翌日
十話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
彼女は翌日にはすっかりと回復していて、階段に着くなり熱い突撃をかましてきた。
「ユキー!好きでーす!」
「離して」
「嫌です!ほら、昨日みたいな優しいユキ!もう一回!」
「しません」
引きずる形で階段を上っていく。
雪に女の子を擦り付けるのは中々にシュール。
…これでまた風邪を引かれたりしたらたまったもんじゃない。
「ユーキー!」
「離れたら考えなくもないような気もする」
「はいっ!離れました!」
バッと離れて、ビシッと敬礼。
速い、とても速い。
「…よろしい」
まぁ、そういうことなので、全力疾走で階段を駆け上がる。
冷たい空気が喉に入ってきて痛い。
「ユキ!ちょっと!?あの!?」
彼女自身はそれなりに運動が得意らしいのだが、それでも不意をついてしまえば、差を埋めることは出来る。
このまま一気にゴールまで…
と考えていると、唐突な浮遊感。
「ふべっ」
そして、冷たい何かと痛み。
……あ、転んだ。
「ユキ…昨日の夜、少しだけ雨が降っていたの忘れていませんでしたか…?氷、少しだけですが張ってますよ」
テンション高めで走っていたせいで、かなりの恥を晒してしまい、猛烈な恥ずかしさが襲ってくる。
彼女の声が心に突き刺さる。
「忘れて、あと助けて」
「…珍しいユキの失態ですので、この記憶は永久保存です」
「やめて」
「ついでに写真も撮っておきましょうか」
「やめてぇ…」
自然と出てくる辛そうな自分の声がより自分を苦しめる。
「倒れてないでそろそろ立ち上がりましょうよ」
「このまま俺は雪と一体化して生きていく…」
「それではこーまーりーまーす!」
腕を掴んでズルズルと引っ張られる。
先程と逆の状況が完成した。
「あぁ…」
「ユキはメンタルが脆すぎです」
「ぉぅふ……」
俺だって男の子。
女の子の前で弱い部分を見せてしまえば、心に傷が入る。
それに、いつもなるべく気を付けているからこういうのが突然起こると頭がもう回らなくなる。
…とりあえず、そろそろ顔が雪の冷たさでヤバイので彼女の顔を見ないように立ち上がる。
「痛かったですね、ユキ。
よしよし」
ふんわりと手が頭に乗せられ、まるで子供をあやすように撫でられる。
そのまま彼女の手はゆっくりと頬へと移動していき、唇が迫ってくる。
「おい」
「…毒リンゴはキスで治るんです。つまり、ただの痛みぐらいならキスをすれば、治るどころの話ではないと思いまして!」
「童話と現実は別、しかもお前が狙ってたのどう見ても口だったろ」
「何の事でしょうか?」
グイグイと来る彼女を抑えて、雪を踏んでいく。
…昨日と同じただの寒い日だというのに何故か違う日だと感じられる。
だが、今それを口に出すと面倒くさくなることは明白なので、心の何処かに閉まっておくこととする。




