第11話
「オメェな…! ロクスリー…ッ!
ホントにスペシャルなんじゃ無かったのかよ…ッ‼」
と、Gデッキでの衆目の中、
ケビンさんがコメカミを引く着かせながら怒鳴ってらっしゃる…!
「いや…そうは言うっスけどっスね…。
オイラとしても…出来るだけ頑張ってコレなワケで…。」
と、シュタイガーンバオアーの中で、
38を抱えて、
必死の弁明をするオイラに…。
「と、言いますけどね、ロクスリー君…。」
「ちょぉ~っと…、
コレは酷過ぎるんじゃないかなぁ…?」
と、マカロニさんとユリンさんも、
凄まじく渋い顔をし、
『このシミュレーターでのマスターの弱さは、
…異常過ぎると判断します…。』
と、38すら、
歯切れ悪く、
非難して来る始末…。
レッドバイソンの捨てて行った機体たちを拾ってから、
直ちにミケさんが、近くの町に、
レッドバイソンの機体たちを詰め込んだ、
レッドバイソンたちのGSに、
オートパイロットを仕込み、
いつもならケビンさんのラーゼンレーヴェに、
護衛を任せるところだけど、
負傷した、
ケビンさんのラーゼンレーヴェを避け、
移動力の関係で、
自らタイニーダンサーで護衛を付けず、
速攻で売りに行き、
その間に、マカロニさんが、
速攻でシュタイガーンバオアーと、ラーゼンレーヴェを、
いつも通りの凄まじく素早い腕で、修理を完了し、
ミケさんが売って戻って来て、
オイラたちGパイロット組、
全員の衆目の中、
もう一度、オイラとシュタイガーンバオアーが、
本当にスペシャルな相性か見ようという事になり、
シミュレーターを起動したんだけど…。
「オメェな!
ちゃんとシュタイガーンバオアーに乗っても、
気分も悪くならねぇ上に、頭痛もしなくて、
CAPASとかいう特殊プログラムが、
ドライブとかいう発動状態にはなるんだろ…ッ⁉」
と、完璧に撃墜され、
悲惨な状態になってる、
オイラの乗ったシュタイガーンバオアーの、
シミュレーター画面を映した後、
シュタイガーンバオアーのコックピット内で、
項垂れてるオイラを映してる、
Gデッキのモニターの外枠を、
小突くケビンさん…。
「いや! そうなんスけど!
只のドライブだと、
操縦しなくてもオイラの思う通りに動くだけで…!」
と、説明するオイラに、
「思う通りに動くんなら、
もっと巧く動かせるんじゃないの…?
何で、思う通りに動くのに、この結果なの…?」
と、渋い顔のユリンさん…。
そう…シュタイガーンバオアーに乗って…。
皆さんが訴える、
頭痛や、気分が悪いという状態に成らない上に、
CAPASとかいう特殊プログラムが、
ドライブとかいう発動状態にはなるんだけど…。
なるんだけど……。
「KGの、
この機体で、ゲズ1機と戦って、
いきなりコケて倒れた上、
その後の戦闘でも、
何をやっても攻撃を外すだけじゃなく、
何度、相手の攻撃からの回避行動で移動しても、
更にコケて、攻撃が、ほぼ全弾命中…。」
と、淡々《たんたん》と、
シミュレーターの結果を述べるマカロニさんに、
「っスけど…!
なんスけど……!
只のドライブの状態だと、
オイラの思う通りに動くってのがダメみたいで、
動きが過敏になって、
逆に移動や回避でコケたり、
攻撃を外したりしちゃうんスよ!」
と、ありのままを訴えるオイラなんだけど…。
「でも、
シュメル戦や、レッドバイソン戦の時は、
機体が損傷したら、
CAPASのフルドライブって状態になって、
大パワーアップしたんでしょ?
それが、何で、
シミュレーターなら発動しないの?
38ちゃんが、
確かにCAPASが、
シュメルたちの時は、
フルドライブって状態になったって、
証言してるし、
それ自体は、私たちも、
ロクスリー君の超絶的なパワーアップを見たから、
信じはするけどさぁ…。」
と、相変わらず、
渋い顔のユリンさん……。
そう、シミュレーターなのが悪いのか謎だけど、
他の方々がシュタイガーンバオアーに乗ると、
ミケさん含みで、皆さん、頭痛と、
気分の悪さを訴えるのと、
オイラだと、それが起こらない事。
また、オイラとミケさん以外が乗ると、
CAPASがドライブにならない事。
オイラや、ミケさんが、シュタイガーンバオアーに乗ったら
シミュレーターでも、
CAPASのドライブ状態には、
何故かなる事。
その上で、オイラと同じで、
CAPASのドライブになるミケさんでも、
何故か、頭痛と、気分の悪さが発生する事。
その上で、ミケさんでは、
CAPASフルドライブに成らない事。
また、オイラの他は、
ミケさんだけは、何故か、
CAPASドライブになるのに、
シミュレーターだからか、
シュタイガーンバオアーを損傷状態に設定しても、
ミケさんどころか、オイラでも、
CAPASフルドラウイブにならない上に、
他の人が乗った場合だと、
そもそもCAPASドライブすら発生しない上、
CAPASドライブにはなるミケさん含めで、
謎の頭痛と、気分の悪さを、
オイラ以外の、皆さんが、訴える事。
その為か、皆さん、操縦が妨げられ、
ちゃんと動けない事までは確認できたんだよね。
で、オイラが乗った場合は、
頭痛と、気分の悪さは、全然、起こらないし、
CAPASドライブの状態なだけでも、
相手の動きが『見え』、
相手の動きに先んじて、
動くことができる……、
上に…!
脳波の初期サンプリング、ていう、
操者の脳波を測定し、
その測定された脳波を基に、
機体を脳波で思った通りに、
動かすことが出来る!
んだけど……。
脳波で思った通りに動かす、
という状態が、
オイラでは、オイラが、色々と、
無駄な動きを考えてしまって、
逆に、動かし難くなり、戦力ダウンする事。
で、
他のCAPASドライブになるメンバーの、
ミケさんでも、オイラの時と同じ様に、
動かす時に、考え過ぎるせいか、
やっぱり、動かし難くなるみたいで、
ミケさんでも戦力ダウンする事。
その上で、CAPASに、
でも、いざシミュレーターを起動し、
ゲズ1機だけと戦闘シミュレートしても、
前述の通りの惨状の上、
シミュレーター内で、シュタイガーンバオアーが、
機体が損傷した状態にしたら、
CAPASフルドライブになるかと思ったら、
それが全然、発動せず、
ただ単にオイラがゲズ1機にボコられて撃墜…。
という凄惨な結果になったんだよね……。
「まあ、アレやね。
逆に考えたら、
多分、実戦やないと発動せん何かを、
前回のシュメル戦と、レッドバイソン戦で、
偶然見れたって事で、
結果的には良かった…と思おうや。」
と、この惨状の中でも冷静なミケさん。
「まあ、そうかも知れねぇですけど、
実際の詳しい状況が把握できねぇってのは、
奴への報告に、色を付けるっつっても、
渋い報告しかできねぇんじゃないです?」
と、ケビンさんも渋い顔でミケさんに尋ねる。
「まあ、ボクも、先生には、
シュタイガーンバオアーの外装の修理はする様に命じられましたが、
内装は弄るなとの命ですからね。
シュタイガーンバオアーの詳しい状況は調べようがありませんね。」
と、両手を上げ、お手上げのポーズをするマカロニさん。
「とりあえず、実際に外部接続した、
量子コンピュータっていう話の38ちゃんでも、
シュタイガーンバオアーのCAPASってのは、
前にシュメルが言った様に、
複数の高性能プログラムが同時起動してる代わりに、
一気に高性能プログラムを同時起動してる影響でバグってて、
その上で、
CAPASの、その実態が、ほぼほぼ分からなくて、
更に、
そのバグり方が、ある意味、奇跡的で、
このプログラムを外部から弄ると、
逆に起動しなくなりそうだし、
ロクスリー君や38ちゃんが経験したっていう、
CAPASのフルドライブっていう状態になると、
量子コンピュータのはずの38ちゃんですら、
全く予測不能の完全なバグ状態になって、
これまた、38ちゃんですら、
全く予測不能の大パワーアップ状態に、
ロクスリー君をパワーアップさせてるらしい…。
ってのまでは分かったけど…。
それって、
現状、ロクスリー君しかマトモま適正が無い上、
そのロクスリー君でも、
シミュレーターじゃパワーアップが計測不能。
その上、多分、ロクスリー君が搭乗した上で、
実戦で、だいぶ危険な程、損傷しないと発動しない…。
ってんでしょ?
あの人、こんな汎用性ない機体を、どうして欲しいのかな?」
と、更に頭にハテナマークを浮かべるユリンさんと、
その話を聞いて、同じく、ハテナマークを浮かべる、皆さんとオイラ…。
ホント、どうして、
ミケさんたちのクライアントさんだっていう、その方、
こんな面倒な機体が欲しいんだろ?
「まあ、アイツとの合流地点も、ホンマ直ぐやし、
シュタイガーンバオアーは、アイツに渡したら、
後は、アイツ次第やしな。
多少は、報告に、色を付けれただけで良しとしようか。」
と、相変わらず冷静なミケさん…。
だったんだけど…⁉
ソルファージュ内に、またアラートが鳴り始める…⁉
「どうした、セリア⁉」
と、ミケさんが通信を繋ぐが、
「リーダー!
未確認の機体が3機、
そのうち1機は、かなりの巨大な機体で…、
それらがコチラの前方に居り…!
その中の巨大な機体のパイロットと思われ人物が、
『クズTSたち、
オマエたちを、この機体1機で撃墜してやるので、
無駄な足掻きをする為に、
Gに乗って現れて来るのであ~る‼
《つ》れの部隊の皆さん2機は、
吾輩の記録係で居るだけなので、
戦闘は行わないハンデをやるので、
吾輩の華々《はなばな》しい戦果の為に、
この機体1機にボコられる栄誉を、
お前たちクズTSたちには与えてやるので、
感謝しつつ、この機体の恐ろしさに震えながら、
出撃して来るが良いのであ~る‼』
と、挑発の暗号通信の伝言を我が艦に送って来ました…!」
と、告げて来る……⁉
『ハァ…ッ⁉』
と、その場の全員が、逆に凍り付く…。
「未確認の機体というのもオカシイですが…。」
と、歯切れの悪いマカロニさんに、
「たった3機だけで、
その上、実際に戦うって言ってるのは、
謎の機体で巨大って言っても、たった1機で、
それで私たちトロイメンカッツェと一戦やろうなんて、
どういう人なの…⁉」
と、ユリンさんも目が点になっている!
「まあ、どういう奴かは知らんけど、
売られた喧嘩は買う主義や!
この喧嘩、買ったる!
シュタイガーンバオアーは、まだ謎が多い!
もしもの時の為にロクスリー君は、
シュタイガーンバオアーでデッキ内で待機!
他は、総員、出撃!」
と、指示を出すミケさん!
『ハイ…ッ‼』
と、答えを返す皆さん!
次々に、ソルファージュから、
ミケさんたちKG部隊が出撃する中、
少し離れた場所に、超巨大なG。
足が無く、脚部にはブースターが付いている。
腕も無く、左右腕部当たる場所にレールキャノン砲を装備。目がゴーグル。
紫と白のカラーリング。
ちょっと安定感の無い不格好な感じで地面に佇んでいるが、
さっき聞いた挑発文を、ミケさんたちに送るくらいなんだから、
恐らく、あんな巨大Gを持ってる事を加味しても、
うちをトロイメンカッツェと認識した上での、
敢えての襲撃のはず…。
その戦力は未知数だけど、侮れない…!
って…ッ⁉
ああァ……ッ⁉
あのお供って言われてる2機のGって…⁉
「み…みみ…ッ! ミケさん…ッ‼
あの記録係のお供って言ってる機体たち、
新統合の、
ダギナスってSGたちですよ…ッ⁉」
驚愕と恐ろしさで、
早口で捲くし立てたオイラの発言に、
『し…新統合…⁉』
と、皆さんが驚愕の声を出す!
「新統合のSG…ッ⁉
新統合が独自に開発してるらしいっちゅう、
新機軸の分類のGって言われとる奴か⁉
って、そんな、
うちらも見た事ないGが分かるやなんて、
また、ロクスリー君の既視感か…ッ⁉」
と、慄くミケさん!
「ほ~う。
部外のモノには、
SGであ~るダギナスの開発及び、その存在は、
まだ秘匿されているはずであ~るが、
流石は、名の知れた、
TSたち、
そういう情報も握っているのであ~るか…。
悪名轟く、
名うてのTSチームであ~る、
オマエたちトロイメンカッツェなら、
後腐れ無く、
この試験機であ~るヴァルロスの、
稼働テストの試験運転の為に、
殲滅できると思って、ここで待ってはいたが、
うむ。
やはりこれは、上層部の情報の秘匿をしてやる為にも、
この吾輩、プロフェッサー=キョクトウの、
再現、生成した、
CG、ヴァルロスの性能テストの為にも、
ここで、消してしまうのが良いであ~るな!
お前たちには、吾輩たち、
新統合の情報機密の為、
そして、吾輩の、
G精製技術の、
偉業を上層部に伝え、
その功績から、
更なる開発費を、
この非常道試験部隊に、
得れる様にし、
更なる高性能機体の開発を、
吾輩ができる様にする為の、
礎にしてやるのであ~る‼」
と、ヴァルロスと呼ばれた、
巨大CGのパイロットさんが、
その自信に満ちた言葉を紡ぐ…!
「ヴァ…ヴァルロスですって…ッ⁉」
と、このキョクトウとかいうパイロットさんの言葉に、
マカロニさんが大きな動揺の声を漏らす⁉
「何や、マカロニ⁉
そんなに驚くっちゅう事は、あのヴァルロスっちゅうのは、
そんなヤバい奴なんか…⁉」
と、ミケさんがマカロニさんに、
答えを促す中!
「過去の時代に、
CGでありながら、
その凄まじい性能の為、
G²として分類された、
という経緯を持つ、超性能機です!
頭部バルカン。
左右腕部に当たる場所に、
レールキャノンを1門ずつ装備。
両腰部にアクセラレートレーザーライフルを装備。
胸部にパルスレーザー砲を装備。
右肩部に、
レーザーガトリング砲を、
機体本体のENも使う様にした代わりに、
威力と集弾性能を高めたガトリングスマッシャーを装備。
左肩部に240mm連装ロケットランチャーを装備。
最大の特徴は、
本体の背部に設置されており、
射出される、レーザーリフレクトビット。
丸みを帯びた形状の、
小型CGで、脳波コントロールで動き、
複数射出し、
戦場に分散展開し、
自機や、味方機のレーザーや、
敵機のレーザーを多角的に反射して、
オールレンジの攻撃と、同時に、敵機からのレーザーの防御をも行うという、
攻防に隙の無い上、
展開射撃される方からすれば、
いつ、何処から攻撃をされるか分からないという、
恐怖を与えられる装備であり、
その能力に寄り、
恐るべき脅威と言える、
超性能のGです…ッ‼」
と、大きな焦りの色を滲ませながら、
マカロニさんが説明する…ッ⁉
「ちょ…
G²に分類される、
CG…ですってッ⁉」
と、驚愕の声を出すユリンさんと!
「G²なんて、
フェアタイディゲンの時で、相当ヤバかったのに、
それが、CGとかの巨大サイズで、
オールレンジとかで攻撃してくるってのか…ッ⁉」
と、ケビンさんも驚く!
「クッ…。
語尾で、いちいち、
『あ~る』とか言い出すアホっぽいパイロットやけど、
そんな凄いG²っちゅうのは、
例え相手が、
SGっちゅう他の2機が、
記録係とかで挑んで来んらしくて、
そのG²が、
1機だけで挑んでくるっちゅうても…相当…ヤバい…‼」
と、ミケさんも、
激しい焦りの色を滲ませる‼
「ど…どど…どうするんすか…ミケさん…ッ⁉」
と、驚天動地のオイラが聞く中、
「とにかく、KG部隊展開!
まずは相手の出方を探る!
ソルファージュは後退!
今日は、相手が相手やから、うちもケビンも、
ユリンとマカロニと一緒に、
この場で、相手の出方を見てから動くで‼」
と、指示を出すミケさん!
「了解です!
とりあえず今日は、突撃は無しですね!」
と、ケビンさん!
「まずは、相手の出方を見ないと、
どれくらい危険か分からないもんね、
ユリンちゃんも了解だよ、リーダー!」
と、ユリンさん!
「しかし、ヴァルロスが敵として現れる脅威は凄まじいですが、
ヴァルロス程の恐ろしい機体を復元する腕……。
いえ…今は戦闘に集中ですね…!
ロイド=ノーマン! 了解しました!」
と、何か怪訝な事を言いながらも、
了承の意を述べるマカロニさん!
「フッ…!
吾輩が再現したヴァルロスの大いなる力!
存分に味わうが良いのであ~る!
行くぞ…ッ‼」
と、突貫の構えを見せるヴァルロス…‼
だったんだけど…ッ‼
「う…動けん…ッ⁉」
キョクトウさんが、
ある意味、ヴァルロスの説明を聞いた時以上の、
驚愕の発言を漏らす…ッ⁉
『ハァ~~~~…ッ⁉』
と、一斉に、逆に、
超驚きの声を漏らしてしまうオイラたち‼
「す…推佐…ッ⁉」
「ど…どういう事ですか…ッ⁉
ど…どうするんです…ッ⁉」
と、記録係と言われた、
SG部隊の、
新統合の部下の、
お二人も驚きの声を上げる…ッ⁉
「クッ…これは…!
できるだけ元のヴァルロスの戦闘力のままに、
完璧に再現する事を追求したが故に起きてしまった、
不慮の事故であ~るな…ッ‼
クッ…余りに完璧に再現してしまえる腕を持つ、
吾輩の、天才ゆえの業なのであ~るな…ッ‼」
と、何か良く分からない事を述べつつ、
困りながらも自己陶酔して行くキョクトウさん…。
「な…何だぁ…⁉」
と、ケビンさんが呆れながらも驚き、
「何や助かったみたいやけど…どういう事やねん…ッ⁉」
と、ミケさんも目が点で、
「え…?
え~っと…どういう事…?
ちょっと…あの相手のGの説明よろしく…マカロニ…。」
と、説明を促すユリンさん。
「え…。
え~っとですね…。
ヴァルロスは、前述の通り、凄まじい能力の機体なのですが、
基本的に、宇宙戦闘を想定して作られた、
宇宙戦闘用の機体でですね、
ボクとしては、
何かホバー走行機能の搭載や、
ブースターを空戦用にカスタム等、
が、してあると思ってたのですが、
どうも、
元のヴァルロスの、
宇宙戦闘用としての能力を、
そのまま、忠実に再現してしまっているらしく、
この目の前のヴァルロスには、
現在、地上戦や、
空中戦に耐えるだけの、
地形適正が無く、
戦えない様だという事ですね…。」
と、
自身も驚きながらも、
現状を解説してくれるマカロニさん…。
「完璧にヴァルロスの元の性能を再現してしまった、
吾輩の天才過ぎる腕が、こんなところで祟るとは…‼
クゥ~~~~…ッ‼
天才過ぎるというのは…何という業であ~るのか…ッ⁉」
と、更に自己陶酔を進めるキョクトウさん。
「い…いや…推佐…⁉
それで…ここからどうするんですか…⁉」
「ヴァルロスが動かない今、
代わりに、このダギナスで継投するにも、
我らは記録係を命じられた故、
この我らのダギナス2機には、
最低限の戦闘用装備しか無いのですよ…ッ⁉」
と、部下のお二人も慌てふためく…⁉
「バカね。」
「バカだな。」
「バカやね。」
と、うちのKG隊メンバーさんたちが、
挙って呆れた声を出す。
「ハァ……。
元が、
宇宙戦用に作られている上に、
脚部が無いヴァルロスを、
空戦用や、陸戦用に、
改装せずに、
ティアナの重力下で使おうとすれば、
それはそうなりますが…。
むしろ、ヴァルロスを復元できる腕があるのに、
それらの適性を付けていない事に、
こちらが驚きますよ……。」
と、溜息すら漏らして、
驚きを告げるマカロニさん…。
「絶対この人、凄い事しているんでしょうけど、
一周半、回ってバカよね。」
「だな。」
「そうやね。」
「っスね、
一周半してバカっスね。」
と、オイラ含め、
トロイメンカッツェメンバーに、
口々《くちぐち》に言われるキョクトウさん。
「えーい!
だが、移動はできんとはいえ、攻撃は出来る!
このヴァルロスのレーザーリフレクトビットによる、
オールレンジ攻撃の脅威を見るのであ~る…ッ‼」
と、キョクトウさんが勇む!
「そ…そうだ…ッ⁉
そ…それがあるっスよ…⁉
いくら本体が動けなくても…、
縦横無尽のオールレンジ攻撃なんて…⁉
ど…どうするんスか…ミケさん…⁉」
と、
新たな脅威に、
戦々恐々《せんせんきょうきょう》とするオイラ…‼
「そ…そうだったよ…⁉
本体が…ちゃんと地上で動かないポンコツ仕様でも…⁉」
「ああ…。
オールレンジの攻撃ってのは…。
一体…どれほどヤベェのか…。」
「クッ…。
パイロットは…ただのアホでも…、
モノが厄介過ぎる…‼」
と、警戒を強めるミケさんたち…。
「流石です! 推佐…!」
「例え本体が動けずとも、
やはり推佐の復元されたヴァルロスは、
素晴らしいんですね‼」
と、
驚きから一転して、
キョクトウさんを褒めちぎる部下の方々!
「よし! 行くのであ~る!
ヴァルロス…! レーザーリフレクトビット起動…ッ‼」
「クッ…!
来るで…みんな…ッ‼」
と、語気を荒げ、皆さんに注意を促し、
ヴァルロスの出方を慎重に伺うミケさん…‼
…。
……。
………。
…………。
「り…リフレクトビットが稼働しない…ッ⁉」
と、
ある意味での、
更なる驚愕の事実を、
述べるキョクトウさん…⁉
「あ~…。
アハハハ~……。」
「もう…ダメなだけだなコイツ……。」
「いくら敵にしても…これは哀れ過ぎるやろ……。」
緊張からの一挙の脱力で、
呆れ果てるミケさんたち…。
「そりゃ、レーザーリフレクトビットも、
ヴァルロスを、
宇宙戦闘用のままで再現して、
空中適性を、
与えていなければ、そうもなりますよ…。
というかですね…。
それほど、忠実に再現できる素晴らしい腕があって、
どうして、本体やリフレクトビットに、
空中適性を付けていないのか、
ボクでは認識が追いつきません…。
それほどの腕がありながら…本当に…勿体ない……。」
と、
メガネをクイっと上げて、
問題点を指摘するマカロニさん…。
「す…推佐ァァ~~~…ッ⁉」
「も…もうどうしようも無いんですか…⁉
ど…どうするんです…推佐ァァ~~…⁉」
と、涙声で、
キョクトウさんに縋り付く部下の方たち…。
「え~い!
例え、本体が動けず、リフレクトビットも動けず、
オールレンジ攻撃もできないとしても…!
ヴァルロスの射程距離は長い!
部下のSG部隊の皆さんに、
オマエたちを一人ずつ焙り出して貰って、
オマエたちが射程内に入れば一機ずつ撃墜してやるのであ~る…‼
SG部隊の皆さん!
や~って、下さいであ~る…ッ!」
と、キョクトウさんが命じる…‼
「クッ…。
分かりました…。
現状はそれしかないですね…推佐…‼」
「ですね…!
例え最低限の、
汎用装備でも…。
このSG…ダギナスで…‼
推佐のお役に立ってみせます…‼」
と、SG部隊のお二人が、
こちらに迫って来る…⁉
「みんな…‼ ここは更に下がるで…‼
ソルファージュも…‼ もっと後方に下がってや…‼
その上で、向かって来るダギナスとかいう、
SGとかいう機体たちを迎え撃つで…‼」
『了解ッ‼』
と、お互いの部隊が、遂に動きを見せ始める…ッ‼
「クッ…オレは…推佐の役に立つんだ…‼」
と、先行する方のダギナスが、
背部ミサイルを展開して来る…‼
「その程度…ッ‼
行くぜ…! アリーエルスラスター…ッ‼」
アリーエルスラスターを使って回避しつつ、
他の味方に流れない様にガトリングで残りを落として行くケビンさん‼
「凄まじい動きだ…‼
だが…その動きをしたところを…だ…‼」
と、ラーゼンレーヴェが動く中、
その動きで視界が塞がったユリンさんのエンジェルシードに、
あのトライバレル並みの出力のレーザーを、
後方のもう一機が放った…⁉
「あぅ…ッ⁉
右肩部が…ッ⁉
エンジェルシードが…こんなに揺れるなんて…ッ⁉」
と…被弾するモノの…、
思ったほど損害が多くないエンジェルシード…。
「標準型とは言え、
このSG、
ダギナスのレーザーライフルを受けて、
その程度の損傷だと…⁉」
と、
驚愕の、
SG部隊の方々《かたがた》…。
前のトライバレル並みの
奴とは違う…。
こっちが汎用型で…、
前のが強襲型だったんだ…!
でも、たった2機で、
歴戦のパイロットのユリンさんの、
虚を突くなんて…⁉
「クッ…。
記録係とか言う割に…、
中々《なかなか》やる…‼」
油断無く、
戦況を見据え、
トライバレルで牽制するミケさん…‼
と…その中で…ッ‼
「推佐…!
オレたちが相手をしてる間に…狙い撃って下さい…!」
「そうです! 推佐…!
オレたちが掻き回してるうちに…ッ‼」
と、キョクトウさんに、援護射撃を願う部下の方々《かたがた》…!
更に…その中で…!
「よ~し…!
SG部隊の皆さん…!
今…吾輩が援護射撃を…ッ‼」
と、キョクトウさんがミケさんたちを狙って来た…ッ⁉
んだけど…。
そうなんだけど……。
「って…ッ‼
本体が動かないせいで…⁉
敵に射軸が合わせられないではないか…ッ⁉」
と、またもダメダメ過ぎるキョクトウさん…⁉
「す…推佐ァァァ~~~…ッ⁉」
「そ…そんなァァァ~~…ッ⁉
このレベルの相手は…、
このままでは…、
我等だけではァァ~~…ッ⁉」
と、悲しい雄たけびを上げながらも、
動き続ける部下の方々《かたがた》…!
「ヴァルロスの射程が長くても、
ヴァルロス自身が動けなければ攻撃時の細かい修正ができないでしょうが……。
そんな中で、
縦横無尽に動くボクたちのKGを、
狙い打てるワケがないでしょうが……。
それに、残念ながら、
ボクのフェストゥングの大型レーザーレールキャノンの射程距離の方が、
ヴァルロスの最大射程より長いです…。
ですから、一方的に攻撃させてもらいますよ…?」
と、無情に告げるマカロニさん…。
「クッ……だが…。
見た所…オマエたちのGの中でヴァルロスの最大射程を超えるのは、
今の男の機体のみと見た!
そして、本来なら射程距離の長いはずのGSの主砲も、
ここまで敢えて、
その長射程のGSの主砲を使わない事から、
GSが、不調の様で、
使用不可と見た!
流石にG²と名を馳せたヴァルロスが、
その射程が届く機体の残弾だけでは、
落ちんのであ~る…‼」
と、思いの外、冷静に、
こちらを分析して話して来るキョクトウさん…⁉
だったんだけど…。
「私のエンジェルシードが、
いくらでも残弾を補給するから、
いくらでも撃っちゃってマカロニ!」
と、ウィンクを送るユリンさん…‼
「アンタら鬼ですかッ⁉
こんな産まれ立ての小鹿の様に、
か弱い吾輩を、
寄って集って虐めてどうする気なのッ⁉」
と、叫ぶキョクトウさんに、
「誰であれボクたちの敵に回るのであれば、
ボクたちには手加減や容赦をする様な、
綺麗事をしていられないワケがあるのですよ!」
と言い、背部から右肩にマウントして使う、
フェストゥングの最大射程武器の、
大型レーザーレールキャノンをヴァルロスに発射するマカロニさん…‼
モノがG²という事で、
数発では沈まない堅牢な装甲の様だが、
少なからず装甲を傷めて行く‼
「クッ……。
何と云う、
鬼畜極まりない輩なのか……。
ハッ⁉ いま気付いたが!
吾輩の指揮下の、
地上用GSの、
スレイプニルをヴァルロスの足に使えば良いのではないかッ⁉
SGの皆さん、
スレイプニルは何処に?」
と、
キョクトウさんが、
更なる足掻きの一手を、
部下のお二人に聞く…ッ‼
んだけど…。
そうなんだけど……。
「ハッ!
ヴァルロスの試験運用の、
データ取りの邪魔になるとの事で、
撤退命令により、
12:00に撤退しており、
このフィールドには12:30まで、帰って来ません!」
と、キョクトウの部下の方の一人が進言する⁉
その答えに、
「誰だッ⁉ そんな迂闊な命令を出したのはッ⁉」
と、キョクトウさんが怒鳴るが、
「ハッ! 推佐ご自身です!」
と、部下の方が、
相変わらずの驚きの答えを返す…⁉
「あんですとッ⁉」
と、叫ぶ、キョクトウさん!
「ハァ……。
そもそもGSからヴァルロスを出撃させて、
今のその場所に配置した時点で、
普通なら、
ヴァルロスが宇宙用の機体性能のままで、
動かない事に気付くはずなのに、
何故、気付かなかったのですか……?」
と、溜息交じりに問いただす、マカロニさん…。
「吾輩は、
この部隊の司令官なので、
Gキャリアーで運搬させて、
後は司令官らしくドンと構えていただけだったのが悪かったか!」
と、更に、
無茶苦茶な答えを述べるキョクトウさん…⁉
「いえ……例えそうだったとしても、
普通、分かるでしょうに……。」
と、相手がダメな敵ながら、
余りの酷さに、
声も小さくなっていくマカロニさん…。
「やっぱりバカね。」
「だな。」
「そやね。」
「っスね。」
と、またもオイラ含め、
トロイメンカッツェメンバーに口々に言われるキョクトウさん。
「クッ……!
SG部隊の皆さんに任すのも厳しい相手…ッ!
このままヴァルロスを落とされ部分パーツを、
こんなTSに渡せば、
我が軍の機密を晒す事に…ッ‼
っとなればであ~る…ッ‼
部下の皆さん‼
被弾を避けつつヴァルロスに寄り…‼
吾輩を脱出させて下さいなのであ~る‼」
と、SG部隊の方々《かたがた》に、
指示するキョクトウさん…!
「ハッ…!」
「了解です…!
直ぐに御傍に…ッ‼」
と、こっちへの牽制のミサイルを撃ちつつ、
下がるダギナスたち!
「目の前に、美味しそうなモノをぶら下げられて、
そのまま逃がすかっての!」
と、ダギナスたちに、
Aトライバレルのバレットを放つケビンさん!
何とかシールドを構えるが…。
「クゥ…!
なんという破壊力…ッ⁉」
シールドごと左手を破砕する!
「そういう事や…‼」
「こっちだって逃がさないんだから…ッ!」
と、2機で、
トライバレルと、Lトライバレルのレーザーを、
交互に放つミケさんとユリンさん!
「グッ…ダギナスの装甲で…これだと…⁉」
「クゥ…ッ⁉」
少なからず被弾して、
1機はトライバレルのレーザーで、
頭部を失い、
1機は、手持ちのレーザーライフルを撃墜されるダギナスたち!
「SG部隊の皆さん!
今から吾輩は、この機体から脱出するので、
上手く受け止めて下さいであ~る!
受け止めてくれさえすれば、突破口は、何とか開くのであ~る!」
と、キョクトウさんが、
ヴァルロスのコックピットから出て、
フライングリフト……。
人が、単身で、空中を飛ぶ事ができる、
小型エンジン付きの羽のある装置を装備して、
ダギナスの皆さんの方に飛んでいき、
見事にキャッチされる!
「よし!
バカがヴァルロスを出ましたよ、姐さん!」
「SGっていうのも欲しいけど、
ここは見逃しよね! それより何より…‼」
「ああ!
地上戦能力が無くても…、
G²やで…G²……‼
こんな美味しいお宝が、
手に入るやなんて……って…ッ⁉」
と、ミケさんたちが、
G²のヴァルロスを手に入れれる喜びに、
ヴァルロスに群がったところで…⁉
ヴァルロスが、
オートパイロットを仕込んでいたのか、
地上適正が無いって言われてた、
下半身のブースターを吹かして、
でも、地上適正が無いせいで、
無軌道な動きで、
こっちに凄い勢いで、
突っ込んで来たかと思うと…ッ⁉
ドカン…ッ‼ ボカン…ッ‼ バカァァァン~~~……ッ‼
じ…自爆した…ッ⁉
「あ…アァァァァ…ッ⁉」
「ク…ッ⁉」
「そ…そんな…事をやるやなんて…ッ⁉」
「こ…これは…ッ⁉」
ミケさんたちKG部隊が、
急遽、突撃して、
自爆したヴァルロスの爆風に撒き込まれる…⁉
な…なんとか…、
エンジェルシードとフェストゥングが…、
ラゼンレーヴェとタイニーダンサーの壁になって…、
損傷を少し抑えたけど…。
全機…かなりの被弾をした…ッ⁉
「ここは引くであ~るが、
今日のオマエたちの勝利は、
たまたま性能の良いKGたちを、
オマエたちが持っていたから勝っただけで、
機体性能のお陰だけで勝ったと心に刻むが良い!」
と、ダギナスの手の中で、キョクトウさんが吠える!
「クッ…味な真似をしやがって…!
だがなぁ!
確かにオレたちのKGは、
特別製らしいが!
この4機を、
オレたち一人一人に合う様に、
カスタマイズしたのはマカロニだぞ…!」
と、G²に自爆され、
自機たちもダメージを負わされ、
悔しい中でも、
ケビンさんが言い放つ!
「あんですと…ッ⁉
オマエたちのそのKGたちをカスタマイズしたのは、
そのマカロニとかいうKGの壮者ですと…ッ⁉」
と、驚きを隠せないらしいキョクトウさん!
「まあ、ボクの担当の仕事でしたからね。」
と、ダメージを負った中でも、
ケビンさんの発言を認めるマカロニさん!
そんな中…、
「クッ……良いだろう! マカロニとやら!
貴様を吾輩のライバルと定めてやる…ッ‼」
と、一方的にマカロニさんにライバル宣言をするキョクトウさん…⁉
その一方的な敵視にもたじろがず、
「どう思われようと構いませんが、
一つアナタに聞きたい事があります。
カルマ=ウォーセという名前に聞き覚えはありませんか?」
と、マカロニさんが、謎の質問をキョクトウさんに聞くが、
「カルマだか坊やだか知らんが、そんな奴は知らないのであ~る!
吾輩の部下の皆さん!
コイツらは鬼畜外道の悪魔ですよ!
こんな悪魔野郎共の言う事を聞いちゃダメですよ!
といわけで、撤退であ~る…ッ‼」
と、
SG部隊の方々《かたがた》に命じ、
「ハッ…!」
「了解です…!
撤退します…ッ‼」
と、去って行くキョクトウさんたち!
「マカロニとやら!
次に会う時は絶対に、
貴様たちを地獄のどん底に突き落としてやるので、
その時を指折り数えて、
震えながら待っているが良いのであ~る…ッ‼」
と、捨てゼリフを吐いて、遠くなってくキョクトウさんたち…!
だけど、まさかの自爆によって手傷を負い過ぎて、
それを見逃すしかないミケさんたち…‼
「う~ん……考えすぎでしたかね?
ボクの考え通りの方が納得は行ったのですが、
まあ、良いでしょう。」
と、一人ごちるマカロニさん。
「クッ…ただのバカかと思ったが…味な真似をしやがる…‼」
と、悔しがるケビンさん。
「ホント…たった3機に…凄い被害だよね…。」
と、呆気に取られた顔をするユリンさん。
「うちらに機密のG²を渡さんようにした上で、
脱出の為のダメージを与える…。
イザという時は使う様に事前に自爆装置を用意しといて…、
本当にイザとなったら躊躇なく使う…。
敵ながら良い判断や…。
ああいう…アホと天才は紙一重な奴は、
実は結構…侮れんっちゅう事やな…。」
と、珍しく敵を褒めるミケさん…。
「で…でも…!
被害は甚大っしたけど、
地上適正の無い、
ダメな相手っしたのにっスけど、
あの未知のSGのダギナスたちや、
G²を相手に生き残れたミケさんたちは、
流石っスよ!」
と、冷えた場の空気を何とか盛り上げようとしたオイラの言葉に、
「ま…あんな相手も居るって事で、
オレたちも、そうそうは調子に乗ってられないってこったな。
ま、いい勉強になったと思う事にするぜ。」
と、こっちも珍しく謙虚なケビンさんと、
「バカとハサミは使い様って言うけど、
今日で、ホントだってのは分かったわね。」
と、お手上げのポーズをするユリンさんと、
「まあ、マカロニをライバルって言ったからには、
今まで、新統合とのいざこざは、
アイツが注文するから避けてたうちらやけど、
こら、本格的に新統合に狙われるな。
まあ、ハクが付いたと思う事にするけどな。」
と、諦めの表情のミケさん。
「って…そうっした…‼
こ…これで…新統合に…完全に狙われる事に…⁉」
と、戦々恐々《せんせんきょうきょう》とするオイラに、
「まあ、これも先生の筋書き通りで、
先生には、何か思う所があると思いますけどね。」
と、マカロニさんが、謎のつぶやきをする。
「え…⁉ え…ッ⁉
ど…どういう事っすか…⁉」
と、聞くオイラに、
「今回のアイツらとのバッティングは、
私たちのクライアントが、意図的に、
私たちが、ここを通る事を、
アイツらに情報を流したからだろうって事よ。」
と、ユリンさんが語り出した…⁉
「え…⁉ ちょ…⁉
そ…それこそ…どういう事っすか…⁉」
と、狼狽えるオイラに、
「オレらのソルファージュが、この場所を通るなんて情報を、
新統合とはいえ、
あんな試験部隊が、そうそう掴めねぇだろ?」
と、ケビンさん。
「名を上げたがってた、
スナッチャーザインや、レッドバイソンたちや、
ザインから依頼を受けたシュメルとか、
こっちに他意がある奴ならともかく、
アルセカーナの一件があるにしても、
うちらが避けてた事で、
新統合は、
そんなに躍起になって、
うちらをワザワザ待ち伏せまでして、
狙う必要は無かったいう事や。」
と、ミケさん。
「つまり、誰かが、意図的に、
あの非常道試験部隊というところに、
情報をリークしたという訳であり、
その人は、この場所を通る様に指示していて、
ボクたちに、出来る限り戦闘をして、
ボクたちのKGの戦闘データをより多く取り、
そのデータを定期帰投時に、
渡すようにという命を下している先生……。
ボクたちのクライアントであろう…という事です…。」
と、肩をすぼめて話すマカロニさん。
「え…ッ⁉
えぇぇぇぇ~~~…ッ⁉」
正に、目が点のオイラ…⁉
ど…どど…どうして…そんな事に…⁉
っていうか…その事前に、
下されてたって命令って…何なの…ッ⁉
「チッ…!
またぞろ、野郎のワケわかんねぇ行動ってワケだ…!」
と、悪態を吐くケビンさんと、
「でも、あの人は、本当に、
いつもいつも、何考えてるか分かんないし…。」
と、更にお手上げのポーズを見せるユリンさん。
「で、もう直ぐそこに、
そのクラアントとの合流地点があるっちゅう、
ほぼ計算ずくの進行具合ってワケや…。
ハァ……。」
と、溜息を吐くミケさん。
「まあ、とにかく、機体たちの修繕も必要ですし、
先生の艦にある備蓄品を貰って、
ソルファージュのメインエンジンの、
修繕もしなくちゃですしね。
この後も…、
重要イベントたちは、
推してる様ですね…。」
と、マカロニさんも、また肩を窄めた…。
そして…。
…。
……。
………。
…………。
「これがミケさんたちの、
クライアントさんのGS…ッ⁉」
当初の予定より遅れたが、
ミケさんのクライアントさんの、GS、
というモノの前に着くオイラたち…。
なんだけど…。
「ちょ…ッ⁉ ソルファージュの時点で、
無茶苦茶なデカさだと思ってたのに、これはムチャ過ぎじゃないっスか⁉」
そのGSの圧倒的な大きさに、
恐れおののくオイラ…。
その大きさ、実に、
ソルファージュの5倍ほど…ッ‼
「まあ、見ただけで、そうも驚くやろうけど、
それだけ、ヤバい奴が乗ってるのは覚悟し。
これが、うちらのクライアントのカルマ=ウォーセの、
移動要塞空母GSのガルガンチュアや。」
と、淡々と解説するミケさん。
「とりあえず、
先生との約束の品の、
シュタイガーンバオアーは、
ガルガンチュアに持って行きましょう。
ロクスリー君、運搬、任せます。
キミじゃないと、適合性の問題で、
不測の事態が起きると困りますので。」
と、マカロニさんが、促す。
「仕方ないっスけど、
何か、オイラ、いつの間にか、
シュタイガーンバオアーとニコイチ扱いになってるっスけど、
ここで、クライアントさんにシュタイガーンバオアーを渡せば、
もう、会う事の無い機体なんスね。
適正が合うって事で、前線とかに出されると怖いので、
このまま居なくなってくれると嬉しくもあるっスけど、
せっかくのオイラの適合機体っぽい機体が、
どっかに行くのは、寂しくもあるっスね。」
と、しみじみと言うオイラに。
「まあ、
シュタイガーンバオアーは、
ややこしい機体みたいやし、
野郎が引き取る分には良いんじゃねぇか?
まあ、とにかく、ガルガンチュアの中に行こうぜ」
と、ケビンさんが促し、
「だね、あの人と会わないと、私たちの問題は解決しないしね」
と、ユリンさんが、何か意味深な発言をする。
それに、オイラが反応する前に、
「まあ、とにかく、ガルガンチュアに行こか。
ロクスリー君、シュタイガーンバオアーの運搬、
安生、頼むで!」
と、ミケさんが締め括り、
シュタイガーンバオアーの運搬をし、
ガリュガンチュア内で、
ミケさんとの合流を果たしたオイラは、
そのGSの、
ブリーフィングルームに赴く事になった。
そこには、初老…というには若く…、
青年…とは言い難い姿の男性が、一人、待っていた。
「ご苦労。トロイメンカッツェ諸君。」
と、労いの言葉をまず掛ける、その人物。
「注文の品は、ご覧の通りや。
データも事前に送った通りや。
で、最近の、
ロクスリー君の搭乗した時のデータがこれや。
で、ロクスリー君のシミュレータでの結果がこれ。」
と、シュタイガーンバオアーの、
運搬の報と、
搭乗時のデータの、
細かなデータの報告をするミケさん。
その報告に、クライアントさんのカルマさんが、
一瞬、驚いた様な表情を見せたものの、
冷静な表情に戻り、
「中々《なかなか》に、
興味深い結果だ。」
と、独りごちたかと思うと、
「では、まずは、
ソルファージュのメインエンジン|の、
修復素材の提供はしよう。
素材はソルファージュ内に、
今直ぐ送ろう。
ロイドなら、その素材があれば数時間で修復は可能だと保証しよう。」
と、
ソルファージュのメインエンジンの、
修復素材の提供を、
いきなり約束した上で、
「その上でだ。
ミケ、クライアントとして、
君たちの協力要請事項として、
以下の協力を要請する。
ロック=ロクスリーを、
正式にシュタイガーンバオアーの専属パイロットとし、
その戦闘と運用データを定期的に提示の要請を頼む」
と、協力要請とか言って、
何か、いきなり、
ムチャ過ぎる事を言い出してるんですけど、この人⁉
「ちょッ…⁉
いきなり何言ってるんスか、
クライアントさん…ッ⁉」
慄くオイラ。
「シュタイガーンバオアーは、
アナタが強奪する様に、
命じて来た機体じゃなかったの…ッ⁉
ロクスリー君を専属パイロットにして、
トロイメンカッツェ内で運用しろなんて、
一体アナタは何がしたいのよ…ッ⁉」
と、ユリンさんが当然のツッコミを入れるが、
「無駄だ、ユリン。コイツの言う事なんてどうせ決まっている。」
と、バーダックさんが言い、
「良く理解しているじゃないかバーダック。
私は聞き分けの良い者は好きだ。
そう、君たちがその理由を知る必要はない。」
と、カルマさんが告げる…ッ⁉
「い…いや…ッ⁉
理由も聞けずに、
死地に追いやられるのは、
勘弁っスよ…ッ⁉
確かにシュタイガーンバオアーは、
オイラと適合する機体、
っぽい予感はあるですが、
専属パイロットなんて、
危険過ぎっしょ…ッ⁉」
と、更に慄くオイラを尻目に、
「チッ……テメェが盗んで持って来いって言っときながら、
そんな依頼を出すくらい大事な機体をロクスリーに乗らせて、
オレらで使えとか、
ワケ分かんねぇ事を言い出しやがった挙句に、
理由は教えねぇだと…ッ⁉
だからコイツとはソリが合わねぇんだ!
姐さんや兄弟たちの為だけに、
テメェに口聞いてやっているだけだって覚えとけよッ‼」
と悪態を吐くケビンさん。
「相変わらず青いな、ケビン。」
「何だとテメェッ⁉」
と、カルマさんとケビンさんの空気が、どんどん悪くなる中、
「ケビン、無駄だ。
コイツは言いたい事は言い抜くし、
大事な事でも言わないと決めたら言わない奴だ。
まともに相手をするだけバカを見るだけだ。」
と、大人の対応のバーダック艦長。
「流石にバーダックは、
分別が付いているじゃないか。
ケビンも彼を見習うが良い。」
と、涼しい顔のカルマさん。
「クッ……コイツッ!!」
それに対し、怒りを露わにするケビンさん。
「まあ良い。
では、これからのプランを話そう。」
と、締めくくりの言葉を発するカルマさん。
「フン。
初めから、早よ、それを話せば良いだけや。」
と、バーダック艦長並みに、冷静なミケさん。
「このシュタイガーンバオアーの強奪と運搬の作業の終了で、
約束通り君たちの邨の人々の生命維持をいつも通りと、
更に症状の解析作業は行おう。」
と、何やら、聞きなれない情報が入って来る…ッ⁉
「最初から、早く、そうしてれば良いのに!
でも、やったね、みんな!
これで、邨のみんなが助かるよ!」
と、カルマさんに怒るそぶりを見せつつも、
邨…の…みんな?という方々《かたがた》が、
良くなるっぽいのに喜ぶユリンさん。
「だが、
私は生命維持と症状の解析作業はするとは言ったが、
症状を改善する治療を行うとは言ってはいない。
それを求めるのなら、
これから私が命じるいくつかの指令をこなしてもらう。
それを行えば君たちの邨…、
リンガル邨の人々の症状の治療にも着手しよう。」
と、カルマさんが何か、ムチャっぽい事を言い放つ…ッ⁉
「テメェッ!!
ここまでさせといて、
足許見やがる気かッ!?」
と、ケビンさんが怒りを露わにするが、
「ケビン、良い。
これは、うちらとコイツとの因縁や。
うちらはコイツに未来を買われたんや。
うちらだけやったら、
リンガル邨の人たちの生命維持すらできんかったはずや。
確かに悔しいけど、うちらはコイツの言う事を聞くしかないんや」
と、冷静に言うミケさん。
「けど、姐さんッ!!」
とケビンさんが咎めるが、
「そうだ、ミケ。
君たちの未来はリンガル邨の人々の為に私に買われたのだ。
私は物分かりの良い者は好きだ。」
とカルマさんが言って来る…ッ⁉
「そんで何や、オマエの要求は?
うちらはオマエの要求を飲まざるを得ん。
早い事、うちらに伝えて実行させたらどうやねん?」
とミケさんが、更に冷静に言う。
「さすがだな、ミケ。
よろしい。では告げよう。
まずは今からスクリーンに出す地点に向かい、
現地でカルナダという反新ティアナ統合軍のレジスタンスと、
共闘してもらおう。」
と、告げるカルマさん…ッ⁉
「ハァ…ッ⁉」
と、目が点、過ぎるオイラ…ッ‼
「反新ティアナ統合軍の、
レジスタンスと共闘しろだとッ⁉
つまり、オレたちに新統合に、
自分たちから敢えて弓引けとでも言うのか…ッ⁉」
と、流石のバーダック艦長も焦りながら聞く…ッ‼
「そうだバーダック。
該当時刻、該当地にて、
新統合の小規模な演習が終了する。
演習を終えて帰還する、
新ティアナ統合軍の1部隊……。
ジノ=ザイル少佐率いるザイル部隊を、
カルナダに南から強襲して貰い、
君たちには時間差で北から、
挟撃の陣を敷いて、
ザイル部隊を叩いて貰う」
と、淡々《たんたん》と告げるカルマさん…ッ⁉
「カルマさん。
私たちはTSを、
稼業にして来たから、
世間に悪名が轟いているし、
実際にさっきも新ティアナ統合軍に、
『倒しても後腐れ無い悪人』として、
新統合の、
実験機体のテスト運用のためなんていう、
つまらない理由で襲われるほどだから、
どうせ遅かれ早かれ新統合には狙われていたとは思うよ。
そもそも、報告したアルセカーナの一件でも、
既に指名手配されていたと思うしね。
でも、いま、この時に、
レジスタンスと共闘して、
敢えてこちらから、
本格的に新統合に弓を引いて、
ケンカを売って完全に敵対させてどうする気なの?
それに、アナタ、
今日の非常道試験部隊とかいうのに、
情報をリークしたりして、
ワザワザ私たちを敢えて狙わせたでしょ?
ホント、意味わかんないのよ!
そもそも、私たちがTSし続けたのって、
カルマさん、アナタの依頼通りにした結果なのよ?
アナタが、
『出来得る限り最大限に、
Gを強奪し続けろ、
その結果、奪った機体は好きにしろ』
なんて変な指令を送ったからこうなっただけなのよ?
それに、新統合は、
将軍のグランヴァルニア=エルスタークの、
洗脳染みた言動と、
武力による恐怖政治を行って、
着実にティアナを支配し出しているところ。
そんな危ない火の中に自分たちから飛び込めなんて命令、
聞けるモノじゃないわよ…ッ‼
せめてどういう意図で、やれというのか、
納得行く答えを示してよ…ッ‼」
と、ユリンさんが、語調を強めて捲し立てるが、
「だから無駄だ、ユリン。
コイツの言う事なんて決まり切っているんだよ。」
と、バーダック艦長が言い、
「そう、オマエは良く弁えているな、バーダック。
その通り。君たちが理由を知る必要は無い。」
と、それまで通り、淡々《たんたん》と告げるカルマさん…ッ⁉
「クッ……野郎…ッ‼
人を舐めるのも体外にしろよ…ッ‼」
と、怒りを露にするケビンさんだが、
「良い言うてるやろ、ケビン。
気持ちは分かるけど悪いけど今は抑え。」
と、ここに来ても、冷静に告げるミケさん。
「クッ……。
姐さんや兄弟たちの事が無かったら、
オレは、ぜってーテメェをぶん殴っているかんな…ッ‼」
と、悪態を吐くケビンさん。
「それでカルマのオッサン。
アンタが提示する指令って事は、
このカルナダ言うレジスタンスとの共闘での、
新統合軍襲撃戦の、
勝算はあるんやろ?
どうせうちらは、
アンタの指令を飲まざるを得ん立場や、
ハッキリ、クッキリ、
うちらに何をさせたいか伝えてもらおうか?」
と、問うミケさん。
「カルナダには、
旗印となるKGが1機ある。
まずは、カルナダに南からザイル部隊を強襲して貰い、
カルナダのKGを前面に押し出し、
FG部隊を展開し、
彼らの目を釘付けにしてもらう。
そこに、北から君たちに強襲してもらう。
普通の神経の部隊長ならKGを持ち、
かつ小規模とはいえ、
部隊を率いて抗って来るなら、
大将の部隊長たるザイル少佐を北側に陣取らせ、
南側の戦線を強化し、北側の戦力も南側に送るはずだ。
だから、君たちがそうなった北側から攻めれば、
いきなりザイル少佐の喉元に、
牙を立てられるというワケだ。
そう言うワケで、
君たちにはその様に行動して貰う。
異存は言わせん。」
と、カルマさんが、
その尊大さが当然と思える程、
頭の回転が早そうな戦術プランを告げる…ッ⁉
「OKや。
後は、
無駄やと思うが一応聞いとく。
敢えて、
ロクスリー君をシュタイガーンバオアーに乗せて、
その戦闘データを見たいって事は、
どっちのデータが取りたいんや?」
と、ミケさんが、
一応と、そんな話題を問い正す。
「分かり切った事を、
聞く様では、まだまだか。
君たちが理由を知る必要は無い。
ミケ、無駄な事はしない方が、
労力を効率的に使えるぞ。
君たちは、ただシュタイガーンバオアーと、
ロクスリー君の戦闘データを取って、
定期的に送れば良い。」
と、カルマさんが、相変わらず、尊大に答える。
「フン。
逆にその言い方でだいたい分かったわ。
どっちも必要って事やねんな。
まあロクスリー君とシュタイガーンバオアーは、
相性が良いみたいやから、
何にしろ、うちらの仕事が戦闘になるなら、
下手に他の機体に乗せるよりは良いやろう。
他の注文は無いんか?」
と、ミケさんが、
相変わらずの頭の切れを見せた上で、
他の注文の有無を問う。
「フッ……あざといじゃないかミケ。
賢しいのも少しなら、
野良猫の様な自然の可愛さを感じさせるな。
今のところ注文は以上だ。
定時連絡には、
最寄りのキャリアーを寄こす。
データの遣り取りと、
補給物資は、
それで賄えるだろう。
後は追って伝えよう。
さあ、ソルファージュにシュタイガーンバオアーを運び直して帰り、
自分たちの与えられた仕事に没頭してもらおうか。」
と、淡々《たんたん》と指令を告げるカルマさん。
「分かった。ほないつもの分や」
と、言ってミケさんが、
カルマさんに、金袋を渡す…?
「君たちも義理固いモノだな。
分かった。確かに受け取った。
この資金もリンガル邨のモノたちの為に使おう。」
と、言って、カルマさんがそれを受け取る…⁉
金にうるさいミケさんが、
金袋を渡す…ッ⁉
それも、さっきから話してる、
リンガル邨ってとこの人達用…ッ⁉
何…⁉
ミケさんたちの故郷とかっぽいけど、
ミケさんがワザワザ、
そこ用に金袋を渡すなんて、
どういう状態なの、そこ…ッ⁉
とか、考えている内に、
「ほな、撤収や!」
と、ミケさんに促され、
色々あり過ぎて、混乱してる脳のまま、
ガルガンチュアをオイラは後にした……。
そして…。
…。
……。
………。
…………。
シュタイガーンバオアーとオイラを、
相変わらず、どころか、
本格的にニコイチ扱いにされ、
ソルファージュに運んでからブリッジへ上がり、
「新統合に、
喧嘩を吹っ掛けるとか、
大丈夫なんしょうか……?
まあ、故郷の人たちに指名手配されているオイラに、
選択権は無いんすけどね……。」
と、色々と問いたい問題は多いけど、
まず、聞いときたい点を聞くオイラ。
「まあ、そこは大丈夫ちゃうか?
カルマのオッサンは、
命令の意図はワケ分からんけど、
勝算の無い命令を出すタイプや無い。」
「だと良いっスけどね。
でも、あのカルマってクライアントさん、
確かに何考えているのか良く分からない人っしたね。」
「あの野郎は、いつもああなんだよ!
いちいち上から目線でワケの分からねぇ指令を出してくる!
正直、姐さんや兄弟たちが、
世話になっているってとこが無かったら、
ぜってーブッ飛ばしてやっているぜ!」
と、怒りを露にする告げるケビンさん、
「そこ! そこなんスよ…ッ‼
ミケさんたちが、リンガル邨という所が、
どうとか言ってたっスけど、
いったい何なんスかッ⁉
そこが一番良く分からなかったんスよ…ッ‼」
と、今日の一番の疑問点を聞くオイラ。
「どーすんだよ、ミケ? 良いのか?」
と、バーダック艦長がミケさんに問い、
「良い。
ロクスリー君は、もう、うちらのファミリーも同然や。
ケビンの時みたいに言うべき時が来ただけや。」
と、ミケさんが言い、
「オマエが決めたんなら、オレが言う事は何もねぇ。
オマエの話したい様に話せば良い。」
と、バーダック艦長が言い含める。
「そのつもりや。
さてロクスリー君。どこから話そうかね。
そうやね。
まずはトロイメンカッツェメンバーのケビン以外の全員が、
リンガル邨ってとこが故郷の、
同族って事からかな。」
と、ミケさんが言って来る。
「え…?
ケビンさん以外、皆さん、
同じ故郷の人だったんス…?」
と、尋ねるオイラに、
「その上で、おっさんは、
うちの母方の弟で、
叔父やったりもするんや。」
と、告げるミケさん。
「そ…そうだったんスか…。」
と、とにかく頷くオイラ、
「でや、うちが4歳の時に、
幼馴染の仲良し友達やった、
ユリン、ロイド、
リッド、セリアたちが3歳の時に、
当時18歳やった、おっさんに、
ピクニックに、
離れの山に連れて行ってもらってたんやけどな。
ピクニックからリンガル邨に帰ってくると、
邨の全員が暴れまわっている状態になってたんや。」
「え…?
邨の全員が暴れまわってた…?」
と、話に認識が追いつかず、
言葉を復唱するオイラ。
「おっさんが、うちらを安全な場所に隠して、
邨の人たちを、
一人、一人、ふん縛ってくれてな。
何か、おっさんの話やと、邨の、みんなは、
精神が赤ちゃんになってしまったみたいな感じで、
もう、言動が、無茶苦茶やったらしくて、
それでか、
共謀するという事を、
邨の人が考えられんかったみたいで、
そこを突いて、
何とか全員を縛って、
無力化して捕まえれたらしい。」
「えぇぇぇ…ッ⁉」
と、驚きの声を上げるオイラ、
「その後はな、邨の人たちを、
おっさんが、一人一人、
ベッドに縛り付けてくれてな。
何とか、沈静化できた。」
「おお、何とかなったんスね!」
と、喜ぶオイラだったが、
「けどや、そこからが本当の問題点やった。
邨の人々の生命維持の為に、うちらも頑張ったんやけど、
幼児やった、うちらが、働いて資金を稼げるはずもなく、
おっさん1人でどうにかできるはずもなく、
着実に邨の備蓄を消費して行ってもうた……。」
「え……?」
と、目が点になるオイラ。
「そして、緩やかに飢餓状態になって行ったところを、
トドメで、15年前の痛み分けの終戦で、
今まで使われていた紙幣が紙切れになってもうてな…。
今まで辛うじて行商人から買う事が出来ていた食料を、
まるで、買う事ができなくなってもうたんや…。」
と、当時を思い出してか、
苦々《にがにが》しい顔になるミケさんと、皆さん。
「そ…それは…厳し…過ぎる……。」
皆さんの苦渋の顔に、
オイラも、痛々しい気分になる…。
「そしてや、食料の限界が来てな。
本来なら身内の命の安全は最後にして、
他人から救わなければならない…、
っちゅうのが倫理やと承知しつつ、
でも、うちらは、それでもなお身内……。
つまり、うちらの家族たちだけに食料を供給し、
うちらの家族以外の住民を切り捨てざるを得なかったんや…。」
と、苦々《にがにが》しさ極まれりという、
苦渋の表情を、
トロイメンカッツェの全メンバーが見せる……。
「……その……辛い想いをしたっスね……。」
と、オイラも、その苦渋の気持ちに心を痛めていると、
「でな。その時の苦い体験から、
ミケは、金が無いと救えるはずの人を救えず、
見殺しにせざるを得なくなると体験した事から、
以後、金関係の話が逆鱗の禁句となってしまったのさ。」
と、痛切な吐露を続けるミケさんに、
見るに見かねてという感じで、バーダック艦長が話し出した。
「おっさん。無理に話さんで良い。
うちが話すからな。」
と、苦渋の表情の中にも、
凛とした想いを募らせ、告げるミケさん。
「でや、うちらの家族たちすら賄えんのではと思い始めた頃に、
あのカルマのおっさんが、うちらの前に現れ、
リンガル邨の人々を助けたければ、
うちらの未来を自分に買わせろと、アイツに言われたんや。」
と、どこまでも驚きが続く、
吐露が、更に流される。
「おっさんは反対したんやけど、
おっさんの他の、うちら全員が、
未来を売るから助けてくれと言ってしまった為にな、
『民主主義の結果だ』、とか言われて、
うちらはアイツに未来を買われたんや。」
と、ムチャな話が流されて行く…ッ⁉
「み…未来を売る…ッ⁉
民主主義の結果…ッ⁉」
尚も、
驚きを隠せないオイラに、
「そして、うちらは、
アイツの忠実な私兵となる様に、
英才教育を施されたんや。
うちは壮者適正と、
リーダー適正を見いだされ、
おっさんが艦長適正。
ユリンは支援行動機と、
砲撃機の壮者適正。
リッドは操舵手適正と、
艦長適正。
セリアはオペレーター適正と、
医師適正を見いだされた。
マカロニは、
壮者適正と、
メカニック適性を見いだされたんやけど。
カルマの奴、未だに、
よう分からん奴やけど、
普段は、メカニックが専門の奴らしくてな。
そやから、マカロニは、アイツに直接メカニックの教育を受けたんや。
そやから、マカロニだけはカルマを先生と呼んどるんや。」
と、マカロニさんが、
カルマさんを先生と呼んでた謎が、
ここに来て、急に明かされて、
『そう言う事か!』とオイラが思っていると、
「ほんで、2年前に、
空母GSソルファージュと、
タイニーダンサーたちKGを与えられてな、
TSチームとなる、
トロイメンカッツェの名も与えられて、
アイツの私兵となって、
『リンガル邨の人々の、
生命維持の為に仕事をして貰う。
怠れば彼らの命は無いと思え』
と言われたんや。
そして、最初に出された命令が、
『出来得る限り、
最大限に、
TS稼業をして、
機体を強奪し続けろ。
奪った機体を、どうするかは任せる』
という、妙な命令やった。」
と、ここまで、無茶苦茶だった話が、
更に、ここに来て、
もっと無茶苦茶になって来た…ッ⁉
「え…ッ⁉ えぇぇぇぇ……ッ⁉」
慄くオイラ。
「でや、マカロニだけが、別途、
『KGの、タイニーダンサーと、
エンジェルシードと、フェストゥングを与える。
欲しいパーツは、
出来得る限り供給する。
だから搭乗者個々人に合わせ、
最大限に効率良く稼働する様にカスタマイズせよ。』
とかいうワケワカな命令を受けて、
ソルファージュとガルガンチュアを往復して、
主にソルファージュ内での、
KGたちの改修作業に、
従事したんや。」
と、聞けば聞く程、
良く分からないカルマさんの意図。
「でね、その際に、
マカロニが先天的にメカニック作業に愉悦を感じる体質で、
改修作業があるからと、
自分はTS稼業の、
戦線には全然出なくなって、
仕事という事を忘れた様な、
改修作業への、
楽しそうな没頭具合だったから、
私が、
『まるで、カレって、ロイドっていうより、ニートよね』
って言っちゃって、
その発言した言葉の頭文字を取ると、
マカロニとなる事をセリアが発見してね、
で、バーダック艦長が、
『じゃあ、これからは、
ロイドの事を愛称としてマカロニと呼ぶか?』
って言い出しちゃってね。
で、本人の預かり知らぬうちに、
マカロニという愛称が定着して行ったのよね。」
と、ここまで、
ミケさんを見守って居たユリンさんが、
ここだけはと、明るめの、
マカロニさんの秘話を披露してくれる…!
「あ~。それ、地味に気になってたんスよね。
何で、マカロニなのかと。
でも、凄い理由で、逆にビックリしたっス…!」
と、久しぶりに出た笑顔で、オイラが答えると、
「後で、愛称の由来を聞いて、
そのトンデモな由来に呆れましたがね」
と、肩を窄めるマカロニさん。
「『みんながボクをボクと、
認識できる名前なら何でも良いですよ。』
とか言って、
『マカロニ』って愛称を、すんなり受け入れるんだもんな!
そこは、流石だと思うぜ、兄弟!」
と、ケビンさんも、話に乗っかかって来る。
「まあや、せっかくマカロニの話で明るくなったのに、
また暗い話に戻ってまうけどな、
リンガル邨の人々の生命維持の為に、
アイツの命令を、うちらは実行し続けて、
ガムシャラにTSをし続けてな、
結果的に世間に、
アヴァドンのミケいう悪名が轟く様になってしもうてな。」
と、肩を窄めるミケさん。
その厳しい状況に思いを馳せ、
渋面を作り直すオイラに、
「でや、その途中でな、
ソロでのTSを、
生業として生きて来た孤児のケビンが、
Gの強奪に失敗して自警団に捕まりそうになってな。
そこに偶然、
うちらトロイメンカッツェメンバーが、
Gの強奪にバッティングし、
G強奪の次いででケビンを助けてな、
そこからケビンがトロイメンカッツェメンバーの一員になったんや」
と、ケビンさんの、
入隊秘話が語られた!
「あの頃は、ホント、駆け出しでしたからね。
姐さんにも、兄弟たちにも、迷惑、掛けっ放しでしたね。」
と、鼻をすすり、
こそばゆそうにするケビンさん。
「でや、新たな仲間となったケビン用に、
アイツから、ラーゼンレーヴァが渡されたんやが、
ラーゼンレーヴェが当初は汎用型でな。
ケビンと相性が悪うてな、
運用に問題が有っりまくったんや。」
と、驚きの秘話が語られる。
「え…?
ラーゼンレーヴェって、元は、
汎用型の機体だったんすか?」
と、聞くオイラに、
「そうやねんけどな、
ケビンの意向を聞いて、
ラーゼンレーヴェをマカロニが改修してな、
今のような強襲型のKGになって、
ケビンとラーゼンレーヴェの性能が、
120%で発揮される様になったんや!」
と、力いっぱい、
ケビンさんとラーゼンレーヴェがマッチする様になった事に、
喜びの声を出すミケさん。
「今でこそ、
『ケビンは、強襲型専門!』って、
感じになってるけど、
当時は、色々と、
マカロニ君が、試しに試して、
色々と大変だったらしいよ?」
と、久しぶりに会話に参加してくれるリッドさん。
「マカロニ君も、
強襲型にする前は、
狙撃型とか、重装甲型とか、
色々試して、ケビンが大変でもあったけどね。」
と、当時を思い出して、笑い話にしてくれるセリアさん。
「でや、そういう、
機体の改修とかもして行った上で、
G強奪する事を、
開き直る様になって行ってな、
奪うだけ奪ったFGとかを、
奪った後は好きにして良いとの事やから、
換金して、トロイメンカッツェの運営の為の最低限の資金以外を、
カルマとの定期会合の時に、
リンガル邨の人々の生命維持の預貯金として、
カルマに渡す様になったんや。
さっきの金袋には、
ロクスリー君も疑問があったやろうけど、
あの金袋は、そういう事やねん…。」
と、さっきの金袋の真相を、
説明してくれるミケさん。
「なるほど…。」
と、とても重い話に、頷くしかできないオイラ。
「でや、カルマが、2週間ほど前。
つまり、うちとロクスリー君が初めて会った辺り。
その時に、今まで無差別大量強奪を命令して来たカルマから、
ファトス村のシュタイガーンバオアー限定での強奪命令が下りたんや。」
と、神妙な顔で告げるミケさん。
「そういえば、あの機体、
カルマさんの注文の機体なんスよね。
他は、無差別強奪依頼なのに、
アレだけ特別注文って、
やっぱし、あの機体、相当なレア品なんスね?」
と、聞くオイラに、
「やろうな。
しかもや、その成功報酬として、
今まで定期的に報酬としてやってもらってた、
リンガル邨の人々の生命維持だけやのうて、
症状の解析もすると初めて言い出したんや。
そやから、シュタイガーンバオアーの強奪に、
うちらは心血を注がざるを得ん様になってな、
スナッチャーザインに狙われた時にも、
絶対に抗わざるを得んかったから、
あんだけあの機体に拘ったんや。」
と、ミケさんが、あの時の必死さを思い出してか、目をキッと結ぶ。
「あの時も、ホント、死ぬかと思ったっスけど、
レナスさんや、皆さんのお陰で、ホント、助かったっス!」
と、感謝の念を込めるオイラに、
「まあ、あの時は、ロクスリー君も、
いつもの、あの既視感で、助けてくれたし、
ホンマ、ロクスリー君にも、みんなにも、感謝やで!」
と、ミケさんも感謝を伝えると、
「そんなの水臭いですぜ、姐さん!」
と、笑顔でケビンさんが言い、
「そうよ、そうよ。こういうのは持ちつ持たれつだしね!」
と、ユリンさんも、乗って来て、
「そうですよ、ボクたちは、チームなんですから、
協力するのは当たり前ですよ!」
と、マカロニさんも笑顔で言い放ち、
「そうそう、チーム一丸で、
これからも頑張ろうよ!」
と、リッドさんが入って来て、
「うんうん。
新統合は強敵でしょうけど、
私たちなら、きっと、頑張れますよ!」
と、セリアさんも笑顔で告げ、
「まあ、新統合にも、
スナッチャーザインも、ザ・パーフェクトも破って来た、
オレたち、無敵のトロイメンカッツェの力って奴を見せつけてやって、
リンガル邨の、みんなを、早く助けてやろうな。
な、オマエら。」
と、締めくくるバーダック艦長。
「うんうん! そうっスよ!
皆さんは、無敵なんスから!
オイラがどれだけダメでも、
全然、新統合にでも勝てるっスよ!」
と、オイラも笑顔で告げてみる!
「いや、オマエも頑張れよ…ッ⁉
適性の合う機体に乗る様になったんだろうがよ…ッ⁉」
と、ケビンさんがツッコミを入れ、
「まあ、このくらい弱気な方が、慎重になって、
戦果も、実は上げやすいのかもですけどね、
ロクスリー君は。」
と、メガネを上に上げながら告げるマカロニさんと、
「そうだよ! そう…ゥ‼
このくらい弱気な方が、
総受けな感じが存分に出てて、
マカロニや、ケビンや、リッドや、艦長とのコラボで、
アゲな事や、ソゲな事をしちゃったりで、
もう、私、堪らんですよーーーッ‼」
と、ハァハァと、
語気が荒ぶって来るユリンさん…ッ⁉
で…出ちゃうぞ…アレが⁉
三倍の赤い奴…、
止め処なく…また出ちゃう…ッ‼
ブバ…ッ‼
「ちょ…ッ⁉」
ハイ、ユリンさんの真正面に居たオイラ、
また、あの赤い迸りに、
犯されました…ッ‼
「ええい‼
オマエは、ホンマ!
こんな、みんなで一致団結しようって時にも、
持病を出しおって!」
と、またも、どこから出したのか分からないハリセンで、
ユリンさんの後頭部を強打するミケさん…ッ‼
「はわっ⁉」
ミケさんのハリセンの一撃で、
頭に上った血の循環が正常に戻ったのか、
ピタッとユリンさんの鼻からの飛沫が止まった。
「ハッ⁉ 出してない! 出してないよ⁉
花も恥らう純情乙女のユリンちゃんが、
鼻血なんて出してないよッ⁉」
と、相変わらず、どうして、これで、
鼻血が出てるのを隠せていると思えるのか謎で仕方がない…ッ⁉
「まあ、ユリンの病気は置いといて、
さっきの奴さんの命令の通り、
オレたちのこれからの相手は新統合。
生半可な相手じゃないが、
リンガル邨の人々を救うためには、
その新統合に、
自分たちから喧嘩を売らざるを得ん。
すまんが、オマエたちの力を、無理にでも借りるぞ…。
頼むぞ、みんな…。」
と、締めの言葉を継げるバーダック艦長。
そして、
『ハイ…ッ!』
トロイメンカッツェのみんなの声が重なり、
新統合への激戦への決意は高まった…ッ!
天国の……父さん…、母さん…、
新統合に、
敢えて弓引く事になるのは怖いですが、
どこまでもダメなオイラでも、ここまでの話を聞いたら、
ミケさんたちの為に頑張ろうと…、
気持ちを新たに…できました…ッ‼