表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古き未来の兄妹夜話 ~彼女が願う魔晶石~  作者: 渚河ステラ
食卓に彼女はいつかやってくる::シィナ・チュートリアル
6/9

006::プロローグ05::マニュアルを読まない派

 ラスト・ファンタジア・オンラインRPG。

 通称LFO。

 ここ半年で急成長し大人気となったVRMMOゲームである。


 シィナは幼稚園の頃からの腐れ縁の幼馴染のユウトに、手に入れたばかりのLFOのレクチュアの約束を取り付けていた。



「待ち合わせまであと50分。お待たせしますた」


 シィナはもうVR世代では廃れているネット言葉を、語尾につけながらVR機器に向かって呟いた。

 これはデジタル浦島太郎なシィナのクセだ。

 実生活ではデジタル知識貧乏なシィナにとって、最新ガジェットは4世代以上昔のOSで起動しているノートパソコンのみ。

 そしてメインの接続先は、ネット初期に飛ぶ鳥を落とす勢いだったという、しかし現在は寂れた2Dコンテンツの匿名掲示板なのだから


 VRに接続する前に、自室の姿見鏡で自分の格好を確認する。

 白いジャージのままでも良いか、と思ったが初めてVRをユウトに教わった記念日として思い出に残したかったので、お気に入りの黒パジャマに着替えた。

 黒布のセーラー襟に白いレースが付いている、小柄な少女が着たらきっと可愛いデザインの服に袖を通す。

 下半身は生足。スカートやズボンを身に付けずに、パンツ一枚になった。

 VRはできるだけ布地が少ない状態で身に付けろと、寧音さんに言われたのを思い出したからだ。


「別に、ゲームが終わってからユウトがいきなりやってきて、とか考えているわけではないですよ。私のプレイに感動して、ユウトがこここっ告は……とか考えてません」



 ――まーだアンタ告ってないの?――


(くううう~~~~~~~っ、いやいやだってあの男には彼女が。でももしかしたら……)



 再び全身を紅潮させ始めたシィナは、ベッドの上に寝転がった。


 先ほどの姉との会話は忘れよう。

 いきなり、ゴムと初めては薄くてつける、でも生でしようなんて会話も含めて忘れよう。

 早くVRへログインしないと、ユウトとの待ち合わせに遅れる。

 それは避けたい。

 約束は守らなきゃ。それが例え彼女がいる男相手の約束であっても。


「むー、まずなんでしたっけ」


 VRアバター用のビットスキャンの用意はできている。

 ゲームの説明書は、一週間前に手に入れて、ひと通り読んだ。

 アバター作成の流れは寧音に聞いて、頭に入っている。

 クラスとジョブというのも、もう決めた。素早く、軽業ができるシーフというのにする。

 あとは……。


「寧音さんは絶対に説明書を読め、と言っていましたが」


 シィナの視界にチラリとVR用の、ブ厚いマニュアルが入ってきたが、昨日はペラペラとめくっただけだし、今日は読むどころか何も触ってさえいないのを思い出す。

 もっとも300ページ以上あるので、読む気がしない。


「フフフ……、私は元々マニュアルを読まないで機械を触る性格なのですよ」


 ただし、マニュアルを熟読しないと扱えない機械なんて、生まれてからまともに一人で触った事がない。

 シィナはおそらくこれが、初めてだ。


「ふむ、後でいいでしょう。時間ありませんし」


 シィナはマニュアルを、今日は読まないことに決めた。



 ベッドの上で従姉妹からもらった、猫耳に見える部品がついている、大きなスキーバイザーみたいなVR装置を、ヘルメットのように天頂からかぶって装着する。

 手と脚、胸とお腹には、同様にビットと呼ばれる子機VRを付けた。


(シャワーを使ったのはこの為でもあるんです。直接肌にVRをつけるからです。ええ、そういう事です)


 また姉との会話が脳裏で妄想になりそうだったので、シィナはかぶりを振ってそれを消し飛ばした。

 横になって楽な姿勢を取り、猫耳バイザーをつけたまま枕に頭を預ける。


「大丈夫、マニュアル読をまなくても、始めるくらいはできます。電源が猫耳の横にありましたね、これですか。えいっ」


 ポチ。反応なし。


「えい、えいっ」


 ポチ。ポチ。やはり反応なし。


「壊れてる? 動きませんね。いやコンセント入れてないからでしょうか、ファッハッハッハ」


 照れ隠しに一人自室で大声をだして笑う。

 100ボルトの差し込みが接続されている事をしっかりと確認してから、一回深く深呼吸をした。

 

「よし、今度は大丈夫です」

 

 期待を胸に猫耳形のVRを起動し、シィナは仮想現実への第一歩を踏み出した。


本日短め

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ