってッ‼

 そんな事だろうと始めから思っていたぞッ‼

 だましし通される前に気付けて良かったわッ‼



 アヴァドンのミケと、その手下ども!

 この町に、1度ならず2度も強奪に来おって!



 我々をたばかり、

 この町をおそったむくいを受けるが良い!



 例えオマエたちが高性能なKG(ナイトギア)使いたちだとしても、

 その腕や足の一本だけでも折ってやるぞッ‼」

 と、自警団の団長と思われる人物が捲くし立てる!










「強烈な勘違いだけど、

 私たち、叩けばホコリの出てくるとこだし、

 確かに、この町も前に1回強奪しに来たものね。

 リーダー、これどうするの?」




「えーい、しゃーない!

 売られたケンカは買う主義や!

 こうなったらコイツらの誤解をホンマにしたる!

 コイツら殲滅せんめつして、

 自警団倉庫から奪えるだけFG(ファイターギア)を奪ったるッ‼」

 ヤケクソ気味に、ミケさんがはなつ!









「ちょッ⁉

 あのG(ジェネラル)²(ギア)との戦闘で消耗しているのに、

 さらに自警団と戦うとか、マジ勘弁なんスけどッ⁉」

 余りの無謀な展開てんかいに、涙目で叫ぶオイラ!









「ロクスリー君、ちなみに言っとくけど、

 前にウチらがコイツらからFG(ファイターギア)を強奪する時に、

 コイツら……このアルセカーナの町の自警団たちも下調べしたんやけど、

 キミのとったファトス村の自警団と同じで、

 コイツらも新入団員たちをホルモンしとったからな?」

 ミケさんが、あえて敵味方オープン通信のオープンチャンネルで、

 残酷にも告げる。






「うぇッ⁉」

 戦慄せんりつの声を上げるオイラ。




「ロクスリー君ってリバOKっぽいから、

 もし彼らに負けて捕まりでもしたら、

 人気者になりそうだね!」

 と、ユリンがニコニコ笑顔で、凄く楽しそうに言って来る。




「ちょッ⁉ マジそんなの勘弁なんだけどッ⁉」

 そんな展開てんかい、怖すぎるわッ‼





 そのやり取りを見ていたアルセカーナの自警団の団員たちが、

 オープンチャンネルで、次々に赤らめた顔を見せるッ⁉










 それが、引き金になった。




「何を……」

 ゲズC(ツイン)²(カスタム)脚部きゃくぶのホバーをオフにし、

 ライドブレードを稼動させ、舗装された市街地の道を、

 ブースターをかせ、一番近い自警団のジーナに一気に駆け寄り、

 レーザーソードで斬り付け、戦線から吹き飛ばす!




「顔を赤らめて……」

 さっきフッ飛ばしたジーナの横に居たガトナスを、

 スタンアンカーでスタンさせる!




「やがんだ、テメェらッ⁉」

 スタンさせたガトナスのさらに横に居たザヌスを、

 レーザーガトリングガンで攻撃する!




「そら、こうなったら、もちろん、ブッするわッ‼」

 叫びながら、

 同じザヌスに向かって追撃で、

 マカロニさんから借りた、

 遠距離用大型レーザーキャノンを撃って撃墜する!




 そして、距離を取って、

 マカロニさんのフェストゥングと、

 トニーさんのアウスブレンデン、

 ユリンさんのエンジェルシードと、

 バーダック艦長たちのソルファージュたちから、

 援護防御を取って貰える位置までライドブレードを稼動させ、

 火花を散らしながら移動する!











「スゴイ……ロクスリーさん……。」

 感嘆かんたんこえらすトニーさん。




「ヒュー! やるじゃねぇか兄弟!」

 ケビンさんが口笛を吹きつつ賞賛しょうさんする。




「いつもちぢこまってやがるが、やれば出来できんじゃねーか!」

 バーダック艦長も、賞賛しょうさんの言葉を述べる。




「火事場のバカ力というモノかもですね。よっぽど嫌だったのでしょうね、アレ。」

 マカロニさんが中指でメガネをクイッと上げながら冷静に言う。




「でも、

 ムサ苦しい自警団の人たちに、

 無理やりホルモンされるロクスリー君ってシュチエーションも、

 私的わたしてきには断然だんぜんアリよ?



 ハァ…ハァ…。



 ヤバッ⁉

 ちょっと想像したらえて来ちゃった……ッ‼」

 と、鼻血をボトボトとながしながら、

 恍惚こうこつの表情で言うユリンさん。




「ネェーよッ‼ 怖ぇーよッ‼

 それだけは絶対にゴメンこうむるッ‼」

 マジ、そんなの、勘弁ッ‼








「ハッ⁉ 出してない! 出してないよ⁉

 花も恥じらう純情乙女のユリンちゃんが、鼻血なんて出してないよッ⁉」

 だから、何でアナタは、それで鼻血がバレてないと思えるのッ⁉




「えーい! 辞めんか、ユリン!

 でも、ようやったでロクスリー君!

 これで、自警団たちは浮き足立ったで!」

 と、ユリンさんをとがめつつ、

 オイラをねぎらうミケさん。





「クッ……。

 ちょっとタイプだから、

 オープンチャンネルのモニター越しの姿に気を取られたが、

 もう手加減はせんぞ!」

 自警団の団長さんっぽい人が、

 ちょっと頬を赤く染めながら言って来る。




「何、ツンデレっぽくなってんのッ⁉

 そういうの、マジ辞めてッ‼」

 フェアタイディゲンにせまられた時よりも、

 恐ろしい気配を感じて叫ぶオイラ。




 この自警団たちからは、ドス黒い畏怖いふを感じるッ‼









「とにかく見た目がゲズだからというところでも油断したが、

 逆に、今ので、そっちがエースと見た!



 となれば、外張りから埋めるべきだ!

 みんな! 他のKG(ナイトギア)からつぶして追い詰めるぞ!」

 と、自警団の団長さんがはなち、




『了解です、団長!』

 と、それに応える団員の方々。









「ええい! 相手はやる気マンマンや!

 なら! こっちは、相手を完膚かんぷなきまでつぶすだけや!

 みんな、売られたケンカは買うで‼」

 と、ミケさんがはなつ!




 その言葉が、開戦の合図となった!




「いくぞ、みなのモノ!

 KG(ナイトギア)たちに向けて一斉いっせい掃射そうしゃ!」

 自警団のFG(ファイターギア)部隊が、

 バズーカやレーザーライフルや垂直すいちょくミサイルなどを、

 一斉いっせいはなつ!




 さっきの自警団の団長の言葉通り、

 オイラを無視して、ミケさんたちのKG(ナイトギア)部隊に、

 その照準を絞ってはなってる!





「クッ…脚部きゃくぶのアリーエルスラスターが死んでいるから……ッ‼」

 いつもなら、アリーエルスラスターの超加速で、

 難なく回避するラーゼンレーヴェだが、

 脚部きゃくぶのアリーエルスラスターを、

 フェアタイディゲンに損傷させられ使えない為、

 苦しげにシールドで防御する!





「空を飛べると言っても、

 オレたちザヌス隊のガトリングの掃射そうしゃの前では!」

 さらに、ザヌス隊のレーザーガトリングガンが、

 中空ちゅうくうのタイニーダンサーに掃射そうしゃされる!




「クッ……さっきの不意の一撃で、左手を損傷したから、

 PBLH(ピブレハ)が使えへん……ッ⁉」

 PBLH(ピブレハ)を使えない為、

 わずかだが胴体部の装甲にガトリングが通る!









「そこの鈍重どんじゅうKG(ナイトギア)コンビ!

 オレたちがその首、貰い受ける!」

 エンジェルシードとフェストゥングに向かって、

 ゲズとジーナがバズーカとレーザーライフルを、

 掃射そうしゃしつつ、せまり、

 ガトナスがレーザーソードを構えて突撃して行く!



「クッ……こんなに近づかれたら……ッ⁉」



「マズいですね……。」

 フェアタイディゲンと戦っているところを、

 背後から自警団におそわれたせいで、

 いつもなら得意の砲撃で敵の接近を許さない、

 エンジェルシ-ドとフェストゥングが、

 至近距離しきんきょりからおそわれる!





「クッ……ユリンちゃん、

 近接格闘戦だけは苦手なのに……ッ‼」

 エンジェルシードが、

 L(ライト)トライバレルの先端にレーザーソードを形成し、

 自警団のガトナスに振るうが、至近距離なのに、丸で当たらないッ⁉




 ユリンさんの叫びの通り、

 ユリンさん、格闘戦は不得手ふえてなんだッ‼








 そのユリンさんのエンジェルシードに、反撃とばかりに、

「喰らえ! 鈍重どんじゅうKG(ナイトギア)!」

 ガトナスが蹴りを繰り出し、

 エンジェルシードがよろけたところに、

 スタンアンカーを振るって来る!




 そのスタンアンカーを、ユリンさんが、レーザーソードで何とか切り払う!








「チッ! だが、これで!」

 さらに、ガトナスが連撃で、

 レーザーソードを振るって来るが、

 その攻撃を、ユリンさんが、切り払って回避する!




 アレ⁉ ユリンさん、切り払いは、メチャ上手いぞッ⁉








 そのままの勢いで、

 エンジェルシードがレーザーソードを振るうが、

 何故か、あさっての方向にはなたれ、むなしく空を切る!




 この人、

 格闘兵装で防御するのはメチャ上手いけど、

 攻撃するのは壊滅的かいめつてきに苦手なんだ!









「クッ……ユリンちゃん、大ピンチ! 誰か、ヘルプ~ッ‼」

 ユリンさんが、涙目で、救援コールを送ってくる。




「ボクもショートレンジは得意ではないのですがッ!」

 マカロニさんのフェストゥングが、

 ショートレンジ用の

90(きゅうじゅう)mm(みりめーとる)パラベラム機銃(きじゅう)を、

 エンジェルシ-ドをおそうガトナスにはなつ!




 いつものフェストゥングの砲撃から比べれば、

 一見、ショボい攻撃に見えるけど、

 軽装甲のガトナスにとっては脅威の攻撃!








「クッ……ッ! 弾幕が厚いッ⁉」

 胸部装甲を撃ち抜かれ、

 たまらず後方に下がるガトナス!




「ユリンさん! マカロニさん! 援護します!」

 トニーさんのアウスブレンデンが、

 中空からグレネードランチャーを掃射そうしゃする!




「オイラだって、牽制射撃けんせいしゃげきくらい!」

 垂直すいちょくミサイルを展開てんかいしつつ、

 大型バズーカを掃射そうしゃ



 ガトナスの他にせまっていたジーナやゲズの部隊も、

 オイラたちの射撃をきらって後方に退避たいひする!








「みんな、ナイス! アリガトね!

 そこのガトナス! よくもボコってくれたわね!



 ユリンちゃんから距離を取るなんて、

 叩いてくれって言っている様なモノよ!



 その位置は、ユリンちゃんの十八番おはこなんだからッ‼」

 ユリンさんの叫びに呼応して、

 エンジェルシードのL(ライト)トライバレルのレーザーの一撃が、

 ガトナスの脚部きゃくぶおそう!




「グッ……足をやられた!」

 うめくガトナスのパイロット!




「足をやられた格闘戦機体くらい、オイラでも!」

 オイラの遠距離用大型レーザーキャノンの一撃が、

 ガトナスの胴体部を貫く!



「クソッ! だ…脱出するッ!」

 ガトナスの人が脱出ポッドで逃げる!





「スーパー砲撃超人ユリンちゃん! 本領発揮! 砲撃開始~!」

 ユリンさんのL(ライト)トライバレルのバレットとレーザーが、

 交互にはなたれ、

 距離を取ったゲズやジーナの腕部わんぶ脚部きゃくぶに炸裂する!



 これは行けるぞ!











「ケビン!

 長期戦は、損傷している、うちらやと不利や!

 アレ行くで、アレ!」




「了解だ、あねさん!」




 脚部きゃくぶを損傷し、

 脚部きゃくぶのアリーエルスラスターを使えず、

 苦戦していたラーゼンレーヴェと、

 左手を損傷し、PBLH(ピブレハ)を使えず苦戦していたタイニーダンサーが、

 敵陣の中央に突入して集まり、トライバレルを構え、背中合わせになり、




合体攻撃クロスアタック! ガンスリンガーパレード!』

 2機揃ってローリングしながら、

 チャージした偏向レーザーを自警団たちに向かって撃つ!




 タイニーダンサーたちをおそっていたザヌス部隊やゲズやジーナ部隊が、

 見る見る被弾して行く!









「クッ……何て威力のパルスレーザーだッ⁉」

 隊長機の角突きのザヌスが吠える!

 最初はフェアタイディゲン戦の損傷で苦戦したけど、これなら行ける!

 このまま畳み掛ければッ!







 そこで、

「リーダー、3時の方角から、未知の機体反応多数!

 こちらに向かって来ます! 数、およそ、50!」

 セリアさんが無茶苦茶な報告をして来たッ⁉




「ご…50ッ⁉ なに、その大部隊ッ⁉」

 余りの無茶な数の報告に、

 戦々(せんせん)恐々(きょうきょう)とするオイラ。








「未知の反応が50やとッ⁉

 1部隊で、それだけの数を揃えられる部隊っちゅうのは、

 今のティアナやと1つだけや!

 クッ……厄介な奴らが来おった……。」

 ミケさんには、何が着たのか、想像が付く模様。







 と、そこで、3時の方角から、続々と、

 FG(ファイターギア)にしては見かけない、

 G(ギア)の大部隊が到着したッ⁉







 その中の先頭に居たG(ギア)のパイロットが、オープンチャンネルで、

「アルセカーナの自警団の皆様!



 TSトレジャースティーラーおそわれ、困難な状況ですね?

 アナタたちが、我等われら

 新統合しんとうごうっていただけるなら、

 そのTSトレジャースティーラー

 我等われらくだし、アナタたちの町を救ってみせましょう!」

 と、言い出したッ⁉









「な…何スか、この人たち⁉」




「新ティアナ統合軍……。

 15年前の戦争を起こしたティアナ統合軍の流れをむ、

 げんティアナの最大勢力や。



 その首領しゅりょうのグランヴァルニア=エルスターク将軍は、

 洗脳めいたげんを使って人民をたぶらかす。



 その上で、町や村などへの、

 TSトレジャースティーラーなどの脅威で弱った人々と、

 『う』と言って、

 新統合しんとうごうの言う事を無理矢理に聞く様に、

 洗脳して行くっちゅう性質たちの悪い勢力や!



 洗脳した相手からは、

 金と人的じんてき労力ろうりょくを、

 しぼり取れるだけしぼり取り、

 さらに、自分たちに都合よく従うモノたちには、

 権力を与えて抑制よくせいするっちゅう、

 悪辣あくらつな手段を使う!



 げんティアナで最大の勢力であると同時に、

 げんティアナで一番、性質たちの悪い勢力や!



 G(ギア)の反応が未知みちで、

 目視でも、あんな見た事ないG(ギア)っちゅう事は、

 あれがちまたで噂されていた、

 新統合しんとうごうの新型の、

 量産型G(ギア)っちゅう事か……。



 新統合しんとうごうは、

 G(ギア)を自力で量産できる能力を得たっちゅう事や…。

 なんちゅう厄介な……。」

 ミケさんが苦しげに言って来る。





 今のティアナでの最大勢力って、そんなヤバい相手なのッ⁉

 ちょッ⁉ マジ勘弁なんだけどッ⁉





「クッ……、我々、自警団に、オマエたちの軍門に下れと言うのか⁉」




「そうではありません。



 これは、あくまでも、

 アナタ方が我等われらに寄り添って頂けた場合の話であり、

 その場合、そのTSトレジャースティーラーの脅威から、

 アナタ方を庇護ひごする用意が、

 我等われらにはある…という話です。



 そして、アナタたち自警団が、

 我等われら庇護下ひごかに入る事を、

 了承りょうしょうするならば、

 アナタたちには、特権とっけんを与えよう…という事です…。



 食糧の優先確保権。住宅の優先確保権。

 一般市民より1階級上の地位を与える…という用意が、

 我等われらにはあるという事です…。お判りでしょうか?」

 なッ…⁉ 何言ってんの、この人たちッ⁉











「その、うという行為をしなかった場合は?」




「それは、アナタたちが決める事です。



 我等われらは、決して、

 我等われらの庇護下に入る者を強要しません。



 しかし、我等われらは、既に、

 アナタ方、自警団の皆様が、

 我等われら新統合軍しんとうごうぐんに寄り添って頂ける、

 素晴らしい回答をして頂けるモノと、確信しております。



 どうか、御英断ごえいだんを、お願いしたくぞんじます。」








「何、言っているの、この人たち⁉

 口だけ上手いけど、買収話ばいしゅうばなしをする上に、

 特権とかを餌にして、無理やり従わせようとしてるじゃん…ッ⁉」

 新統合しんとうごうの余りの横暴ぶりに、思わず、目が点になるオイラ。

 何なんだ、コイツらッ⁉ マジで無茶苦茶だッ⁉ 横暴過ぎるッ⁉








「クッ……では、我々自警団が、

 そなたらに寄り添うという選択をした場合、

 このアルセカーナは助けてくれるのかッ⁉

 何か他の条件もあるのかッ⁉」




「条件というより、協力要請事項です。



 アルセカーナのG(ギア)ショップなどの商店は、

 売り上げ金の一部を新統合しんとうごうに寄付頂けるならば、

 アナタ方、自警団の皆様に、広い敷地を与えます!



 また、町長が、我等われら新統合しんとうごうと、

 蜜に連携して頂けると約束して頂けるならば、

 町長や、自警団の方々、G(ギア)ショップなどの方がtには、

 今以上の地位と収入を与える事、お約束しましょう!



 そう、自警団の皆さんにも、他と同様に、

 我等われらとこれから、蜜に連携頂けるなら、

 今以上の地位と収入は、確保しましょう!」

 新統合しんとうごうの部隊長が、

 メチャクチャな条件を、ツラツラと述べ終わるまで、

 オイラは、目が点のままだった。










「何度も尋ねるが、貴殿きでんらにわなければ、

 我等われらは破滅…という事に相違ないか…?」

 と、自警団の団長さんっぽい人が聞くが、








「それは、アナタ方が決める事と述べた通りです。



 仮に、ここで、我等われらって頂けなければ、

 アヴァドンのミケに蹂躙じゅうりん……、

 という未来が待ってますが、我らにって頂ければ、

 回避できる脅威であると、我等われらは思っております。



 その上で、更なる待遇も確保いたします……。

 何を迷う必要がありましょうか?」








「無茶苦茶過ぎる!

 ミケさんの名の通りを利用して不安をあおって、

 自警団の皆さんに、

 自分たち新統合しんとうごうに従わなければ破滅なんて条件、

 飲まざるを得なくするなんて!



 こんなの、話し合いって言っているだけで、

 ただの脅迫きょうはくだ!」

 思わず、叫んでしまうオイラ。






 だって、マジで無茶苦茶なんだもん!

 コイツら、あのスナッチャーザインよりも、よっぽど性質たちが悪い!







「少年…。それは違いますよ?

 我等われらは、物事の本質を、

 分かり易く説いているだけですよ?



 アルセカーナの自警団の方々にも、

 アルセカーナの町長の方にも、

 ひいては、アルセカーナの全住民の方々にも、

 我等われらって頂き、

 より良い世界を、共に開拓して行きましょうと、

 我等われらは、提案させて頂いただけ。



 選ぶのは、アルセカーナの皆さんですよ?」

 と、新統合しんとうごうの、

 この部隊の隊長らしき、この人物が、

 ニッコリと、清々しい笑顔で応えて来る。




 その清々しさが、逆に毒づいて感じられて、本当に気持ち悪い…ッ‼




 コイツらからは、ダメ人間なオイラでも、

 相容あいいれないモノを感じるぞッ‼








「クッ…分った。

 我等われら、自警団は、

 新統合しんとうごう軍門ぐんもんくだろう。



 町長や、ショップ関係者にも、話は通そう。



 だから、まずは、

 この極悪TSトレジャースティーラーの、

 アヴァドン共を、倒してくれ!」

 自警団の団長さんが、

 新統合軍しんとうごうぐんに、

 かしずくべるッ⁉




「了解ました。

 この場は、我等われら新統合しんとうごうにお任せ下さい。



 TSトレジャースティーラーの皆さん。



 このSG(ソルジャーギア)

 ダギナスの性能……存分に味わって下さい…!」

 そう新統合しんとうごうの部隊長が言ったかと思うと、

 新統合しんとうごうのダギナスと呼ばれた、

 SG(ソルジャーギア)とかいう、

 新種のG(ギア)たちが一気にぜた!





 水平すいへいミサイルを乱射しながら、

 右外腕部みぎがいわんぶから、

 ガトリングガンをはなって接近してくるッ⁉




「クッ…!

 脚部きゃくぶのアリーエルスラスターが死んでいるからッ⁉」

 ラーゼンレーヴェが、おそるミサイルを、




 オサフネで切り払いつつ、ガトリングガンを回避しようとするが、

 脚部きゃくぶのアリーエルスラスターの超加速が使えない為、

 回避し切れず、胴体部に、モロに当たるッ⁉









「グッ…! モロに食らってもうとる…ッ⁉」

 中空を飛ぶタイニーダンサーも、

 PBLH(ピブレハ)が使えないせいで、

 ガトリングの掃射そうしゃで、胴体部が、モロに被弾する!








「ケビン⁉ リーダー⁉

 クッ……いま、ユリンちゃんが助けるからねッ!」

 ユリンさんが、L(ライト)トライバレルのバレットを、

 ミケさんたちをおそう群れに掃射そうしゃする!






 その攻撃で、ダギナスの先頭の数機が、

 腕部わんぶや、脚部きゃくぶなどを損傷するが!




「味方陣営への被害を確認! 応戦します!」

 ダギナスの反撃のレーザーライフルの一撃が、

 エンジェルシードをおそう!




「キャッ!?」

 ユリンさんが、胴体部への攻撃を、右手で庇う!



 しかし、無敵装甲のはずのエンジェルシードの右腕が被弾により、

 大きくえぐられる⁉



 あのエンジェルシードの装甲を、あんなに損傷させるなんてッ⁉

 あのレーザーライフル、トライバレル並みの出力なのかッ⁉



「食らえ! 鈍重どんじゅうKG(ナイトギア)!」

 ダギナスたちが、エンジェルシードに、

 追撃のレーザーライフルをはなつ!





 その攻撃を、

「ユリン!」

 フェストクングが肩代わりし、レーザーを相殺する!





「マカロニ! サンキュ…」

 ユリンさんが、感謝の言葉を掛けようとした、その刹那!




「レーザーを相殺できてもなぁッ!」

 ダギナスが、両外腕部りょうがいわんぶから、ガトリングをフェストゥングとエンジェルシードに掃射そうしゃする!








「あぅッ⁉」




「クッ…こう実弾で来られては…ッ⁉」

 レーザーなら無敵なフェストゥングも、実弾の雨あられで身動きが取れないッ⁉








 タイニーダンサーが、ラーゼンレーヴェが、

 エンジェルシードが、フェストゥングが、

 ダギナスたちのガトリングの十字砲火で、

 少しずつ、だけど、確実にダメージを蓄積していくッ⁉




「クッ……、

 このままみんながやられるのを黙って見ているだけなんて嫌だ!

 だったら、オイラが! オイラだってッ‼」

 手近のエンジェルシードとフェストゥングに、

 ガトリングを掃射そうしゃするダギナスの部隊に、

 垂直すいちょくミサイルを射出しゃしゅつ

 大型バズーカを乱射しつつ近づく!




 ミサイルもバズーカも、ことごとく回避されるが、これでエンジェルシードたちへの攻撃が止んだだろ! だったら!




「ユリンさん! マカロニさん!

 距離を取って砲撃を!

 ここはオイラが(たて)に……」




 と、指示を言い終わる前に。




「はしゃぐな! このカラフルゲズごときが!」

 オイラの攻撃をいなしたダギナスの部隊が、

 あの超出力のレーザーライフルを、

 ゲズC(ツイン)²(カスタム)の、

 オイラが乗っている胸部コックピット部に直撃させたッ⁉

































「思い出した。死ぬってこんなに痛いんだ……。」

 圧倒的な痛みが身体からだを突き抜ける。

 皮膚が溶ける痛み。

 骨が溶け落ちる痛み。

 眼球が焼けただれる痛み。

 全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体からだの全てが感じる。

 そして、急激な意識フェード遮断アウト……。

 そこでまぶぎる発光はっこうした光景こうけい途切とぎれた。


 一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。

 ボヤけた視界が、徐々に明瞭めいりょうになってくる。


































「ええい! 相手はやる気マンマンや!

 なら! こっちは、相手を完膚かんぷなきまでつぶすだけや!

 みんな、売られたケンカは買うで‼」

 と、ミケさんがはなつ!




 ここからなのッ⁉

 メチャクチャ、前に戻っているんだけどッ⁉




 でも、ここに戻ったって事は……、

 新統合しんとうごうが来るだけで、

 みって事なんだッ‼








「ミケさん!

 ここに、新統合しんとうごうの部隊が50機、

 向かっています!」




「何やてッ⁉」

 オイラの突然の叫びに、目を丸くするミケさん。




「奴らが来たら、

 フェアタイディゲン戦で疲弊したオイラたちじゃ絶対に勝てないっス!



 自警団たちとも、

 殲滅を目標に戦っている時間的な余裕が無いです!



 新統合しんとうごうは、3時の方角から来ます!

 だから、逆の9時の方角に全力ダッシュ!



 ミケさんとケビンさんは、まずは、

 ガンスリンガーパレードで自警団を牽制けんせい

 その後、オイラたち後衛と合流!

 で、ダッシュで逃げるっス!」

 このオイラの発言を聞いて、




「また、ロクスリー君の既視感デジャヴュかッ⁉



 良し! 了解や!

 君の、そのかんするどさには何度も助けれらてきた!



 だから信じられる!」

 全幅の信頼を寄せてくれるミケさん!








 しかし、

「ちょッ⁉ ソルファージュ! セリア!

 レーダーで、それ、とらえれているの⁉」

 ユリンさんが、ソルファージュのセリアさんに、

 矢継やつばやに聞く!




「いえ、ソルファージュのレーダーでも、

 まだ、新統合しんとうごうの部隊と思われる反応は、

 とらえれていません!」

 セリアさんが、冷静に状況を報告してくる。








「ちょッ! リーダー!

 ソルファージュのレーダーでも捉えれてないのに、信じるのッ⁉

 こんな混戦中に逃走なんて、後ろから狙い撃たれるだけじゃないッ⁉」

 ユリンさんが、非難の声を上げるが!




『ユリンさん。

 マスターは、普段は弱腰で、逃げも隠れもしますし、

 ウソもよくきます。



 ですが、こういう、

 ここぞという時にウソをく人ではありません。

 どうか、マスターを……信じて下さい!』

 38(さんぱち)が、

 例の3D(スリーディー)アバターの姿で、

 健気にユリンさんに告げる。








38(さんぱち)……。」

 その38(さんぱち)の言葉に、

 切羽詰せっぱつまっていたオイラの胸が、ふっと軽くなるのを感じた。




38(さんぱち)ちゃん……。」




 ユリンさんが38(さんぱち)の言葉に、

 何かを感じた様子を見せた後に、

「そういう事や! ユリン!

 ロクスリー君の指示に従い!

 これはリーダー命令や!

 こうなった時のロクスリー君のかんは、ピカイチなんや!」

 ミケさんが、ダメ押しで、リーダー特権の強制命令を発動する。








「もう!

 言い出したら聞かないんだから、リーダーは!

 仕方ない! ロクスリー君、私たちの初動の指示は⁉」

 オイラを全面的に信じたかはともかく、

 なるようになっちゃえ、という感じで、

 ユリンさんが聞いて来る。









「自警団のFG(ファイターギア)部隊が、

 ユリンさんたちの間近にせまっています!



 ユリンさん、近接格闘戦は苦手って事っすけど、

 格闘兵器を当てるのは苦手でも、

 格闘兵器で斬り払うのは得意なんすから、

 何とか、相手の攻撃を斬り払って回避して下さい!



 そのあいだに、トニーさんとオイラで、

 エンジェルシードとフェストゥングに群がる相手を、

 牽制射撃けんせいしゃげき



 距離を取ったところで、

 ユリンさんとマカロニさんの砲撃でさら牽制けんせい



 その後、ミケさんたち前衛と合流!

 ダメ押しで、ソルファージュの艦砲射撃かんぽうしゃげきで、

 牽制けんせい



 そのまま、ソルファージュに乗り込んで、

 全力ダッシュで、ブッチ切りで逃走っす!」

 そこまでのオイラの指示を聞いて、

 ユリンさんどころか、ケビンさんも、マカロニさんも、

 ポカンとした顔で、モニター越しのオイラを見る。




「ど…どうして、

 ユリンちゃんが近接格闘戦、

 超絶ちょうぜつ苦手にがてなの知っているの、ロクスリー君⁉」

 おののくユリンさん。




「しかも、何で、

 格闘兵器での斬り払いは上手いって、

 詳細まで知ってんだよ⁉」

 ケビンさんも、目が点と言った感じで、

 おどろきの声を上げる。




「これは…ミケさんの判断…、

 あながち間違いじゃないかも知れませんね。

 実に興味深い。」

 マカロニさんが、中指で、メガネをクイッと上げつつ、

 真実、興味深そうに言って来る。









「とにかく、皆さん、お願いします!」




「OKや、ロクスリー君! みんなも頼むで!」




「分かったぜ、兄弟! あねさん!」




「ボクも、ロクスリーさんの指示に従います!」




「どうなっているのか分かんないけど、

 こうなったら、ユリンちゃん、やっちゃうんだから!」




「こちらも、OKです。

 ミケさんの認めるロクスリー君の能力の片鱗へんりん

 見せてもらいますよ!」










 みんなが了承りょうしょうこえげたところで、

「何をゴチャゴチャ言ってやがる!」

 自警団のうち、エンジェルシードの近くのガトナスが、

 レーザーソードを構えて爆ぜた!








「ユリンさん!」




「了解だよ!」

 エンジェルシードが、

 L(ライト)トライバレルのレーザーソードを形成し、

 ガトナスの一撃を斬り払う!









「トニーさん! オイラと一緒に!」




「了解です!」

 ガトナスを先頭に、

 エンジェルシードとフェストゥングに向かってきた、

 自警団のFG(ファイターギア)部隊に、

 オイラのゲズC(ツイン)²(カスタム)の大型バズーカと、

 トニーさんのアウスブレンデンのキャノン砲の砲撃が、

 雨あられと降る!








「クッ…弾幕があつい!」

 たまらず、後ろに下がるガトナスたち!

 そこに!



「その距離は、ユリンちゃんの十八番おはこなんだから!」

 エンジェルシ-ドのL(ライト)トライバレルのバレットの一撃が、

 ガトナスの頭部を破砕する!





「グアッ⁉ 頭部をやられた⁉」

 うめく自警団!





 さらに、

「ボクも忘れられては困りますね!」

 フェストゥングの大型レーザーレールキャノンの砲撃が、

 後方に下がったFG(ファイターギア)部隊の中のうちの、

 一機のゲズの胴体部を貫通する!









「ケビン! こっちも行くで!」




「あいさ! あねさん!」

 ラーゼンレーヴェとタイニーダンサーが、

 トライバレルを構え、背中合わせになり、




合体攻撃クロスアタック! ガンスリンガーパレード!』

 2機揃ってローリングしながら、

 チャージした偏向レーザーを自警団たちに向かって撃つ!




 タイニーダンサーたちに接近していたザヌス部隊やゲズやジーナ部隊が、

 見る見る被弾して行く!








「グ…ッ!? 何て威力のパルスレーザーなんだッ⁉」

 うめく自警団団長!





「よし、牽制けんせい射撃しゃげきは、

 こんなモンで良いやろ!

 ケビン! みんなのとこに行くで!」




「了解だ! あねさん!」

 ミケさんとケビンさんが、後衛のオイラたちに合流!









「バーダック艦長! お願いっス!」




「任せとけ! セリア!

 3連装大型レーザーランチャー!

 垂直すいちょく水平すいへいミサイル!

 発射はっしゃ!」



「了解!

 3連装大型レーザーランチャー!

 垂直すいちょく水平すいへいミサイル!

 発射はっしゃします!」

 ソルファージュの艦砲射撃が、自警団たちをおそう!









 ガンスリンガーパレ-ドで被弾していた自警団たちが、

 さらに被弾して行く!



    

「よし、頃合ころあいやね!

 トロイメンカッツェ、撤収てっしゅうッ‼」




『了解!』

 全員で、ソルファージュに乗り込む!








 みんながソルファージュの甲板に上ったところで、

「ユリンちゃん、ダメ押し!

 L(ライト)トライバレル、

 レーザー、行っくよ~!」

 エンジェルシードが、

 L(ライト)トライバレルのレーザーを掃射そうしゃする!





「グ……ッ!?

 す、見逃すなど⁉

 クッ……! アヴァドンッ‼」

 自警団団長が、恨みがましい声を出すが、もう遅い!




 ソルファージュの全速のダッシュで、

 見る見るアルセカーナの町が遠くなって行く。









 その時、

「リーダー!

 3時の方角に、未知の機体反応多数! その数……50ッ⁉

 ロクスリー君の言っていた、

 新統合しんとうごうの部隊の模様ですッ‼」

 新統合しんとうごうの反応に、

 セリアさんが、緊迫きんぱくの声を上げた!











「凄い…ロクスリーさんの言った通りになりましたね!」




「マジかよッ⁉ ロクスリー、オマエ、エスパーか何かかッ⁉」




「ほ…ホントになるなんて⁉ ユリンちゃんビックリッ⁉」




「ボクがカスタマイズしたとはいえ、

 ゲズC(ツイン)²(カスタム)に、

 ここまでの索敵能力はないはずなのですが、

 いやはや、これは凄いですね。」

 口々におどろきの声を上げる皆さん。








「いや、そういう話は、後で良いんで! リッドさん! 全速で逃げて下さい!」




「了解、ロクスリー君! ソルファージュ、全速前進!」

 ソルファージュが、一際大きな振動を起こす程に加速する!








新統合しんとうごうの反応ロスト。

 索敵さくてき圏外けんがいに脱出できた模様。」

 セリアさんがホッとした声で、報告して来る。




「た…助かった……。」

 緊張の糸が解け、脱力するオイラ。








 そのオイラに向かって、

「すげぇ! すげぇよ、兄弟!」




「ロクスリー君、

 どうしてこうなるって分ったのッ⁉」




「とても興味深いですね。」

 皆さんが、興味津々(きょうみしんしん)という顔で、

 モニター越しのオイラをマジマジと見てくる。








「えと……説明が難しいんスけど……」

 と、オイラがしどろもどろになっていると。



「ロクスリー君、前も、説明が難しいって悩んどったけど、

 うちの見立てやと、ロクスリー君には、

 危険がせまった時に危険を探知できる、

 危機きき探知たんち能力のうりょく

 みたいなモンがあるんかもやね!」

 と、ミケさんが、締めくくる。








危機きき探知たんち能力のうりょく

 すげぇじゃん、兄弟!」




「いつも、逃げ腰なイメージだったけど、こんな特技があったんだね!」




「凄いです、ロクスリーさん!」




「非常に興味深い。是非ぜひ

 G(ギア)工学こうがくに応用できないか試してみたいところですね。」

 皆さんが、やんやの喝采かっさいを上げてくる。








「う~ん……、

 そういうのとは違う気がするんスけど、

 もうそれで良いっスよ。」

 とりあえず、説明はあきらめたけど、

 皆さんからの余りのめられように、

 慣れてない為に、気恥ずかしくなって、

 鼻の下をポリポリくオイラ。







『マスター。

 私は、マスターを信じていましたよ。



 ユリンさんや、皆さんも、今回のことで、

 マスターが、ここぞという時には、ウソを言わない方だと、

 かってくださったと思います。』




38(さんぱち)……、

 悪ぃ! ありがと!」

 中空に浮かぶ38(さんぱち)3D(スリーディー)アバターの頭部を、

 触れられない事を分かった上で、でてやる。




 すると、本当に触れたワケでもないけど、

 38(さんぱち)のアバターが、

 気持ち良さそうにせた。









「うんうん。ロクスリー君と38(さんぱち)は、

 相変わらず仲良過ぎて、ちょいけてまうね!」

 ミケさんが、ニッコリ笑顔で、そう言ってから、




「でも、まあ、ロクスリー君の特技も見られたし、

 新統合しんとうごうとも距離取れたし、

 とりあえず、一息ひといきこうか!

 ブリッジに上がって、セリアに、

 何か飲みモンでももらお!」

 と、言い出した。








 そのミケさんの一言で、全員、ブリッジに移動。




「おっ! 来たな、ロクスリー!」




「ロクスリー君、凄かったよ!」




「ソルファージュの、

 索敵さくてき範囲外はんいがいの、

 新統合しんとうごうの反応に気付くなんて、

 ロクスリー君、凄いね!」

 ブリッジに着くと、バーダック艦長たちにも、

 ヤンヤの喝采かっさいを送られるオイラ。




 何か、こんなにめられた事、今まで無かったから、恐縮しちゃうっス。








「まあ、その話は、また後で。とりあえず、

 セリア、飲みモン頼む。今日は疲れたでぇ~。」

 ミケさんが、ブリッジのリビングスペースのイスに座って、

 机につっぷして、グデ~っとなる。




「は~い。

 みんなも、コーヒーなんてどう?

 ホッと一息ひといきけるわよ?」

 セリアさんのその言葉を聞き、




「じゃあ、オレ、ブルーマウンテンな、セリア!」




「ユリンちゃん、モカ!」




「ボクはエメラルドマウンテンをお願いします。」




「セリア、オレにはグアテマラ、エスプレッソで頼むわ。」




「セリアちゃん、ボク、キリマンジャロで。」




「ぼ…ボクは、何でも良いです。」

 次々に皆さんが、セリアさんに注文を頼む。








「あ、じゃあ、オイラ、スマトラで。」

 オイラも、お願いしてみる。







「はぁ~い。みんな、順番ねぇ~。あ、これ、リーダーに。」

 セリアさんが、1つのカップを手近に居たトニーさんに渡す。




「これは……?

 ホットミル…ク…?

 ……にしては、ぬるいですね?」




「ミケはコーヒーが苦手なんだ。

 その上、猫舌ねこじたている。

 てのコーヒーが飲めんとは、

 人生の半分をぼうっているようなモンだってのに、

 うちの姫さんのお子様舌こさまじたと来たら。」

 バーダック艦長が、ヤレヤレという感じで、大げさにかぶりをる。




「ほっとき! うちが、何が苦手でも、アンタに迷惑掛けてへんやろうが!」




「ハッ、こんな事で、カッカ来るなんて、やっぱりお子様だな。

 これからは姫さんじゃなく、オシメ様と呼んでやろうか?」




「ムキー!

 おっさん、いっぺん、そのヒゲ引っぺがして、

 特徴の無いのっぺりした顔にしたろうかッ⁉」




「まあまあ、リーダー、艦長。

 せっかくセリアちゃんが入れてくれた飲み物が冷えちゃうよ?」

 ヒートアップしたお二人を、リッドさんが、いなしてくれる。








「むっ…コホン。

 オレがてを飲めなくて、

 どうするって事だよな。」




「ま…まぁ、ぬる目が好きやけど、冷めるんはあかんな。」

 お二人が、ほこおさめてくれました!




 リッドさん、スゲー!

 普段、影薄いけど、ここぞっていう時に、

 めてくれる方だったんだ、この人!







「はい、ロクスリー君。スマトラだよ。」

 セリアさんが、コーヒーを渡してくれる。




「あ、はい…って……うん?

 いま、ふと思ったんスけど、

 あの……アルセカーナの町に、

 新統合しんとうごうが行ったって事は、

 もしかして、アルセカーナの自警団は、

 新統合しんとうごうに、

 オイラたちの事を報告しちゃったりしているんしょうか……?」

 ふと、嫌な予感に、背中が寒くなる。




十中八九じっちゅうはっく

 報告されて、指名手配されとるやろうね。」

 ミケさんが、あっけらかんと言う。




 だけど、それってッ⁉








「うがッ……ッ⁉ 最ッ悪ッ‼ 一部隊で50機ッ‼

 しかも、ソルファージュのOS(オーエス)でも分からない、

 未知みちG(ギア)で構成されているっていう、

 勢力の人たちに目を付けられたなんて、最悪過ぎるッ‼」

 叫ぶオイラ!




 ちょッ!? マジ勘弁‼







「いまさら、何、言っているのよ、ロクスリー君?



 ロクスリー君には、

 『ロクスリー君が、私たちトロイメンカッツェのエースパイロットだ』、

 っていう情報が流れて、

 新統合しんとうごうに、要注意人物ようちゅういじんぶつとして、

 エース待遇たいぐうむかえられるっていう素敵プレゼントも、れなくいてるんだよ?」

 ユリンさんが、嬉々として、ニッコリ笑顔で告げるッ⁉




「うがッ‼ 最ッ悪ッ過ぎて気が遠くなるッ‼」

 涙で前が見えませんッ‼










「まあ、今日ので、

 兄弟はヤレば出来るって分かったし、何とかなんだろ?」

 ケビンさんも、ニコニコ笑顔だッ‼




誤解ごかいからまれた誤情報ごじょうほうとは言え、

 新統合しんとうごうから、

 要注意人物ようちゅういじんぶつとして注目されるなんて、

 ハクが付いたってもんだ! 良い事じゃねぇか?」

 バーダック艦長も、人ごとだと思ってッ‼



「まあ、あきらめ。いざとなったらウチらがフォローしたるしな。」

 …ミケさんがめの言葉を告げる……。

































 ああ、天国の父さん、母さん。




 オイラは、今日、故郷の人たちから指名手配された人から、

 ティアナで一番凄いちばんすごいとこから、

 要注意人物ようちゅういじんぶつとして指名手配された人に、

 クラスアップしました。




 全く嬉しくありません。

 涙が出ちゃいます。




 これからオイラ……、

 本当に……どうなっちゃうの…ッ⁉

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