第3話
「ハァハァ…ッ!」
オイラは、何を間違えてしまったんだろう…。
「ハァハァ…‼
この魅惑の球状ボディーが、
今は、ボクの手の中にッ‼ ハァハァ…ッ‼」
人生の何を間違えたら、
「新ジャンル、OSネコ、マカロニ立ち!
良いんじゃない? 良いんじゃないッ⁉」
こんな惨状に出くわすんだろうか…?
「ハァハァ!
遂に魅惑の球状ボディーの中に、入れました!」
「行け! マカロニ! そこだ、マカロニ!
もっと攻めちゃって良いのよッ‼ ハァハァッ‼」
「え~い!
オマエらは、少しはマトモに日常生活を送れんのかッ⁉」
大惨事…まさにそんな言葉が、現状を的確に表している…。
「姐さん! オレも! オレも、なじって下せぇッ!」
ここは、底辺…。
「え~い!
そやから、ここは、
どこの変態博覧会やねんッ⁉」
社会のアンダーグラウンド。
極悪TSチーム…改め、
変態TSチーム、
トロイメンカッツェ…。
オイラ、何で、ここに居るんだろう…?
ちょっと、己が人生を反芻すると、
涙が出ちゃう…。
『マスター!
現在、私は、大変な辱めを受けています!
今すぐ! 早く! 早急に! つかの間のうちに!
瞬く間に! 一瞬で! 大至急!
この方から私を助けて下さい!』
38が、必死にヘルプコールをして来る。
「あの…マカロニさん…。
確かに38に、
父さんの残したペタバイトディスクのアプリを、
インストールして欲しいって頼んだのはオイラっスけど…。
そのですね…、そういう妙な煽り文句を言いながら、
作業するのは辞めて貰えないっスかね?」
「おっと。すみません。
量子コンピューターを操作できる嬉しさの余り、
ついついトリップしながら作業してしまっていました。
いやはや、申し訳ない。」
と、マカロニさんの目が、正常に戻る。
「え~。そこで普通に戻っちゃうの~?
もっと、攻め攻めで良いのに~。」
と、不満タラタラのユリンさん。
チラチラと、ミケさんを見るケビンさん。
あれ、いつ自分にミケさんの罵声が飛ぶか待っているご様子…。
うん…このチームメンバー、とってもヘビー…。
トロイメンカッツェへのオイラの入隊祝いのパーティーも終わり、
翌日に、生前に父さんが、余裕が出たらインストールしてみろと言っていた、
あの謎のペタバイトディスクを、
せっかくメカニックでコンピューターに詳しいマカロニさんが居るのだから、
インストール作業をマカロニさんにお願いしたところ、
さっきの大惨事だったっていう…。
うん、マカロニさん、腕は良いんだけど、
作業にのめり込んでいる時は、正直、引きます…。
「よし、アプリのインストールが完了しました。」
マカロニさんが、38のディスクソケットから、
ペタバイトディスクを取り出してケースに入れる。
しばらくの後、
38の中央にあった用途不明の謎の装置から、
メチャクチャ可愛い美少女の3Dの立体ホログラムが現れた。
幼げだけど整った顔の、お団子頭の女の子が、
白を基調として青の混じったドレスを着た姿で佇んでいる。
「何、コレッ⁉」
驚くオイラ。
「わ~、カワイイ!」
ユリンさんが感嘆の声を上げる。
「3Dアバターというモノらしいです。
OSを擬人化したキャラクターの絵を、
ホログラムにするというアプリですね。」
「前から、38の、
この装置、何の為にあるのか謎だったけど、
こんなモノだけの為に、こんなにスペース取っていたのッ⁉
すんごい無駄な事にマシンの容量を使っているよねッ⁉
この装置とアプリ、ぶっちゃけ、無くて良くねッ⁉」
マジ、どんだけ無駄な装置なのッ⁉
「いえ、これ、良く見れば分かりますが、
普通のホログラムと違って、どの角度から見ても、
ちゃんと見えるようになっているのですよ⁉
しかも、OSの人工知能の意思で動くのですよ⁉
実は、科学の結晶ともいえる、とてつもなく凄い事しているのですよ⁉」
と、マカロニさんが興奮気味に言って来る。
「う……う~ん……。
芸術とかも分からないっスけど、
科学の凄さも、オイラには、あんましわかんないっスね。
まあ、マカロニさんが、そこまで褒めるアプリなら、
まあ、良いモノなんしょうね。
まあ、だから、このままで使いますかね。」
うんうんと頷き納得するオイラ。
『マスター。
この真の姿の私を見て、私の呼称を、
この姿に相応しい可愛らしい呼称に変える気になったでしょう?』
と、38のアバターが、オイラにウィンクをしてくるが、
「いや、38は、
もう、38のままでいいんでないの?
主操者を父さんからオイラに変えてから、
ここまでずっと38って呼んでいたから、
何か変えるとシックリ来なそうだし、
38の方が何か親しみを感じるしね。」
うん、その方がしっくり来るよね。
『私の、この愛らしい真の姿を見ても、
その呼称を選ぶマスターのセンスは、
とてつもなく異常であると判断します。』
38のホログラムが、じと目でオイラを冷たく見てくる。
あれ? オイラそんな目で見られるほど悪い事したっけ?
「でも、38ちゃんが、こんなカワイイ女の子なら、
ネコやらせられないなぁ。」
「うん?
ユリンさんが良く言っているネコってのは、
女性だと無理なポジションなんスか?」
「無理だなぁ~。
アダム君と、アダム君のヘブンを行う、
重要ポジションだからね!」
どういう事なの⁉
何で男女じゃ成り立たない方程式に、オイラを導入しているの⁉
「今までは38ちゃんの声を、
ショタっ子ボイスだと脳内変換していたけど、
この見た目じゃ、アダム君のヘブンを担ってもらうのは無理だなぁ~。」
ショタっ子って何か気になるけど、
聞くと更にやぶ蛇を突きそうで怖い…。
「まあ、アプリのインストールは、これで良いでしょう。
では、次は、ロクスリー君のG選びですね。」
「うん?
オイラのG選び?
オイラのGは、乗ってきたゲズで良いのでは?」
マカロニさんの発言の意図が分からず聞き返してみる。
「せっかくファトス村で、
ゲズだけでなく、ザヌスやガトナスも強奪して来たのですから、
ロクスリー君が、それらのGに適正があるか見る方が、
良いと思うんですよね。」
「やね。うちらの仕事は荒事が多いんやから、
ロクスリー君が、ゲズより性能の高いGに適性があったら、
戦力アップになって、仕事も、し易くなるしね。」
マカロニさんの言葉をミケさんが次いで解説してくれる。
「まあ、確かに、そうっスね。
ザヌスやガトナスに乗れたら、
オイラの戦績も、少しはマシになるかもっスね。」
「まあ、とりあえず、ザヌスとガトナスに乗って、
シミュレーターを起動すりゃ良いんじゃねぇの?」
ケビンさんが、ミケさんからの罵声を待ちきれなくなった様子で、
口を挟んで来る。
「ですね。
では、Gデッキに行きましょうか、ロクスリー君。」
「ハイっスよ!」
Gデッキに、
オイラと、38、
ミケさんと、ケビンさんと、
ユリンさんと、マカロニさん、という、
トロイメンカッツェのG部隊揃い踏みで訪れ。
「まずはガトナスから行って見ましょう。
38さん、操縦方法のチューニングは、お願いします。」
マカロニさんが、ガトナスへの搭乗を、
促して来る。
『お任せ下さい。
マスター、ガトナスへの接続をお願いします。』
と、38が応える。
「ほいさ。
じゃあ、38、
いつも通り、チューニング頼むな!」
ガトナスのコックピットに乗り込み
38を接続させる。
『了解です、マスター。』
という38 の声の後、数舜で、
『マスター。
ガトナスへのチューニング、完了致しました。』
と、凄まじく手早く仕事を済ませる!
「コックピットのハッチを閉めて下さい。
シミュレーターの起動は、外部からボクがやります。」
「ほいほいさ。」
ガトナスのコックピットのハッチを閉める。
ガトナスのコックピット内の360度モニターが起動する。
「では、シミュレーターを起動します。
シミュレーターでは、市街地のMAPで、
ゲズ3機と戦って貰います。
ガトナスの本来の力が発揮できれば、
何とか倒せる強さに調整しておきます。
では、ロクスリー君、どうぞ。」
そうマカロニさんに言われてから、
ガトナスの360度モニターが、
さっきまでのGデッキの景色から、
市街地に景色が変わる。
シミュレーターが起動したって事なんだろう。
『マスター、
右舷より敵小隊、こちらに接近。』
「ガトナスは高機動近接格闘機体なんだから、
防戦より、こっちから攻勢に出る方が良いよね!
よし、こっちから攻めちゃうぞ!」
ブースターを噴かせて敵小隊に突撃!
「って、うぇッ⁉ 加速し過ぎ⁉」
噴かしたブースターを適正に処理できず、
敵小隊を追い越してしまう。
「ちょっ…ど…どこまで行くの⁉
止まれ! 止まれってば⁉」
何とか止まるが、こちらが体勢を整える前に、
後ろからゲズのバズーカが襲ってくる⁉
ちょ…まっ⁉
「と…とにかく後ろを向かなきゃ!」
さっきのガトナスの加速性を加味して、
できるだけゆっくり振り返るが、
「ああぁぁ…⁉」
ゆっくりガトナスを振り返らしていると、
ゲズのバズーカが、ガトナスの胸部コックピットに直撃!
「流石にゆっくり過ぎた⁉」
アラートが鳴り、モニターが赤く明滅し、
360度モニターの景色は市街地から、
ソルファージュのGデッキに戻った。
「ガトナスはダメですね。
ガトナスの高機動に、ロクスリー君が対応できてないです。」
「す…すみません…。
でも、重装甲のザヌスなら!」
と、意気込んで、今度は、ザヌスに搭乗し、
また、シミュレーターを起動!
……したんだけど…。
「ザヌスもダメですね。」
マカロニさんが無情にも告げてくる。
重装甲砲撃型FGのザヌスなら、
ゴリ押しできると思ったんだけど、
早々に敵小隊に囲まれて、重装甲で重くて脱出できなくて、
ボコられて撃墜されたっていう…。
どんだけダメなの、オイラ…ッ⁉
『マスターの弱さは異常であると判断します。』
「やめて38‼
もうオイラのライフはゼロよッ⁉
ダメなのはオイラ自身が一番良く分かったから、
これ以上、傷口に塩を塗らないでッ‼」
耳を塞いでイヤイヤするオイラ。
「ハイ、もう良いですよ、ロクスリー君。
ザヌスから降りて下さい。」
パンパンと手を叩いて、マカロニさんが、
オイラに下乗を促す。
「は…はいっス…。」
失意に埋もれながら、下乗するオイラ。
「う~ん…これは、あれですね。
ゲズをベースにザヌスとガトナスのパーツを使って組む方が良さそうですね。」
マカロニさんが、うんうんと何か納得した感じで一人頷く。
「うん? ゲズをベースに…なんスか?」
オイラがオウム返しに聞くと、
「まあ、見ての、お楽しみですよ。
今から少し作業しますので、少々お待ち下さい。」
と、メガネを中指でクイッと上げながらマカロニさんが言う。
それから、直ぐに、マカロニさんが、
Gデッキ内で、作業用メカっぽいモノを複数操作して、
ザヌスとガトナスを1機ずつ、解体して行った。
そして、オイラのゲズカスタムに、
分解して確保したザヌスとガトナスのパーツを組み込んで行く。
両手の甲をガトナスの甲に替え、
ガトナスのスタンアンカーを内蔵。
脱出ポッドがある重要部分の胸部を、
コックピットはゲズのままで、
装甲を耐久性のあるザヌスの胸部装甲に変更。
左腰部にガトナスのレーザーソードを装着。
右腰部にザヌスの大型バズーカを装備。
両外腕部をザヌスに替え、
ザヌスのレーザーガトリングガンを搭載。
更に、脚部をザヌスに替え、
ザヌスのホバースラスターを付けた上で、
ゲズに元からあった収納型ライドブレードを、
通常時とホバー時とライドブレード展開時に切り替えて、
収容と展開の使用が可能にカスタム追加増設。
そして、背部に、垂直ミサイルと、盾を、
ケズカスタムの時から引き継いで装備。
各所に別々のFGのパーツが使われている為、
赤と白と黒と緑と深緑と多彩色のボディーカラーになって行った。
「完成です。」
マカロニさんが作業を始めてから、
モノの10分ほどで、ゲズの改修作業が終わった。
凄まじい作業の速さに声も出ない。
「ロクスリー君の操者適正を鑑みて、
Gのベースをゲズにし、ザヌスとガトナスを1機ずつバラして、
それらのパーツを流用して、ザヌスとガトナスの装備を搭載した、
CFGのゲズに改修しました。
元からアンテナを増強されていてライドブレードを増設されていた、
CFGだったゲズを、
更に改修しましたから、
呼称は、ゲズC²と言ったところですね。」
一仕事やり終えた後の良い笑顔でマカロニさんが言って来る。
「す…凄いっスよ、マカロニさん!
このゲズC²なら、
オイラも少しは頑張れるかもです!」
感激に、マカロニさんの手を取ってブンブン振るう。
「そう言って貰えるとメカニック冥利に尽きますね。」
ニッコリ笑顔で答えるマカロニさん。
「さて、ロクスリー君のGも出来たし、
そろそろメインイベントと行こか、マカロニ。」
と、ミケさんが声を掛けてくる。
「メインイベント? まだ何かするんスか?」
ミケさんの言わんとする事が分からず聞き返してしまう。
「シュタイガーンバオアーの性能テストや。
データを取る為に、うちらが1人ずつ乗り込んで、
シミュレーターを起動するんや。」
「うん?
シュタイガーンバオアーには、
ミケさんは強奪時に乗り込んで適性が合わなかったのでは?」
「まあ、そうやね。
やから、今日は、ユリンとマカロニとケビンに乗って貰おう思ってな。」
「でも、シュタイガーンバオアーは、
ミケさんでも扱いきれなかったGっスし、
ユリンさんたち、大丈夫っスかね?」
「まあ、そこは出たとこ勝負よ。
実戦で使おうってワケじゃないんだから、気楽にできるしね。」
ユリンさんが、ウンウンと自分に言い聞かせるように頷く。
「ほな、まずはユリンからや。」
「オーライ、リーダー!」
ユリンさんが、シュタイガーンバオアーのコックピットに乗り込み、
マカロニさんがシミュレーターを起動させる。
そして……。
「このKG、オカシイよ‼
このスーパー砲撃超人のユリンちゃんが、
砲撃戦で、こんなにボコられるなんてオカシイよ‼」
ユリンさんが泣きダッシュで、
シュタイガーンバオアーのコックピットから出て来る。
シミュレーターを起動して直ぐに、
ミケさんが搭乗した時と同じで、ユリンさんも気分の悪さを訴え、
ミケさんの時と同じく、
本来の操者能力を発揮できず、
敢え無く撃沈という……。
「リーダーの言っていた通り、
妙にクセがあるよ、このKG!
そう、このKGが悪いの!
エンジェルシードだったら、ユリンちゃん、こんな事ないもん!」
惨憺たる結果に、キレ気味のユリンさん。
「あ~。
やっぱし、CAPAZってプログラムが、
CAPAZドライブっていう起動状態に勝手になって、
脳波サンプリングってのが起こって、
操縦方法が、通常操縦方法から、脳波操縦ってのに変わって、
メチャクチャに動かし難くなった感じか?」
と、ミケさんが、シュタイガーンバオアーの強奪時に、
言っていたのと同じ事を、ユリンさんに塔が…。
「え? CAPAZドライブ?
脳波サンプリングと、脳波操縦?
そんなのは起こらなかったけど、
乗って直ぐに、メチャクチャな頭痛が起きて、
操縦が、メチャ重くて、
直ぐに撃墜された感じだったよ?」
と、ユリンさんが、素っ頓狂な声を上げる…?
「え? CAPAZドライブっちゅうのが発動せんかった?
でも、発動せんかったんやったら、
ユリンの時より、うちの時の方が適性が合うんか?
その割に、
CAPAZドライブが発動しとった、うちの時も、
今回のユリンの時も、どっちも適正が合ってない感じに、
動きが、どっちも悪い上、メチャクチャな頭痛のオマケ付き。
どういう機体やねん、この子…?」
と、シュタイガーンバオアーの謎スペックに、
ミケさんが、う~んと悩むが、
「ちょい、もう一回、
うちが、シュタイガーンバオアーを試す。
マカロニ、搭乗後に、外部からシミュレーター起動を頼む!」
と、シュタイガーンバオアーに意気込んで乗り込む。
だけど、
「あん?
シミュレーターを起動する前から乗り込んだだけで、
CAPAZのドライブが発動しとる?」
と、驚きの声を上げるミケさん。
「これは……どういう機体なんでしょうね…?
とりあえず、せっかくですから、
データだけは取って置きますね。
シミュレーター、起動します。」
と、シュタイガーンバオアーの妙な状態に、
困惑しながらも、シミュレーターを起動すrマカロニさん。
「何や、ホンマ、よう分からん機体やが、
取れるだけのデータは、折角やから取っとく!」
と、吠えるミケさんんだったが……。
「この子は、ホンマ、何やねん⁉
適性が合ってるぽい、うちも、
適性の無いっぽいユリンと同じくらいしか、
シミュレーターの戦績が変わらんぞ⁉
どうなてんねん、この子⁉」
と、嘆きと驚きの声を上げる。
「まあ、CAPAZという謎のプログラムが、
このKGに内蔵されており、
ユリンの時と、ミケさんの時で、
起動するのと、起動しないのが、入れ替わるのと、
適性が合ってないユリンの時と、
適性が合ってCAPAZが発動様態の、
ドライブという状態になった様な、ミケさんの時も、
どっちにしろ、パイロットの操縦能力を下げる様である事が、
判明しただけでも収穫ですよ。
では、次はボクが行きますかね。
シミュレーターもシュタイガーンバオアー内で、
ボクが起動しますから、皆さんは、待っていて下さい。」
そう言って、マカロニさんがシュタイガーンバオアーに乗り込んだ。
そして……。
「これは……予想以上の扱いにくさですね……。
その上で、ボクではCAPAZドライブは発動しませんでした。
その上で、シミュレーターの戦績で、
ドライブが発動するミケさんの時と、
発動しなかったボクとユリンの時の違いは、
ミケさんが乗った時のドライブ状態だと、
脳波操縦で動かす様に、操縦方法が変わる点ですが、
そのミケさんを乗せてドライブ状態になった時でも、
ドライブ状態になってなかった、
ユリンやボクたちが乗った時と、
ほぼ変わらないくらい、
CAPAZに操縦が疎外されて、
みんな、違いがほぼ無いくらいに、
酷い惨状になるのは確認できました」
マカロニさんがシミュレーターを終わらせ、
シュタイガーンバオアーから出てくる。
シュタイガーンバオアーを降り、
「しかし、これは、
相当、扱いが難しい機体ですね…。」
マカロニさんも、気分の悪さを訴え、
やはり本来の操者能力を発揮できず、
ボコられて撃墜っていう。
「これ、オレが乗る必要ねぇんじゃねぇの?
誰が乗っても、ダメなんじゃねぇの、このKG?」
ケビンさんが、渋い声を出す。
まあ、この惨憺たる結果を見ると、オイラでも、そう思うしね。
「あかんて。
アイツから、ケビンのデータも取れ言われてるんやから。
うちも、このKGやと、ケビンでもアカンとは思うけど、
アイツのオーダーは、聞かんと面倒やし。」
「へいへい。了解ですよ。
じゃあ、サクッと乗ってサクッと終わらせ……」
と、ケビンさんが軽口を叩いて、
シュタイガーンバオアーに乗り込もうとしたところで、
ソルファージュのアラート音が鳴り響いた!
「な…なになにッ⁉ 何スかッ⁉」
いきなりのアラート音に慄くオイラ。
「リーダー、前方よりG反応多数!
このG反応は、ラフィンスカルの部隊です!」
セリアさんがGデッキ内のコンソールのモニターに通信を入れてくる。
「ら…ラフィンスカルの部隊⁉
昨日の今日なのに、スナッチャーザインが、
リベンジに来たって事っスか⁉」
「分からん。けど、可能性はある。」
ミケさんが冷静に言ってくる。
「とにかくや!
相手がラフィンスカルなら、
二度と、うちらに楯突く気が起らんように徹底的に叩くだけや!」
ミケさんが、指をボキボキと鳴らしながら、
やる気マンマンという感じで言ってくる。
昨日の恨みがあるからか、目が割と座り気味で怖いです!
「み…ミケさん! 撤退! 戦略的撤退をしましょう!
名誉の負傷より、実のある撤退を選んだ方が、良いと思うんスよッ!」
ミケさんに、すがる様に懇願するが、
「こういう商売は、舐められたらしまいや!
挑んでくる奴は、徹底的に叩く!」
と、やる気マンマンのミケさん。
「総員、第一種戦闘態勢!
KGと、
FG部隊展開や!」
ミケさんの号令を聞き、
「あいさ、姐さん!
ラーゼンレーヴェ、出るぜ!」
「よっし、エンジェルシードならユリンちゃんは最強って、
教えてやるんだから! 行っくよー!」
「まあ、仕方ないですね
フェストゥング、行きますよ!」
ケビンさんたちが、次々に出撃して行く。
「あ…あの~。オイラは、艦内で、後方待機ってワケには……。」
「あんッ⁉」
ミケさんが、ギロッと鋭い目で睨みつけて来る。
「ヒッ⁉ ろ…ロック=ロクスリー!
ゲズC²で、出撃します!」
ミケさんの強い眼力に慄きつつ、
成り行きでゲズC²で出撃するオイラ。
「ミケ=スターライト!
タイニーダンサー、出るで!」
ミケさんも出撃して来る。
「さて、どう展開して来るんや、ラフィン……」
と、そこでミケさんが言い淀む。
うん、オイラも一瞬、どうなってんの?と、思考が止まった。
ラフィンスカルのメンバーが、
オイラたちトロイメンカッツェにではなく、
オイラたちの前方3キロ先程の地点で、
戦闘機と思われる機体を追い回して攻撃していたからだ。
あれ⁉
ラフィンスカルは、
オイラたちを狙って来たんじゃないの⁉
「リーダー、ラフィンスカルの奴ら、
うちじゃなくて、あの戦闘機狙いみただけど、どうするの?」
「それに、見たところ、リーダー機が居ません。
スナッチャーザインは居ない様ですよ?」
「こっちは、昨日に襲われた恨みもあるし、
格の違いを教える為にも、ラフィンスカルを殲滅や!
スナッチャーザインが居いひんでも、
アイツらを叩けば、スナッチャーザインも、
うちらに楯突く気が失せるやろ。
ついでにあの戦闘機、助けたろ!」
「了解です、姐さん!」
「OKよ、リーダー!」
「了解ですよ、ミケさん!」
「あ…あの…オイラは……」
「ロクスリー君も前線な!」
ミケさんが、オイラが全てを言う前に釘を刺す。
「は…ハイっス…」
涙目のオイラ。
ああ…このパターンは…またデッドループしそうな気がする…。
「大丈夫だって!
オレたちもフォローするからよ!」
「今日の相手部隊にはスナッチャーザインも居ませんし、
連携を取ればロクスリー君でも何とかなりますよ。」
「ま、ユリンちゃんたちを信じてよ!
フォローは厚くするからさ!」
「りょ…了解っス!
だから、マジ何とかして下さいっス!
オイラだけじゃ無理っスもん!」
ケビンさんたちに縋りつくオイラ。
「よし、ほんなら、行動開始や!」
ミケさんが号令を掛ける。
「さぁ、派手に暴れるぜ!
アリーエルスラスター!」
ケビンさんがラーゼンレーヴェのアリーエルスラスターを、
解放して突撃する。
「な…何だ⁉」
「あ…アレは…ラーゼンレーヴェ⁉
トロイメンカッツェの部隊だと⁉」
ラフィンスカルのメンバーたちが、
ケビンさんのラーゼンレーヴェの姿を見て、
驚きの声を発する。
「いきなり燃費度外視だ!
食らえよ! Aトライバレル、チャージレーザーだ!」
ラーゼンレーヴェのAトライバレルが、
チャージレーザーを放つ!
ラフィンスカルの部隊が、
回避軌道を取ろうとするが、
偏向率が高すぎて回避しきれない!
「クソッ! 右足に被弾した⁉」
「こっちは頭部だ! クソったれ!」
Aトライバレルのチャージレーザーによって、
ラフィンスカルの皆さんが、次々に被弾する!
「OKや、ようやった、ケビン!
下がってユリンに補給してもらい!
ユリン、ケビンを頼むで!
ロクスリー君、マカロニ、砲撃!
その隙に、うちが斬り込む!」
「了解です、姐さん!」
「OKよ、リーダー!」
「了解です、ミケさん!」
ケビンさんたちが口々に了承の旨を告げる。
「ほ…砲撃…オイラで行けるのかッ⁉」
砲撃戦なんて自信は全くないけど、
出たとこ勝負……なのかッ⁉
「え~い! やるだけやってやるっス!」
ゲズC²の追加武装の、
大型バズーカをラフィンスカルの部隊に打ち込む!
けど、やっぱダメだ! 軽々回避されるてるッ⁉
「ロクスリー君の砲撃で浮き足立ちましたね。
その隙を見逃すほど、ボクは甘くないですよ?」
そこに、マカロニさんのフェストゥングの、
遠距離用大型レーザーキャノンが追撃で放たれる!
「クソッ! 回避した着地点を狙われたッ⁉」
ラフィンスカルのジーナが、
フェストゥングの砲撃で足を撃ち抜かれる!
「おお、マカロニさん! ナイスです!」
「どんどん砲撃して下さい!
ロクスリー君の砲撃で、
敵が浮き足立ったところを、
こちらも追撃で砲撃させて貰いますよ!」
「そういう事なら! 了解っス!」
オイラの下手な砲撃でも隙を作る目くらましくらいにはなるんだ!
「さて! ほな、そろそろ、真打登場って奴や!」
フェストゥングの砲撃で戦列が崩され、
その間をタイニーダンサーが、滑空して斬り込む!
「トライバレル! レーザーソードや!」
タイニーダンサーのトライバレルの銃剣が閃く!
「クッ…振り切れねぇッ⁉」
ラフィンスカルのガトナスが、
レーザーソードで応戦しようとするも、
そのレーザーソードを握った右手を斬られ、
無力化される!
「そこの戦闘機!
ここはうちらが何とかするから、
君は、うちらのGSの中に退避し!」
ミケさんが戦闘機に声を掛ける。
「了解です! ありがとうございます!」
戦闘機から、白のクロースに、
黒のパンツを履き、黒のジャンバーを着た、
黒髪でクセっ毛のワカメ髪の青年が通信して来る。
「え~い!
ボスが居なくてもオレたちゃ泣く子も黙るラフィンスカルなんだ!
こんな事でやられてたまるか!
オマエら! 戦闘機に集中砲火!
アヴァドンたちは、あの戦闘機を庇うつもりだ!
なら、一緒に撃墜してやれ!」
うがっ⁉ ラフィンスカルのザヌスに乗った人が、嫌な指示を出してきたッ⁉
「へへっ!
その戦闘機が落ちちゃ困るんだろ?
なら、一緒に撃墜してやるぜ! ヒャッハー!」
ラフィンスカルの部隊が、重戦闘機に集中砲火を浴びせるッ⁉
「クッ……PBLH展開!」
ミケさんのタイニーダンサーが、咄嗟に、
あの掌のレーザーシールドで攻撃を防ぐ!
「ユリン! ラーゼンレーヴェの補給、もう済んだか⁉」
「バッチリOKよ、リーダー!」
「なら、うちは、
この戦闘機をソルファージュまでエスコートするからケビンは前線に移り!
ロクスリー君と、ユリンと、マカロニも、
前面に出て、この戦闘機、護ったってや!」
「了解だ、姐さん!」
「おっまかせー!」
「了解です、ミケさん!」
ケビンさんたちが口々に了承の意を示す。
「ちょっ…オイラが前衛とか無理ですって!」
「全体的な戦力を考えて、
今はロクスリー君も前面に出なアカンって事と、
今ならロクスリー君でも前面で戦えるってうちが判断した!
異論は認めん!」
「そ…そんなぁ…。」
このパターン……またデッドループするんじゃ…ッ⁉
「大丈夫だって兄弟!
オレらが居るんだからさ!」
「だいじょぶ、じょぶ!
ユリンちゃんのエンジェルシードを頼っちゃってよね!」
「とにかく、ロクスリー君は弾幕を張って下さい。
フォローはしますから!」
「皆さん、お願いっスよ!
オイラだけじゃお話にならないんスから!」
涙をちょちょ切らしながら懇願するオイラ。
「ほな、状況開始!」
そのミケさんの指示の後、
「あいさ! アリーエルスラスター!」
ラーゼンレーヴェが急加速でミケさんと交代で前面に出る。
「ちょっと省エネってね!
Aトライバレル!
ノーマルバレットだ!」
ラーゼンレーヴェのAトライバレルが、
ラフィンスカルのゲズ目掛けて実弾バズーカを放つ!
けど、レーザーを纏ってない⁉
Aトライバレルの、あのバレットってバズーカ、
EN消費を抑えて、
そのまま撃つ事もできるんだ⁉
「クッ…右腕を持って行かれたッ⁉」
レーザーを纏っていないとはいえ、
バレットの直撃でゲズの右腕が吹き飛ぶ!
「お…オイラで行けるのか…ッ!?」
とにかく大型バズーカを乱射する!
でも、やっぱダメだ…全然当たらないッ!?
「どこ狙ってやがる!」
「野郎! 舐めんなよ!」
あーッ⁉
ラフィンスカルのヒャッハーな方々を怒らせてしまったご様子ッ⁉
「このカラフルゲズ野郎が! 沈め!」
ラフィンスカルのジーナ2機が、
オイラに向かってレーザーライフルで狙撃して来る!
あぁぁぁぁ…回避が間に合わないッ⁉
「おっと、残念ながら、レーザーは利かないんですよ。」
ジーナ2機のレーザーライフルの攻撃を、
マカロニさんのフェストゥングが肩代わりし、
真正面から受けたのに……そ…相殺したッ⁉
あれ、きっと、昔に父さんが教えてくれた、
A粒子を応用して、
展開するのにENを常に使う上、
レーザーシールドと違って、レーザーを凝縮して盾にするんじゃなく、
機体の周りにA粒子をコーティングするだけだから、
実弾は防げないらしいけど、
代わりに、恒常的にレーザーを相殺するっていう、
Aフィールドバリアって奴なんだッ‼
「そんなのアリかよッ⁉ 反則じゃねぇかッ⁉」
ジーナ部隊が戦々恐々としてるところを、
「足を止めるなんて、
ユリンちゃんに撃ってくれって言っているのと同じよ?
Lトライバレル! 掃射しちゃうんだからッ!」
ユリンさんのエンジェルシードが、
Lトライバレルのレーザーと実弾を交互に撃つ!
「そ…速射性が……ハンパねぇ…ッ⁉」
間隙の無い、
凄まじい数のレーザーと実弾の弾幕が、
ジーナ部隊を襲うッ!
「しかも…ッ⁉ 狙いが鋭い…ッ⁉
一発の威力は低いが直撃して来る…ッ⁉」
1機のジーナがLトライバレルのレーザーで頭部を破壊され、
もう1機がバレットで脚部を潰され、
2機のパイロットとも脱出ポッドで逃げる!
あのLトライバレルっての、
ミケさんが言ってた通り、
トライバレルやAトライバレルより、
威力を抑えてるみたいだけど、
十分威力があるのに、凄い速射性な上、
命中精度も、半端ないみたいッ⁉
あれで、弾数も多いらしいなんて、
あのLトライバレルってのも、
何てトンデモ兵器なのッ⁉
「え~い!
なら、あの支援用KGを狙う!
多少、砲撃が出来たって、所詮、支援用なんだろ⁉」
ラフィンスカルのザヌスが、
エンジェルシードに狙いを定め、
大型バズーカが胴体部に直撃したッ⁉
けど…む…無傷ッ⁉
「バカなッ⁉ バズーカが直撃したのにッ⁉」
「へっへーん!
ユリンちゃんのエンジェルシードは、
確かに支援用KGだけど、
スーパー砲撃超人のユリンちゃんに合わせて、
スーパー重装甲なのでしたー! 残念賞~!」
ユリンさんが、えっへんと、その豊満な胸を張る。
「ザヌスのバズーカの直撃で落ちないなんて、
あんなのどうしろってんだよ⁉」
ラフィンスカルの皆さんが、
エンジェルシードの無敵な超重装甲に、
唖然としていたところを!
「戦意喪失しているとこ、アレだが、トドメを刺すぜ!」
ラーゼンレーヴェが、Aトライバレルを、
右腰部にマウントし、
左腰部のオサフネの柄を取り、握る!
「行くぜ! オサフネッ‼」
長射程、超威力の、
巨大超絶長刀レーザーセイバーのオサフネを閃かせるッ!
「2機まとめて、頂くぜ!」
オサフネが、目の前のザヌスの首を斬り落としつつ、
その長刀、超威力の刀が、
そのまま、ザヌスの背後のガトナスの胴体をも真っ二つにするッ‼
「今なら、オイラでも行けるかッ⁉」
頭部が取れて索敵能力を無くした首なしザヌスの胴体に、
オイラのゲズC²の大型バズーカが直撃する!
「クソッ…脱出する!」
ザヌスの人が、脱出ポッドで逃げる!
「や…やったッ⁉ オイラでもやれたッ⁉」
オイラが感慨に耽る間もなく!
「ユリンちゃん! 砲撃、行っきまーす!」
「ボクも、忘れられては困りますね!」
エンジェルシードとフェストウンングの砲撃が、
ラフィンスカルの面々に直撃する!
「グアッ⁉ 何て弾幕だ⁉」
「こ…こんな奴ら、どうしろってんだ⁉」
ラフィンスカルの方々が、泣き言を言っているところに、
「理解したか?
オマエら三下じゃ、
オレたちトロイメンカッツェにゃ勝てねぇって事をさッ!」
ラーゼンレーヴェのオサフネが、更に閃く!
「ダメだ、こんなの勝てるワケがねぇ!
に…逃げるぞ!」
ラーゼンレーヴェのオサフネの一撃で、
胴体を真っ二つにされたガトナスと、
その後ろにまで剣戟を届かされ、
前のガトナス諸共に首を撥ねられるジーナを尻目に、
ラフィンスカルの方々がクモの子を散らす様に逃げて行く。
「ありゃ? うちが帰る前に終わったか?」
ミケさんのタイニーダンサーが、
ソルファージュへの戦闘機のエスコートを終えて戻って来た。
「よし、
オイラでも戦えるって分かったっスし、
追撃してボコっちゃいましょう!
いやぁ、こんなに戦闘が楽しいのは初めてっスよ!」
オイラがニタリ顔で言うと、
「あかん!
ロクスリー君は、今日乗ったばっかしの、
ゲズC²で慣れてへんねんし、深追いは禁物や!
それに、助けた子の状態や事情も気になる。
格の違いは十分に見せ付けた。
これ以上、追い掛けて、
窮鼠に喉笛咬まれる…、
っちゅう事態に陥ったらアホらしいしな。」
ミケさんが、諭す様に言って来る。
「まあ、あの戦闘機は無事だったみたいだし、
救出は成功したんだから、このくらいで良いんじゃない?」
ユリンさんが冷静に言って来る。
「まあ、調子に乗るなって事だ。
兄弟は、今回の戦闘で、支援攻撃はできるのが分かったけど、
まだまだ単騎駆けは無理だろ?
そんな状態で深追いしようってのはダメなんじゃねぇのって事だ?」
ケビンさんも冷静にオイラを諭して来る。
「了解っスよ。
じゃあ、ソルファージュに戻って、
さっきの戦闘機の人から事情を聞きましょうか。」
「ですね。
どうしてラフィンスカルに攻撃されていたのかは、
聞いておかないといけませんね。」
「よっし、
全機、ソルファージュに帰還や!」
ミケさんの号令の下、オイラたちはソルファージュに帰還した。
ソルファージュに着くと、
Gデッキでさっきの戦闘機のパイロットが、
オイラたちを待っていた。
オイラたちがGから降りるのを見計らって、
戦闘機のパイロットのワカメ髪の青年が声を掛けて来る。
「先ほどは、助けて下さり、ありがとうございます。」
ワカメ髪の人が、ペコリと深いお辞儀をする。
「そんな深々とお辞儀せんでもええって。
うちら、アイツらラフィンスカルとは因縁があって、
そのついでで助けただけやし。」
「いえ、それでも感謝してもし尽くせません。
ボクの名前はトニー=スミス。
トフィル村というところから来た旅行者です。
この重戦闘機のアウスブレンデンで、
諸国を漫遊して見聞を深めていたのですが、
この空域を飛んでいたところを、
いきなり、さっきのTSに襲われ、
応戦しましたが、多勢に無勢で、
弾薬もENも尽きかけて、
風前のともしびというところで、アナタ方が助けに来てくれたのです。」
トニーさんの説明を聞いて、
「それは災難やったね。
ラフィンスカルの奴ら、ホンマに見境ないね。
勝てると踏んだら、こんな旅行者まで狙うやなんて。
まあ、助かって良かったね、トニー君。」
ミケさんがニッコリ笑顔で返す。
「おっと、そっちの名前を聞いて名乗らんのもアレやな。
うちはミケ=スターライト。
TSチームのトロイメンカッツェのリーダーや。」
ミケさんが、自己紹介を始める。
「トロイメンカッツェのミケ=スターライト⁉
アヴァドンのミケと呼ばれている、あの⁉」
「まあ、嬉しくない呼び名やけど、
世間では、そう呼ばれとるね。」
「世間の風評でイメージしていた人物像と、
かなり違っているので、ビックリでした。」
「まあ、良う言われるし、
そういうのも、もう慣れたけどな。
とりあえず、ブリッジに上がろうか。」
ミケさんが、マトメという感じで、言って来る。
そこから、ブリッジに上がり、
ソルファージュのブリッジクルーや、
オイラを含めたトロイメンカッツェのメンバー全員が、
トニーさんに自己紹介をした。
オイラは、相変わらず、
父さんの息子って事で最初は興味を抱かれたけど、
戦果がアレだった為に、
G捌きの腕は似てない一般ピープル…、
って事でオチが付いた。
うん、世の中、世知辛いです……。
「しかし、トフィル村だっけ?
聞いたこと無い村だな。どこら辺にあるんだ?」
ケビンさんが、疑問点を、
はてなって感じでトニーさんに聞く。
「この大陸の最北にある村です。
あんまり交易もしていませんし、
Gも無い村なので、
逆にTSの方々には、
縁遠い村かもしれません。」
「なるほど。
強奪する価値のあるモノの無い村か。
確かにTSには縁遠いとこだな。」
ケビンさんが、うんうんと、頷く。
「ボクを助けて下さったこのご恩、是非、お返しさせて下さい!
アウスブレンデンの補給と整備が終われば、
しばらく傭兵として置いて下さい!
これでも、トフィル村では、旅行に出るまで、
自警団に入っていましたから、少しは戦えると自負しています!
もちろん、お代要りません! ボクのせめてもの感謝の気持ちです!」
トニーさんが、必死に訴えて来る。
「そこまで言うんやったら、
傭兵と言わず、うちらトロイメンカッツェのメンバーに入れたげるよ。
まあ、トニー君さえ良ければやけどね。」
ミケさんが、ニッコリ笑顔をトニーさんに向ける。
うん、この笑顔が反則級なんだよね、この人。
「は…ハイ! 是非お願いします!」
トニー君が二つ返事で答えた。
「よし、じゃあ、
今日からトニーもオレの兄弟の一員だ!
よろしくな、兄弟!」
ケビンさんが、トニーさんの背中をバシバシ叩く。
「よ…よろしくお願いします、ケビンさん!」
トニーさんが、恐縮しつつ返す。
「38ちゃんがロリっ子だったから、
ネコ要員が減ってしまったけど、新たなネコ要員確保だね!
トニー君、総受けな感じだし、良いネコ要員になるね!
難を言えば、ロクスリー君みたいに、
もっとショタショタしているショタっ子だったら良かったんだけどね!」
オイラはショタショタとかしているショタっ子とか言う奴なのか⁉
ちょい、すごいショタって何か気になるけど、
聞いたら今夜眠れなくなる様な恐怖を感じそうな気配がするので、
敢えてスルー!
「は…ハイ! 良く分かりませんが、ガンバります!」
トニーさん、ガンバル模様⁉
絶対に、深く意味を考えずに言ったでしょ、アナタ⁉
「うはっ!
ガンバるの、トニー君⁉
これは新たなジャンルのネコ要員!
アリなんじゃない? アリなんじゃないッ⁉」
ユリンさんが息を荒げる!
ヤバイ! ユリンさんの琴線に触れた模様!
出るぞ! アレが! 3倍の赤い奴、出ちゃう‼
ブバッ!
ユリンさんの鼻腔から、通常の3倍以上の勢いで、
赤い本流がトニーさんの顔面目掛けて噴き付けた!
「え…あ…だ…大丈夫ですか、ユリンさんッ⁉」
いきなりの狂乱の中でも、
ユリンさんを気遣うトニーさん、マジ天使!
「え~い!
会う子、会う子に病気出しおって!
いい加減、オマエのお花畑な脳は治らんのかッ⁉」
スパコンと、相変わらず、どこから出したのか分らないハリセンで、
ユリンさんを張り倒すミケさん。
「あぅ⁉ 出してない! 出してないよ⁉
花も恥らう純情乙女のユリンちゃんが、鼻血なんて出してないよッ⁉」
相変わらず、言い繕うユリンさん。
いや、その鼻腔から流れる赤い本流が、全てを物語っていますよ⁉
隠し様が無いですよ⁉
「まあ、ユリンのいつもの発作です。
稀に良くある事なので、敢えて関わらず、
放置して上げて下さい。」
マカロニさんがメガネを中指でクイッと上げながら説明する。
「は…はぁ…。まあ、大事が無ければ大丈夫です。」
イマイチ、状況を飲み込めてない風のトニーさん。
うん、まあ、オイラも最初は、
ユリンさんたちに驚くばかりだったから、
その気持ち、良く分かるよ……。
「トニー君、ゴメンね、
ユリンのせいで、こんなになっちゃって。」
セリアさんがタオルをトニーさんに渡す。
「ユリンちゃんは、これさえなければ、明るくて良い子なんだけどね。
ボクも、何度、鼻血を浴びせられた事か……。」
リッドさんが、遠い目をする。
うん、長い事、一緒に生活してる、お仲間さんみたいだし、
リッドさんも毒牙に掛かってそうだよね…。
「まあ、うちの病人共と、
まともに付き合うのは疲れるかもだが、
うちに入るってんなら、ボチボチ慣れて行ってくれ。すまんが頼むぜ。」
バーダック艦長が、ちょいバツが悪そうに言って来る。
「まあ、クセのあるメンバーやけど、
追々、慣れて行くって。
ほな、これからよろしくな、トニー君!」
ミケさんが綺麗に纏める。
「はい! よろしくお願いします、ミケさん!」
タオルで顔面の鼻血をふき取り、ニッコリ笑顔で答えるトニーさん。
天国の父さん、母さん。
極悪TSの、
最底辺の下っ端になったばかりのオイラに、
いきなり後輩が出来ました!
いきなり先輩風を吹かせたいところですが、
最初は安全策で、敬う感じで、
さん付けで話すところから始めようと思います。
オイラがトニーさんを顎で使う、
ステキな先輩ライフを送れる様に、
天国から見守っていて下さい!