第2話
「あぁ…ああぁぁぁ…ッ⁉」
絶望! 圧倒的絶望!
もうオイラ、普通の生活には戻れないんですよ⁉
故郷の人たちに指名手配されているんですよ⁉
「あぁ…ああぁぁぁぁ…ッ⁉」
『マスター。奇声を発するのは、それで本日で13回目ですよ?』
「ああッ! もうッ!
いつまでもピィピィ言っとらんと腹括りいや、君!」
38とミケさんが咎めてくるが、
オイラの目からは涙が溢れチョチョ切れている。
オイラが飲み込むには重すぎる現実に喘いでいるうちに、
38はミケさんに自身を紹介したみたいで、
ミケさんが38に何故か驚いてたっぽかったけど、
すぐに意気投合して、今に至るワケで。
「二人共、人ごとだと思っているから、そんな冷静なんスよ!
自分の故郷の村の人たちに指名手配されるなんて、
当事者になったら自殺モノっスよ⁉」
「まあ、確かに、なかなか無い事やろうけど、
なってもうたもんはしゃあないやん。」
『マスター、今の現実を受け止め、過去ではなく、
これからどうするかを考える方が建設的ではではないかと進言します。』
「いや、まあ、そう言われると、そうなんスけど…。」
言い淀みつつ考える。
オイラ、現在、
村人Aから新米極悪TSにクラスアップ…。
うん、無理。ヘビー過ぎる。
でも、ヘビー過ぎるからこそ、
あんまりマイナスばっかり考えていたら、
これから訪れるだろうもっとヘビー過ぎる現実に、
押しつぶされそうだなとは思う。
うん、
確かに、頭切り替えないと、
やっていられないかも。
「分かったっスよ!
とりあえず、今は、
うちの村の自警団から少しでも逃げましょう。」
「お、やっと落ち着いたね。
まあ、TSなんて、
くよくよ後ろ振り返りながらやっとったら勤まらんからね。
そういう風にふっ切るのが良いで。」
モニター越しに、ミケさんが、ニッコリと笑顔を向けて来る。
うわ、この人、普段から可愛いけど、
笑うと150%くらい更に可愛さが増すよ。
この笑顔は反則級です!
オイラがニヘラぁっと鼻の下を伸ばしていると、
『マスター、元から締まりのない顔が、
更に締まりがなくなっていますよ?
まだファトス村の自警団の勢力圏内です。
気を抜くには早いですよ?』
と、38が咎めて来る。
「分かったよ!
細かいなぁ、38は。」
『マスターがノンキ過ぎるだけです。』
そのオイラと38のやり取りに、
「君ら、息合っとるね。
仲良し過ぎて、ちょっと妬けるやん?」
と、ミケさんがニコニコ笑顔のまま言って来る。
「まあ、長い付き合い…『いえ、ただの腐れ縁なだけです。』」
オイラの言葉に、
38が被せて来る。
「うぉい38!
せっかくオイラが良い感じにオイラたちの仲を説明しようとしたのに、
何よ、その素気ない言い方⁉」
『事実を述べたまでです。』
「ぐぬぬ…。」
38に言い含められていると、
「フフ…。
ホンマ仲が良いんやね、君ら。」
ミケさんがモニター越しにニコニコ笑顔のままウィンクしてくる。
ヤバッ、これは見惚れちゃう。
何て破壊力なんだ。奴の性能は化け物か⁉
と、そんな事を思っていると、
「っと、そろそろ合流するかな。」
と、ミケさんが言って来る。
「合流っスか?
そういえば、ミケさんは、
TSチームのリーダーって話でしたけど、
何で、お仲間さんと一緒に逃げてないんスか?
お仲間さんと一緒に行動していた方が安全なんじゃないっスか?」
当然の疑問をミケさんにぶつけてみる。
「チッチッチ。
うちは囮や。」
ミケさんが指を左右に振りながら答えて来る。
「囮?」
想像してない答えが返って来て、
オウム返しに返してしまう。
「まず、ファトス村の自警団の昼食に下剤を入れる。
これで、大半の自警団は腹を下して行動不能や。
けど、何人かは昼食をまだ食べてなくてピンピンしとるやろう。
そやからや、
うちが一番目立つこのKGのシュタイガーンバオアーを、
ワザと目立つ様に盗む。
そして、ワザと分かりやすい逃走ルートで逃げる。
これで、ピンピンしとる奴らも、うちを追い掛けてきて、
自警団倉庫は腹下して行動不能になったやつらしか残っとらん。
そこで、うちの仲間が自警団倉庫のFGを、
安全に全部かっさらうって寸法や。」
ミケさんが、悪戯をした時みたいな顔をして、親指を立てて来る。
「ふぇ~。」
そんな事をしていたんだ。
ミケさんは自称有名人との事だけど、
ここまでの事を考えられて実行に移せるっていうのは、
本当に有名になるほど凄い人なのかもって思わせられる。
「で、うちを追い掛けて来た自警団も、
うちが事前に仕掛けたスタンネットで一網打尽、
…ってアンバイのはずやったんやけど
…ロクスリー君に見抜かれてもうて、
あの時は焦ったで。
ロクスリー君、良い目しとるよね。」
「いや、アレは、目が良いとかっていうより、
一度体験したからというか…。」
「うん? 一度体験した?」
「何か、オイラ、
あの場面で一度失敗して死んじゃって、
生き返ったら、あの場面からで、
既に体験したから、どこにスタンネットがあるのか分かったっていうか…。」
このオイラの発言を聞いて、ミケさんが、う~ん、と唸る。
「既視感って奴かな?
始めて見たはずやのに、
前に見た事がある様な気がするって奴やね。
まあ、ロクスリー君は、感が良いんやろうね。」
「う~ん…。
それにしては、リアリティーあり過ぎな気もするっスけど?」
「既視感は、個人差があって、
人によったら、間違いなく昔に体験した、
って思う事もあるそうやし、
ロクスリー君も、そういう感じなんちゃうかな?
まあ、何にしても、感が良いのは、使えるよ。
その鋭い感、これからはうちらの為に使って貰うで?」
「まあ、こんなオイラなんかで役に立つならOKっスよ。」
「うん!
ありがとうやで、ロクスリー君!」
そうホコホコ笑顔をミケさんが向けてくれるが、
……うん? …あれ?
「ミケさん?
今、思ったんスけど、
うちの村の自警団は、
さっきの副団長さんたちはノックアウトですし、
それ以外の方々は下剤で腹を下してダウンしてて、
のたうち回ってる間に、
ミケさんのお仲間さんたちに、
自警団倉庫に残ってるFGを、
目の前で全部盗まれたんですよね?
なら、オイラたちを追って来るFGが、
無いんじゃないですか?
実は、もう、こんな急いで逃げる必要、無いのでは?」
ふと湧いた疑問をミケさんに投げるが、
「確かに、自警団のFGは、もう無いし、
うちらを追って来れる人員も、さっきの副団長たちくらいや。
でもな、一寸の虫にも五分の魂って言ってな、
そういう、やられたい放題の状況を経験した奴らは、怖いんや。
戦力のFGが全部無くても、そういう奴らは、
村の一般の人たちが使っとるWGとかを無理にでも借りて、
FG用の武器を無理やり装備したりして、
撃墜されるのを覚悟でも相撃ち狙いで特攻とか、
悔しさの余り無理やりでもしかねんねん。
その上、戦況を見て、
うちの仲間たちの慣れたGたちやなく、
扱いに慣れてへんこのシュタイガーンバオアーを狙ってきよったりして、
少しでも噛みついて傷跡を残そうとするもんなんや。
そうなったら、負けんにしても、こっちも損害が大きくなるからな。
TSっちゅうのは、一流のモンはな、
行動は大胆に、アフターケアは入念にするもんなんや。」
と、思ってもみなかった上、
本人の言うように凄い入念な答えが返ってきて、
「ふへぇー……。」
その考えつくされた油断ない対応の話に呆然としてしていると、
「っと、でも、そうは言ったけど、
そろそろ仲間もFGを、
全部盗んだ上で、合流してくれる頃やね。
まだ合流予定ポイントは、ちょっと離れてるけど、
そろそろ緊張も少しは緩んでええかもやね。
よし!
ほんなら、仲間と合流して、
仕事の打ち上げとロクスリー君の入隊祝いを兼ねたパーティーで乾杯や!」
ミケさんがモニター越しに、
手を上に付きあげて笑って言って来る。
そこに。
「残念ながら乾杯はできそうにないぜ?
ミケ=スターライトさんよぉッ⁉」
いきなり誰かが、こちらに通信をして来る⁉
『マスター、前方に機影多数。
こちらを囲む様に展開しています!』
38が冷静に報告して来る。
「うぇ…ッ⁉
な…何なのッ⁉」
うろたえるオイラ。
「誰やッ⁉」
今までのニコニコ笑顔から一転して、
強気な瞳でキッと前方を睨みながらミケさんが問う。
「ザイン=ウォルナス……ッ!
アンタと同じTSさッ!」
名乗って来た相手が、ワザワザ通信で姿を見せてくる⁉
金髪オールバックで浅黒い肌!
見るからに係わり合いになりたくない部類の相手だと分かる!
「ラフィンスカルのスナッチャーザインか……ッ⁉」
名乗りを上げて来たザインさんとかいう人に驚きつつも、
相手の出方を油断なく伺うミケさんに、
「何スか⁉ 知っている人なんスか⁉」
ミケさんで驚くなんて、
どういう相手なのかと、怯えながらオイラが聞くと、
「ラフィンスカルっちゅう、
相手が弱いモンやったら、
THからやろうが、
自警団からやろうが、
同業のTSからさえ強奪するっちゅう、
性質の悪いTSチームや。
リーダーのザイン=ウォルナスの、その見境ない盗み具合から、
付いたアダナが、横取りザインっちゅう意味で、スナッチャーザイン!
こいつの悪名は、よう聞くで。」
神妙な面持ちで、
ザインさんたちの事を解説してくれつつ、
隙を伺うミケさん。
って、何ッ⁉
その関わり合いたくない度MAXの相手ッ⁉
「おいおい、
自分は棚で、オレだけ悪者扱いかよ?
総強奪件数1057件。今日のを入れれば1058件。
そのどれもが徹底的に盗めるだけ盗み尽くされていて、
強奪したGの総数は万を超える。
その貪欲な強奪ぶりから、付いたアダナが、
底なし沼の魔王のミケという意味で、アヴァドンのミケ!
アンタの噂も良く聞くぜ?」
ザインさんとかいう人が半笑いで言って来る。
「な…何か、
ミケさんの方が凶悪そうなアダナじゃないっスか…ッ⁉」
「う…うるさいな!」
ミケさんがちょいキレ気味で言ってくる。
相当、このアダナ、嫌なんだろうなぁ。
「おうおう、オレを無視で盛り上がっちゃってまぁ。
けど、オレがここに来た用件は、何となく察しは付くだろ?」
ザインさんが笑いながらも鋭い目つきで、こっちをねめつけて来る。
「強奪したばかりで不慣れなこのKGを、
横から奪おうってやろ?
けどな、そうそう上手くはいかへんっちゅうねん!
いま、仲間に救難信号送ったからな!
確かに、今のうちらやったら厳しいかもやけど、
直ぐにうちの仲間が駆けつけてオマエなんかコテンパンにしたるからな!」
不利な状況ながら、強気の発言を貫くミケさん。
そのミケさんのタンカを聞いて、
「ほうほう。
言うね、言うねぇ。
けど、それはそれまでオマエたちが持てばの話だ!
野郎共、このお嬢さんに、世間の厳しさってモノを教えてやりな!
KGを捕らえた奴には特別報酬で金貨10枚だ!」
上機嫌で部下の人たちに命じるザインさん。
「ヒーヤッハー! 了解だ、ボス!」
「オレが特別報酬を頂いちゃうぜ!」
「いや、オレが貰うんだよ! へへへ!」
6機ほどのFGに乗った、
ヒャッハーな部下の皆さんたちが、
いやらしい笑いを浮かべながらこっちに向かって来る⁉
『マスター、敵部隊、
こちらを囲みつつ展開。
接近して来ます。』
ちょ…まっ…⁉
「ど…どど…どうするんスか、ミケさんッ⁉」
敵、群がる、群がる。オイラ、ビビる、ビビる。
「不慣れな機体の今のうちらやとコイツらの相手もムズいけど、
うちの仲間さえ来てくれたら、
こんな三下共なんか余裕で撃墜や!
そしたら、うちに盾付いた事を思いっきり後悔させて、
逆にアイツらのGを全部頂く!」
ミケさんが鼻息も荒く言って来る。
「いや、意気込みは分かるっスけど、
具体的にどうするんスかッ⁉」
「とにかく、時間稼ぎや!
とりあえず、そこの林の茂みに逃げ込んで籠城戦や!
林の中に居れば、多少は敵の攻撃を木々が遮蔽してくれるやろ!
籠城戦の鉄板や! 行くで、ロクスリー君!」
そう言って、早速、林の方に向かうミケさん。
「りょ…了解っス!
だから、何とかして下さいっス!
オイラの力じゃ、こんなヤバそうな人たちの相手なんてムリっスから!
マジ、お願いっス!」
涙目でミケさんにすがるオイラ。
「任せとき!
伊達に魔王の名は付けられてへんって事を見せたる!」
オイラの泣き声にミケさんが強気で断言する。
何て頼もしい!
林の茂みに身を潜め、ザインさんの部下たちを迎える。
「ロクスリー君!
当たらんで良い、とにかく相手の足止めや!
近づかさん様に弾幕を張り! うちも行く!」
そう叫ぶなり、
ミケさんはシュタイガーンバオアーのレーザーライフルを乱射する。
「了解っス!」
オイラも、ゲズのバズーカをザインさんの部下たちに向かって乱射!
オイラの腕じゃ当たりはしないけど、オイラだって、足止めくらい!
「フッ…フフフ…ハハハ…ッ!」
奥の方で、急にザインさんが大爆笑し始める。
「何や? スナッチャーザイン? 気でも触れたか?」
ミケさんがザインさんを睨みつける。
「いや、なに、嬉しくてねぇ。
オマエたちがオレの仕掛けにマンマと掛ったのが嬉しくてねぇッ!」
そうザインさんが言ったかと思うと、
「ヒャハハ! KGの後ろを取ったぜ!」
「特別報酬はオレのモノだ!」
ザインさんの部下たちが、
オイラたちの後ろからも現れて、
完全に四方を囲まれる⁉
「なっ⁉」
ミケさんが驚愕の表情を見せる。
「ど…どうなってんスか、ミケさん⁉」
「クッ…マンマと、この場所に誘い出されてもうた!
うちらがセオリー通り、
林を遮蔽物に籠城すると踏んで、
うちらがここに来たら囲める様に部隊を展開しとったんや!」
ミケさんが苦しそうに言う。
「フフフ…ハハハッ!
その通り! だが、まだあるんだぜ?」
ザインさんが笑いながらも目をギラつかせる!
すると、林の上からネットが落ちて来るッ⁉
「ウガッ…マジで⁉
今日、2回目なんだけどッ⁉」
スタンネット! まさかのスタンネット!
絡みついたネットが電気を流し、
ゲズとシュタイガーンバオアーのジェネレーターを麻痺させる!
「クッ…ネットまで仕掛けてたやなんて…⁉」
ミケさんが悔しそうに嗚咽を漏らす。
「へへへ…KGも~らい!」
ザインさんの部下が近寄って来て、
なされるがままにミケさんのシュタイガーンバオアーが運ばれる。
「コイツどうする?」
オイラのゲズをザインさんの部下の皆さんが間近に囲む。
「ゲズなんか二束三文にしかなんねぇーし、
バラしゃ良いんじゃね?」
「へへ…じゃあ、オレやる! オレやる!
一度、パイロットごと、Gを撃墜って、
やってみたかったんだよな! へへへッ!」
ザインさんの部下の皆さんが下卑た笑いを浮かべる。
「ちょっ⁉ ま…タンマ…⁉ ミ…ミケさん…! 助け…」
そこで、全身に衝撃を感じた。
ザインさんの部下の一人のゲズが、
オイラのゲズのコックピットに向けてバズーカを直撃させた衝撃が、
全身を貫いたんだ!
「思い出した……。死ぬってこんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「とにかく、時間稼ぎや!
とりあえず、そこの林の茂みに逃げ込んで籠城戦や!
林の中に居れば、多少は敵の攻撃を木々が遮蔽してくれるやろ!
籠城戦の鉄板や! 行くで、ロクスリー君!」
そう言って、早速、林の方に向かうミケさん。
「良かった! ここからなら、まだ何とかなりそう!」
何とかマシなところに戻れた事にホッと一息付くオイラに、
「な…なんや、ロクスリー君ッ⁉ また文脈おかしい事を言い出してッ⁉」
ミケさんが、驚きの声を上げて来るけど、
ノンキにそれに付き合う気はない。
だって、既にオイラたちの後方には、
ザインさんの部下たちがオイラたちを囲む為に、
迫って来ているんだから!
「ミケさん、強行突破! 強行突破です!
そこの林にはスタンネットが仕掛けてあるし、
もうオイラたちの後ろからもザインさんの部下が、
迫って来てるっス!
林で籠城したらザインさんたちの思うつぼっス!
だから強行突破で囲まれる前に逃げて、お仲間と合流っス!」
切羽詰まったオイラの言に、
「な…ッ⁉」
ミケさんが驚きの表情を見せるが、
直ぐに林へのダッシュを辞め、ザインさんたちとの間合いを計る!
そこで、
「何で分かったんだ、アイツ⁉」
ザインさんの部下の一人が、驚愕の声を出した。
それを見て、ミケさんが、
「またロクスリー君の既視感か⁉
いや、それは良い!
ザインの部下も驚くって事は、
本当に、うちらの後方にザインの部下が迫っとるんやろう!
OKや、強行突破で行く!
けど、前面に出るのは愚の骨頂や、
林と反対の西部の荒野を突っ切って逃げるで!」
ミケさんがテキパキと指示を出す。
「OKっス! 突っ切るっスよ!」
オイラたちを追っていたザインさんたちの部下が、
逆にオイラたちに迫られる。
撃墜する気はない。
当たらなくても振り切れるだけのめくらましが出来れば問題ない!
「そこをどきッ!」
ミケさんが垂直ミサイルを展開!
更にレーザーライフルを乱射!
「被弾したくなかったらどけッ! 当たると痛いぞッ!」
オイラもミサイルとバズーカを乱射!
いきなりの反撃に面食らったザインさんの部下たちが隊列を乱す。
そこをミケさんのシュタイガーンバオアーを先頭にオイラたちが突っ切る。
「やったっス! ザインさんたちの戦列を越えたっス!」
喜びの声を上げるオイラ。
「やね!
後は、うちの仲間が来るまで逃げ切って……」
ミケさんも、ホッとした表情を浮かべたが…⁉
「甘いんだよ!」
ザインさんが吼えたかと思うと、前方から砂塵が舞う⁉
『マスター。前方から敵増援。』
「マジでッ⁉」
前方からジーナの部隊が迫って来る⁉
「仮にもアヴァドンを狩ろうってんだ。
これくらいの準備はしているって事さ。
さぁ、野郎共、舐めた真似をしてくれたお嬢さんたちに、
しつけをしてやりな!」
そのザインさんの声を聞いて、
「へへへ…KGは貰ったぜ!」
「ヘッ、特別報酬はオレのモノだ!」
ザインさんの部下のヒャッハーな皆さんが、
こっちにバズーカやレーザーライフルを撃って来る。
「ちょっ…ま…たんま…」
あぁぁ……回避が間に合わない!
「いやじゃぁぁぁー!」
何とか盾で防御!
「クッ…コックピットがガンガン揺れる……。」
ミケさんも盾で防御した模様。
「ちょっ…み…ミケさん!
降参! 降参しましょう!
命あっての物種っスよッ‼」
涙目でミケさんにすがり付くオイラ。
だけど…。
「アカン! アカンのや!
このKGだけはどうしても持って返らなアカンのや!」
何か意固地になってらっしゃるッ⁉
「おいおい、状況を見て言えよ?
嬢ちゃん状況が見えねぇのか?」
ザインさんが、半笑いで呆れた様に言ってくる。
「そ…そうっスよ…!
明らかにオイラたち劣勢っスよ⁉
もうどうにもなんないんスよ⁉」
涙目でなだめるオイラに、
「それでも何とかせなあかん!」
マジで言ってる、この人⁉
「嬢ちゃん、状況を見てモノを言えって言っているだろ?
KGっていや、滅多に発掘されねぇ超レア品だ。
部分パーツだけでも高値が付く。
あんまり抵抗が激しい様なら、
オレはGごとアンタを撃墜しても構わないんだぜ?」
ザインさんが半笑いながらもギラ付いた目で睨む。
「それでも!
うちは、このGを手放さん!」
尚も、拘りを貫くミケさんッ⁉
「み…みみ…ミケさん⁉」
ちょっ…意固地にも程がありますよッ⁉
「馬鹿な嬢ちゃんだぜ。おい、野郎ど…『ザインさんッ‼』」
ザインさんの言葉にオイラの叫びを重ねる。
「あん?」
ザインさんが面倒臭そうにオイラをねめつける。
「オイラは! オイラは降参するんで!
オイラだけは助けてくれないっスか⁉
何なら、ザインさんの部下になっても良いんス!
小間使いでも何でもやるっスから!
オイラだけは助けて下さい!」
涙を目に溜めて、あらん限りの声で懇願するオイラ。
「ちょっ…何言うてるん、君⁉」
ミケさんが驚愕の面持ちでこちらを見る。
「命あっての物種って言ったっしょ⁉
オイラはこんなとこで死にたくないの!
その為なら、オイラは、靴を舐めろと言われたら舐めて生きるっス!」
必死のオイラに、
『マスターは最低だと判断します』
と、38が冷静に言ってくる。
「最低で良いよ! オイラ、また死んで痛くなりたくないの!」
オイラが必死に説明していると、
「勝手に盛り上がるなよ小僧!
ゲズなんか売っても二束三文にしかなりゃしねぇ!
こっちはオマエのせいで多少なりとも被害が出てんだ!
落とし前を付けるためにも、オマエはキッチリ撃墜してやんよ!」
と、ザインさんが無常にも言ってくる。
「そ…そんなぁ……。」
万事休す…。まさかオイラの人生、ここでデッドループしちゃうの⁉
「野郎共、一斉ミサイル射撃!
バカなクズゲズも、
KGごと撃墜してやれ!
いちいち手間取らせたバカへの手向けだ!
このクズゲズを撃墜した奴にも、
金貨2枚の追加報酬だ!
しっかり稼げよ!」
ザインさんが一斉攻撃の指示を部下の方たちにする。
「ヒャハッ! 了解だぜ、ボス!」
「KGの首はオレが貰うぜ!」
「じゃあ、オレは手堅く、
クズゲズの方を頂くか!」
ザインさんの部下の皆さんが、
下卑た笑いを浮かべながらミサイルを発射して来る。
「クッ…盾で耐え切れるか⁉」
ミケさんがシュタイガーンバオアーの盾を構える。
無理っしょそれ⁉
さすがに物量が違いすぎるっしょ⁉
「ああぁぁぁぁ……。」
オイラが恐怖と絶望から目をキュッと閉じた時に、
『マスター、
左舷よりミサイル以外の熱源、
こちらに急速接近。』
と、38が報告して来る。
「うぇっ⁉」
その38の声に、
オイラが瞼を開けると、
目の前でザヌスと、おぼしきFGが、
オイラたちに向かって飛んできたミサイルを、
レーザーブレードで切り払っている場面だった。
「なっ…ッ⁉」
ミケさんも驚愕の表情を見せる。
ザヌスが、こっちに飛んできたミサイルを、
シュタイガーンバオアーへ飛んだモノと、
オイラのゲズに飛んだモノの中で、
機体に着弾しそうなモノだけ、全弾切り払った⁉
「な…なんだコイツ⁉」
「ど…どうなってんだ⁉」
ザインさんの部下の皆さんが口々に驚きの声を上げる。
「テメェ、一体、何モンだ⁉」
ザインさんがザヌスのパイロットに問う。
「男共に名乗る舌は持たん!」
ザヌスのパイロットの人が淡々と答える。
その声は、透き通っている感じで耳に残る青年の声。
通信で姿も見せており、
そこに映る、その姿は、
ロングの白髪で長い髪をポニーテルに結っている、
上も下も白一色の服を着た端正な顔の超イケメン。
「この人が、ミケさんの言っていた、お仲間さんなんスか?」
オイラが、助かった安堵と共に、ミケさんに聞く。
しかし…、
「いや? 始めて見る相手やで?
ロクスリー君の知り合いやなかったん?」
と、逆に聞かれる。
「え…? あれ…?」
オイラが悩んでいると、
「大丈夫ですか、お嬢様?」
と、白髪の人がミケさんに言ってくる。
「ああ、ピンピンしとるで。
まあ、アンタが来てくれへんかったら、
ヤバかったけどな。」
と、笑顔でミケさんが答える。
「お助けに参るのが間に合って良かったです。
男の方は、まあ適当にな。」
「何か扱い違わなくないっスかッ⁉」
何か、ミケさんにだけ丁寧で、
オイラ、ぞんざいに扱われてないッ⁉
「ええい!
何だか良く分からんが、
野郎共、まずは、
そのしゃしゃり出てきたザヌス野郎から片付けてしまえ!」
ザインさんが部下の皆さんに号令を掛ける。
「了解だ、ボス!」
「舐めた真似をした落とし前を付けさせてやるぜ!」
部下の皆さんがザヌスの人に群がる。
「ザヌスは砲戦用FG。
格闘戦は苦手だろ?
オレがナマス切りにしてやるぜ!」
部下の皆さんのうちの一人のジーナが、
ザヌスにレーザーアックスを振るう。
けど、ザヌスに当たったと思ったその一撃は…⁉
「地鏡……!」
何故か、ザヌスの機影を捉えられず、空振った⁉
あれ?
いま、確かに当たった様に見えたのに、どうなってんの⁉
「何をやってんだッ⁉
そんな鈍重機体に何故当てられんッ⁉」
ザインさんが苛立ちながら叫ぶ。
「野郎…ッ!
妙な動きをしやがるッ!」
ザインさんの部下のジーナが、
再度、ザヌスにレーザーアックスを振るうが、
相変わらず、当たった様に見えたのに、何故か回避されている。
「クッ…何でだよ⁉
何で当たったはずなのに当たらねぇ⁉」
ザインさんの部下がレーザーアックスをブンブン振り回すが、
いっこうにザヌスに当たらない。
「気は済んだか?
では、こちらからも行くぞ?」
ザヌスの人が、白い柄のレーザーブレードを構える…ってアレ?
構えたのに、柄だけのままで、レーザーの刃を出して構えて無いぞ?
ああ!
アレ、多分、レーザーセイバーって奴だ!
レーザーブレードのレーザーを、
高出力に圧縮して保全しておいて、
インパクトの瞬間のみに剣状に放つ高出力レーザー剣。
本体ENは使わない上に、
インパクトの瞬間しかセイバーのENも使わないので、
燃費が凄まじく良いらしい上、瞬間的にしか使えない代わりに、
その一瞬に出力を絞る為、大出力で威力も凄まじいって聞く。
でも、その性質上、取扱いには高い操縦能力が求められるとも聞くけど……。
って事は、この人、相当できる人ッ⁉
てか、それなのに、
何で砲撃戦用重装甲FGのザヌスに、
乗っているんだ、この人⁉
とかオイラが考えているうちに……。
「白夜……!」
ザヌスの人が斬り付け…たんだけど……⁉
な…何か…斬撃の軌道が…、
ブレる様な…変な軌道じゃないか…ッ⁉
そのブレる様な軌道が避け辛いみたいで、
ザヌスの前のジーナが、回避もままならず、目にも止まらぬうちに、
胴体を両断されていた。
「ばっ…バカなッ⁉」
ジーナの人が脱出ポッドで逃げる。
「何やってんだッ⁉
そんな鈍重なFGに何をてこずっているッ!」
ザインさんが苛立ちながら叫ぶ。
「クッ…ザヌスで格闘戦をしようなんて、
そもそも運用方法が間違ってんだよッ!」
ザインさんの部下のガトナスが吠える。
「能書きは良い、次々と掛かって来い。」
ザヌスの人が、淡々と告げる。
「クッ…コイツッ!」
「舐めるなよ、テメェ!」
その言葉に、ザインさんの部下の皆さんがブッツリ切れて、
一斉に襲い掛かる。
しかし、さっきのジーナの人の様に、
明らかに攻撃が当たったはずなのに、
何故かザヌスに攻撃が当たらない!
「す…凄い…何モンやねんや、あの兄ちゃん⁉」
ミケさんすら驚きの声を上げる。
「では、こちらも行くぞ?」
ザヌスの人がレーザーセイバーを……。
「張白刃……!」
何か、ザヌスの人が言って…振るう…。
けど、明らかに間合いの外でブンブン振るって…⁉
って……アレ…ッ⁉
「ど…どうなっている…⁉
何で攻撃が届くんだ⁉」
ザインさんの部下のガトナスの人が驚愕の声を上げる。
いや、オイラも驚いている。
だって、明らかに、
間合いの外から放ったはずの斬撃で、
ガトナスの左腕が切り離されているんだもん!
ど…どうなってんのッ⁉
「気を抜くな。
まだ終わりではないぞ?」
ザヌスの人の連斬で、
ガトナスの左腕に続いて右腕も切り落とされる。
「ひぃッ⁉
ガトナスの腕が!
オレのガトナスの両腕がぁぁぁッ⁉」
「貴様は見飽きた。早々に去れ。」
ザヌスの人が瞬く間にガトナスの胴体を真っ二つにする。
「ひっ⁉ ひぃーッ⁉」
ガトナスの操者が悲鳴を上げながら脱出ポッドで逃げる。
「な…なんだ…今の⁉」
「こ…コイツ…普通じゃねぇッ⁉」
ザインさんの部下の皆さんが、
戦々恐々とする。
「え~い!
そんな鈍重機体1機に何をやっている⁉
どけ! オレが直々に相手をしてやる!」
部下たちが一方的にやられるのを見て、
堪らなくなったザインさんが、
ザヌスの人の方に突撃して行く。
「来い。
下賤な下男程度では、
私は倒せんと示してやろう。」
ザヌスの人が、クイクイっと右手で仰ぐ。
「野郎! 舐めやがって!
このオレ様と、このKGのブッサルトを相手に、
そんな余裕が続くと思うなよ⁉」
ザインさんのブッサルトとかいうKGが、
手に持ったレーザーバズーカ…、
レーザーライフルを、大口径にした射撃兵器を乱射しながら、
肩の実弾のロケットランチャーも連発しつつ近づく。
それを、ザヌスが、
相変わらず明らかに当たったはずなのに、
何故か全弾回避。
「クッ…なんだコイツ⁉ 動きがどこかオカシイぞッ⁉」
ザインさんが驚愕の声を上げる。
実際に対峙して、ザヌスの人の異常性に気付いた様子。
「クッ…だが、格闘戦に持ち込めばザヌスごとき!」
ザインさんのブッサルトが、
ザヌスに向かってレーザーソードを振るう。
しかし、
ザヌスに当たったはずのその斬撃は、
すり抜けている様に、何故か当たってない!
「ど…どういう事だ?
何故、当たったはずなのに当たっていない⁉」
驚きに目を見開くザインさん。
「貴様は、今までの下男共よりは、多少はできる様だが、
所詮は男だな。間合いが甘い。」
淡々と述べるザヌスの人。
そして、相変わらず、
ブレる様な軌道の斬撃を放って…ッ⁉
「クッ…なんだッ⁉ 動きが妙だぞ…ッ⁉」
更に、あの間合いの外からの…剣戟も振るう…ッ‼
「その上、
剣筋が伸びて来る斬撃も放つだとッ⁉」
ザヌスの人の剣戟を、
ザインさんのブッサルトが、
ギリギリで盾を構えていなす。
あ…あの剣戟、
剣筋が伸びていたのか⁉
で…でも…どうやって伸びているんだ⁉
「クッ…この奇術師野郎!
テメェのタネ、何となく分かったぞ!
テメェ、変な動きで間合いを見誤らせているなッ⁉
テメェ、アライン流とかいう、
G剣術の流派の、
レナス=アラインとか言う奴だろッ⁉」
ザインさんが吠える。
なるほど!
あのザヌスの人は、何か特殊な動きで、
オイラたちに間合いを見誤らせて、
攻撃が当たった様に見せて当たらせず、
逆に自分の攻撃も見誤らせて回避させない様にして、
その上、剣戟が届いていない様に見せて、
届かせるという離れ業をやっているのか!
でも、アライン流? レナス=アライン? 誰じゃらほい?
「聞いた事があるで…。
この世界の、裏の世界で、アライン流っちゅう、
一子相伝のG剣術の殺人剣の流派があって、
その流派の動きは、敵を幻惑し、
間合いを見誤らせるって。
そして、アライン流の頭首は、
魔剣と呼ばれる超高出力デバイスの白い剣を使い、
白の魔剣士レナス=アラインの名を、
代々襲名しとるって。
多分、この兄ちゃんが、そのレナス=アラインなんや!」
なるほど、このザヌスの人、
ミケさんたちみたいな裏の世界の人からしたら超有名な人なのね。
「何にしても、
強い人が味方してくれるのは心強いっス!」
「やね。あ…でも、アレッ?
今代のレナス=アラインは女性やって聞いた様な気が…。」
「お嬢様。
その話は、この場を切り抜けてから話します。
今は、ここを切り抜ける事に専念して下さい。」
ザヌスの人が、ミケさんを諭して来る。
「了解や!
ロクスリー君、今のうちらやったら、兄ちゃんの足手まといになる!
この場は、この兄ちゃんに任せて、うちらは退避や!」
「了か…」
「させるかよ!
野郎共、このザヌス野郎は後回しだ!
クズゲズも、今は放っておけ!
KGを集中攻撃!
あの機体が奴らのウィークポイントだ!
あの機体は不慣れで弱ぇぇ!
さっきみたいに分散せず、
アヴァドンのKGに一斉集中攻撃!
アヴァドンを攻撃すれば、
ザヌス野郎は、アヴァドンを庇わざるを得ねぇ!
その上で、一点集中でアヴァドンを攻撃すれば、
さっきの分散攻撃の時より、遥かに防がなきゃいけない攻撃が大きく増える!
アヴァドンを庇って、
あのザヌス野郎が被弾したところを畳みかけろ!」
あぁぁ⁉ ザインさんが部下の皆さんに最悪な号令を掛ける⁉
「了解だ、ボス!」
「へへへ!
そういう事なら、アヴァドン共々、いたぶってやるぜ!」
ザインさんの部下の皆さんが、
レーザーライフルやバズーカや垂直ミサイルを、
シュタイガーンバオアーを集中狙いで乱射して来る⁉
「ああぁぁぁぁッ⁉」
ミケさんが堪らず盾を構える。
「クッ…愚劣な!」
ザヌスの人が、シュタイガーンバオアーを庇い、
バズーカやミサイルを斬り払い、ライフルを盾でいなす。
でも、シュタイガーンバオアーを庇いながらな上に、物量が違い過ぎる⁉
ザヌスとシュタイガーンバオアーが、徐々に被弾して行く。
うがっ…最ッ悪ッ!
ざ…ザインさんたち、的確に、オイラたちの弱点を突いてくるッ⁉
『マスター、ミサイル多数。
シュタイガーンバオアーをターゲッティングしています。』
「ああぁぁぁ…これはヤバ気な雰囲気ッ⁉」
シュタイガーンバオアーに向かったミサイルをザヌスの人が切り払う。
でも、庇って動かなきゃ行けない為、
動きが制限され、その上で数が多過ぎる為、
ザヌスの人諸共にシュタイガーンバオアーが被弾する⁉
「下郎が! 何と恥知らずな戦い方をするッ⁉」
「クッ…。
うちが足を引っ張っとるから……。
クッ……ッ!」
ザヌスの人と、ミケさんが苦しそうな声を上げる。
クッ…これは…万事休すかッ⁉
その時…、
『マスター。巨大な熱源反応接近。
GSと思われます。
その他に3機の熱源反応。
うち1機が急激な速度で接近して来ます』
「え…ッ⁉ も…もしかしてッ⁉」
3機の、FGにしては見かけない、
多分KGだと思われる機体たち。
その中の1機、青いGが、
凄まじい速さで追いついて来て、
ザインさんたちのFGに向かって、
突撃しつつミサイルを撃ちながら、
「トロイメンカッツェの特攻隊長!
ケビン=ブロッサム様のラーゼンレーヴェだ!
当たると痛ぇぞッ!」
と、叫びつつ、
KGの左肩に装備したパルスレーザーガン。
レーザーの偏向率を上げ、レーザーを拡散させて、
その分、面あたりの命中率を上げた、
アリーエル粒子砲を超速度で放つ!
「な…なんだ…ッ⁉」
「は…速ぇぇ…ッ⁉」
「クッ…!」
「あぁ…ッ⁉」
「よ…避け切れねぇ…ッ⁉」
前面に出ていたザインさんの部下の方たちが、次々に被弾して行く!
更に、近づいて、
両外腕部のレーザーガトリングガン!
レーザーライフルをガトリング状にして撃つ事で、速射性を高めた上で、
威力も通常の実弾のガトリング砲よりも高いという武装を連射する‼
「うぁッ! ダメだ! やられた! 脱出する!」
「な…なんて速さだ…ッ⁉ つ…強ぇぇッ⁉
こ…こいつが噂のアヴァドンの懐刀の、
ラーゼンレーヴェか⁉ こっちも脱出する!」
ケビンさんと名乗った人の、
ラーゼンレーヴェとかいう青いKGの、
目にも止まらない連弾の攻撃で、
ザインさんたちの部下のFGたちが、
次々に撃破されて行く。
「チッ…アレがトロイメンカッツェのラーゼンレーヴェ……。
アヴァドンの仲間を合流させちまったか…ッ⁉」
「姐さん! 大丈夫ですか?」
青いKGに乗った、
ちょっと背が低くくて、栗色の髪で、
ショートの長さのウルフ型の髪型のショートウルフの、
強気そうな瞳の少年がミケさんに声を掛ける。
「おい、ミケ! まだ生きてるか?」
GSから黒髪ショートのオールバックで、
グレーのパンツを履き、黒のクロースの上に、
グレーのジャケットを羽織っている、
髭のカッコイイおじさんが通信してくる。
「おっさん! ケビン! ユリン! マカロニ! よう来てくれた!」
ミケさんが目を輝かせる。
「この人たちが、
今度こそ、ミケさんの言っていた、
お仲間さんなんスねッ⁉」
「そうや! うちの仲間たちや! 間に合ってくれた!」
ミケさんが誇らしげに言って来る。
「リーダー、そっちの一緒に戦っている二人は誰なの?
うはッ! そっちのゲズの子、
中々、良い線行ってるじゃない!
その子を受けで、マカロニ攻めで、ご飯3杯行けそうよ!
ねね、ねぇ! リーダー、その子、誰なの⁉」
3機のKGの中の、
赤と黒のカラーリングの機体に乗った、
赤毛でショートの長さで、
ナチュラルに耳に髪をかけ目元で流したナチュラル耳かけショートで、
白のパンツと、黒のクロースの上に、
赤いパーカーを着ているモデルみたいに綺麗な女性が、
鼻息も荒く、何だか良く分からない事を言いつつ聞いて来る。
何を言っているのか分らないけど、
何故か背筋に寒気がして、ちょっと身震いしちゃう!
「コラ、ユリン!
戦闘時にオマエの持病は出すな言うとるやろ!
こっちのゲズの子はロクスリー君。
あの伝説のTHのリィト=ロクスリーの息子で、
このシュタイガーンバオアーを強奪する時に仲間になったんや。
ザヌスの方は、多分、
あのアライン流のG剣術士の、
白の魔剣士レナス=アライン……。
やと思うんやけど、さっき会ったばっかりで、
まだ、うちにも詳しくは分らんねんな。」
「っと、まだ長話をしていられる場面では無いですよ?
話の続きは後で、
今は、スナッチャーザインの部隊の、
ラフィンスカルを抑えましょう。」
こげ茶と赤茶の2トンカラーの、
ザヌスより更に重装甲そうなKGに乗った、
黒髪の短髪でメガネの落ち着いた雰囲気で、
メガネが知的さを醸し出している、
好青年という風貌のお兄さんが、
メガネを中指でクイッと上げながら言って来る。
「了解や!
ケビン! うちがソルファージュに帰還するまで、
前面に出てザインの部隊を叩いてや!
ユリン! うちがソルファージュに帰還するまで護衛!
マカロニは、遠距離から射撃で遊撃!
おっさん! ソルファージュの艦砲射撃、
ザインたちの部隊に向けて掃射!
ロクスリー君は、Gに慣れてへんみたいやから、
うちと一緒にソルファージュに帰還!
ザヌスの兄ちゃんも、うちらの護衛を頼むで!」
テキパキと指示を出すミケさんに、
「了解だ、姐さん!」
「OKよ、リーダー。」
「分りました、ミケさん。」
「了解だ、ミケ!」
3機のKGのパイロットさんたちと、
GSの艦長さんっぽいオジサンが口々に言う。
「承りました、お嬢様。
この身はアナタを護る盾となりましょう。」
ザヌスの人も言って来る。
「こっちもOKっスよ!
オイラじゃ足手まといっスから、
急いでGSに退避するっス!」
「良し、ほんなら、各機、状況開始!」
『了解ッ!』
全員の声がハモる。
「え~い!
KGが新たに3機も出たとはいえ、
ここまで差し込んでおいて、手ぶらで帰れるか!
こうなったら、ラーゼンレーヴェ共も、まとめて撃墜して、
部分パーツを奪ってやる!
野郎共!
こっちに向かって来るラーゼンレーヴェに集中攻撃!
一点に火力を集中させれば、オレたちラフィンスカルは、
例え噂のラーゼンレーヴェだろうと、撃破できるって見せてやれ!」
急激な状況の悪化の中でも強気のザインさんが、
部下の人たちに指示を飛ばす!
「了解だ、ボス!」
「ラーゼンレーヴェが何だってんだ!
オレたちゃ泣く子も黙るラフィンスカルだぞ!」
ザインさんの掛け声で、ラフィンスカルの面々が、士気を高める。
「セリア!
ソルファージュ、敵部隊に艦砲射撃!
3連装大型レーザーランチャー!
垂直、水平ミサイル、掃射!」
「了解!
艦砲射撃に入ります!
3連装レーザーランチャー、
垂直、水平ミサイル、
発射します!」
ミケさんに、おっさんと呼ばれた艦長さんが、
黒のパンツを履き、白のクロースに、黒のジャケットを羽織った、
栗色の髪で、胸上までの長さのロングの髪の、
毛先にだけゆるくパーマを掛け、前髪は目の上で流した、
フェミニンロングの、オペレーターっぽい女性に命じ、
ソルファージュと呼ばれた戦艦から、
艦砲射撃がラフィンスカルの部隊に放たれる。
「あぁぁッ…! レーザーが掠った…ッ!」
「クッ……垂直と水平の2種類のミサイルが、
嫌なタイミングで…ッ!?」
「こ…こんなデカ物に…ッ!?」
ラーゼンレーヴェと呼ばれた青いGの俊足の攻撃に、
合わせて放たれたソルファージュからの弾幕が、
ラフィンスカルの面々の、ラーゼンレーヴェからの回避地点に、
合わせて連撃で走り、あんな巨大な戦艦なのに、
次々にラフィンスカルのメンバーさんたちを被弾させて行く!
「野郎共ッ!
戦艦の弾幕なんかに、そうそう当たるんじゃねぇッ!
もっと注意して動けッ!」
「了解だ、ボス!」
「クッ…デカ物なんかは、
オレたちラフィンスカルのKG撃墜ショーの、
賑やかしでもしてりゃいいんだよ!」
ザインさんの指令を聞き、
ソルファージュの艦砲射撃を細心の注意で回避しつつ、
部下の皆さんが、ギラ付いた目を、前面のラーゼンレーヴェに向ける。
「こ…このッ!」
「ちぃッ!」
ラフィンスカルの皆さんがラーゼンレーヴェを捉えて仕留めようとするが、
凄まじい加速でスルスルと弾幕を躱し…!
「行くぜ、相棒! ラーゼンレーヴェ、突撃する!」
ラーゼンレーヴェが突撃する。
更に急激な加速を行い、
レ-ザーガトリングガンと各種ミサイルを撃ちながら接近する!
「クッ…集弾率が高くて回避できねぇ!
クッ…足が…ッ!」
ザインさんの部下のうちの一機のジーナの両足が瞬く間に潰され、
堪らず脱出ポッドを起動させる。
「ガトリングガンは盾で防げ!
盾越しに反撃しろ!
火力を集中すればKGと言えど敵じゃねぇ!」
「了解だ、ボス!」
「やられっぱなしじゃねぇ事を教えてやる!」
ザインさんの指示を聞き、部下の方たちが、
盾でレーザーガトリングガンを防ぎつつ、
レーザーライフルやバズーカ、
をラーゼンレーヴェに向かって掃射する。
「へっ…! おいでなすったな…ッ!
だがな…ッ! アリーエルスラスターを起動中の、
このラーゼンレーヴェに…ッ! 当てれると思うなよ…ッ!」
ケビンさんが、そう言ったかと思うと、
ラーゼンレーヴェが更に爆ぜた!
ブンッ!と、機影がぶれたかと思うと、
凄まじい速さで、撃たれたライフルやバズーカを回避して行く。
「な…何て速さだ…ッ⁉」
「ど…どういう機動性してやがんだ…ッ⁉」
ラフィンスカルの皆さんが、
戦々恐々とする。
「うろたえるな!
ただ追加スラスターを全開に吹かして急加速を繰り返しているだけだ!
あんな動きが長く持つかよ!
アイツは強襲型で燃費が悪い!
もっと弾幕を張って、アイツがEN切れになるまで踊らせろ!」
「へへ…。そういう事なら!」
「踊り疲れてヘバるまで付き合ってもらうぜ!」
ザインさんの指示に、ラフィンスカルの皆さんが、
嫌らしい笑みを浮かべて、
ラーゼンレーヴェにライフルやバズーカを、
更に乱射するが…、
「ヘッ…そのくらいの弾幕の厚さがどうだってんだ!
アリーエルスラスターを発動した、この相棒なら!」
ケビンさんのラーゼンレーヴェが、
更に凄まじい急加速で攻撃を次々と回避して行き、
弾幕を潜り抜けつつ、ガトリングと各種ミサイルを放射し、
ザインさんたちのFGたちを圧倒する!
「こ…こんなッ⁉」
「く……クソぉッ‼」
次々に被弾して行くザインさんの部下の皆さんだけど。
「いくら機動性が高くても、
たかがガトリングと、ミサイル程度じゃ決定力に欠けるんだよ!
野郎共!
こんな程度の攻撃じゃ、
ラフィンスカルは負けてやれねぇって事を教えてやれ!
盾でいなしつつ更に集中砲火だ!」
ザインさんが更なる檄を飛ばし、
部下の方々が、盾越しに、
更なる集中砲火を掛ける!
それらの集中攻撃を、
アリーエルスラスターとかいうので、
更に躱しつつ。
「アン? 相棒が決定力に欠けるだと?」
回避軌道は取りつつも、
ラーゼンレーヴェのガトリングとミサイルが止み。
「ハッ! 良いぜ!
そこまで言うなら、
このラーゼンレーヴェの本気の火力って奴を見せてやるッ!」
右腰部から銃剣の様なモノを取り出し!
「挨拶代わりだ!
Aトライバレル! バレット‼」
バズーカの様な大型の弾丸……なだけじゃない⁉
弾丸の周りをレーザーが覆っている⁉
そのまま、直近のゲズに向かって飛ぶッ‼
「し…盾ッ⁉ ま…間に合え…⁉」
でも、流石に名の知れたTSさんたち!
何とか盾でいなす……事ができないッ⁉
「ば…バカなッ⁉」
ゲズが構えた盾に着弾したのに、
着弾した瞬間、凄まじい爆風が起き、
盾が木っ端微塵に爆砕し、
盾の下の左腕まで粉々に爆砕したッ⁉
「な……何なんだ……この威力はッ⁉」
「め……メチャクチャじゃねぇかッ⁉」
「ど……どういう弾丸なんだッ⁉」
破砕させられたゲズの人は疎か、
ザインさんの部下の方々が、口々に、慄きの声を上げるが‼
「どけ! やられた奴は引っ込んでろッ!」
更にアリーエルスラスターとかいうので加速し!
左腕の無くなったゲズに回し蹴りを食らわせ! 吹き飛ばし!
「次ッ! Aトライバレルッ! レーザーッ‼」
更に、さっきの銃剣の様なモノを構え、
蹴り飛ばしたゲズの後ろにいたガトナスの頭部に向かって、
今度は……レーザーを放った⁉
でも‼
「さっきの爆砕弾じゃなければッ‼」
意地を見せるとばかりに、ガトナスの人が、
素早い動作で頭部を盾で守る…ッ‼
……んだけどッ⁉
銃剣から放たれたレーザーが、
ガトナスの盾を貫通して、
尚も、そのまま威力を弱めず、ガトナスの頭部をぶち抜くッ⁉
「盾を貫通した上、威力を弱めないだとッ⁉」
「な…何て貫通力だッ⁉」
さっきのバズーカもメチャクチャだけど、
このレーザーも、何なの、これッ⁉
「オマケだッ!
Aトライバレルッ! レーザーソードッ‼」
ケビンさんが、そう言ったかと思うと、
さっきの銃剣の本体が、レーザーを纏い、
レーザーソードになったッ⁉
ああ…これ…、
バズーカと、レーザーライフルと、レーザーソードになるから、
トライバレルって言うんだ……とか考えてる間にッ‼
さっきの頭部をぶち抜かれたガトナスを、
右斜め上から左斜め下に、真っ二つに切り裂くッ⁉
「ひっ…ひぃーーーッ⁉」
何とかガトナスの人の脱出ポッドは作用した模様だけど……。
「い……いくら軽量機のガトナス相手だって言っても…、
レーザーソードでFGを真っ二つなんて…ッ⁉」
「な…何なんだ…コイツッ⁉」
ラフィンスカルの皆さんの、
驚愕の声を余所に、
更にラーゼンレーヴェが加速しッ‼
「ガトナス程度を真っ二つ程度でビビんなよッ?
お楽しみは、これからだぜッ‼」
ラーゼンレーヴェがAトライバレルを、
右腰部に戻し、
左腰部から……、
ちょい大き目の柄を出して握ったッ⁉
けど、柄を握ったまま、レーザーの刃を出さず構えてるッ⁉
「へッ‼ 見せてやるぜッ‼
ラーゼンレーヴェの最大火力って奴をよぉッ‼」
そのまま、更に加速し、
ゲズやガトナスたちをワザワザ避けて突破し、
後方のザヌスたちの前に出て、
真一文字に、そのインパクトの瞬間だけ、レーザーの刃を出し、
柄を振り抜くッ‼
インパクトの瞬間だけ、レーザーの刃を出すって事は、
恐らく、レナスさんの使ってたのと同じで、
レーザーセイバー……だとまでは予測したんだけど…ッ⁉
な…何ッ⁉ あのセイバーの刃のレーザーの大きさッ⁉
ざっとラーゼンレーヴェの目の前のザヌスの全長の2倍はあるくらい、
めちゃデカいんですけどッ⁉
「で…デカ過ぎるッ⁉」
目の前のザヌスを頭頂部から真っ二つ……だけじゃないッ⁉
「こ…こっちまでだと…ッ⁉」
目の前のザヌスの後ろに居た、
もう一機のザヌスも一緒に、
真っ二つになったッ⁉
ざ…ザヌスって……、
重装甲FGなんですよ…ッ⁉
それを2機同時に真っ二つなんて……⁉
ど…どんな威力と効果範囲なのよ…ッ⁉
更に、そこに、
一筋の閃光が駆け抜けるッ⁉
「クッ…遠距離からの砲撃だと⁉
ダメだ、脱出するッ‼」
ラーゼンレーヴェに陣形を崩された上での砲撃で、
前面に出ていたガトナスの人が被弾し、脱出ポッドを起動する。
「残念ながら、アナタたちは、
既にボクのフェストゥングの射程圏内なのですよ。
ダメージプラス。簡単な足し算ですね。」
オイラたちが向かっているGSの方から、
さっきの、メガネのお兄さんの、
重装甲で砲撃型っぽいKGが遠距離砲撃をしたんだッ‼
「チッ…砲戦型のKG⁉
あれがトロイメンカツェのフェストゥングか⁉
野郎共、固まれば奴の良い的になる!
各機、散開して射線をずらしつつ、
ラーゼンレーヴェを踊り狂わせて倒せ!
機動力だけじゃなく火力もデカくても、
強襲機じゃ連戦はできんと教えてやれ!」
「あいさ、ボス!」
「いくら瞬間機動力と火力が凄くたってなぁ!」
ザインさんたちが散開しつつ、ラーゼンレーヴェに火力を集中。
でも、このくらい、
ケビンさんのラーゼンレーヴェの超加速なら…って…えッ⁉
そこで、ラーゼンレーヴェの速度が減速し、
ザインさんたちの攻撃の中の回避しきれなかった一部によって、
右腕部が被弾する。
「クッ…EN…レッドゾーンッ⁉
姐さんに追い付く為に、
出撃の時からずっと、アリーエルスラスターを使い続けっぱなしの上で、
Aトライバレルだけじゃなく、
オサフネも使ったのがマズかったかッ⁉」
今までの余裕の表情から一転して、
何か聞きなれない名称を溢しながら、
焦りの表情でケビンさんが吼えるッ⁉
えーーッ⁉
ここに来て、ENレッドゾーンなの⁉
これ⁉ ヤバイんじゃないの⁉
だけど、その間に!
「よし、ソルファージュに着いた。ロクスリー君!
ブースター噴かしてカタパルトに乗り上げるで!」
「ハイっス!」
ミケさんと共に、
空中をホバーリングしているソルファージュのカタパルトに、
ゲズのブースターを噴かせてジャンプして上る!
「よし、到着や!
ロクスリー君は、ソルファージュ内で待機!」
「了解っス!」
前線に出ずに、後方で待機できるのは、
オイラ的に、とっても助かるところ。
「セリア、うちのタイニーダンサーの準備は?」
ミケさんがオペレーターのセリアさんに尋ねる。
「タイニーダンサー、オールグリーン! いつでも出せます!」
「よし! じゃあ、タイニーダンサーに乗り移る!」
ミケさんが、シュタイガーンバオアーから、
タイニーダンサーと呼んだ真っ白い機体に乗り移る。
「タイニーダンサー。長い事、待たせたね。
でも、そろそろ出番や!」
ミケさんが、シュタイガーンバオアーをどけて、
タイニーダンサーをカタパルトのGハンガーに乗せる。
「ミケ=スターライト! タイニーダンサー! 出るで!」
Gハンガーが稼動し、
タイニーダンサーが加速され射出される。
その後の展開で、オイラは驚いた。
空を飛んでいる⁉
あのタイニーダンサーってKG、空を飛んでいるぞ⁉
最初はGハンガーの加速で、
ダッシュしているだけかと思ったけど、違う!
しかも、あのKG、
飛行の為の外付けの追加ブースターユニットが無い!
多分、アレ、
GSとかの、
大型の機体をも飛ばす事ができるっていう、
アリーエル粒子を応用した特殊な飛行装置らしい、
アリーエルクラフトって、装置を積んでるっぽい!
その上で機体はコンパクト!
きっと、アリーエルクラフトも、
GS用とかの大型のじゃなく、
小型軽量化されたのを積んでるんだ!
「ケビン、いまそっちに行く!
オマエは、ちょい下がり!
ユリン! ケビンのサポート!
マカロニは引き続き砲撃!
ザヌスの人は、うちに続いてや!
おっさん! もっと弾幕張ってや!」
ミケさんが相変わらずテキパキと指示を出す。
「了解だ、姐さん!」
「OKよ、リーダー!」
「分りました、ミケさん!」
「了解だ、ミケ!」
「承りました、お嬢様。」
トロイメンカッツェのメンバーとザヌスの人が、
口々に応える。
「な…KGが…そ…空を飛んでいるだと⁉」
「アレが、アヴァドンの愛機のタイニーダンサーか⁉」
ザインさんの部下の皆さんが、
空を滑空して迫るタイニーダンサーに、
驚きの声を上げる。
「クッ…KGが4機も…ッ⁉
しかもアヴァドン専用機のタイニーダンサーまで出てきたってのかッ⁉
だが…ここまで来て、手ぶらで帰れるかよ!
野郎共!
ラーゼンレーヴェは、さっきのでEN切れ寸前のはずだ!
そっちに深追いする必要はねぇ! まずは頭を叩く!
アヴァドンを潰して指揮系統を乱せば、後は烏合の集だ!
タイニーダンサーに攻撃を集中させろ!」
ザインさんが部下の皆さんに指示を出す。
「逃げへんのは褒めたるけど、
うちをさっきの慣れへん機体に乗っとったうちと同じやと思ったら……、
痛い目…見るで…ッ⁉」
ミケさんが、言葉の溜めの後に、
タイニーダンサーのブースターを噴かせて、
ザインさんたちに一気に詰め寄る!
「は…速ぇぇッ⁉」
「クッ…ラーゼンレーヴェ程じゃなくても…、
空を飛ばれて…この加速は…ッ⁉」
ラフィンスカルの皆さんが、
戦々恐々とする。
「トライバレル! まずはレーザーや!」
ミケさんがそう叫んだと思うと、
タイニーダンサーが右手に握った銃剣……、
さっきのラーゼンレーヴェのAトライバレルの、
ちょいスマートになった様なモノから、
レーザーが掃射される。
「クッ…頭部をやられた!
センサーが死んじまって索敵できねぇッ!」
「こっちは左手を持ってかれた!
高々度からの攻撃で回避がしづれぇッ!」
ラフィンスカルの人たちが次々に被弾して行く。
「次弾! バレットや!」
タイニーダンサーがトライバレルを撃ち分け、
実弾ライフルが放たれる⁉
あ、Aトライバレルと違って、
タイニーダンサーのトライバレルの実弾は、
バズーカじゃなくてライフル弾…で、
……弾丸がレーザーでコーティングもされてない?
Aトライバレルが強襲用に出力強化された奴で、
タイニーダンサーの、このトライバレルが、
トライバレルの基本の奴とかで、
威力は、Aトライバレルより抑え目だけど、
燃費が良いのか?
……とか考えてる間にッ‼
「うぁッ⁉ 脚部をゴッソリやられたッ⁉」
ミケさんの的確な射撃で、トライバレルの実弾ライフルが、
ザインさんの部下のジーナの脚部を、
見事に爆砕するッ‼
「怯むな! あんな蚊トンボ…撃ち落してやれッ!」
ザインさんが部下の皆さんに檄を飛ばすが…。
「クッ…飛び回っていて…攻撃しづれぇ…ッ!?」
空を縦横無尽に飛び回るタイニーダンサーに、
攻撃が当たらない!
「セリア!
垂直、水平ミサイル発射だ!」
「了解! ソルファージュ!
垂直、水平ミサイル発射!」
艦長の号令の下、ソルファージュが弾幕を張る!
こちらには心強く、相手には嫌だろう、
タイミングを見計らって放たれたソルファージュの弾幕が張られる!
「GSの弾幕にも気を抜くな!
ザヌス隊、前面に出ろ!
集弾率の高いレーザーガトリングガンの弾幕で、
タイニーダンサーを圧倒しろ!」
「了解だ、ボス!」
「オレたちザヌス隊の弾幕!
回避できるもんならやってみやがれ!」
後方からバズーカを撃っていたザインさんの部下のザヌスの部隊が、
前面に出てレーザーガトリングガンをタイニーダンサーに掃射する。
流石のタイニーダンサーでも、回避が間に合わない…がッ⁉
「PBLH展開ッ‼」
ミケさんが、そう叫んだかと思うと、
タイニーダンサーの左手の平が光り、
回避できなかったレーザーガトリングガンを、
光る左手の平で受け相殺した⁉
アレ、多分、
インパクトの瞬間だけ展開する事で、
強度を上げた上で、EN消費を抑えてるっていう、
アリーエル粒子を応用したレーザーの盾の、
レーザーシールドって奴なんだ‼
欠点として、
使用時に最大展開時間っていうのを過ぎると、
装備をしばらく使えなくなるらしいけど、利点も多いとは聞くけど、
レーザーセイバーと同じで、扱いが凄いムズいらしいのに、
レーザーガトリングみたいな連弾の武器を、あんなすべらかにッ⁉
ほ…ホントに…乗り換えてから…ミケさん…メチャ凄過ぎる…ッ‼
更にッ‼
「ボクのフェストゥングを忘れられては困りますね。」
フェストゥングと呼ばれた重装甲KGの砲撃が、
ザインさんの部下のゲズの1機のバズーカ諸共に、
右腕部を破壊する‼
「クッ…あんな遠くからッ⁉」
更に! 更にッ‼
「お嬢様ばかりに気を取られるなよ?」
ザインさんたちがタイニーダンサーに釘付けになっている隙に、
ザヌスの人の剣が閃く!
「クッ…何で…あの距離から届くんだ⁉」
ジーナがレーザーライフルを切り払われる‼
「クッ…砲撃野郎や、ザヌス野郎も厄介だが、
アヴァドンの野郎、トンデモ装備ばっかり持ちやがって‼
だが、特攻隊長のラーゼンレーヴェは、
EN切れ寸前で、もう戦えないはずだ‼
野郎共‼ アヴァドンにも踊って貰え‼
そうすりゃザヌス野郎も、また共倒れだ‼」
そのザインさんの檄に、
ラフィンスカルの皆さんが答える前に、
「ラーゼンレーヴェがもう戦えない?
それはどうかしら?」
ミケさんにユリンと呼ばれた人が、
ラーゼンレーヴェに合流し、
KG同士で手を連結させながら、
「エンジェルシード、ラジエールコンデンサー起動。
EN補給開始。オマケで各種ミサイルの弾薬と、
Aトライバレルやガトリングのレーザーマガジンも、
補給、補給っと。」
エンジェルシードと言われたKGが、
背部のバックパックから弾薬を取り出してラーゼンレーヴェに補給する⁉
「ついでに損傷箇所を応急修理っと。」
エンジェルシードの左腕から作業用アームが延び、
ラーゼンレーヴェの損傷してない左腕部の一部を切り取り、
被弾した右腕部の上に切り取った装甲を貼り、
プラモデルのパテ埋めの様に伸ばして損傷箇所が補修される…ッ⁉
「応急修理と、EN、弾薬、補給完了っと。
ケビン、また暴れちゃって~。」
ユリンさんが軽い声で言う。
「な…なんじゃそりゃぁーッ⁉」
ザインさんが驚きの声で吠える。
「え…ENも弾薬も補給できて、
破損箇所も直せるサポート型KGだと⁉
あんなのありかよッ⁉ 反則じゃねぇかッ⁉」
ザインさんの部下の皆さんがエンジェルシードのチート性能に悲鳴を上げる。
「助かったぜ、ユリン!
さぁ、相棒、もういっちょ暴れるぜ!
アリーエルスラスター!」
ケビンさんがそう吼えると共に、
ラーゼンレーヴェが爆ぜる。
一瞬でミケさんとザヌスの人と同じ前線に移動する。
「ケビン、アレ行くで、アレ!」
「了解だ! 姐さん!」
ミケさんの指示を聞き、
ラーゼンレーヴェが右腰部のAトライバレルを取る。
そして、銃口にレーザーが収束していく。
あ……アレッ…レーザーをチャージしているのか…ッ⁉
「燃費は悪りぃが、コイツでッ!
Aトライバレルッ! チャージレーザーだッ!」
Aトライバレルから、
パルスレーザーの様な、偏向レーザーが広範囲に放たれる!
「そ…そんな…ッ⁉」
「グアッ‼
た…ただのパルスレーザーじゃねぇッ⁉
パワーがダンチだッ⁉」
そのザインさんの部下の人たちの驚愕の声の通り、
偏向レーザーなのに、被弾したFGの装甲が、
異様に抉られている!
凄まじい威力だ!
「ケビンだけやないでッ⁉」
タイニーダンサーもトライバレルを構え、
敵陣の中央に2機で突撃し、
ラーゼンレーヴェと背中合わせになり、
『合体攻撃! ガンスリンガーパレード!』
2機揃ってローリングしながら、
チャージした偏向レーザーをザインさんたちに向かって撃つ!
「ガァァ…ッ⁉」
「回避できねぇ…ッ⁉」
「こ…こんなの…どうしろってんだ…ッ⁉」
凄まじい範囲の上で、
威力もバケモノじみた、
メチャメチャなレーザーの攻撃が襲い、
ザインさんの部下の皆さんが次々に悲鳴を上げる。
「みんな、連携や! うちらに続いてや!」
ミケさんが攻撃しつつ指示を出す。
「了解です、お嬢様。
では、こちらも行くぞ?」
ザヌスの人も、相変わらず間合いを取る事ができない独特の動きで、
ラフィンスカルのFGたちを、
どんどん無力化して行く。
更に、
「目の前ばかりに気を取られてはいけませんよ?」
フェストゥングの鋭い砲撃も冴える…ッ!
そして、ダメ押しとばかりに、
「サポート型だからって舐めないでよね!
ちゃんと砲撃もできるし!
ユリンちゃんのエンジェルシードも混ざっちゃいま~す!」
ユリンさんのエンジェルシードも、
タイニーダンサーや、ラーゼンレーヴェのと同系統の、
トライバレルらしき銃剣を構えて、
レーザーと実弾を交互に乱射する。
「だ…ダメだ……こんな化け物たちにゃ…か…勝てねぇよ…ッ!」
「こ…こんな…こんなのが…ッ⁉」
ミケさんたちの一斉攻撃で、
あれだけ居たザインさんの部下の皆さんが次々に撃破される。
「クッ…オレたちラフィンスカルが…こ…こんな……ッ⁉」
ザインさんが驚愕の声を上げるが……、
もう戦局はッ‼
「さぁ……ここで質問や?
うちらと戦うのは、もう諦めて、
Gたちを乗り捨てて、
しっぽ撒いて安全に逃げるか……?
勝ち目の無い戦いを続けて、Gを全部撃墜されて、
壊されたオマエらのGの部分パーツを、うちらにくれるか……、
どっちを選ぶんや…?
なぁ……スナッチャーザイン…?
まあ、うちらからしたら、しっぽ撒いて逃げてくれて、
くれるGの損傷を少なくしてくれる方が、
有難いんやけど、
……それでもやるっちゅうんやったら、
……うちらは手加減せぇへんで…?
場合に寄っては……
Gごと操者を撃墜してまう、
……なんて事も……あるかもしれへんけどなぁ……?」
ザインさんのKGの胴体部に向けてトライバレルを構えながら、淡々と、ザインさんに、恐怖の通告をするミケさんッ‼
「クッ……クァァァァッ‼ クソ…ッ‼ クソ…ッ‼ クソ…ッ‼」
どうしようもない圧倒的な戦力差に、
悔しみの叫びを上げるザインさん……。
……だったんだけど…。
「ミケ!
良い所で、すまんが、奴さんから暗号通信だ!
ラフィンスカルとの交戦など直ぐに辞め、
今直ぐにソルファージュに帰還し、
合流ポイントに向かう為の艦の航行を始めよ。
その後、航行して直ぐに、
シュタイガーンバオアー搭乗時のオマエのパイロットデータと、
G搭乗時の感想を、
オマエの、直に体験した生の感想で、
説明、返信する、暗号通信を即時に送れ。
更に、その後、
シュタイガーンバオアーを、内部は弄らず、急ぎ外装を修理してから、
ケビン、ユリン、ロイドの3名の、
シュタイガーンバオアー搭乗時のパイロットデータも素早く取り、
その3名のG搭乗時の感想を、
本人たちに直に説明させた通信と合わせ、
暗号通信で、直近で送れ。
だそうだ!」
ミケさんたちのGSの艦長さんっぽい人が、
謎の要件を告げつつ、本当に、済まなそうに、
目を伏せつつ、通信して来るッ⁉
「クッ……‼ 毎度、毎度、空気の読めん奴やッ‼」
そう言ってから、
ザインさんのKGに向けていたトライバレルを下ろしッ‼
「うちらは急用ができた…。
もうオマエら如きに構ってる暇が無くなった…。
運が良かったなぁ……スナッチャーザイン?
ここは見逃したる…。
しっぽ撒いて、何処へ成りと逃げ…。」
トライバレルを下すどころか、
ザインさんたちに背を向けるミケさんのタイニーダンサーッ⁉
「な……ッ⁉ て……テメェ…ッ⁉
オレたちに…とどめを刺さず見逃すってのか…ッ⁉」
いきなりの展開に、
驚愕と悔しさの両方を混じらせ怒鳴るザインさんだが…。
「クソッ……アヴァドン…ッ‼
この屈辱は忘れねぇ…ッ‼
覚えてろ…ッ‼」
恨みの籠った声でミケさんを睨みつけながら、
「野郎共…ッ‼ 撤収だ…ッ‼」
ラフィンスカルの部下の皆さんに命を下し、
這う這うの体で退去して行く…。
ラフィンスカルの方々が逃げ去って……そして……。
「ふん…ッ!
ここまでやってタダ働きやいうんやからな…ッ!」
ミケさんが、眉間にシワを寄せて苦言を吐くが、
「まあ、でも、姐さん。
シュタイガーンバオアーは手に入ったんですしッ!」
ケビンさんが苦渋のミケさんに向けて、笑顔でそう言い、
「そうそう、
それに、ファトス村の自警団のFGも、
がっぽし頂いちゃったんだしさッ!」
ユリンさんも、ニコニコ笑顔をミケさんに向け、
「まあ、収支的にはプラスだと思いますよ、ミケさん?」
マカロニさんも、ニッコリ笑顔でミケさんに伺う。
「う~ん……まあ、そうやね! うん!
ウジウジしてても始まらんし、良かったとこだけ評価しようかね!
ありがとうな! みんな!」
ミケさんも、キュート過ぎるデラ笑顔で、皆さんに応えるッ‼
「で、リーダー?
ゲズの方の子がロクスリー君って言うのは分かったけど、
そっちのザヌスの人は?
何か、さっき、レナス=アラインって言っていたけど、
レナス=アラインって、今の代は女性じゃなかったっけ?」
ユリンさんが首を傾げて聞いて来る。
あ、レナス=アラインが女性って話、
ユリンさんも知っているほど有名なのね。
そこで、
「説明が遅くなり、申し訳ありません。
私は、白の魔剣士レナス=アラインの14代目で、
レナス=アライン=エイフェルと申します。
女性のレナス=アラインというのは、
私の師の、13代目レナス=アラインの、
レナス=アライン=ラナヴェルの事かと存じます。
しかし、師は何を思われたのか、
半年ほど前に、不意に私に二振りの魔剣を託し、
私を14代目に指名したのです。
ですが、まだ、私は半人前で、
赤の魔剣を扱う事が出来ない為、
アライン流の仮免許皆伝という状態なのです。
故に、御師様からの命により、
赤の魔剣を自在に使えるようになるまでの間、諸国を巡り、
お困りになられている、お嬢様方をお助けする旅を続けているところです。
御理解頂けましたでしょうか、
見目麗しいお嬢様。」
と、レナスさんがユリンさんにかしずきながら言う。
「み…見目麗しいなんて、
初めて言われちゃったよ、リーダー!
ど…どうしよう…リーダー!
ホントの事だから対応に困るよ、リーダー!」
ユリンさんが顔を赤くしながら、
顔を両手で押さえながらイヤイヤしているが、
ちょい言動に不穏なモノを感じます。ハイ。
「えーい!
この万年お花畑脳が!
上手言われたくらいでふやけなや!」
ミケさんが面倒臭そうに対応する。
あ~、このユリンさんって、
戦闘中も、ちょっと思ったけど、
割と軽い人なのかもしれない。
「まあ、何にしても、助かったっスよ。
ありがとうっスよ、レナスさん。」
オイラが、安堵と共に、レナスさんに感謝の言葉を伝えると、
「フンッ……。」
レナスさんは鼻を鳴らすだけ。
何だか、不穏な雰囲気…。ありゃ?
「何か感じ悪ぅ…。」
ケビンさんが口を尖らせて嫌そうな顔をする。
「まあまあ。ロクスリー君、ボクたちが来る前に、
何か、レナスさんに失礼な事をして、怒らせたんじゃないですか?
まあ、何はともあれ、リーダーを助けて頂き、ありがとうございます。」
マカロニさんがホッコリ笑顔をレナスさんに向けるが、
「別にオマエの為ではない。」
相変わらずレナスさんが素気ない態度を取る。
「コイツ、感じ悪い! 何だ、コイツッ⁉」
ケビンさんが、さすがに腹に据えかねたと言わんばかりに、
口を尖らせて言う。
「まあまあ、何か変わった人やけど、
助けてくれたんは確かやし、悪い人やないと思うで。」
ミケさんが仲裁に入る。
「お嬢様をお助けに参るのが間に合って恐悦至極です。
よくぞご無事で居てくれました。見目麗しいお方。」
レナスさんが、ミケさんに、キラキラの笑顔を見せて言う。
「うわ…うちも見目麗しいとか言われたで⁉
どうしよ⁉ うちも、こんなん言われたん始めてで、対応に困るで⁉」
ミケさんも両手で顔を覆ってイヤイヤする。
あれ?
アナタ、さっき、ユリンさんが同じ事した時、
咎めなかったっけ?
「さて、
見目麗しい、お嬢様方と別れるのは忍びないですが、
私は、旅に戻ります。」
レナスさんが、名残惜しそうにミケさんに言う。
「兄ちゃん、補給や応急修理くらい受けて行ったらどうや?」
と、ミケさんが提案するが、
「いえ、私のウンターザーゲンは、
どこかの町に着けば、そこで整備します。
それも修行の一環です。」
レナスさんが断りの意を述べる。
「ウンター…ザーゲン?
ザヌスじゃないんスか?」
至極、当然の疑問をぶつけてみる。
いや、アレ、どこからどう見てもザヌスじゃねッ?
「ザヌスではない。
それ以上、凡夫ごときが知る必要は無い。」
レナスさんが、険しい顔で言う。
あ~、多分、この人…。
「まあまあ、ちょい、
そのウンターザーゲンいうFG、気になるから、
ちょい説明お願いできんかな?」
と、ミケさんが聞く。
「分かりました、お嬢様。
ウンターザーゲンは、
御師様が私の為に用意したFGです。
ザヌスの外見をしていますが、
MDTSという、
Gコックピット内で操者が行った動き通りに、
Gが動くという装置が付いています。
他にアライン流は、闘気という俗に気合と呼ばれるモノを扱うのですが、
このウンターザーゲンは、その闘気をGの剣に伝わせ、
出力を強化する事ができます。」
「ふぇ~。ミケさんのタイニーダンサーも、
トンデモ装置満載だと思ったっスけど、
レナスさんのウンターザーゲンも凄いっスね。」
「なかなか面白そうな機体やね。」
ミケさんが興味津々という感じで目を輝かせる。
「メカニックとして、非常に興味深いですね。」
マカロニさんが、メガネを光らせつつ、メガネを中指でクイッと上げる。
「また、このウンターザーゲンは、ワザと鈍重に作られており、
この機体を十全に扱える様にする事も、
修行の一環であるとの御師様の命であります。」
「なるほどね。
だから、明らかに重装甲っぽいGなのに、
格闘戦をしていたのね。」
ユリンさんが、ウンウンと頷く。
「では、お嬢様方、私はこれで。
お嬢様方に精霊の御加護がありますように。
男共は命を賭してでもお嬢様方をお守りしろ!」
そう言って、レナスさんが、
ウンターザーゲンのブースターを噴かせて、
ダッシュで離れていった。
「何か、男性と女性とで、扱いが極端に違う、変わった人っしたね。
ああいうの、フェミニストって言うんスかね?」
誰に聞くともなく、オイラが言うと、
「まあ、言わんとする事は分りますけど、
フェミニストというのは、元々は、
男女両権を唱える人の事で、
レナスさんのは、男尊女卑の反対の、
女尊男卑と言う方が正しいでしょうね。」
と、マカロニさんが解説してくれる。
「まあ、極端な兄ちゃんやったけど、
助けてくれたんは確かやし、悪い人やないと思うよ。」
ミケさんが、そういって締めくくる。
「よし!
アイツへの、うちの報告の作業はパパっと手早く済ます!
シュタイガーンバオアーは、早よ修理せなあかんけど、
やっぱし、せっかくなんやし、
まずは、報告作業が終わったら、
仕事の達成祝いとロクスリー君の入団祝いを兼ねて、
パーっと行くで!」
その、ザインさんたちに追われていた時には見れなかった、
再びのニコニコ笑顔に、
まあ、こんなのも良いよね、と思ってしまうオイラだった。
その後、
ミケさんは、急ぎの仕事とかで、
30分ほど席を外すとの事で、
その間に、トロイメンカッツェの皆さんたちと、
ソルファージュの中を見て回るオイラ。
「姐さんは、普段は、ちょい金に厳しいが、
祝いの場面では、大盤振る舞いしてくれる、
仲間に優しい人なんだよ!」
「ですね。
普段は、ちょっとワケがあって、
金銭面で、厳しいところもありますが、
仲間、想いの、優しい方です」
「そそ、リーダー、ホントに、
やる時は、大盤振る舞いで祝ってくれる、
太っ腹なチームリーダーだよね!」
と、トロイメンカッツェの、
KGパイロットの方々が、
次々に、ミケさんへの賛辞を述べて行く。
「良いっすスね!
オイラ、全然、役に立たなかったっスけど、
そんなオイラでも入隊祝いして貰えるなんて、
ホント、懐が広いっスね、ミケさん!」
と、嬉しさ満点のオイラ!
「まあ、上手い物を、
たらふく飲み食いできるチャンスだし、
しっかり味わえよな!」
「今のうちに、お腹に入れておいて、
美味しい料理を味わいつくしちゃおう!」
「美味しい料理を食べると、
生きて行く活力が湧きますしね!」
と、KGパイロットのメンバーさんたちが、
次々に、入隊祝いの宴の席を楽しむ様に、
助言を話してくれる。
「素晴らしいっス!
今から、ヨダレが、止まらないッス!」
と、じゅるりと、ヨダレを拭うオイラ!
その間も、
ソルファージュを案内されるオイラ。
ソルファージュ内は、めちゃくちゃ広くて、
盗んだシュタイガーンバオアーや、
FGを置いているGデッキは、
15機ほどのGが置いてあるのに、
まだまだ余裕でスペースがあって、
これの倍ほどのGを置いても、
全然余裕で入りそうな程だった。
居住ブロックも、かなりの広さで、
入隊して住む場所に困る事は無さそうだった。
オイラが、驚きの中で、
ソルファージュの中をキョロキョロしながら進んでいると、
「よっしゃ! 報告完了や!」
ミケさんが合流し、
「ここがブリッジや! さぁ! ようこそ、トロイメンカッツェへ!」
ミケさんに促されるまま、ブリッジに入る。
ブリッジは、前面がモニターになっており、
その周辺には、計器類などが、いっぱいあった。
その中に、
通信に出ていたソルファージュの艦長と、
オペレーターのセリアさん……の他に、
もう一人、クルーが居た。
黒髪でショートのマッシュルームヘアー。
青のジーンズに、白のクロース、
黄色のジャンバーを着ている中背で割と細い男性。
その人が、オイラの視線に気付き、
ニッコリと人懐こそうな笑顔を向けてくる。
「さて。仕事の打ち上げ兼ロクスリー君の入隊祝いのパーティーの前に、
自己紹介から行こか? ロクスリー君、まずは君からや。」
ミケさんに促され、
「皆さん、はじめまして、
ファトス村から来た、ロック=ロクスリー、15歳です。
Gの操縦は下手っスけど、皆さん、よろしくお願いします。」
と、皆さんに自己紹介してみる。
「ねね、伝説のTHの、
リィト=ロクスリーの息子さんって話だけど、
もしかして、親御さん譲りとかで、
Gを発見する為の特別なノウハウとか持っていたりするの?」
ユリンさんが興味津々という感じで聞いてくるけど、
「残念。そんなノウハウとか持っているなら、
オイラ、いま、ここでこうしてないっスよ。
そんな能力があるなら、
今頃、THやって、
ひと山当てていると思いません?」
ありのままに話してみる。
「あ~。うん。納得。」
ユリンさんが、ウンウンと頷く。
「ロクスリー君は、
ちょっと気が弱いのが玉に瑕やけど、
すっごい感がええねん!
なんちゅうの?
危機探知能力っちゅうたら良いんかな?
こう、ズバズバ~って、危険を見抜くんやで?
うちがファトス村の自警団たちを、
絡め捕る為に設置した、スタンネットも、
ザインの巡らした策略も見抜いて、的確に指示出してくれたんや!
一緒に居た、うちが保証する!
このロクスリー君の感は一級品やで!」
ミケさんが、やんやとオイラを褒め称える。
「ほぅ、
危機探知能力…。
なかなか興味深いですね。」
マカロニさんが、中指でメガネをクイッと押しながら言って来る。
「おお、そんな凄ぇのかよ!
見た目と違って、やるじゃん!」
ケビンさんが、そう言いながら、オイラの背中をバシバシと叩く。
「う…う~ん…感っていうか、
一回体験したから何が起こるか分かるっていうか……。」
上手く説明できず、しどろもどろで話していると、
「そう! ロクスリー君は、危険を感じると、
既視感を感じるんや!
みんなも、ロクスリー君が、既視感の話ししたら、よう聞きや!」
ミケさんがそう締めくくる。
「凄いじゃん! 未来予知って奴?
それがロクスリー君の特技なワケだね⁉」
ユリンさんがやんやの喝采を送ってくる。
「あ~…う…う~ん。
まあ、説明が難しいから、もうそれで良いっス。」
うん。オイラの頭じゃ、これ以上の説明は不可。
まあ、大体のニュアンスは合っているから、
これからもデッドループしかけたら、
今までのミケさんみたいに、
皆さんもオイラの言葉を聞いてくれるでしょう!
『では、僭越ながら、
そろそろ、私の自己紹介をします。』
オイラの腕の中で丸まっていた38が声を掛ける。
「何、その子⁉
何か、ボーリング玉が話しだしたんですけど⁉」
ユリンさんが、驚きの声を上げる。
『紹介が遅れました。
外部接続OS38式と言います。
私の事は……』
「38って呼んでやって下さいな、
皆さん。なかなか愛着が湧く、
呼び名だと思うっスよ!」
オイラが皆さんと38が、
直ぐに打ち解ける様にと思って言うと、
『マスターの感性は最悪だと判断します。』
何故か38に咎められるオイラ…。
ありゃ? オイラ、何か悪い事した?
「38ちゃんね。
なかなかカワイイ呼び名じゃない。」
と、ユリンさんが、
オイラの腕の中の38のボーリング玉ボディーを撫でる。
「しゃべるボーリング玉ってのは、ちょいビックリしたけど、
なかなか良い奴っぽいじゃん! よろしくな、38!」
ケビンさんが38をペシペシと叩く。
でも……あれ?
「うん?
しゃべるボーリング玉が珍しいって、
外部接続OSって、
みんな38みたいに球状で話すモンなんじゃないんスか?」
疑問をそのままケビンさんにぶつけて見る。
「え?
外部接続OSって、
音声ナビは他のにも普通にあるけど、
形は、普通は大体、四角のノートパソコンみたいなノート型なんじゃねぇの?」
ケビンさんが何を当たり前の事をとでも言うような感じで言って来る。
「え…?
普通の外部接続OSって、
四角形なんスか?」
驚きで、ほぼオウム返しで返してしまった。
「私たちが今まで見た事がある、
外部接続OSは、
だいたい、四角形のノート型だったけど?
38ちゃんみたいなタイプは、始めて見たわね。」
ユリンさんが補足説明してくれた。
「う…う~ん…まあ、オイラ、
外部接続OSって、
38しか見た事なかったし、
ファトス村の人たちも、38を見ても、
特に何も言わなかったから、
38タイプが普通だと思っていたので、
逆にビックリっスね。」
「まあ、あの村は、
平和ボケしとる田舎村やからね。
外部接続OSも、
あの村の中で居たのは38だけで、
みんな見慣れて、あんまり騒ぐモンも、
居いひんかったってだけちゃうかな?」
「あ~。なるほど。」
まあ、確かに、
ファトス村は、のんびりした村だし、
そういう事、あるかもだね。
「しかし、始めて見た時から、もしやとは思っていましたが、
まさか本当にサーティーシリーズが現存していたとは。
いやはや、出会いというのは奇なるモノですね。」
マカロニさんが、驚いた顔をしてから、
ウンウンと、一人頷いて、良く分からない事を言って来る。
「うん? サーティーシリーズ?
何スか、それ?」
オイラの、その問いに、
『私の製造番号に対する呼び名の事です。
過去の技術者には、製造番号が30番代なので、
サーティーシリーズと呼ばれていました。
また、サーティーシリーズは、全て球形をしており、
他の外部接続OSとの差別化が、
見た目で分る様に設計されています。』
と、38が応えて来た。
「うん?
見た目が球形なのがサーティーシリーズってのは分ったっスけど、
それが、マカロニさんが、驚くくらい、
何か凄いモノなんスか?」
良く分からず、マカロニさんに聞いてみると、
「言っても分からないと思いますが、
サーティーシリーズは、過去の時代に作られた、
外部接続OSの中でも、
最高傑作と言える性能で、量子コンピューターという分類の、
超性能のコンピューターのシリーズなのです。
その上で、38番という事は、
サーティーシリーズの中でも、ほぼラストロット…。
つまり……セミラストロットなので…、
ほぼ最強の性能と言っても過言ではないです。
いやぁ、まさか、
現存している実物を見られるとは思いませんでした。」
マカロニさんが、メガネを輝かせながら中指でメガネをクイッと上げる。
興奮冷めやらぬといった感じだ。
『いつもマスターは、私に不当な評価を下していて、
常々、不服に思っていたところですが、
私を正当に評価してくれる方が現れて、とても喜ばしいです。
これから、仲良くして下さいね。』
と、38が、のたまうが、
「こちらこそ、よろしくお願いします。
是非、どういう構造になっているか、
分解して分析してみたいところですね!
その球状ボディーの中に、どんな大胆な姿が秘められているのか、
是非調べ尽くしたいところです!
ああ、その球状ボディーに秘められた姿を調べ尽くせたら、
どれほど素敵でしょうか! ハァハァ!」
と、マカロニさんが、何か息も荒く言って来る。
『マスター! この方からは身の危険を感じます!
どうか、この方から、私を守って下さい!
「さんぱち」でも「みはち」でも、呼び名は何でも良いですから!』
珍しくいつも冷静な38が叫んで来る。
しかも、すんごい卑屈に懇願してくる。
物凄い変わり身の早さだ。
よっぽど怖いんだな、マカロニさんが。
いや、オイラも、ちょっとコレは引くけど。
「うん。
マカロニさん、うちの38を分解するのはナシの方向性で。
オイラが寝ている間とかも、
勝手に38に触らないでやって下さい。」
とりあえず、助け舟を出してやる。
「まあ、所有者のロクスリー君が、そう言うなら。
……残念ですが、仕方無いですね……。」
心底、残念そうに肩を落としながら言って来るマカロニさん。
「でも、ゲズやジーナとかの内蔵OSの、
58とかが出回っているのに、
ナンバー的に38って型落ち品なんじゃないんスか?」
ふと湧いた疑問をマカロニさんにぶつけて見る。
そうなんだ…。
ゲズとかジーナとかの一般的なFGにすら、
内蔵OS58、
通称、58っていう、
そのままの呼び名で。広く流通してる上、
番号的に明らかに38より新型っぽい、
内蔵OSが積んであるらしいんだよね。
「あ~。
それは確かに勘違いし易そうな事ですが、
内蔵OSの58より、
サーティーシリーズの38さんの方が新しいんですよね。」
マカロニさんが予想してなかった答えを言って来る。
「うん?
38の方が、ナンバーが古いのに?
どういう事っスか?」
当然の疑問をぶつけてみる。
「58は、
1058年に作られた内蔵OSで、
サーティーシリーズの38さんは、2138年に作られた、
外部接続OSなんですよね。
なので、58より、38さんの方が、
1080年分、新しいんですよね。」
「え⁉
58より1000年以上後に作られたOSって、
38って、そんな新しいOSだったの⁉」
マカロニさんの答えに、オイラが驚きの声を上げると、
「それも、本当の価値を知っているモノでは、
値段の付けようも無いくらいの最高クラスの、
外部接続OSですね。」
と、マカロニさんが、メガネを中指でクイッと上げながら言って来る。
「マジで⁉」
驚愕にオイラが身を乗り出してマカロニさんに聞くと。
「マジです。」
マカロニさんが冷静に答えてくる。
「38、オイラの為に売られてくれるか⁉」
興奮冷めやらぬまま、38に聞いてみる。
『マスターは、親の形見の上に、
幼少の頃から共に過ごした私を売る様な、
鬼畜外道の人でなしになり下がるのですか?』
と、38が返してくる。
「ロクスリー君。
サーティーシリーズの真の価値が分かる人では、
サーティーシリーズには値段は付けられません。
ですが、そこらの質屋では二束三文で買われるだけですよ?
お父様の形見の品でもあるのなら、
売るなんて選択肢は無いと思いますよ?」
と、マカロニさんが、冷静にアドバイスをくれる。
「まあ、売れるかどうかはともかく、確かに父さんの形見っスからね。
それに、38の言う通り、
38とはオイラが小さい頃からの腐れ縁っスからね。
まあ、持っときますか。」
うんうんと、頷いて納得してみる。
『マスターにしては英断であると判断します。』
「ボクも、その方が良いと思いますよ。」
38とマカロニさんが、ホッとした感じで言って来る。
「という事で、38さん、ボクとも仲良くお願いしますね。
それと、できれば、やっぱり分解させて貰って、
38さんの球状ボディーに隠されたあられもない姿を、
拝見させて頂けると、なお嬉しいのですが!
ハァハァ! ダメですかねッ⁉ ハァハァ‼」
マカロニさんが、再度、興奮気味に38に言う。
『マスター‼ この方は危険です!
どうか、私に、この方の魔手が伸びない様に護って下さい‼』
38がオイラの腕の中で、
フルフルと振るえながら言って来る。
よっぽど怖いんだな、マカロニさんが。
「オーライ、相棒。
オイラもオマエが分解されて使えなくなると、
Gが操縦できなくなって困るから、死守するよ。
って事で、マカロニさん、何度も言いますが、
38の分解、禁止で。」
「残念ですが……持ち主のロクスリー君が言うなら……仕方ありませんね……。」
マカロニさんが心底残念そうに、言って来る。
「ほんなら、次は、うちの番かな?」
と、前置きしてから、
「ロクスリー君には、一度、自己紹介したけど、
念のために、もう一回や。
うちは、TSチーム、
トロイメンカッツェのリーダーで、
KGタイニーダンサーの専属パイロットの、
ミケ=スターライトや。」
と、ミケさんが、ニッコリ笑顔で言って来る。
ここまで、落ち着いてミケさんを見る余裕が無かったけど、
改めて眺めると、何てキュートなコンパクトボディーッ⁉
ストレートロングの銀髪で、アルビノな目の上、
ムチャクチャ整った顔立ち!
その上、何より!
何処からどう見ても、7~8歳くらいにしか見えない、
デラミニマムなボディーなんですよッ⁉
もう、これで萌えるなって方が無理がある…ッ‼
それに、ケビンさんはともかく、
マカロニさんまで、ミケさんを、さん付けで呼んで、
皆さん敬語で話してるんスしッ!
ミケさんは、相当、年長さんのはずッ!
つまり……ッ!
これが…! これが…ッ!
これが巷で噂の…!
合法ロリなんじゃないの…ッ⁉
もうッ!
激々々々ッ‼
激萌えまくりッス‼
その鼻の下をデレデレに伸ばしまくったオイラの熱い眼差しに、
気付いてか、気付かずかッ⁉
「フフ…、まあ、固いのはナシや、
よろしくな、ロクスリー君。」
更に、デラ笑顔でオイラに微笑むミケさんッ‼
もうッ! ホントッ!
オイラのハートは、そのキュートコンパクトボディーに、
メロメロですぅッ‼
「ハイ! ハイッスぅッ‼
よろしくですぅ‼ よろしくですよぉ‼
ミケさはぁぁ~んッ‼」
ミケさんの手を握り、ブンブン振るって、喜びを噛み締めるオイラッ!
その感激しまくりなオイラを見て、
「あ~あ。
ま~た、リーダー、ロリコンを増やしちゃうんだからぁ~。
ホンット、罪なロリっ子よね。」
と、ユリンさんが大げさに被りを振る。
「ユリン!
また、うちが小っちゃい子みたいに言いおって!
いつも言うとるやろ!
うちは、24歳のレディーなんやでッ⁉」
と、ユリンさんを一喝するミケさん。
って、でも、24歳って⁉
それって⁉ やっぱしマジもんで、合法ロリですよッ⁉
それって⁉ それってッ‼
もうオイラ、ロリコンでも良いって事っスよね…ッ⁉
更にメロメロになって行って、
もっと熱い視線をミケさんへ送るオイラを横目に、
「ホンット、これで自覚も無いんだから、
益々、罪なロリっ子だよね、リーダーは。」
と、ユリンさんが、更に大きく被りを振る。
「ムキー…ッ‼ ユリン‼
やから、うちは子供やのうて…ッ‼」
と、怒り心頭のミケさんだが、
「ま、まあ、姐さん。いいじゃないですか。
それに、そこが姐さんの良い所でもあってですねぇ。」
と、ケビンさんが助け舟を出しに入って来て、
「そうですよ。
それに、そこにヤキモチを焼くのも、
同じ淑女としてどうかと思いますよ、ユリン?」
と、マカロニさんも、介入して来るが、
「ま~ったく、もう。
こんなロリコンたちばっかし増やしてさぁ~。」
と、尚も、被りを振るユリンさん。
でも、その顔は、微笑むような笑顔なんだよね。
口では、咎めてるけど、ユリンさんも、
このミケさんのコンパクトさが、仲間として、好きなのかもだね。
っと、このやり取りで、逆に、
オイラも、ちょっと冷静になって。
「あ、でも、ちょい、いくつか聞きたいんスよね?」
と、ミケさんに伺ってみる。
「なんや? なんや?
やっぱし、うちが、余りにも大人の美人過ぎて、
この大人の美人さの秘密が知りたくなったとかか?」
と、ニシシと、『冗談や』、と言わんばかりの笑みを浮かべるミケさん。
「いや…えとですね…、
まず、あのタイニーダンサーってKG、
飛行の為の外付けの追加ブースターユニットも無しで飛んでましたけど、
あれは、アリーエルクラフトを…、
それも、GS用とかの大型のじゃなく、
小型軽量化されたのを積んでるんスよね?」
オイラの、その当然の疑問に…。
「そやで!
タイニーダンサーは、アリーエルクラフトを、
Gサイズにコンパクトにカスタムして、
搭載運用する事に成功した、高速飛行型KGなんや!
やから、かさばる外付けの、
追加ブースターユニットなんかも要らん上に、出力も断然に上!
その上、安定した飛行が可能な、超高性能KGなんやッ!」
えっへん、と、そのナイ胸を張り上げるミケさん!
「おお!
やっぱりアリーエルクラフト機だったんスね!
Gサイズでアリーエルクラフト搭載なんて、
タイニーダンサー、メチャ超性能ッスね‼」
大いにタイニーダンサーを称えるオイラ!
けど、そこで更に、
「でもな、ただ飛べるだけやないで?
うちのタイニーダンサーは、機動性だけやなく、
攻撃も、防御も、ピカイチなんやから!」
と、更に、その魅惑のナイ胸を、エッヘンと張り上げッ‼
「攻撃では、トライバレルって言うてな、
高威力レーザー射撃のレーザーと、燃費が良い実弾射撃のバレット、
更に、銃身の先端に形成するレーザーソード、
これら3つの基本攻撃ができる万能武器や!
その上、
専用に出力調整されて開発されとるから、レーザーは高威力!
火薬を調整した専用の高威力弾を使っとるから、
低燃費が売りのバレットでも、相当な威力や!
その上、レーザーソードも出力調整のお陰で、
レーザーソードやのに、並みのレーザーセイバーくらいやったら、
楽勝で勝てる程なんや!
その上、レーザーはチャージできて、
そのチャージレーザーは、威力を高めた上で、
偏光レーザーとして、複数の敵機を同時に攻撃できるんや!」
と、熱を込めて、あのトライバレルってのの超性能さを熱弁する!
「ふへぇ~~。」
確かに、さっきの戦闘でも、凄い性能なのは分かってたけど、
一つの武器で、そこまでの攻撃方法ができて、
そんな威力も高いなんて、何てマルチウェポンなんだ⁉
「で、ラーゼンレーヴェの使っとる、
Aトライバレルっちゅうんは、
燃費を悪くした代わりに威力を強化したトライバレルの強襲型!
で、エンジェルシードの使っとるLトライバレルっちゅうんは、
逆に威力を抑えた代わりに弾数や速射性を上げて、
オートロックオンのロックオン精度を上げて命中率も上げた、
使い回しを良くしたバージョンの、軽量型のトライバレルなんや!」
そう、トライバレルの多様性を熱弁するミケさんの、
その魅惑のコンパクトボディーから更に張られたナイ胸も、
超絶的な性能なんだけど…!
「その上、
エンジェルシードのLトライバレルやったら無理やけど、
タイニーダンサーのトライバレルと、
ラーゼンレーヴェのAトライバレルのレーザーを、
同時にチャージして、敵陣に突っ込んで背中合わせになって、
回転しながらチャージレーザーを同時に放つ事で、
単発でチャージレーザーを撃つ時よりも、更に広範囲の敵を、
一気に殲滅する事ができる、合体攻撃!
ガンスリンガーパレードが使えるんやッ!」
と、さっきの超絶合体攻撃の事もレクチャーしてくれる!
「ホント、あの合体攻撃、凄かったっスもんね!
見る見る、ラフィンスカルさんたちが被弾して行きましたし!」
範囲も、もちろん凄いけど、威力だって、ホント凄かったもんね!
「フフフッ……。
でも、さっきも言った通り、
タイニーダンサーは、防御かて凄いんやから!」
『これも言いたかったんや!』とばかりに、ミケさんの目が、キラッと光る!
「あのPBLHとかいうレーザーシールドの事っスよね?
あれ、メチャ、凄い出力っしたよねッ?」
「そや!
PBLHは、正式名称を、
『ピンポイント・ブロック・レーザー・ハンド』言うてな!
範囲は、左手の平だけやし、レーザーシールドと同じで、
発動してから数瞬間の展開時間内でしか、
展開できひんのやけど、
並みのレーザーシールドなんか目やない出力でな!
レーザーライフルどころか、
レーザーバズーカとか、レーザーランチャーとか、
実弾かて簡単に防げるし、
こう、戦艦の主砲かて、完全に相殺はできへんけど、
受け流す事で軌道を変えて、
逸らす事くらいやったら、
いくらでもできる程の瞬間出力なんやでッ!
どや、ホンマ、防御もピカイチやろ?」
すっごい、『言いたい事を言えて満足!』と言わんばかりに、
ミケさんは、デラ笑顔だ!
でも、その笑顔のまま、ちょっと頭を掻きつつ、
「まあ、ホンマは、あのシュタイガーンバオアーいう子にも、
なんやPBLHがあったんやけど、
あの子はホンマ、乗ってたら気分悪なるし、
ホンマ使い難い子やったから、
瞬間展開式のPBLHを、
あの子の時に使うのは、ちょい自信のうて、使われへんかってんけどな。」
と、少しバツが悪そうに目を泳がせるが、
「まあ、でも、もう、
あのシュタイガーンバオアーいう子に乗る事も無いやろうし、
タイニーダンサーの凄さは、これから一緒にやって行ったら、
もっと、も~っと、分かって行くやろから、バシバシ頼ってくれてええで?」
っと、再度、満面の笑みになり、
そのデラキュートな笑顔のまま、ウィンクして来るミケさんッ‼
そのコンパクトボディーから放たれる超絶的な魅力に、
もう、オイラのハートは、キュンキュンっスッ‼
そんな風に、
思わず鼻の下をデレデレと伸ばしまくっちゃうオイラを尻目に、
「っと、うちばっかし喋るのはあれやね、
タイニーダンサーの説明も概ねしたし、
そろそろ選手交代やな、ほい、じゃあ次は、おっさんや。」
ミケさんが笑顔のまま、艦長さんに振る。
艦長さんが、うおっほんと咳払いしてから、
「トロイメンカッツェの旗艦空母GS、
ソルファージュの艦長をやっているバーダック=ホリスンだ。
まあ、汚ぇとこだが、じき慣れる。よろしく頼む。」
と言って、威厳のある顔をほころばせ、微笑み掛けてくる。
「ほいさ。
よろしくですよ、バーダック艦長。」
バーダックさんの、その微笑みに、
オイラも自然と、笑みで返すと、
「じゃあ、次は私かしら?」
セリアさんが聞いて来る。
「ええ、お願いします。」
セリアさんに先を促す。
「トロイメンカッツェの旗艦空母GSの、
ソルファージュのオペレーターを担当しているセリア=オードネスです。
人手が足りなくて、医務も担当しているので、
怪我をしたら言ってね、ロクスリー君。」
「はいっス! セリアさん!」
セリアさんが握手を求めて来たので、握手し返す。
「じゃあ、次はボクだね。」
と、マッシュルームヘアーの、
もう一人の戦艦クルーの、兄さんが言って来る。
「トロイメンカッツェ旗艦空母GSの、
ソルファージュの操舵を担当している、リッド=ステインです。
これからよろしく、ロクスリー君。」
リッドさんも、人懐っこいニコニコ笑顔で握手を求めてくる。
「ええ、よろしくっス、リッドさん!」
リッドさんにも握手を返す。
「じゃ、次はオレだな!
トロイメンカッツェの特攻隊長!
KGラーゼンレーヴェの専属パイロットの、
ケビン=ブロッサムだ!」
ケビンさんが、そう言って、右手を掲げながら、
「オマエも右手上げて!
親愛の挨拶のハイタッチだ!」
と言って来たので、右手を上げると、
「よろしくな、兄弟!」
と、オイラの右手に、パシンとイイ音を立てて、ハイタッチをしてくる。
「ええ、よろしくです、ケビンさん。」
うん、何か、こういうの、良いね。
「何か、ケビンさんのKG、
戦闘中に、アリーエルスラスターとかいうの使ってる時、
すっごい機動性っしたけど、アレ、なんなんスか?」
と、さっきの戦闘中から疑問だった事を聞いて見る。
「ああ。アリーエルスラスターは、
オレの相棒のラーゼンレーヴェの全身に、
隈なく搭載されている特殊兵装で、
通常のスラスターに更に追加で、
アリーエル粒子を応用して、
全身の機動力を超絶的に加速させるっていう、
すげぇ兵装だ!」
「あ。なるなる。
アリーエル粒子を使ったスラスターな上に、
足部にだけとかじゃなく、全身に隈なく装備されてたんすね。」
うんうん、と頷くオイラに更に答える様に。
「ああ。
でな、普段は、アリーエルスラスターを切ってるが、
いざという時に、アリーエルスラスターを起動させると、
ラーゼンレーヴェは、そこから凄まじい瞬発力と移動力になってよぉ、
こう、どれだけ大量の相手からの集中攻撃にさらされても、
いくらでも全然余裕で回避し切れるし、
ちょっとばかし離れた場所程度なら、
余裕で直ぐに辿り着ける程の足の速さにもなるんだ!
まあ、アリーエルスラスターを起動してなくても、
うちの相棒は、全然早ぇぇけどな!」
ニヒヒと、ケビンさんが上機嫌で良い笑顔を見せる。
それに対してオイラも、
「ですよね!
さっきは、距離の離れてたオイラたちに直ぐに追い付いてくれましたし、
アリーエルスラスターを起動してたからみたいっスけど、
相手からの攻撃も、簡単にバシバシ避けてたっスもんね!」
さっきのケビンさんの活躍を思い出して、嬉しくなって来る。
「おうよ!
だがなぁ、アリーエルスラスターのすげぇのは移動や回避だけじゃねぇ!
その超スピードを生かして、躱せない攻撃を相手に当てまくって、
1部隊程度なら、簡単に、それでいて徹底的に沈黙させるくらい、
すげぇ殲滅力すら発揮してくれんだ!」
相当、説明が楽しい様で、熱の籠った風に、
バシバシとオイラの肩を叩いて来るケビンさん。
「ただなぁ……。
大量にENを消費するから、
長い事は使えねぇのがネックなんだよなぁ……。」
と、ちょっと言のテンポを落として、
ケビンさんが鼻を指で擦る。
「まあ、色々言ったが、
ラーゼンレーヴェの本体ENを大量に消費する変わりに、
超高機動化させる事ができる兵装って覚えりゃ良い。
燃費は悪ぃが、防御にも攻撃にも奇襲にも使える万能兵装だ!
これ以上の詳しい原理は聞くな。
マカロニ辺りに聞くと詳しく教えてくれるだろうが、
頭が痛くなるだけだろうから止めた方が良いぜ?」
と、分かりやすく纏めてくれた上、
軽く朗らかに忠告してくれるケビンさん。
「なるほど、なるほど。
まあ、頼りになるのが分っただけで、
原理とかは分らなくてOKっスよ。」
うんうんと頷いてから。
「あと、戦闘の最後の方で使った、
オサフネとかいう、超巨大なレーザーセイバー!
アレは、なんだったんス?」
と、最後に聞こうと思ってたラーゼンレーヴェの、
今戦闘、最後の謎を聞くと、
「やっぱ、それは気になるよな!」
と、デラ笑顔で、ニシシと笑ってから、
「あのオサフネは、
相棒のラーゼンレーヴェの最大火力で、
さっき見せたみたいに、ザヌス程度なら、
一気に、2機くらい、簡単に真っ二つにできるし、
そもそも、あれで最小攻撃範囲と、
最小威力ぐらいしか出して無いていうな!」
と、熱く語るのが嬉しそうに、
オイラの背中をバシバシ叩きながら話を進めるケビンさん。
「ま、消費ENの関係で、
中々、乱発はできねぇけど、
威力は、ホント、折り紙付きだぜ?
いざという時は、頼りにしてくれや!」
と、更に、バシバシとオイラの背中を叩きまくるケビンさん。
「ちなみにオサフネの本来の名称は、
ビゼンオサフネとか言うらしいけど、
長ったらしいから、オレはオサフネで通してるけどな!
もう、この呼び方に、愛着も湧いて来たしな!」
と、更に、ニシシと笑うケビンさん。
「了解っスよ!
まあ、ラーゼンレーヴェは、今回の戦い方みたいに、
サポート機の、ユリンさんのエンジェルシードと一緒に戦うと、
凄い、効率良さそうなのだけは分かったっスよ!」
うんうんとオイラが頷いていると、
「ハイ! ハイ! ハイ! 次、私! 次、私!」
と、ユリンさんが意気込んで言って来る。
「じゃあ、ユリンさん、お願いっスよ。」
ユリンさんを促してみる。
「ハイ、ハ~イ!
トロイメンカッツェのヒロイン!
悪・即・斬の 万能サポートKG、
エンジェルシードの専属パイロット、ユリン=エメラルドちゃんで~す!
よ~ろしく~!」
うん…何となく分っていたけど…。
この人…妙にテンション高いわ…。
「え~っと。うん、よろしくっス。
で、ですね。さっきの戦闘中、ユリンさんのエンジェルシードが、
GのENを補給したり、弾薬を補給したり、
Gの修理をしてたっすけど、どうなってるんスか?」
「それ聞きたいよね⁉ 聞きたいよね⁉
ユリンちゃんのエンジェルシードの秘密、聞いちゃいたいよね⁉
OK、じゃあ、答えちゃいましょう!
エンジェルシードのバックパックには、ラジエールコンデンサーって言って、
エンジェルシードに搭載されているオリジナルラジエールエンジンで、
発電した余剰ENを備蓄して、
必要な時に他のGに供給できる装置が付いているんだよね。」
「おお、それ、凄い便利な装置ですね。
アリーエルスラスターで超性能だけど燃費の悪いラーゼンレーヴェとかと、
一緒に運用すると、すっごい戦力になりそうっスね!」
「でしょ? でしょ?
さらに、バックパックには、
各種、レーザーマガジンやバレットマガジンも搭載されていて、
味方のマガジン対応の武器の弾薬を補給しまくりんぐなのよ!
どよッ! この超性能!
ユリンちゃんのエンジェルシード!
凄い! カッコイイ! 惚れちゃう!
そんなエンジェルシードを手足の様に扱えるユリンちゃん、天才!
マジ、ゴッド! こんな私を愛しちゃう!」
ドヤッ!って顔でユリンさんが鼻息も荒く言って来る。
「う…うん、凄いと思うっスよ。」
ユリンさんの勢いに押されるオイラ。
「でね! でね!
エンジェルシードの左腕部には、
G修理装置が付いていて、
左腕から延びる作業用アームで、
修理する対象のGか、エンジェルシードの、
損傷してない部分を切り取って、
被弾した部分の上に切り取った装甲を貼って、
プラモデルのパテ埋めの様に伸ばして損傷箇所を応急修理できるのよ!
皮膚の移植みたいな感じだね! どよ! マジ、パネェでしょ?」
「え…ええ…凄いっスね。」
ユリンさんの高いテンションの勢いに、
頷くしかできないオイラ。
「でも、戦闘中から思っていたけど、
ロクスリー君って、結構、カワイイ顔しているよね!」
「そうっスかね?
自分で自分の顔を見る分には、普通っぽく感じるっスけど?」
ユリンさんの指摘が、ちょい納得行かなくて聞き返す。
「大丈夫、大丈夫!
ロクスリー君、かなりイケてるよ!
ちょい情けない感じが、ネコやらせると映える感じなんだよね!」
「ネコ?」
ユリンさんの言葉が理解できずに聞き返すと、
「そそ!
ロクスリー君がネコで、マカロニ立ち!
うはッ! これ、良いんじゃない!?
良いよ! 良いわよ! 最強だよ!
思わず萌えちゃう! ハァハァ……ッ!」
と、何やら興奮冷めやらぬ様子⁉
「ヤバイ! ヤバ過ぎ! デンジャラスッ‼」
そう叫ぶユリンさんの鼻腔から、
噴水の様に凄まじい勢いで、
赤い本流が飛び出して来る⁉
「ちょ……ッ⁉」
ユリンさんの前に居たオイラの顔面に、
ユリンさんの血潮が、これでもかと迸る⁉
「ハァハァ! 最強!
このギシアン、最強なんですけどッ⁉」
なおも謎発言をしつつ、
鼻から赤い飛沫を噴射するユリンさん⁉
「ええい! オマエのその病気は、ええ加減、治らんのか⁉」
ミケさんが、どこからともなくハリセンを出し、ユリンさんの後頭部を強打する!
「はわっ⁉」
ミケさんのハリセンの一撃で、
頭に上った血の循環が正常に戻ったのか、
ピタッとユリンさんの鼻からの飛沫が止まった。
「ハッ⁉ 出してない! 出してないよ⁉
花も恥らう純情乙女のユリンちゃんが、
鼻血なんて出してないよッ⁉」
どうも、ユリンさん的に、
本当は、鼻血はアウトらしい。
でも、ユリンさんは、
何を今更という感じのライフスタイルである事が、
ここまでのユリンさんとの会話で明白なワケだが。
ってか、せっかく今まで、
女性だし気を使って、ぼやかして、
鼻血って描写しなかったのに、
ユリンさんがダイレクトに言っちゃったよ⁉
てか、オイラ、顔面、血まみれなんだけど。
絵面だけ見たら、大惨事だけど、
この真っ赤な塗装が鼻血で構成されているという事が、
精神的に、もっと大惨事っていう……。
「うん、まあ、その、
だいたいどういう人か分ったので、
チェンジでお願いします。」
とりあえず、ポケットのハンカチで、
鼻血を拭いながら伝えてみる。
「うわ~ん!
純情乙女なのにチェンジ食らっちゃったよ!」
ユリンさんが嘆いているが、
正直、鼻血を被ったオイラが嘆きたい。
「では、トリはボクですかね?」
マカロニさんが、中指でメガネをクイッと上げながら言って来る。
あ~。この動き、もう何度かやっているよね、この人。
多分、クセなんだろうね。
「ほいさ、オオトリ、お願いですよ、マカロニさん。」
「ええ、では。
トロイメンカッツェのメカニック兼、
KGフェストゥングの、
専属パイロットのロイド=ノーマンです。
チームの皆さんからは、マカロニと呼ばれています。
メカニックの力が入り用になったら、
ご一報を。よろしく、ロクスリー君。」
マカロニさんが、ニッコリと笑顔を向けて握手を求めて来る。
「ほいさ。よろしくですよ、マカロニさん。」
こっちも笑顔と握手を返す。
「しかし、今回、
ミケさんが強奪したシュタイガーンバオアーは中々のモノですね。
特に、腿の辺りの駆動系が、しなやかなハリを持ちつつ、
小鹿の様に瑞々しく、素晴らしい!
胸部も、出るところは出つつ、
それでいてスレンダーな曲線美!
また、首周りの肉厚でありながらスマートなボディーライン!
肢体も、必要な厚みは確保し、それでいてスラッと伸びて美しい!
素晴らしい! ハァハァ!
何とも素晴らしいボディーラインです!
もう、思わず撫で回したくなるほどに! ハァハァッ‼」
何だか、ヒートアップしてらっしゃるッ⁉
「あ…うん…ええっと…。
とりあえず、落ち着きましょう、マカロニさん……。」
「ハッ⁉
ボクとした事が、ついつい熱くなってしまいました。
すみません。どうも、メカの事になると、
熱くなってしまうクセが抜けないんですよね。申し訳ない。」
うん、メカニックとの事だけど、
できるだけマカロニさんにはメカの話はしない方が良さそう。
「さぁ、一通り、自己紹介も済んだとこで、
そろそろ乾杯と行こうか!」
ミケさんが右手を突き上げて言う。
「よぉ~し、酒だ、酒! 酒持って来~い!」
バーダックさんが、まだ飲んでないのに、
もう酔っぱらった様な体で言ってくる。
この人、お酒好きっぽいね。
「艦長、あんまり飲みすぎないで下さいね。
艦長が、また酔い潰れたら、介抱するの、ボクなんですから。」
リッドさんがバーダックさんに釘を刺す。
「ハイ、ロクスリー君、どうぞ。じゃんじゃん飲んで。
今日は、君が主役なんだからね。」
と、セリアさんが、コップを渡してくれる。
「これは?」
「シャンメリー。
シャンパン味のジュースね。
まあ、お酒は20歳になってからで。
でも、パーティーの雰囲気は出るわよ。
いっぱいあるから、じゃんじゃん飲んでね。」
「ハイっス!」
「よーし、特攻隊長、ケビン=ブロッサム!
駆けつけ一杯、一気行くぜ!」
ケビンさんが、
ビールと思われる黄金色の液体をコップについで、一気にあおる。
「クゥー! 効くねぇー!」
喉に一気に流し込んで、
満面の笑顔のケビンさん。
「こら!
ケビン、オマエも未成年やろが⁉
未成年が、勝手に酒を飲むんやない‼」
ミケさんがケビンさんを咎めると、
「あ…姐さん!
イイッ! イイですッ!
もっと叱って下せぇッ! ハァハァッ‼」
と、ケビンさんが、身震いしつつ、何か口走ってらっしゃるッ⁉
「もっと!
もっと、激しい言葉で、お願いします!
姐さんッ‼ ハァハァ‼」
息も荒く、何か良くわからない懇願を、
ミケさんにするケビンさんッ⁉
KGパイロットメンバーの中でも、
アナタだけは、ミケさんと並んでマトモだと思っていたのにッ⁉
「フフフ…ケビンをネコで、ロクスリー君、立ちってのもアリアリだね!
うはっ! これもイイッ!」
と、ユリンさんも、早くもお酒が回っているご様子⁉
「内部は弄ってはいけないとの事ですが、
外装の修理を任されたという事は、
シュタイガーンバオアーの、あのスレンダーボディーの全身を、
舐めるように調べ尽せるという事!
ああ、あの曲線美に隠された秘密が、もう直ぐ、ボクの手で‼」
何やら、マカロニさんも、酒が回った様で、興奮気味ですよッ⁉
「姐さん! もっと!
もっとなじって下せぇッ!」
ケビンさんも、ノリノリなんですけどッ⁉
「え~い!
ここは、どこの変態博覧会やねんッ⁉
うち一人じゃ捌き切れんッ‼」
ミケさんも、変態3人衆に苦戦気味のご様子…ッ⁉
天国の、父さん、母さん、
成り行きで入った、
TSチーム、
トロイメンカッツェは、変態さんたちの巣窟です…。
濃すぎて、どう対処して良いか分かりません!
こんなところに入って、オイラ、これから、どうなっちゃうんでしょうかッ⁉