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馬鹿げた噂

作者: 神名代洸

僕らの学校には噂があった。

創立150周年ともなると建物も古くなって良からぬ噂が立つのは良くあること。

そこで有志が数人集まって古い校舎を探検する事に。ここは使われなくなった建物の為、鍵もかかっていない。

授業が終わった後の放課後だ。

皆部活に行っている。

僕らは幽霊部員の為参加していなかった。


「なぁ〜、ほんとに大丈夫か?俺らだけで。」

「いいに決まってるだろ?それに知られたら怒られるに決まってる。それでもいいのか?ここ、入れなくなるんだぞ?」

「別に無理して入らなくても…。」

「おい、お前が言い出したんだろ?ここ、出るって噂だって。何が出るか知らんけど、薄気味悪さは確かだけどな。」


そう、見た目からして古ぼけていて、今にも崩折れそうな建物なのだ。木造だから尚更そう感じるのだろう。建てつけも悪くなっているようでドアがなかなか開かない。ガタガタと音を立て、何とかドアを開けることができた。


「ほんとに大丈夫か?」

「さぁ、時間ないからチャチャっと見て回ろうぜ。」

「お前なぁ〜…。」

「さっさと行こうぜ。」

「どうなったって知らないからな?ほら、行くぞ!。」


5人はゾロゾロと中に入っていった。

夕方だから懐中電灯の光が必要になるかもと皆1つづつ持ってきていた。

まだあたりは明るいから必要なさそうだ。

でもさ、なんかこう…気配?みたいなもの感じないか?僕はそう思って皆に聞いてみる事にした。


「え?特には何も…。お前どうだよ。」

「俺は特に…。お前どうよ。」

「僕はわからない。」

「お前もかよ。ってことは気のせいじゃないのか?」

「イヤイヤ、確かに何かの気配を感じた気がして気味が悪い。」


僕は僕だけが感じるその気配に何か嫌な予感を感じていた。そう、まるでこれから起こる恐怖の始まりの合図とでも言ったらいいのだろうか?

いやが応にも周りに目がいってしまい、友達との距離も徐々に広がっていく。慌てて走って追いつくもまた同じことの繰り返し。

どうしたもんか…。

そうだ、喋りながらいけばいいんだと声をかけるも皆あまり喋ろうとはしない。雰囲気を気にしているのかはたまた別の何かが要因なのか僕にはさっぱりだったのだが。


仲間の1人が懐中電灯の光をつけた。まだ早い。

明るいのにである。

「おい!どうしたよ。」

「いや、ちょっと暗くね?」

「どこ?どこよ。」

仲間の1人も懐中電灯で照らした。

でもね、これといって特に変わったところはなかった。それが問題なのか辺りを懐中電灯で照らす。


それは真っ黒だった。

何故かは分からない。

でもそれがかえって不気味だ。

あかりを照らしたはずなのにそれは変わらない。

仲間の1人がケタケタと笑い始めた。

突然のことで皆固まった。


「おい、どうした?」

その問いに応えようとはしなかった。ただ笑っている。それが不気味さをさらに加速させた。


「おい、ちょっとやばくないか?なんでこうなった?出ようぜ。出直そう。」

「出直す?ここまで来てか?まだ来たばっかだろ?」

「だけどそいつ見ろよ。おかしいだろ。」

「ならそいつだけ置いてけばいいだろ。先進もうぜ。」

「ホンキ?か?こいつここに置いてくのか?こんな状態だってのに。」

「ならどうする?ここまで来て戻るのか?次はもう来れないかもしれないんだぞ。」

「でもよ〜。」

「ああ、もういい。俺1人で行くからな。こんな不気味な場所、ジッとなんかしてられるか。」

そう言ってそいつは1人で奥に行こうとする。仲間の1人が慌ててついていた。

僕ら2人ここに残ってこいつをなんとかしようとしていた。だけどケタケタと笑い続けるだけで動こうとはしない。

それをなんとか引っ張って入り口までやって来た。ドアは……??閉まってる。何で?開けといたはずなのに。誰かがやってきて閉めてしまったとか?だとしたらやばい。ここからは逃げられない。

僕ともう1人は話し合ってケタケタ笑うこいつをこの場に残し、仲間の元に向かうことにした。残しておくことに若干の不安はあったのだが緊急だ。

2人で辺りを探した。でもね?どこを探しても見当たらない。不安になってきた仲間は懐中電灯の光をそこら中に当てて誰かいないかを探し続けた。

一階にはいなかった。あとは二階しかない。

建物はそれほど広くない為すぐに見つかると思っていた。でもね、どこにもいなかった。どこにいったんだ?

まさか先に出たのか?でドアを閉めたとか?まさか、そんな酷い事をする奴らじゃないはず。

諦めずにさがし続けたら1人見つかった。

部屋の中で倒れていた。

死んでるのか?まさか…ね。

そんな期待をして首元に手を当てた。脈を見るためだ。

そしたら…そしたらさ、そいつ……死んでたんだよ。何でだ?

離れている間に何があった?

もう1人はどこに?

あれだけ大声で叫んで歩いていっていたのに今は静かなのもおかしい。

まさか、そいつにも何かあったとか?

僕らはビビリながら建物内を探して見ることにした。

でもさ、仲間の1人が亡くなったんだ。残してきたあいつが気になった。

1人笑っていた。

あのままにしてきたけど良かったのか?

不安が膨らんできて心配になった僕らは玄関に向かった。そこに残してきたからだ。

走ってきたが、そこには誰もいなかった。

汗が頬につたい降りる。

残してくんじゃなかった。

何かあったんだ。

どうしよう?

仲間も不安な顔をしている。

僕がしっかりしないと。

でもどうしよう?2人と連絡が取れないまま外に出てもいいのだろうか?でもそうしたって2人を探すのに2人では無理だ。他の誰かに応援を頼もう。でも誰に?

部員に頼む?

ここには入るなと先生から言われていたのだから皆何かあるのをわかっているに違いない。でもそれを僕は知らない。学校を休んでいたから聞いていないのだ。他の奴らは聞いてたはずなんだけど、信じていないのかまともに聞いていなかったのかのどっちかだ。僕としては後者だと思っている。

そうこうしている間もどんどん暗くなって行く。急がなきゃ。

慌てて僕らは建物内から出る選択をした。

ガチャガチャガチャと音はなるがドアは開かない。

鍵でもかかっているのか?

でもそうしたら中から開けられるはず。そんな期待を胸にドアの付近を見て回った。そして見つけた。ドアの鍵を。

内側から鍵を開けて建物の外に出た。

空気が変わった気がした。


僕らは慌てて職員室へと走って行った。

もう、怒られようがどうしようが知ったこっちゃない。人が1人死んでるんだ。放ってはおけなかった。


「せ、先生。すみません。至急来てもらえませんか?

まずいことが起きたんです。」

「なになに何があったんだ?詳しく話してみなさい。」


僕らはさっきまでのことを話して聞かせた。怒られるのを前提に…。しかし、先生は怒るよりも慌てたって言った方があってる。何でそんなに慌てるんだろう?不思議だった。


数名の教師、それから部活を終えた生徒達数人を連れてなぜか紐を片手に握って建物内へ入る事に。何でそんなことをしなきゃいけないんだと思う余裕はなかった。

紐に引っ張られるようにグイグイと中に進んで行く。

先がどうなってるのかなんて気にしてはいられなかった。


「おい、ちゃんとついてきてるな?」

「は、はい。います。でもどうしてこんな紐を待たなきゃならないんですか?それがわかりません。」

「それはな…それは…こういうことのためだ。」そう言って持ってない方の手にナイフを手にしていた。なぜ今ここでそんなものが必要になるとは考えもしなかった。


「何でそんな物騒なもの持ってるんですか?ここは危険な場所なんですか?」

僕は矢継ぎ早に質問したが、先生は何も喋ってはくれなかった。

でもね?一瞬だけこちらに振り返った顔は真っ青だった。

何でそんなに青い顔をしてるのか不思議でならなかった。


そしたらね?1人の教師がポツリと話し始めた。

ここはとても危険な場所だと。

何年か前にもこうやって何人かで入ったものがいたようだが、出てきたのは1人だけだったとか…。その人は発狂していたとか…。

なぜ発狂?

一体何があったんだ?

それが今回のことと何か関係があるのか?

疑問だらけだった。

もしかして目に見えないものがいるのか?

まさか…ね。

そうこうしているうちに建物の中心あたりにまでやってきた。

全員ついてきている。

と言っても10人だが。

皆手にいろんなものを持っていた。

僕は暗闇が怖いから懐中電灯だ。

他の人も各々いろんなものを手にしていた。

中には竹刀を手にしているものもいる。

綱が引っ張られ震えが伝わってきた。

僕は一番後ろにいるから何かあったらすぐわかる。

あかりを皆の足元に照らして進んで行った。

ゾクっとしたのはその時だ。

怖くなって綱を引っ張った。

すると引っ張られ感がなくなり綱がたるんでいく。

先頭の先生がやってくるのにそうも時間はかからなかった。

「どうしたの?何かあった?」

「何か黒いものが飛んでった気がして…。」


すると先生は緊張しだした。

ナイフを握り直しあたりを警戒する。





無音の中遠くで音がした気がした。

ガッシャーン!

何かが割れる音だ。

皆緊張して一斉に音がした方向へ走り始めた。

僕も最後尾にて後に続いた。


走った先にいたのは…もう1人の仲間だった。

全身が切り刻まれていた。

でも意識はあるようだ。

しきりに何か喋っている。

先生の1人が口元まで顔を近づけた時、大声で叫んだ。お前も呪われるぞって。

それだけ言うと仲間は意識をなくした。

出血はそうひどくなさそうだ。

両脇から抱えるように先生方が連れ出した。

あとは笑っていた仲間だけ。

どこだ?どこにいる?



辺りを探したが、仲間はいない。

あかりを照らしたが、人影は映らない。

その時真っ黒な何かが目の前を飛んできた気がした。ビックリしてその場に尻餅をついた僕の姿を見た先生達は手にしていた武器を握りしめ振り回し始めた。


「おい!どこにいる?どこだ?出てこい!!」


誰に対して言っているのかがわからなかった。緊張で手が震える。


「おい、お前もう帰れ。そんなんじゃ何かあった時対処できないだろ?」

「いえ、大丈夫です。ダチが行方不明なのにこんな所でジッとしてるなんて出来ません。」

震えながらも両手で懐中電灯の光を辺りに光らせた。

サッと何かが動いた気配がする。

追ってみようと思い、一緒にいたやつに声をかけたが、怖がってその場を動こうとしない。僕は見かねてそいつの武器を取り上げ、さっきの暗闇が動いた方へと歩きだした。

先生達の声を無視して。





突き当たりまで歩いて来たが途中何にも遭遇しなかった。少しだけホッとした。

でもまだ仲間の1人が行方不明のまま…。探さなきゃ。

ここはどこだ?

皆からだいぶ離れてしまったせいか何も声が聞こえない。

ぶるっと震えた。

何かが耳元で囁いた気がしたからだ。

振り返ると黒い塊が!

怖くて手にしている武器を振り回したが、届く範囲には入っては来ない。こちらが動くしかないのか。


「ワァーー!!」

叫びながら向かっていった。

黒い塊はその場から突然消えた。そして…遠くで叫び声が聞こえる。もしかして先生達のところに行ったのか?

慌てて元来た道を戻るが、さっきまでいたはずの場所には誰1人としていなかった。いた痕跡として懐中電灯が1つ転がっていた…。


怖い怖い怖い怖い。


何があったんだ?

なんで誰もいない?

みんなどこに行ったんだ?

どうしたらいいのかわからなくなってしまった僕は1人取り残されてしまった絶望を味わっていた。が、こうなったら1人ででもここから仲間を探し出し、抜け出すことを考えることにした。

さっきは二階を中心に探していなかったから一階を探す事に。掃除道具入れとかも隈なく探した。

すると…いた。

机の下にもぐりこむように座っていた。

ただ笑ってはいなかった。真っ青な顔をしている。


「おい、大丈夫か?俺だ!分かるか?」

その問いには首を縦に振ることで答えた。


「さっ、ここから逃げるぞ!」

「どう…やって?…ここには…あいつがいる。」

「アイツって?誰の事?」

「知らないの?アイツだよアイツ。黒いヤツだよ。アイツがいたらここから逃げられない。俺らここで死ぬんだよ…。」

「大丈夫だって。俺ここ2度目だし、ちゃんと出られたから。武器だってちゃんとここにある。」

「ホント…か?なら大丈夫だよな?他の奴らは?みんな無事か?アイツに捕まったら殺される。」

「……1人やられた。もう1人は先生達が連れてったから無事だと思う。だけど他にも数人助けに入った先生達が行方不明に。」

「そ、そんな…。」

「でもよ、もしかしたらもう先に外に出てるかもしれない。さっ、俺らも行こうぜ。」

仲間の手に懐中電灯を渡し、武器を握り直して出口めがけて歩きだした。

その間誰とも会うこともなく、ダチとも話しもしなかった。そんな状況じゃないことは互いにわかってはいたからだ。

そうこうしているうちに出口までたどり着いた。あとは出るだけだ。

ホッとため息をついたが、まだ出たわけではない為気を抜けない。

ドアに手をかけた。

ガチャリと音がしてドアが開く。

視界が眩しかった。

入り口には沢山の人達が立って明かりをつけていた。

その中にはぐるぐる包帯を巻かれた仲間の姿もあった。


「ヤッタァ〜。やっと出られる。」

仲間は走りだした。その時だ。

建物内から黒い塊がぬ〜っと出て仲間を捉えて引きずり込もうとする。

僕は武器を掴み直して黒い塊に向かって行った。

割り込むように武器を突っ込んだ。

すると黒い塊は諦めたかのようにサッと視界から消えた。

その場にいたもの達は皆呆然と突っ立っていた。

僕らはすぐに建物から離れた。

すると突然ギギギーッと音がしてドアが閉まった。


しーんと静まり返る中、僕は噂の事を先生に聞いてみることにした。

「先生、ここの噂って一体なんだったんですか?」

しばらく黙ってはいたが、ここまでおおごとになってしまったことで隠すことはできないと観念したようでポツポツと話し始めた。


「ここの噂はマジやばい。黒い塊の正体はわからないが悪霊の類ではないか?」という。

その後、お祓いをしてもらい封印の護符を貼って鎖で開かないようにした。


それ以降はたまにドアが開こうとしてガタガタと音がなるが開くことはない。


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