異世界転移? 暑さにやられて色々やらかす
勢いで書いたので読みにくいです。
台風一号が台湾に向かった影響で糞暑い七夕、週末は天気が悪そうだったのと、今日は仕事が休みということもあり不在者投票に出かけることにした。
シャワーを浴びて準備して、市役所まで自転車で約十分、投票を済ませるのに十分、帰りも十分。
帰ったら枝豆をつまみにビールを飲もう。
そんな予定で不在者投票を済ませた帰り道、気が付いたら自転車も無く、一面真っ白な変な所にいた。
急な展開に頭が追いつかずにキョロキョロしていると後ろから声がした。
振り向くとそこには二十歳くらいの綺麗な黒髪の女性、更にその背後には後光がさしている。
思わず手を合わせて祈りたくなったのも仕方が無いと思う。
何とか気を取り直して話を聞いてみると、その女性は自らを幾つかの世界を管理する神の一柱だと名乗った。
因みに名前は無いというか管理している世界で呼び名が違うらしい。
でだ、何で俺がこんな所にいるかを教えてくれた。
何でも、とある世界の人類が自らが管理しきれなかった魔力の暴走によって魔王を誕生させてしまい、世界が滅びかかっているそうな。
普通ならば自らの不手際で世界を滅ぼすことになるのだから放置一択がルールなのだが、何を血迷ったかこの世界の生き残った人類全てが神に祈りを捧げ、状況を打破する為の勇者を召喚しようとしたらしい。
更に困ったことにその世界の神がそれを受けてしまい、他の神が管理する世界から勇者足るべく者として選ばれて魔王を倒す強制契約されたのが俺らしい。
そこまで話すと名も知らぬ黒髪の神様はめっちゃ謝りだした。
この神様が悪いわけじゃ無いし、ここまで謝られると起こるに怒れん。
そもそも起こる対象じゃ無いし、この神様も被害者だよね?
半泣きで謝る神様を慰めるという貴重な経験をした後、神様が言うにはそのまま召喚されてもあっちの神様によって特別な力が備わるらしいが、希望があれば追加で力を貸してくれるらしい。
それならばと、幾つかお願いすることにした。
因みに、あっちの神様がくれる特別な力は、【言語理解】【(あっちの世界の)魔法の才能】【武術の才能】だそうで、魔王を倒すのに必要らしい。
そこでお願いしたのは一つ目は「向こうへ行って暫くは無敵状態にして欲しい」これは、最近のテンプレだと到着後いきなり奴隷化とかあるからって言ったら解ってくれた。
流石神様、話が早い。でも、神様の力をかなり使うらしく、無敵時間は向こうの時間で一日だけだそうだ。それでも有り難い。
二つ目は「魔王を倒し終わったらすぐに元の世界に帰して欲しい」これも変える手段を隠蔽するのはテンプレだからっておっけぃ貰った。
契約が終わった瞬間に元の世界の元の時間に戻してくれるって。
三つ目は定番の【インベントリ】。何でも時空間を扱う魔法は向こうには無いらしいが、比較的メジャーな特別な力とあって、問題ないとのこと。
但し、納められる量に制限は無いが、認識している非生物のみと、まぁ、良くあるテンプレと同じになった。出し入れは考えるだけで良いらしい。
他にも何か必要なものは無いかと神様と確認をしようとしたら、周りの真っ白な空間が歪み始めた。それと同時に気持ち悪くなってきた。
神様が言うには、俺と話すために召喚をインターセプトして色々と便宜をはかろうとしたが時間切れらしい。
最後まで申し訳なさそうな顔をする神様にお礼を言ったら、ちょっと驚いてた。悪いのは別の神様じゃん。
気持ち悪いのが治まって目を開けると、窓が見えない青白い石のような物で作られた広い部屋にいた。
ちょっと蒸し暑い。さっきまでいたとこは暑くなくて良かったのに。
気を取り直して周りを見ると、金属鎧を着て槍や剣を持った騎士っぽいのが数人と原色のローブを纏った魔法使いっぽいのが数人、残りは目が痛くなりそうなくらいギラギラした装飾品を沢山身に纏っている貴族っぽいのが十人近くいた。
この状況で誰に話し掛けようか、それとも誰か話し掛けてくるのを待つかちょっと迷ったら、正面にいる白いローブっぽいのを纏った爺さん(装飾品も沢山身につけていてテンプレ嫌みな神官っぽくて笑いそうになった)が「皇帝陛下と謁見する名誉を与える」とか何とか言うと、俺の左右に位置した騎士っぽいのが俺の腕を脇から抱え上げて引きずり出した。
いやいや、そんなことしなくても、足があるから歩くって。なにより、こっちの意向は全く無視か。悪い方のテンプレの予感しかしないよ。
広い部屋を出て連行されること五分ほど、これまたデカい扉の向こうに玉座に座った二十五歳くらいの目つきの悪いのが皇帝陛下らしい。
俺を中央まで連行すると左右の騎士っぽいのが揃って膝裏を押して無理矢理跪かせられ、有り難い言葉を。
話しが長かったから要約すると、「わざわざ召喚して謁見してやったんだから涙流して感謝して粉骨砕身で戦って魔王を早く倒せ」って事だ。
更に有り難いことに「お前みたいな平民を城に置くのは不快だからさっさと魔王を倒しに行け」と言うことを嫌みったらしく長々とのたまった後、襤褸い剣を持たされて城を追い出されたよ。
流石に剣を抜いたら不敬だって言われて碌なことにならないのは予想したから城を出てから人目の無いとこで剣を抜いたら、刃が欠けてやんの。
ここまで期待と敬意を表せられると、もうね、さっさと城と城下町から離れることにしたよ。
町を離れて、町の名前もこの世界のことも何も知らないことに気が付いたけどどうでもいいや。
この世界の連中は揃いも揃って拉致実行犯で、見た限りは礼儀も知らないから好きにさせて貰おう。
と、言うわけで町と人気から離れるようにしばらく歩いて、見渡す限りなにも無い草原の中の丘に座るとインベントリに色々と仕舞うことにした。
仕舞うのは足下に広がる大地、そして頬に触れる大気。
そうそう大地にも大気にも水分があるから忘れないようにしないと。
いやぁ~、凄いね、物凄い勢いで渦巻いて吸い込まれていくよ。
僅か一時間くらいで周囲には何も無し。
草や木や何かの人型の死体らしき物もインベントリに吸い込まれていったよ。途中でデカい城が吸い込まれていった時には笑ってしまった。
ここまで上手くいくとは思っても無かった。
でもね、まだ帰れない。
どうしたもんかと思っていたら、遠くから近寄ってくる巨人らしきのを発見。
何か、巨人らしき周りは空気も無いのに揺らめいてる。
もしかして、揺らめいてるのって魔力なのか? そうすると、あれが魔王?
試しに揺らめいてるのをインベントリに収納……成功した。巨人らしきのはどんどん小さくなって……消えた。
そうして、気が付いたら真っ白な所に戻ってきたよ。
さっき別れたばかりの神様がぽかんとした顔してる。
顔の前で手を振っても反応……した。
再起動した神様が凄い勢いで顔寄せて、「お主は」って言った後に笑いの三段活用で腹抱えて苦しそうにした後、親指を立てられてしまった。
勿論、こっちも親指立てて帰したけどね。
神様としても、こんなに早く片が付くとは思ってなかったらしくて呆気にとられていたんだって。
向こうの人達みんな死んじゃったことも、遅かれ早かれそうなる運命だし、召喚なんて言う拉致誘拐をしたんだから自業自得なんだそうな。
そもそも、魔王の発生が自業自得だけどさ。
今回のことでこの黒髪の神様の元で破壊神にならないかってリクルートされてしまった。
もっとも、今世が終わってからで良いそうなので、それならばと受けて置いた。
うん、来世は神様見習いになることが決まった。
帰ったら祝杯かな。
ついでに、神様と神様の時間感覚で時々話せるようにもなった。
そんな訳で短い大冒険を終えて元の世界に帰ることになった。
気が付くと、周りは白い世界じゃなくて、自転車乗って坂漕いでたよ。
家に着いて祝杯あげようとしたらビール冷やすの忘れてた。
締まらないなぁ。早速神様通信来て苦笑いされてるし。
いっか、今から冷やせば丁度、ツール・ド・フランスの第6ステージ見ながら飲めるや。
さて、ちょっと一寝入り。