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Ability's holders on the unregulated world(荒廃した世界の異能者たち)

30XX年・オーストラリア大陸


 俺は元々名前がなく、周囲からは「ホープ」と呼ばれている。勿論、ラストネームはない。ついでに言うと、両親の顔も見たことがない。俺は異能に目覚めたことがきっかけで、このご時世の中では、「富裕層」といわれる立場にある。俺は15歳ながら、小麦や米、肉や魚、野菜や果物を扱う、戦争以前でいう所の「食品会社」を営んでいる。今日もいつも通り、俺が率先して店先に向かった。所謂「社長」であるなら、本来ならこんなことしなくていいのだが、まだまだ弱小である故、俺がこの店の「看板」「顔」にならなくてはいけない。たまに戦争以前に「シドニー」と呼ばれていた場所に出向くのは、立派な宣伝活動の一環である。

 しかし、そんなことをした所で、本当の意味で「平和」にならないのはわかっている。というより、それは戦争以前の世界でも本当の意味での「平和」は欠片も存在しなかったためである。それは、「核戦争した」とかそういう以前の問題であったのである。元々「平和」でない世界で人々のフラストレーションが募って「核戦争」になったに過ぎないからだ。戦争以前の資料で、ノルウェー人の学者が「平和とは戦争の回避に過ぎない」と提唱していたことからもわかる。古今東西、人々は皆戦争の脅威に怯えながら生きていた、ということだ。

 詰まる話、俺も俺なりに何らかの「危険」に晒されているという訳だ。しかし、そんなことをいくら考えていても埒が明かないので、俺は俺なりに生きるしか術はないのだ。綺麗事だけでは済まないからだ。

 そんなことをふと考えて、店先に出たときに事件は起こった。


ホープ「いやぁ、皆おはよう。」


従業員A「また、泥棒だ!しかも女だぞ!」


従業員B「ありゃ、どう見たって尻尾だ。尻尾を伸ばして、オレンジを盗みやがった。」


ホープ「お前ら口動かす位なら、取り返して来いよ!」


従業員A「異能のない俺にどうすりゃいいんですか!」


従業員B「そうですよ。私たちは無力なのです。」


ホープ「了解。お前らの日当下げるわ。」


従業員A・B「(ガーン)」


ホープ「どうやら、俺がやるしかないようだな。」


 俺は植物の種を握ってその「尻尾の生えた女」を追いかけた。オーストラリアは元々砂漠地帯ばかりなので、風景の見分けがつかない。人一人探すのさえ困難だ。


ホープ「こんなことならオレンジの一つ位・・・いや、食べ物を粗末にするのは間違いだー!」


 俺はそれからも走り続けた。


ホープ「ぜーぜー、もう駄目だ。」


 俺は砂漠のど真ん中で両手と腰を地面に付けて座った。横に目をやると、少し遠くに地面に人工的な穴があった。誰かが水脈でも掘ろうとしたような感じだろう。しかし、現実は甘くなかったようだ。水が湧きあがってもいない。

 そう思いながら、俺が一服していると。

 ビシッ!と鞭のような物が俺の首を絞め付けた。


ホープ「うがっ!息が出来ねぇ!」


女「こんな荒れた世界だってのに、隙が多すぎじゃない。」


ホープ「お前はっ!」


 そこにはデカい女が立っていた。「デカい」と言ってもすらっとした長身である。服はこんな世界にしては良いものを着ている。そして、「伸びる尻尾」というのは、飾り物ではなく本物のようだ。


ホープ「お前は何をしようと・・・」


女「食糧を渡しなさい。大人しくすれば殺さないけど。」


ホープ「その尻尾・・・もしかして、それが異能か・・・」


女「ご名答。しかし、キミはそんなのなさそうね。」


 俺も息が限界だ。もうこのままこの女に殺されるかも知れない。


女「もうくたばるの?キミ随分軟弱ね。」


ホープ「軟弱・・・?アンタ、相手のことを伺う能力は低そうだな。」


女「?!」


 女の左脚に「何か」が巻き付き、そのまま女は後ろの方に引っ張られるように吹き飛び、同時に俺の首の尻尾も解けた。


女「これは・・・植物?」


ホープ「ご名答。因みにそれはアロエ。アロエは砂漠で育つから楽で良かった。」


 女はそれでも抵抗しようと、尻尾でまた俺の首を絞めようとした。そうさせまいと、その尻尾を俺は手で掴んだ。


女「うっ!そんな握られると・・・力が出ない・・・」


ホープ「そんなに握られると困るなら、初めから武器にしようとするなよ。」


女「あの植物はどうしたの?てかっ!尻尾から手を離せ!」


 俺は言われるように手を離した。


ホープ「全て俺の計算通りだったな、尻尾がナイーブってこと以外。」


女「何かその言葉、屈辱・・・。」


ホープ「俺、腰と両手を地べたに付けたとき、どうしてたと思う?」


女「まさか、植物・・・!」


ホープ「そう。予め地面に種を埋めておいた。いつでも、『成長』させられるように。」


女「貴方も異能使い?」


ホープ「ホント相手のことを伺うのが下手だなぁ。アンタ友達いるの?」


女「友達位いるって!」


ホープ「まぁ、後はあの穴。悪い奴ならああいうところで待ち伏せしてそうだと思ってさ。つか、本当に待ち伏せしないってんなら、オレンジ一個だけ態々盗んだりしなくて、店ごと襲うって。」


女「それは・・・」


ホープ「アンタ、どれだけ状況がマズくても、『暴力』に頼るのは良くない、って考えなんじゃないか?」


女「違う!」


ホープ「違わない。だって、暴力に頼ると必ず報復が待っているし、何も良い結果を生まない。アンタは泥棒だが、『良識人』だ。」


 女はしばらく黙り込んだ。


ホープ「アンタ、『食糧を奪って、仲間や友達に奉仕しよう』って考えてたんだろ?」


女「くっ・・・」


ホープ「残念だけど、戦争以前でいう所の『金銭』になるようなものがないと売るものも売れないよ。」


女「仕方ないね・・・」


ホープ「と、言いたい所だけど、込み入った事情がありそうだから、手伝えるなら手伝おうかと。」


女「何で!この時代他者を蹴落とさないとやっていけないのに。」


ホープ「いや、こんな時代だから、協力しないといけない。それは小規模でもいい。共同体や社会を再構築しないと、この腐敗した現状は腐敗したままだ。復興するには、ある程度人がまとまる必要があるわけだ。」


女「・・・」


ホープ「よし、アンタを手伝うよ。俺はホープだ。アンタ名前は?」


女「アイ。アイ・アマミヤ。」


ホープ「もしかして、その名前の響き、あんた旧日本の人間か?」


アイ「そうだよ。そこから逃げてきたんだ。そして今、私はある共同体をまとめるリーダーでね。でも、最近組織の中がまとまらなくなって、内ゲバなんかも横行している。その原因が食糧不足だと思ったんだ。」


ホープ「何でそう思ったんだ?」


アイ「うちの共同体は元々『資源』の生産が盛んなんだ。でも、資源はうちにはもう需要がないのかも知れない。」


ホープ「どうして?資源は特にこの時代とても貴重じゃないか。」


アイ「最近、資源だけあっても、それを扱えるエンジニアが枯渇していてね。物作りが全く発展しなくなった。それでいて、『もう物作りなんてくだらない』っていう派閥が現れたんだ。もうそっちの方が多数派で手を付けられないんだ。」


ホープ「ふむ・・・なるほどちょっと視察してみるよ。」


アイ「本当にありがとう。さっきの無礼を許して欲しい位だ。すまなかった。」


 俺はこのとき、アイの共同体でどういう状況になっているか、ある程度察しがついてしまった。恐らくそれはアイが悪いんでなく、アイの共同体に入った何者かが周囲に「物作りをすること、ひいては働くことを是としない」ように吹聴している何者か、しかもアイ以上の異能者の可能性がある。恐らくもうアイには手が付けられない状況だ。これは穏和なやり方は通用しないであろう。

 俺はそう思いつつ、アイに連れられて、その共同体に向かうこととした。

【主人公】ホープ(Hope)


能力:「ディスオナー・フォー・ザ・ライフ」 生物の成長を自在にコントロール出来るが、人間の成長をコントロールすることは出来ない。つまり、その生物を「異常成長」や「死滅」に追いやることさえ可能である。ホープ本人は、この能力を「俺のような人間の都合で生物をコントロールしている」とし、「生命に対する不名誉(Dishonor for the Life)」と命名している。

性別:男

年齢:15歳

身長:155cm

出身地:不明(便宜上「オーストラリア」)

その他:両親がいないためラストネームがなく、「ホープ」も本名ではないため実質あだ名に近い。現在は、15歳ながら食糧を扱う店を経営し、商品(食糧)は彼の能力を使って成長させているものである。


【登場人物1】アイ・アマミヤ(Ai Amamiya)


能力:「テイル・ウィップ」 尻尾を伸縮させる能力。割と長い距離まで伸ばすことができるが、それは尾てい骨から伸びる骨の関節を外して切り離しているに過ぎないため、当然限界があり、それが4m程である。最大値が長ければそれだけ戦闘においては有利になるため、通常時は2m程にしているが、それだけ社会生活において邪魔に感じることがあるが、彼女の工夫でカバーしている面もある。彼女は能力名を深く考えない性格か、「尻尾のムチ(Tail Whip)」としている。

性別:女

年齢:20歳

身長:177cm

出身地:日本(この時代の日本は他国の傀儡国家となり、主権を失っている)

その他:実質的なこの物語における「ヒロイン」。日本からの流れ者であり、その理由は経済的というより、政治的によるものである。現在、ある共同体を仕切っているリーダーであるが、統率が上手くできないでいる。

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