第10話
大きな星が…点いたり消えたりしてる…。
ホントに大きい…し……。
色んなところで…。
それが点いたり消えたり…して……。
「遂にだね…ロク君…。」
オイラの目の前には…。
ゲズC²ではなく…。
シュタイガーンバオアーと同じで複座式だけど…。
内装の見た目がシュタイガーンバオアーでもなく…。
見た事が無い複座式の機体のコックピットと…。
38と……更に別に…、
38の色違いみたいなの…が居る…?
そして…さっきの声は…。
その機体の複座式の、
オイラの後ろの席から…聞こえてて……?
「でも……私…頑張るよ…。
ううん…絶対頑張れる…。
ロク君と一緒だから…。
ロク君さえ居れば…。
ロク君さえ居てくれれば…私……ッ‼」
その女の子の様な声の主が放つ、
強い決意の言葉に…。
不思議と…オイラは…、
安らぎの様なモノを感じ…。
そこで……世界の景色が…。
急にフラッシュバックの様に目まぐるしく変わり…。
オイラの…意識は……。
………。
…………。
……………。
………………ッ⁉
ガバっとオイラは起き上がった!
って何だ?
オイラ…ベッドで起き上がって…?
腕には点滴がされてて…?
「ああ……。
ああ…………!
やった…!
やったーーッ!!
ロクスリー君、目を覚ましたーーーッ!!」
『マスター…!
マスター……!
良かった……!
良かったです……!』
え? あれ?
ベッドの直ぐ横に椅子があり、
そこに、
38を持って、
ユリンさんが座ってて、
ベッドから起き上がったオイラを見て、
二人して大声で喜び勇んで……居る…?
「えぅ……?
あぁ……?
え…え~っと……?」
その事態に付いて行けないオイラに…。
「みんなで交替で様子を見てて、
丁度、私の番だったんだ。
セリアが、
ロクスリー君のお腹の傷の方は、
もう完璧に直ったはずなのに、
何故かロクスリー君の意識が、
どうやっても戻らないって言い出した時は、ホント、みんな心配したけど!」
と、オイラの手を握り、ブンブン振り回すユリンさんと。
『マスター! 私は信じてましたよ!
マスターは、必ず目を覚まされると!』
と、38も、
鼻息も荒くという風に、喜びの声を上げる。
「えと……あ……うん…?
お腹の傷……?
お腹の…?
って……アアァァァーー…ッ⁉」
…思い出した……!
オイラ…、
ソルファージュ防衛戦でのシュメルとの決戦で…!
どうやったか、
いまいち分からないけど……!
あの……シュメルの動きが、
『見える』どころか…!
『もっと見える』状態になって…!
確かにシュメルをこの手で仕留めて……ッ‼
でも……そこからの記憶が全然……無い…⁉
「……ッ⁉
ユリンさん…! 38…ッ‼
そ…ソルファージュは…ッ⁉
ザインさんやシュメルは、
追い返せたんですか…ッ⁉
そう…!
さっきまで、
ソルファージュ防衛戦の最中だったはずで!
確かにシュメルを仕留めた感覚はあるんだけど!
ホントにソルファージュは危ない状態だったはずで!」
と、勢い付いて聞くオイラだったが…。
「……って…?
…さっき……?
…さっきって……?
オイラを『ロク君』と呼んでくれる娘と…?
何か……、
変な見慣れない、
複座式のGに、
一緒に乗ってて…?
大きな星が、
点いたり消えたり…してて……?
…さっき…?
…さっき……って…え…あれ…?」
と、トーンダウンしてオイラが呟くと?
『起きたばかりで混乱されてるのですね、マスター。』
と38が言い。
「大丈夫! 大丈夫だよ!
ロクスリー君がシュメルを倒してくれたお陰で!
ロクスリー君の活躍のお陰で!
ソルファージュは無事だよ!
ケビンが部品の買い出しをしてくれて、
マカロニが修理をしてくれて、
もう非常用エンジンの応急修理も済んで!
移動するだけなら、もう全然問題ないんだから!」
と、更にブンブンとオイラの腕を振るうユリンさん。
「よ……良かったっス……。」
安堵の声を上げ、
脱力するオイラを尻目に、
「とにかく、リーダー達に、
ロクスリー君、回復のお知らせをしてくるね!」
と、ウィンクを一つして、
38をオイラに渡して、
この救護室を出て行くユリンさん。
その残された中で、
「ユリンさん…あんなに急いでくれて…。
38にも……心配かけたな…。」
と、38を撫でると、
『良いんです…。
良いんですよ…マスター…。
ご無事であるだけで…私は…。』
と、オイラの腕の中でフルフルと震える38。
その姿にオイラも、
ハニカミながらも、
「でも、ちょっと聞きたいんだけど、
あの後、何か、オイラ、
オイラを『ロク君』とか呼ぶ女の子と、
オイラと、その娘と、
38と、
38の色違いみたいな奴とで、
何か、見た事ない、
複座式の機体に一緒に居なかった?」
と、さっきの確かに体験した様な場面を伝えるが、
『恐らく、
眠られてる時に夢を見られたのですね。
あのザ・パーフェクトのシュメルとの、
激戦の後だったのですから、
眠りも深く、夢も深い夢だったのでしょう。』
と、告げる38。
「夢……かぁ…。
それにしては…何度か体験した…。
あのオイラが死んだ時の…。
ミケさんに既視感って呼ばれる感じに、
似た感じだったんだけどなぁ…。」
と、オイラが独りごちていると、
「ロクスリー君!」
「ホントですね! 目を覚まされてますね!」
「良かったよ! 良かったよ!」
と、トロイメンカッツェの他のメンバーさんたちが、
救護室に入って来て、
オイラを見て、
喜びの声を次々に上げる。
「ロクスリー君!
ホンマ、目を覚ましてくれて良かった!」
と、ミケさんも、
さっきのユリンさんみたいに、
オイラの腕をブンブン振る。
「お腹の縫合と、
傷の回復は、順調だったんだけど、
ずっと目を覚ましてくれず、目を覚ますより先に、
ソルファージュの修理が済んでしまうほどで、
みんなで回復を願っていたんです。」
と、セリアさんが笑顔で言う。
「シュメルはザ・パーフェクトだった強敵だったからね。
それを撃退してくれる程、頑張ったんだから、
眠りも深かったんだね。」
と、リッドさんも笑顔で話し、
「まあ、その間に、
ケビンが何往復も、
修理資材を買い出しに行ってくれて、
マカロニがそれらを使って、
ソルファージュの非常用エンジンや、
その他のKGたちの修理を手早くしてくれてな。
ソルファージュは、
艦戦などは、メインエンジンがダメでアレだが、
移動だけなら問題ないし、
KGたちも完璧だ。」
と、バーダック艦長も笑顔で告げる。
「おお! 良かったです!」
と、それらの報に喜ぶオイラだったが…。
その報にも、
話題が上がったケビンさんが居ない事に、
オイラが気付き、
「け……ケビンさんは……。
あの…まだ……?」
と、聞くと、
「ゴメンな…ロクスリー君…。
ケビンの奴は……未だに……心の腹が痛む様でな…。」
と、ミケさんが目を伏せる。
「いやぁ~。
アレで、アイツ、
ロクスリー君がいつまでも起きない事に、
イラ付いたりもしてた風だし、
ただのツンデレなだけだと思うんだけど……。
その……まだ…あの…。
ロクスリー君が…リーダーを危険な目に逢わせた時のが…。
許せないみたいでね……。」
と、頭を掻きながら、
バツが悪そうに言うユリンさん。
「先のソルファージュ防衛戦での、
ロクスリー君のシュメル撃墜も、
機体性能が良かっただけだと言って、
聞かないんですよね……。」
と、マカロニさんも、
言い難そうに告げて来る。
「そう…っスか……。」
ミケさんたちの説明に、視線を落とすオイラに、
「まあ、
何か切っ掛けがあれば、
また仲良くなれるよ!
ケビンも、根は、とっても優しい子やから!」
と、優しい声を、
ミケさんが掛けてくれて、
「よし、ロクスリーの回復も見れたし、
あんまりずっとソルファージュを、
オートパイロットにするのもアレだからな、
オレらはブリッジに戻るとするか!」
と、バーダック艦長が号令を出し、
「そやね。非常用エンジンも直って、
移動だけはできる様になったし、
早よ、アイツのとこに行かんと、
アイツが、また癇癪を起こし出すしな。」
と、ミケさんがバーダック艦長に答えてから、
「でも、ロクスリー君は、
起きたばっかしやし、もうちょっと寝とこうか。
縫合と傷の回復は万全やそうやから、
いきなり動いても大丈夫ではあるやろうけど、一応、大事を見てな!
まあ、38は置いてったるから、しばらく楽にしとき!」
と、オイラの頭を撫でる。
「は……ハイっスッ!」
と、答えるオイラを尻目に、
「ほな、行くで、みんな!」
と、指示を出すミケさん。
「じゃあ、ゆっくりね、ロクスリー君」
と、セリアさんが微笑み、
「まあ、ラフィンスカルは徹底的に叩きましたし、
しばらくは、ゆっくりできると思います。」
と、マカロニさんも笑顔を見せ、
「ま、しばらくは休んで、
また英気を養ったら、
ロクスリー君もガンバってよ!
じゃあね!」
と、ユリンさんが締めて、皆さんは去って行った。
その頃……。
ソルファージュのGデッキの中、
シュタイガーンバオアーのコックピットの中に、
ケビン=ブロッサムの姿はあった…。
「何でだ…⁉ 何でなんだ…ッ⁉ どうしてこうなる……ッッ⁉」
シュタイガーンバオアーのコックピット内での、
シミュレーターの起動を、何度行ても、
どれだけの戦闘シミュレートを繰り返しても、
己のシュタイガーンバオアーでのシミュレーター戦績は、
惨憺たる有様が続くばかり…。
「あのクズ野郎が…やっと起きたってのは別に良い…!
クズでも……起きて来ねぇと…、
自分がクズなのを教えてやれる機会が無くなるからな…!」
と、ロクスリーの回復に、複雑な思いを抱きつつ、
「だけど…。
どうして…?
どうしてなんだ……ッ⁉
あのクズ野郎の操縦が上手いはずはないんだ!
アイツは姐さんを、
見す見す危険な目に逢わす様なクズなんだ!
そのアイツに上手く操縦できて、
何でオレが上手くできない⁉
アイツが…実は…凄いなんて……認めろってのか…ッ⁉」
ミケを思うばかりに、
ロクスリーへ歪んだ想いが募るケビン。
「クッ……だけど…!」
と、目に力を籠め!
「きっと…。
きっと……!
シミュレーターじゃなくて、
本番の戦闘になったら…!
きっと、上手く…!
上手く行くんだ……ッ!
そして、
実際に戦ってピンチの場面になったら、
あの時のロクスリーみたいに、
パワーアップする、何かが、この機体にあって、
全て上手く行くんだ……ッ!
シミュレーターだから、
こんな結果しか出ねぇだけなんだ……ッ!」
と、咆哮する様に叫ぶケビン。
そこで……艦内に…アラート音が鳴り始めた…ッ!
「艦の周辺に機体反応…!
レッドバイソンの機体反応の模様…!
Gデッキのケビンは、
迅速に出撃して下さい…!」
数分前。
ソルファージュブリッジにて。
「フフフ!
ロクスリー君も目ぇ覚めたし!
ソルファージュも、
こうして移動できる様に回復した!
アイツとの合流ポイントも近づいて来たし、
そこに着いたら、
ソルファージュのメインエンジンの修理も、
して貰えるやろう!
ケビンは、まだアレやけど…。
まあ、成る様に成るやろ!
万事順調や!」
と、喜びの声を上げるミケ。
が、
「まあ、ですが、
KGたちの修理や、
ソルファージュの修理で、
だいぶ、資材の貯蓄を使ってしまいましたからね。」
と、渋い声のマカロニ。
「だなぁ。
いつものヤッコさんに渡す分は、
何とかまだプラスだが、
それも、相当、渋い感じだからなぁ。」
と、バーダックも渋面を作る。
「まあ、でも、
ロクスリー君も回復したんだし、
お金では買えないモノが回復できたよね!」
と、渋い声の周囲の面々を気遣う様に、
明るく声を出すリッド。
「だね!
それに、ロクスリー君、
前の戦闘では大活躍だったから、
何か、急に、
戦闘センス的な何かに目覚めたのかもだし、
これから、
私たちのTS業も、
効率が上がりそうだもんね!」
と、セリアも喜びの声を上げる。
「うんうん!
ユリンちゃんも、
ホント、今は順調だと思うよ!
あ~あ。
後は、またバカな小、
物のTSチームとでも、
遭遇して、
私たちにお小遣いでも、
稼がせてくれたら良いんだけどなぁ。」
と、ユリンが呟いた時。
ソルファージュに、
アラートが鳴り響く!
「どうした⁉ セリア⁉」
と、バーダックがセリアに状況を聞く!
「前方に機体反応!
こ…コレは…!
レッドバイソンの機体反応の模様です!
どうも、周囲で既に、
他のどこかの流しのTHらしき戦隊と、
戦った後の様で、
FG部隊で、
戦利品のGたちを、
GSに運ぼうとしてる最中の様です!
こちらには、まだ気づいてない模様です!」
と、状況報告をするセリア。
「リーダー! コレは!」
と、ニシシと笑顔を作るユリンに。
「ああ! カモがネギ背負って来てくれた!」
と、ミケもニタリ顔になってから!
「Gデッキの方に、
もうケビンが居るはずやし、
セリア、
Gデッキのケビンに、通達!
ラーゼンレーヴェで斬り込んで貰う!」
と、指示を出す。
「了解です!
艦の周辺に機体反応…!
レッドバイソンの機体反応の模様…!
Gデッキのケビンは、
迅速に出撃して下さい…!」
と、セリアがGデッキに通達の声を流す。
「では、ボクたちも出撃ですね!」
と、マカロニがミケに確認する中、
「いや、相手は、
あの雑魚のレッドバイソンや。
まずは、ロクスリー君に救護室から出て貰う。」
と、ミケが宣言する!
「え? どういう事、リーダー?
ロクスリー君に救護室から出て貰う?」
と、ハテナで、いっぱいになるユリンに、
「もうフェアタイディゲンも無くなってるし、
あの程度のレベルのTSが、
この短期間で、
またフェアタイディゲンくらいのレベルのGを、
手に入れれたとも考えられんしな。
どう戦ってもうちらが負けるとは思えん。
シュタイガーンバオアーは依頼品やから、
あんまし傷つけたくないとこでもあるけど、
余裕で勝てる相手のアイツらやったら、
丁度良い機会やし、
ロクスリー君が前回に見せてくれた、
超絶的なパイロット能力が、
ホンマもんか見極めさせて貰うって事や!」
と、ユリンに答えるミケ。
「なるほど~!
確かに、あんなザコたちが、
またG²を手に入れれてるワケないし、
あんな奴らだったら、
ユリンちゃんたちなら楽勝だもんね!
いざとなったら、
私たちがやっつけちゃえば良いんだし、
ロクスリー君が本当にパワーアップしたか見るには、
良い機会だよね!」
と、ほころぶユリン。
「ゲズC²やったらアレやったロクスリー君が、
ホントに、何か特殊な何かがあって、
シュタイガーンバオアーやったら化けるのかも、
詳しく知りたいところやしな!」
と、答えつつ、
「それに、
ロクスリー君と、ケビンで共闘すれば、
少しはケビンの気も晴れるかもやしね!」
と、細かい気づかいを見せるミケ。
「となると、
ボクたちも出た方が、
早くカタが着くでしょうけど、ここは?」
と、聞くマカロニに、
「ああ、まずはいつでも出れる様に、
Gデッキに行くけど、
Gデッキで待機。
あとは、ケビンに先陣切って貰って、
ロクスリー君の腕を見せて貰う!
二人だけで戦った方が、
ケビンの気の晴れ方も、
違うかもやしね!
よし、ユリン、
救護室に行って、
ロクスリー君をGデッキへ連れてってや!
うちらもGデッキに…って……ッ⁉」
と、ミケが言いかけた途中で、
ソルファージュのブリッジに戦慄が走る。
「しゅ…シュタイガーンバオアー⁉」
何と、ソルファージュから、
ラーゼンレーヴェではなく、
シュタイガーンバオアーが出撃した⁉
「ケビン⁉ 何やっとんねん⁉」
驚きの中、吠えるミケ!
「いま、ケビンとの通信、開きます!」
と、セリアがシュタイガーンバオアーとの通信回線を開く!
「コラ、ケビン! 何やっとんねん⁉
オマエには、その子は扱えんって、
シミュレーターで分かっとるやろうが!
痛い目、見んうちに、
早よ帰還し!」
と、怒鳴り込むミケに、
「イヤです!
いくら姐さんの命令でも、
コレだけは聞けません!」
と、真摯な瞳で、首を横に振るケビン!
「今も、
その機体にロクスリーを乗せて出そうかと、
話してたとこではあるが、
その機体は、依頼品なんだぞ?
その機体にスペシャルな何かがありそうなロクスリーを、
実践的な試乗として乗せるくらいならプラスにもなるかもだが、
ミケたちと同じでマイナスの結果が出てるオマエが乗っても、
新たなマイナスしか出んだろう事は、オマエでも想像がつくだろう?
無駄に依頼品を傷めん為にも、
直ぐに帰還しろ、ケビン!」
と、冷静に告げるバーダックにも、
「イヤです…艦長…ッ!
ロクスリーが……!
あのクズ野郎がスペシャルなんて…!
そんなはずないんだ…!
アイツが特別なんじゃない…!
この機体が特別なだけなんだ…!
オレは…、
アイツがスペシャルなんじゃなく…、
ただのクズだって…!
姐さんを危険な目に合わせる様な…、
最低のクズだって…!
証明してみせるんだ…!」
と、怒鳴り付け、
レッドバイソンたちに向かって行く!
「ケビン⁉」
ミケが叫ぶも、
通信は繋がったままのはずだが、
ケビンからの返答はもう無い!
「あっちゃ~‼
ケビンったら頭に血が上り過ぎ‼」
と、嘆くユリン、
「マズいですね。
シュタイガーンバオアーへのミケさんの搭乗時の報告と、
ボクたちのシミュレータデータを鑑みる限り、
コレは危険です!
直ぐに追いかけて援護を……」
と、捲し立てるマカロニに、
「…良い……。
ここはケビンのやらせたい様にやらす…!」
と、ミケが宣言する⁉
「な…ナニ言ってるのリーダー…ッ⁉」
と慄くユリンと、
「このままでは…、
ケビンがやられるのは目に見えてますよ…ッ⁉」
と、マカロニも驚きの声を上げるが、
「コレは、ホンマに良い機会かもしれん。
ユリン、
ロクスリー君をGデッキに連れて来て欲しい。
うちらもGデッキに行く。
ただし、うちらはGデッキで待機!
ケビンには敢えて、やられて来て貰う!」
と、その場の全員が唖然となる指示を出すミケ⁉
『ハァーーーッ⁉』
目が点の、その場の全員に、
「説明は追々《おいおい》する!
ユリン、とにかく頼む!
マカロニ、うちと一緒にGデッキへ!」
と、テキパキと指示を出すミケ!
「何か深い考えがあるんですね。
了解です! とにかくGデッキに向かいます!」
と、ミケの意図は謎のままだが指示に従うマカロニと、
「もう!
リーダーは言い出したら聞かないんだから!
良く分かんないけど、
とにかくロクスリー君を連れて行くからね!」
と、行動し出すユリン。
「ソルファージュは、今の位置をキープ。
艦戦ができん今のソルファージュを、
相手近くに晒すワケにはいかん!」
と、更に指示を出すミケ。
「了解だ。何か、やる事があるんだな?
とにかく、頼むぞ!」
と、告げるバーダックに、
「OKや、任された!」
と、答えつつ、
「行くで、マカロニ!」
マカロニとGデッキに向かうミケ。
そして、その混迷の状態の中。
「り…リーダー⁉
何か…コッチに機体が単騎で向かって来ますぜ?」
と、レッドバイソンの部下の一人が、
ここら辺で襲って奪ったのであろう、
THのモノと思われる、
ゾンドなどのWGたちを運びつつ、
前回、トロイメンカッツェにボッコボコにされ、
せっかく乗っていたG²である、
フェアタイディゲンを奪われ、
一般的なFGである、
ゲズに乗るしかなくなった、
リーダーのジャドに進言する。
「な…ナニッ⁉
まさか…またアヴァドンたちが来たワケじゃねぇよな⁉」
と、狼狽えるジャドに。
「いえ、索敵しても、
アヴァドンとこで使ってた機体たちとは違うみたいですぜ?」
「それに、アヴァドンとこだったら、
まず出て来るのは、
強襲用の、
ラーゼンレーヴェのはずでしょうし、
他のKGたちも出て来るはずですぜ?
見た感じ、
見た事も無い様な機体なので、
KGかもですが、
逆に、
それが単騎掛けってのは、
オカシくないですか?」
と、ジャドのゲズの様に、
ガトナスやザヌスなどすらでもなく、
ゲズやジーナに乗った部下たちが次々と告げる。
そこに、
「そこの赤牛共…ッ‼」
と、ケビンのシュタイガーンバオアーが迫って来る!
「あ…あの声は…ッ⁉
や…やっぱし…アヴァドンとこの奴じゃねぇか…ッ⁉
ど…どうすんだよ…テメェら…ッ⁉」
と、恐れ慄くジャドと、
「ど…どど…⁉
どうするったってリーダー…ッ⁉」
と、更に、
戦々恐々《せんせんきょうきょう》とする部下たちに、
「挨拶代わりだ! 食らえ!」
と、背部垂直ミサイルを射出する、
ケビンのシュタイガーンバオアー…ッ!
「ひ…ヒィーーー…ッ⁉」
と、右往左往するジャドたち…!
だが…⁉
「クッ…気分が悪りぃ……⁉
照準が上手く付けれねぇ…⁉」
と、放った垂直ミサイルが、
全て、明後日の方向に空を切る⁉
「ハァ…ッ⁉」
「な…何だアイツ…⁉」
と、呆けるジャドたちに、
「クッ…だけど……なぁ…ッ‼」
と、レーザーライフルを構え、射出するケビン‼
「ウヒ…ッ?!」
と、更に慄くジャドたち…、
を…遥かに逸れて…⁉
レーザーが…明後日の方向に着弾する…⁉
「でも…ッ‼
でもだ…ッ‼」
と、咆哮する様に叫ぶケビン…‼
だが…‼
「こ…コイツ…弱いぞ…?」
と、ジャドの瞳が光る!
「それに…周辺に機体反応無しですぜ…?
コイツ……何か…この機体に慣れてなくて…、
その上で…功に焦って、
単騎掛けして来てて…、
アヴァドンたちは気付いてないとか…、
じゃないですか…リーダー…?」
と、部下たちも目を輝かせ始める!
「きっと、そうだぜ‼ ラッキー‼
その上で、KGらしいと来た!
よし、アヴァドンたちに気付かれねぇうちに、
コイツを仕留めて、このKGの部分パーツを頂くぞ‼」
と、指示を出すジャド!
「了解でさぁ! リーダー!」
と、部下たちがレーザーライフルやバズーカで、
シュタイガーバオアーを牽制をし出す!
「クッ……!
こ…この程度…!」
何とかその牽制の射撃を躱すも、
牽制射撃だというのに、
その躱し方はギリギリ紙一重…ッ⁉
「クソォ…ッ⁉
頭が重い…ッ⁉
う…上手く動かせねぇ…ッ⁉」
と、呻くケビン!
「何だコイツ…⁉
ただの牽制でスレスレだぞ…⁉」
「コイツ…⁉
適当にミサイルでも一斉に撃つだけで、
ヤれるんじゃねぇの…⁉」
と、部下たちが一斉にミサイルを撃ち始める…‼
「クゥゥゥ…⁉」
何とか躱そうとするが、
幾つかのミサイルが、
間近に迫る…⁉
「クッ…⁉ PBLH…ッ‼」
必至にPBLHを展開するが、
向かって来る1発目は防げたものの、
連続で放たれるミサイルに対し、
PBLHを、
上手く連続展開して防げず、
何発かが、モロに胴体に当たる…⁉
「クソッ…‼
だけど…ピンチになったら…‼
この機体はスペシャルになるはずなんだ…‼
ロクスリーが…‼
あのクズがスペシャルなんじゃないはずなんだ…‼
そろそろ…‼ そろそろのはずなんだ…ッ‼」
と、着弾によろけながらも、
こちらも背部垂直ミサイルと、
レーザーライフルを射出するケビン!
だが…‼
「やっぱし明後日の方向に飛ぶぜ…アイツ…‼」
「ハハハ‼
KGっぽいクセに、
あのパイロット、よっぽど慣れてねぇぜ‼」
と、嘲笑し出す部下たちに、
「ヘヘヘ…ッ!
ホント…雑魚だぜコイツ…‼
よし‼
撃墜して、
部分パーツを貰うつもりだったが‼
コイツを鹵獲してやろうぜ…‼
テメェら‼
このド下手パイロットが投降する気になるまで、
コイツを囲んでぶん殴り続けてやれ‼」
と、ジャドが、
舌なめずりしながら指示を出す…!
その頃…。
「ちょ…ミケさん…⁉
しゅ…シュタイガーンバオアー…ボロボロじゃないですか…⁉
アレ…ケビンさんが乗ってるんスか…⁉
何でオイラなんか呼ぶまで出撃してないんスか…⁉」
と、急に、ユリンに連れられて、
Gデッキに来させられたけど、
Gデッキのモニターに映る、
ボッコボコのシュタイガーンバオアーを見て、
大焦りのオイラ…‼
「そうだよ‼
何か思う所があるって言ってたけど、
コレはヤバ過ぎるよリーダー‼」
と、オイラを連れてきたはずのユリンさんも、
ミケさんに抗議するが‼
「あのレッドバイソンは、
うちらが戦った中でも雑魚中の雑魚や‼
やから、その雑魚のレッドバイソンにでも、
シュタイガーンバオアーやったら、
ケビンはボコられるってのを体験させたかった。」
と、告げるミケさん。
「それとや、
もし、シュタイガーンバオアーに乗るのがロクスリー君や無く、
ケビンでも、実戦でピンチになったら、
強くなる何かがあるのかも知りたかった。
クライアントのアイツからの指示である、
シュタイガーンバオアーの試乗結果の報告に、
色が付けれるかもしれんかったからや。
で、いま、結果が分かったとこや。」
と、更に淡々《たんたん》と告げるミケさん。
「で…でも…だったら…早く皆さんで出撃して…‼」
と、ミケさんに食ってかかるオイラに‼
「やから、次は、ロクスリー君に出撃して貰う‼」
と、更にミケさんが、何かムチャ言い出した…⁉
「しゅ…出撃するったって…⁉
ゲズC²は、撃破されて無いんスし、
シュタイガーンバオアーは、ケビンさんで出撃中で、
今、まさにボッコボコなんスよ…⁉」
と、目を丸くして疑問を投げるオイラ‼
「そうですよ…ミケさん…⁉
この状態でロクスリー君に…、
いったい…どう出撃しろと言うんですか…⁉」
と、マカロニさんも詰め寄るが、
「ロクスリー君には…、
ラーゼンレーヴェで出て貰う…‼」
と、目を丸くするどころか、
目を疑うばかりの指示を出すミケさん…ッ?!
『エエェェェェェーーー…ッ⁉』
目が点になるオイラたちに、
「レッドバイソンは、
うちらが戦った中で、一番弱い相手や!
やったら、これ程の機会は無い!
つまり、前回のシュメル戦の時の、
あの凄まじいロクスリー君の動き、
それが、ロクスリー君が乗ったんが、
シュタイガーンバオアーやから、
ロクスリー君がスペシャルに成れたんか、
ロクスリー君が唐突に、
単に、どのGでも、
スペシャルに成れたんかを、
確かめれる絶好のチャンスや言う事や‼
その上で、
もし単にスペシャルになったんでも、
そうでなかった場合でも、
ラーゼンレーヴェでアカン結果が出た場合は、
今の頭に血が上ったケビンでも、きっと納得が行くやろう…ッ‼
つまり、どう転んでも、うちらにプラスになるって事や…‼」
と、捲し立てるミケさん…ッ⁉
「ふ…ふへぇーー…ッ⁉」
と息を吐くオイラ。
「なるほど…‼ 流石ですミケさん…‼」
とマカロニさんも頷き、
「リーダーはコレだから…、
敵にだけは回したくないなぁ…ホント…‼」
と、ユリンさんも、目を丸くしつつ頷く。
「その上で、ラーゼンレーヴェでピンチに成った時に、
ロクスリー君がスペシャルになるかも見たいから、
存分にボコられてええ…!
気負わず、とにかくやれるだけやって来ぃ…!
後で、うちらがフォローは…する…!」
と、オイラへの、ラーゼンレーヴェ搭乗を、
促すミケさん。
「そ…そいう事なら…‼
了解っス‼ ミケさん‼」
と、38を伴て、
ラーゼンレーヴェに乗り込むオイラ‼
「38…‼ いつも通りの操縦方法で頼む…‼」
と、38に、ラーゼンレーヴェの操縦のチューニングを頼む‼
『了解です‼ マスター‼』
と、38がチューニングを始める‼
「とにかく、
出撃したら、やりたい様にやったらええ!
Aトライバレルも、
アリーエルスラスターも、
オサフネかて使ってええ!
けど、その代わり、
やれる事をやり尽くし!
そしたら、アカン結果になっても、
ケビンも納得するはずや!」
と、助言をくれるミケさん‼
「了解っス‼」
と、答えるオイラに、
『マスター…! チューニング…完了です…‼』
と、38が告げる‼
「よし、Gハンガーで‼」
と、ラーゼンレーヴェを、
ハンガーに乗せるオイラに、
「状況は確認しました!
ハッチオープン! 進路クリアー!
ラーゼンレーヴェ‼ 出撃どうぞ‼」
と、セリアさんが管制をしてくれる‼
「ロック=ロクスリー…‼
ラーゼンレーヴェ…行きます…ッ‼」
と、Gハンガーに射出されるオイラ‼
「オラァ…ッ‼」
と、レッドバイソンの部下たちが、
シュタイガーンバオアーを囲み、
頭部や腹部を、ボッコボコに殴り続ける…!
「クッ…こ…こんな…ッ⁉
ピンチになったのに…‼
何で…スペシャルにならねぇ…ッ⁉
やっぱり…ロクスリーが…、
スペシャルだって…認めろってのか…⁉
クッ…クソがぁ……ッ‼」
ただボコられるだけの、
シュタイガーンバオアー内のケビンさんが、
悔しみの咆哮をする中‼
「り…リーダー…⁉
な…何か…スゲェ勢いで…、
1機…Gが…こっちに突っ込んで来ますぜ…⁉」
と、部下の一人が告げ、
「あ…アレは…⁉
ら…ラーゼンレーヴェ…ッ⁉」
と、驚愕の声を上げる、ジャド‼
そこに…‼
「ケビンさんから退け‼
この機体で…加減なんて効かないぞ…ッ⁉」
と、ガトリングを掃射しながら、
背部垂直ミサイルも、
掃射するオイラのラーゼンレーヴェ…!
なんだけど…ッ⁉
「な…何だ…?」
「コイツも…外しまくりだぞ…?」
オイラの放ったラーゼンレーヴェの射撃たちが、
ことごとく、レッドバイソンたちから、
明後日の方向に逸れる…⁉
しかも…ッ⁉
「な…何やってんだ…ロクスリー…ッ⁉」
一部のガトリングやミサイルが、
ケビンさんのシュタイガーンバオアーに当たって…ッ⁉
「クッ…なんだ…⁉
同士討ちをしてるってのか…⁉」
シュタイガーンバオアーに当たったミサイルの爆風で、
逆に、シュタイガーンバオアーを囲んでいたレッドバイソンたちへの、
目くらましになり、その隙に、
シュタイガーンバオアーがその囲みを抜け出す…ッ‼
「や…やった‼ 全部、ただの偶然だけど…‼」
と、更にガトリングを斉射するが、
相変わらず射線が、
全然、相手機体たちに噛み合わない⁉
「な…何だ⁉
今日は、ラーゼンレーヴェもオカシイぞ⁉」
「リーダー!
これ…コイツもやれんじゃないですか⁉」
「だなぁ! だなぁ!
よし、コイツら2機共!
アヴァドンたちが出る前にボコって頂くぞ!」
と、シュタイガーンバオアーを逃しつつも、
オイラが動かすラーゼンレーヴェのダメな動きに、
舌なめずりをするジャドたち⁉
「アアァァァ…⁉ く…来る…⁉」
ジャドたちがオイラたちの、
ラーゼンレーヴェとシュタイガーンバオアーに、
一斉に、
背部垂直ミサイルを飛ばして来た⁉
何とか、バルカンやガトリングで防ごうとするも、
かなりの数が被弾する⁉
「グゥ…‼
クソガァァァァーーー…ッ‼」
ケビンさんのシュタイガーンバオアーも、
バルカンやハンドアックスで、
撃ち落とそうとするも、
アッチも、かなりの被弾をしてる⁉
「こ…こうなったら…Aトライバレルで‼」
と、Aトライバレルのバレットを射出するも、
その予想外の反動の重さに、
目の前の地面に誤射して、
地面が大きく爆散する⁉
「クッ…⁉
目くらましか…⁉」
と、爆散した地面の土砂によって、
ジャドたちの射撃が偶然、逸れる中!
「じゃ…じゃあ…もっとダメ元で…ッ‼
アリーエルスラスター…‼
その上…オサフネだ…ッ‼」
と、Aトライバレルを腰にマウントし、
オサフネを構え、
アリーエルスラスターを起動するも…ッ‼
「って…うわ…ッ‼ アアァァァァーーー…ッ⁉」
アリーエルスラスターの加速に付いて行けず、
そのまま、目の前の抉られた地面に躓いて、
オサフネが、すっぽ抜けて、
そのまま前に転がり倒れてしまった…ッ⁉
ブンっとオサフネが飛び、
その前に偶然いた、
レッドバイソンのジーナの左腕を掠め、
掠めただけなのに、その左腕が斬り落とされ、
オサフネが、その前の地面に、レーザーが消え、転がり落ちた…ッ⁉
その最中にも、
ケビンさんのシュタイガーンバオアーの、
レーザーライフルや、背部垂直ミサイルも飛ぶが、
それらも尽く、明後日の方向に流れてしまう…ッ⁉
「テメェら…‼
ド下手たちのクセに、
よくもコッチに損害を出してくれたな…ッ‼」
憤るジャドたちレッドバイソン!
「野郎共、
ミサイルだけじゃなく、
バズーカとライフルも撃ってやれ!
もっと甚振って、落し前を付けさせてやれ‼」
と、ジャドが最悪の命令を出す…‼
オイラもケビンさんも、
バルカンなどで撃ち落とそうとするも、
ほぼ撃ち落とせなくて…⁉
「アアァァァァァーーー…ッ⁉」
「グゥ…‼
クウゥゥ…‼」
ラーゼンレーヴェもシュタイガーンバオアーも、
KGだけあって、
これだけ被弾しても何とか、
まだ動けそうだけど…‼
こ…これが…更に続いたら…⁉
「テメェ…‼ ロクスリー…ッ‼
何やってんだよ…テメェは…⁉
オレはシュタイガーンバオアーなのに…コレなのに…‼
だったら、オマエが本当にスペシャルだって、
認めねぇと行けねぇはずなのに…何やってんだ…⁉
オマエが…スペシャルだって…‼
オレは…‼ オレはーーー…ッ‼
認めねぇと行けねぇってのにーーー…ッ‼」
と、ケビンさんが歯ぎしりする…ッ‼
「ケ…ケビンさん…ッ‼
クッ…少し先に林があります…‼
そこに隠れて籠城しましょう…‼
その間に、
ミケさんたちに来て貰いましょう‼
オイラがスペシャルかなんて、今は良いんスよッ‼
とにかく、この場を何とかするんです‼
オイラだけじゃ無理かもだけど…‼
ケビンさんとなら…きっと…ッ‼」
と、ケビンさんに指示を出すオイラ…‼
「クッ……じゃあ…‼
何とか…‼
何とかするぞ…ッ‼」
と、ケビンさんも頷いてくれる…‼
「何をゴチャゴチャ言ってやがる…ッ!」
と、ジャドたちレッドバイソンが、
更に、バズーカやレーザーライフルなどで、
掃射してくる…!
それらを、躱そうとするも、
「クッ…、
クソガァァァァーー…ッ‼」
「アアァァァーーー…ッ‼」
ほぼほぼ、全弾着弾させられるオイラたち…ッ⁉
その最中に…ッ‼
「コラ…ッ‼
そこのレッドバイソンたち…ッ‼」
と、様子見を辞めて、
ソルファージュから出て来た様で、
ミケさんのタイニーダンサーたちが、
駆け付けてくれる…‼
「ゲッ……あ……アヴァドン…ッ‼」
と、ジャドが青ざめたが、その後、直ぐに‼
「野郎共、そこの2機のド下手共を捕まえて、
レーザーブレードやレーザーアックスを突き付けてやれ‼
人質にしてやるんだ…ッ‼」
と、命令して来る…ッ⁉
「アアアァァァーーー…ッ‼」
「クソ…‼ クソ…ッ‼ クソ…ッッ‼」
と、バルカンなどで牽制するも、
そんな近距離の攻撃すら当たらず、
ほぼ、為す術もなく、
捕まるオイラたち…ッ⁉
「チッ…‼」
「こ…コレ…⁉
ど…どうするのリーダー…⁉」
「マズいです…! マズいですよ…⁉」
と、コチラに向かう動きが止まる、ミケさんたち!
「へ…へッ…へッ…!
流石のアヴァドンも、
お仲間は見捨てられねぇってか?
魔王のクセに…お仲間想いなこって…!」
と、オイラのラーゼンレーヴェと、
ケビンさんのシュタイガーンバオアーを、
横並びにして、
頭を小突いて、
そのオイラたちの不利さを、
ジャドがアピールし!
「よし‼ アヴァドンたち…‼
テメェら‼
そのご自慢のKGたちを乗り捨てな…‼
その後に、オレらが大事に扱ってやるからよぉ…‼」
と、再度、ペシペシと、
オイラたちの機体を小突く!
「アアアアァァァーーー…ッ‼」
と、叫ぶしかできないオイラ!
「クッ…クソがァァァァーーーッ‼
オレが…オレのせいで…‼
姐さんが…‼
姐さんたちがァァァァーーー…ッ‼
オレの…‼ オレのォォォーーー…ッ‼」
と、涙目になるケビンさん‼
しかし…その絶望の最中で…‼
「ジャド……よう考えや…?
もし…そのまま…ケビンたちを本当に殺したら…。
本当の地獄を見るんは…オマエたちやと…。
想像が着かへんのか…?
本当にオマエたちがアホで…。
仮に本当に…そんなアホな事をしたら…。
魔王と呼ばれる…うちの本当の恐ろしさを…。
オマエたちは…その身に…たっぷり味合わされるで…?
それが…分からん程……オマエらはアホなんか…?」
と、逆に、座った恐ろしい目で、
脅し返すミケさん‼
「クッ……あ……アヴァドン…ッ‼」
ミケさんの、いきなりの、
脅迫の仕返しに、
焦りの色を滲ませるジャドだったが…‼
「クソが…ッ‼ どうせやられるなら…‼
1機でも2機でも…道連れにしてやる…ッ‼」
と、目を血走らせ、
ケビンさんのシュタイガーンバオアーのコックピット部分に、
レーザーブレードを突き付けるジャド…ッ⁉
「あ…姐さん…‼ アアァァーー…ッ‼」
と、ケビンさんが蒸発する…ッ⁉
「け…ケビン…ッ⁉
こ…このドアホがァァァーーー…ッ‼
マカロニィィーーー…ッ‼」
と、ミケさんが怒鳴った瞬間、
タイニーダンサーの更に後方に居た、
フェストゥングのランチャーが爆ぜ…ッ‼
「グ…ッ⁉」
ジャドのゲズの頭部を射抜くが…ッ‼
「どうせ地獄に落とされるなら…ッ‼
せめてコイツも道連れだ…ッ‼」
と、オイラのラーゼンレーヴェのコックピット部分にも、
ジャドのゲズのレーザーブレードが…ッ⁉
「思い出した…。死ぬって…こんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「クソが…ッ‼ どうせやられるなら…‼
1機でも2機でも…道連れにしてやる…ッ‼」
と、目を血走らせるジャド…ッ⁉
こ…ここからなの……ッッ⁉
こんなのワンアクションくらいしか…ッ⁉
「こ…コレか…ッ⁉」
と、何とかワンアクションで、
バルカンを乱射するオイラのラーゼンレーヴェ…だったんだけど…⁉
「チッ……‼ テメェから殺されてぇか…ッ⁉」
と、ジャドのゲズのレーザーブレードが…ッ⁉
「思い出した…。死ぬって…こんなに痛いんだ……。」
圧倒的な痛みが身体を突き抜ける。
皮膚が溶ける痛み。
骨が溶け落ちる痛み。
眼球が焼け爛れる痛み。
全身が痛覚の神経になった様に痛みだけを身体の全てが感じる。
そして、急激な意識遮断……。
そこで眩し過ぎる発光した光景は途切れた。
一瞬、世界が一点に集約される様な妙な感覚を覚えた。
ボヤけた視界が、徐々に明瞭になってくる。
「クソが…ッ‼ どうせやられるなら…‼
1機でも2機でも…道連れにしてやる…ッ‼」
と、目を血走らせるジャド…ッ⁉
また…こ…ここからなの……ッッ⁉
ほ…他の…ワンアクション…ッ⁉
他に取れるワンアクションって言ったら…ッ⁉
こ…コレなのか…ッ⁉
その瞬間、
ラーゼンレーヴェのアリーエルスラスターが発動し、
後は、横で囚われてるシュタイガーンバオアーの方に、
機軸を向ける…ッ‼
「クッ…⁉」
急な加速度の動きに、
ジャドたちを巻き込んで、
吹き飛ばしつつ、
シュタイガーンバオアーに正面からぶつかり、
諸共に横転して、
ジャドたちが、その中で、
弾き出され散り散りになり、
オイラとケビンさんは、偶然、
さっきオイラが言った林の中に着点する…ッ⁉
「なァァァーーーー…ッ⁉」
散り散りにされ、
オイラたちを逃した事に、驚くジャドたちに!
「よし! ようやった! ロクスリー君!
ユリン! マカロニ! 行くで…ッ‼」
と、ミケさんたちがこっちの方に向かって来る‼
その最中…ッ‼
「ケビンさん! ケビンさん! ミケさんたちが来てくれました!」
と、叫ぶオイラに、
「クゥーー……ッ‼
オレは…オレは…ッ‼
姐さんの足を引っ張るだけで…ッ‼」
と、更に涙を流すケビンさん…ッ‼
その真摯なミケさんたちへの想いを見て…。
「ケビンさん! ラーゼンレーヴェに‼
ラーゼンレーヴェに乗って下さい‼」
と、オイラは、思わず叫んでしまった‼
「ラーゼンレーヴェ…に…⁉」
と、クシャクシャに涙しつつ、聞き返すケビンさん。
「そうです!
操者交替です‼
オイラがシュタイガーンバオアーに乗って、
どうなるかは出たとこ勝負っスけど!
ラーゼンレーヴェになら…!
ラーゼンレーヴェに乗ったのなら…!
ケビンさんは何処までも行けるんス…ッ‼
イヤ…!
ラーゼンレーヴェじゃないとダメなんだ…ッ‼
ケビンさんには…‼
ケビンさんらしく…ッ‼
いつも通り…‼
がむしゃらに…‼
ラーゼンレーヴェで戦って欲しいんス…ッ‼」
と、思いの丈をぶつけるオイラ‼
「ろ…ロクスリー……。」
と…ケビンさんは…、
一度…項垂れてから…!
「…分かった…! ハッチ空けろ…!
で…機体の手をシュタイガーンバオアーのコックピットに伝わせろ…!」」
と、指示し、
その通りにし、38を伴い、
シュタイガーンバオアーのハッチの前に向かったオイラを、
ハッチを空け、目の前にしたケビンさんが、
「右手を上げろ!」
と、言い、オイラがそれに従うと、
「操者交替だ…! 行くぜ、兄弟…ッ‼」
と、ハイタッチをしてくれた…‼
「ハイっス……ッ‼」
と、手を交わらせてから、
オイラがシュタイガーンバオアーの手を、
ケビンさんを乗せてラーゼンレーヴェのハッチに向かわせ、
お互いに、乗るべき機体を替えたオイラたち…‼
「38…ッ‼ 頼む…ッ‼」
と、38にチューニングを頼むオイラの前で…‼
「行くぜ…ッ‼ アリーエルスラスター…ッ‼」
と、ケビンさんのラーゼンレーヴェが、
アリーエルスラスターの加速を掛ける‼
『マスター…チューニング完了…!
シュタイガーンバオアー……CAPAS…ドライブ…!
いえ…! CAPAS…フルドライブ……‼』
と、告げる38…ッ‼
「あ…また…操縦しなくても思った通りに動く上に…、
更に…また…この感覚……ッ⁉
いきなりなのに…周囲の状況が……もっと…見える……ッ⁉」
林に絡まったシュタイガーンバオアーを起こし、
アリーエルスラスターを起動したラーゼンレーヴェ程じゃないけど、
オイラもシュタイガーンバオアーを追随させる…ッ‼
「グッ…‼
こう高速で空を飛ばれたら…ッ⁉」
と、レッドバイソンたちがタイニーダンサーたちに苦戦している中…‼
「退け…オラァ……ッ‼」
と…、
ラーゼンレーヴェが、
レッドバイソンの中の1機の顔面を蹴っ飛ばす‼
「ヒッ…ヒィィーーー…ッ⁉」
蹴っ飛ばされたジーナが、
戦々恐々《せんせんきょうきょう》としつつ、
転がり倒れる‼
「ケビン! って事は…⁉」
と、ユリンさんが息を吐く間に…!
「今のオイラのシュタイガーンバオアーは…ッ‼
多分……痛いぞォォォーーー……ッ‼」
と、
背部垂直ミサイルを、
撃ち込み、
それらが撃ち込まれた地点に
ライフルを放ち‼
ミサイルをぶち抜いて煙幕にし、
その最中に、煙幕で、
もたついてるケズの1機の頭部を、
PBLHで粉砕し、
そのまま、その機体を、
右回し蹴りで、
吹き飛ばす、オイラ…‼
「ロクスリー君も…ッ‼」
と、マカロニさんが、
ランチャーで1機のジーナの左足を射抜きつつ、
こちらを確認し、喜びの声を上げる!
「よし!
色々、計算外やったけど、コレは行ける!
うちらに楯突いてくれた分、
コイツらに地獄見せたるで‼」
と、ミケさんも目を輝かし、
応戦でバズーカを撃とうとするゲズの、
武器を構えた右手に、
透かさず、トライバレルのレーザーを、
叩き込み無力化する!
「ドゥラッ‼」
アリーエルスラスターを吹かせつつ、
Aトライバレルの、
レーザーソードを閃かせ、
相手のバズーカやミサイルを、
尽く切り払い、
レーザーを紙一重のタイミングで躱し、
でも、後で機体を奪う事を考えてか、
バルカンで威嚇しつつ、
これまた閃く様に放たれる、
左右の蹴りで、どんどんレッドバイソンたちを、
押し込めるラーゼンレーヴェを参考に‼
「なら! オイラも! 今のオイラなら‼」
ライフルと、ハンドアックスを、
腰に収め、
背部垂直ミサイルランチャーを、
威嚇に乱射し、
相手たちの回避行動をとる場所が、『もっと見える』為、
回避地点に移動したレッドバイソンたちの胴体に、
左右のジャブから右裏拳を頭部に決め、
バルカンで追随しつつ、
その近くの相手にも、
左正面の蹴りから、
頭突きをかまし、
右回し蹴りで、
周囲の相手たち諸共に吹き飛ばし、
更に、
空中からの飛び蹴りで、
相手群衆の一体の頭部を、
蹴り飛ばし、
バックステップで距離を取ってから、
再度、
背部垂直ミサイルの、
威嚇を行う…ッ‼
「ヘッ…、
やっぱしスペシャルなんじゃねぇか! ロクスリー‼」
と、レッドバイソンたちへの蹴りを止めないケビンさんに!
「ケビンさんこそ!
シュタイガーンバオアーみたいな変な機体に頼らなくたって!
やっぱし、ケビンさんは、ラーゼンレーヴェなら!
オイラなんかより、スペシャルっスよ…ッ‼」
と、こちらも、拳と蹴りの押収で、
レッドバイソンたちを、オイラも押し込める‼
「うちらも負けてられん!」
と、タイニーダンサーが、
空中からの高高度からの蹴りを繰り出し、
「このユリンちゃんっていう、ヒロインの出番も押してるんだから!」
と、レーザーライフルを構えるレッドバイソンのジーナに、
エンジェルシードが鋭い砲撃を放ち、
レーザーライフルだけ撃ち落とし!
「相手の機体の損傷を抑えつつ戦える程、
皆さん、余裕が出てますし!」
と、マカロニさんのフェストゥングも、
ユリンさんに勝るとも劣らない鋭い砲撃で、
レッドバイソンのゲズの握ったレーザーブレードだけを撃墜する!
「こ……こんなのが……ッ⁉」
「ヒッ……ヒィーーー…ッ⁉」
トロイメンカッツェ総出の反撃に、
戦々恐々《せんせんきょうきょう》としつつ、
何とか背部垂直ミサイルや、
バズーカや、レーザーライフルで、
レッドバイソンたちも応戦するが‼
「それがねぇ…‼」
と、ユリンさんのエンジェルシードが、
そのスーパー重装甲ボディーで、
ミサイルやバズーカを引き受け!
「アナタたち程度の攻撃は…ボクたちには…ほぼほぼ無力なのですよ…ッ‼」
と、フェストウングの、
Aフィールドバリアでの、
レーザー無効化も発生し…!
「ってワケさ…ッ‼」
と、
Aトライバレルのレーザーソードで、
バズーカや、ミサイルを迎撃し、
レーザーライフルをアリーエルスラスターの超高速で、
超回避するラーゼンレーヴェに…!
「そうっスよ…ッ‼ 今のオイラなら…ッ‼」
と、『もっと見える』、この何かで…‼
相手の攻撃の軌道を読んで…ッ‼
バルカンで実弾たちを撃ち落としつつ、
レーザーライフルを、
レーザーライフルで相殺したり、
PBLHで受け切り、
反撃で背部垂直ミサイルの、
弾幕を浴びせる、
オイラのシュタイガーンバオアー…ッ‼
「分かったな…?
無駄な足掻きをしても勝てんって…?」
と、PBLHの連続展開で、
実弾もレーザーも無効化した上で、
高速でジャドのゲズに近づき、
ジャドの胸部コックピットに向けて、
タイニーダンサーのトライバレルを、
突き付けるミケさん…ッ‼
「ヒッ…ヒィィィ……ッ‼
す…すみませんでしたァァァァァーーー…ッ‼
お…お助け…ッ‼
い…命ばかりは…お助けをォォォォォーーー……ッ‼」
と、両手を上げた降参のポーズを通信で見せて来るジャド‼
「まあ、今日は、色々と、計算外ではあったんやけど、
ホンマ、良い収穫やった…。
やから…許したる…。
命は取らんで置いてやる…。」
と、許すと言いつつも、
鋭い視線のミケさん。
「ハ……ハハァァァァ…ッ‼
あ…ありがとうござ……、」
と、ジャドが言い終わる前に。
「やから…オマエらは…直ぐに…全員…機体を捨てて…、
オマエたちの機体も、GSも…、
その中の物資も…一、
緒にくれるだけで許したる…。
優しいやろ…? うちは…?」
と、極上の笑顔で、
ニッコリと告げるミケさん。
こ…この人だけは…敵に回したくない……。
そう…オイラも戦々恐々《せんせんきょうきょう》とする中…。
「ヒッ…ヒィィィーーー……⁉
りょ…了解……しましたァァァーーー…ッ‼」
と、ジャドたちレッドバイソンたちが、
全員、機体を乗り捨て、
一目散に逃げて行った。
「リーダー。皆さん。
ソルファージュのレーダーで確認したところ、
左方の数キロ先に、
停留してあったGSから、
レッドバイソンたちとみられる人員たちが降参し脱出し、
去って行った模様です。」
と、セリアさんが通信を入れてくれる。
「わ~いッ‼ トロイメンカッツェ‼ 大勝利~ッ‼」
と、ユリンさんが勝鬨の声を上げる!
その中…。
「姐さん…。」
と、ミケさんを見つめ、
「オレ…。オレ…ッ‼」
と、真摯な声を漏らすケビンさん…。
そのケビンさんに、
「良い…。良いんやで…。
人って言うのはな…。
間違う事があるからこそ…もっと成長して…、
もっと優しくなれるんや…。」
と、ミケさんが、
暖かく、なだめる言葉を掛ける。
「姐さん…。
姐さん……ッ‼」
と、泣き崩れんばかりのケビンさん。
「良いんや…。良いんやで…。」
と、再度、ケビンさんをなだめるミケさん…。
「オレ…! オレ……‼
姐さん……ッ‼」
と、目を見開き、
涙し出すケビンさん…。
そして、そこから数分の間、
ケビンさんは泣き崩れてから、
「ロクスリー……。
すまなかった……。
オレ……姐さんが…ッ‼
だから…オレ…。
すまねぇ…。
すまなかった…ロクスリー…ッ‼」
と、オイラにも向いて、優しい涙を、
ケビンさんは流してくれる…。
「良いんス…。
良いんスよ…ケビンさん…。
だからコレからは…また…。
また…オイラを……兄弟にして下さい…。
ケビンさん…‼」
と、オイラの目にも、
いつの間にか涙が貯まって…。
「ああ…。
ああ……!
あいよ……兄弟…ッ‼」
と、二人で、
モニター越しにハイタッチをするオイラたち…。
「良かったな…。
ケビン…。
ロクスリー君…。」
と、ミケさんが目を細め、
「ホント、良かったよ…。」
「ええ…。」
と、ユリンさんとマカロニさんも喜んでくれる…。
「よし! 湿っぽいのは、このくらいで!
収穫をタップリ頂くで……ッ‼」
と、皆に号令するミケさん!
『ハイ…ッ‼』
と、皆の声が重なってから、
戦利品たちの、
回収作業が始まった…。
天国の…父さん…母さん……。
オイラ…また…兄弟に……成れました……ッ‼