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1.プロローグ1

なぜか堅い出だし・・・


開けた窓から初夏の風が差し込み、やや汗ばんだ身体をベッドから引き起こした。


「変な夢・・・」


外から子供たちの声が聞こえ、遠くの農作業の音も聞こえてくる。


ベッドから立ち上がり、窓に近づき見慣れた外を眺めた。


ここは、エッダ、父親である、クロイン・エッダ男爵の治める地である。


そして、僕はエミレグア・エッダ、12歳、エッダ男爵の次男だ。


妙な夢を見たせいで、自分が正しい世界にいるのかわからなくなったが、大丈夫だった。


昨日、幼馴染のミレーヌが、王城でのメイド見習いに抜擢され旅立ったことが原因かもしれない。


なにしろ、この国、ファウス王国は広大な国で、王都といえば一生に一度目にするか否かというぐらいおとぎ話に近い都だ。


ファウス王国は、無数の島々からなる海洋国家で、王都はその中心に位置する広大な島全域だそうだ。


それに比べると、エッダ領は、貴族の末席である男爵でもあり、ファウス王国の辺境に位置する。


ファウス王城では、辺境領の巡回と合わせて、容姿端麗、頭脳明晰な国家に従事する優れた家臣をあまねく掬いあげるため


将来有望な子供を王城にて教育させている。


特に辺境に位置する男爵領、準辺境と言える子爵領からの抜擢は領地上げての送別となる。なにしろ地元の栄誉であり


王城に引き取られた子供の成績如何ではさらなる領地の下賜や、上位爵位の授爵もありうるからだ。


確かに名誉なことで、うらやむことでもある。が、王城に引き取られた子供は、一時的に王家の末席扱いになる。


つまり、二度とこの地に戻る事は無いのだった。


ミレーヌは、子供のころから一緒に遊んだ幼馴染の一人だった。男爵家とはいえ、辺境の地では農地もままならない。


領主であっても、領民とともに農地を開墾し、畑を耕し、周囲の海で漁もする。そのため、子供は身分上下の差などなく


全員が同じく領民であった。さすがに男爵家の子供であれば家庭教師による教育ぐらいは受けられた。ただ、父は領民も


知識は必要と考える人物だったので、子供への教育を希望する家を募り、敷地内の一角を開放して子供たちを集めて


同程度の教育を施していた。そんな子供たちの中でミレーヌは他の子供たちよりも一歩も二歩も秀でていた。


多少男勝りのところもあったが、面倒見が良くて頭の回るミレーヌは、子供たちからも大人たちにも好かれていた。


僕はそんなミレーヌを最初は兄妹のように、そして最近では、なんだかよくわからないもやもやした感情を持って接していた。


年齢で言えば、一つ下のミレーヌは、男である僕よりも大人びていた。周囲も僕と彼女の仲については、多分ほほえましく


見えていたのだと思う。


そして、この春先に、数年に一度来るか来ないかの王都からの巡回が来た。領地の視察と施政についての監査、そして領地の


子供たちへの適正検査が行われた。当然僕も検査を受けたが、今回の検査では適性のある子どもはミレーヌだけだった。


その場で王都への伝令が出され、数か月後にミレーヌを引き取りに来ると言い残して巡回部隊は、次の地へ移動していった。


その迎えの馬車が来たのが昨日、領地内に留まることもなく、まだ日の高いうちにミレーヌを乗せて王都目指して去っていった。


先触れが来てたので、領地での送別会はすでに済まされていた。領民総出で見送った。


馬車に乗る前にミレーヌは、王都で立派になって必ず迎えに来ると言って馬車に乗り込んだ。僕は、多分、泣き笑いのような


そんな顔をしていたんだと思う。


あの夢はそんな僕の不安定な感情が見させたのだろうか?


あの美しくも慈母愛のあふれる女性は、神といった。だがそれを信じることは難しい。何しろこの世界での女神と言えば


ファスト王国の守り神であるシヴァ神である。シヴァ神像は、国のいたるところで見ることができる像で、大きいものでは


教会に祭られているシヴァ神の分け御霊の像から、魔よけとして各家々の門柱に置かれている像、お守りとして子供たちも


常時持っているような木彫りの像もある。その姿は、頭は八木、手は2本、足は3本で、全知全能を司り、退魔の神でもある。


それに比べれば、夢に出てきた神は、姿は人のそれ、とても人知を超えた力のある姿とは思えなかった。


だが、明確に否定もできなかった。頭の、いや、心の中で否定してはいけないという気持ちが出てくるのだ。


もしかしたら、自分にとってミレーヌは女神みたいな存在だったのだろうか?よくわからないが、ミレーヌのいない


領地の風景は、何か寒々とした、自分とは無関係な土地のような感じがしたのだった。


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