表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ 世界の終わりと、復讐の始まり。


 ――――――殺す。


 少年は、目の前で焼け落ちる村を其の眼の奥に焼き付けて、強く思った


 紅蓮の炎は田畑を、家を、人を焼き、夜の下で轟轟と音を立てていた。


 かつては人々が祭を行っていた神社も、神を祀っていた鎮守の森も、半ば村の寄り合い所と化していた寺も、全てが目の前で炭と化していく。


 厳しくも優しかった父が、豪快でも気遣いの上手かった母が、幼く騒々しかった弟妹が、智慧深く寡黙な祖父母が、全て、灰となって黒い煙に混じっていく。



 そして、彼女も又、炎の中で息絶えていた。



 強く、気高く、美しく、何よりも嫌いで、大好きだった彼女が。


 同じ夢を抱き、いつか超えると決めた彼女が。



 ――――――――――――――弱い自分を守って、無残に奴らに斬り殺された。



 体中には刻まれた深い刀傷は、少年の体中から血と体力を奪っており、泥の中に沈んだ体は、最早、指一本と言えども動こうとしない。


 それでも、執念が、


 


 怒りが、






 悲しみが、






 憎しみが、






 ―――――――――――――少年の体を動かした。



 何の力も残っていない筈の体が、手が、最早痙攣としか見えない動きで震えながら掻き動き、夜の肉を毟る様にその手を伸ばした。





 そして。





―――――――――――――――力が、慾しいか?



 少年の伸ばした手の先には、丈の高い真っ黒の外套にその身を隠した一人の男が立ち、少年を見下ろしながらそう言った。


 不思議なことは、少年の目の前に立つ男は、口元を動かすことも無く、脳髄に直接言葉をねじ込むように少年に話しかけて来たのだった。


「欲しい。呉れ」


 だが少年は、そんな男に対して疑問をさしはさむことも無く、何の逡巡も躊躇もなく男のその質問に即答した。


 ―――――――――――――良いのか?力を得るには対価がいる。お主の望むだけの力の対価は、それ相応のものであるぞ?……お主には、その対価を差し出す覚悟あるのか?


「覚悟なんか知るか。対価なら、欲しい物だけ持っていけ。脚でも腕でも心臓でも。ただ、その代わりにあいつを殺させろ。あいつを殺して、仇を討つ!」


 男は、少年の返事に、一瞬だけ悲しそうに眉根を寄せたが、すぐにその表情を再び無感動なものに戻すと、少年の傷ついた右手の先に自信の右手を差し出して、言う。




 ―――――――――――――そうか。ならば、我が手を取れ。お主の望むだけの力をやろう。




 そして少年は、男の手を取った。

 



 少年の名は、立花・則光。後の剣聖にして、アクロ王を討伐せし勇者である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ