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お師匠さま

作者: 冬の月

 ぱたぱたぱた……


 辺りに響いてしまうのは、お師匠さまから今日のお勉強がおわったら部屋に来るようにとのことだったので、真っ白な石の、広くて長い廊下を走っているからなの。


 途中で何人かの方たちとすれ違ったのだけど、お師匠さまが呼んでるの、と説明したら、何かご存じなのか、ああ、なるほど。いっておいで、と楽しそうに皆さんがいうの。


 何かしら?と不思議におもったのだけれど、なんとなく、きっといい事のような気がしてしまうから、どきどきしてしまってつい走ってしまったの。


―そのように慌てていてはころんでしまうぞ?―


 そっと、少し後ろを飛んでいるシロに注意されてしまったわ。

シロはここに来る前にであった古代竜なの。

 けがをしていたところを助けたら、仲良しになりたいといって契約というのをしてくれたの。もっと長くて素敵な名前があるのだけど、呼びやすいようにつけてほしいというから、ちょっと名前を短くして、シロって呼んでいるの。


 ちょうど息をするのを苦しくなってきたし、シロの言うとおり怪我をしてはいけないから走るのはあきらめたわ。

 でも少しだけ早歩きはするの。だって早くお師匠さまに会いたいんだもの。

 シロも仕方のない主だ、と言って笑ってくれるし、きっと大丈夫よね。


 あ、シロって呼んでいるけれど、見た目は真っ黒のからだで、つやつや。でも瞳は真っ赤で、まるで本で読んだ宝石みたいにきれいなの。真っ黒なのは私の髪の毛とお揃いね、と言ったらころころって笑ってくれたのは本当にかわいらしかったわ。


 今は動きやすいから、と私の両手くらいの大きさになって、いつもそばにいてくれているけれど、本当の姿はとってもとっても大きくて、私なんて一口で食べられてしまうくらい!

 でも、竜は人間を食べるのは好きではないし、私は主だから、絶対に食べないって言ってたから怖くはないわ。



 お師匠さまや他の方たちは、はじめは一緒に連れて行くのを反対していたけれど、シロが私の命令なら何でもきく、と説得してくれてお師匠さまのお許しがもらえたの。

 そういえば、一緒にくるのがうれしそうだったからいいのだけれど、シロは私の大事なお友達だから命令なんてしないのに。そういったらシロったら急に大きな声で鳴いてしまって、みんなでびっくりして大変だったわね。


 そうそう、ここというのはサンセベリアという島国にある、魔術師協会というところなの。

私の住んでいたレピスという国からずっと離れたところよ。

 みんなは、協会と呼んでいるそうなのだけど、この協会でお仕事をすることは世界中の魔術師の憧れなんですって。


 難しいことはまだわからないけれど、私のお師匠さまは協会の人なの。補佐という、お師匠さまのお手伝いをされているヤンさんに教えてもらったのは、お師匠さまは協会の中でも偉い人なんですって。十に分かれているお仕事のひとつの長をされているそうなの。


 私がこうしてここにいるのも、お師匠さまがその協会のお仕事でレピスにいらしたおかげなのよ。


 ……私の故郷は魔術師というのは嫌われていて、私は生まれた時から魔力がたくさんあったからお屋敷から出ないでいたの。

 お父さまが沢山の魔力を減らす道具で隠してくださったのだけど、私の魔力がもっと沢山になってしまって。

 そのあとは、少し辛いことがいっぱいだったからやめておくけれど、もうどうしたらいいのかわからない、という時に、お師匠さまに助けていただいたの。そうしてそのままお師匠さま付きの見習い協会員、というのにしていただいて、サンセベリアに来ることになったの。

 お師匠さまがおっしゃるには、魔力が沢山だからきちんとした使い方を学ばないと危ないのですって。ずっとぎゅうって閉じ込めてばかりだったからお師匠さまがきちんとしたコントロールを教えてくださることになったの。


 お父さまやお兄さまたちと離れてしまうのはさみしかったけれど、きっといつかお会いできると思えば、悲しくはなかったわ。だって、私のせいでいつもみんなを辛い気持ちにしてしまっていたことのほうがずっと悲しかったから。


 だから今はとても幸せよ。

 いろんなことを勉強して、いろんな人に出会って、シロやお師匠さまがそばにいてくれて。

 わたしにも居場所があるんだって言われているようでとても嬉しいの。

 ……まだ初めてお会いする方にはちょっとびっくりしてしまうこともあるけれど、お師匠さまがゆっくり頑張りましょうね、とおっしゃるから、がんばっているわ。



 お師匠さまのお部屋はまーっすぐ長い廊下の突き当たりをまがって、ぐるぐるした階段を上ったら、図書室の前を通って、天空の廊下という、天井が星空のようにきらきらする魔術がかけられている、私とお師匠さまのお気に入りの場所を進んだところにあるの。


 天空の廊下はいつもきれいでついつい見上げてしまうけれど、今日は少しだけにして、まっすぐお師匠さまのところに行かなくっちゃ。



「お師匠さまのご用って何かしら!」

―さて、なんであろうな?―

「ん?シロ、何か知っているの?」

―わしも詳しくは知らぬ。ただ、―

「ただ?」

―なんとなく、よい事のような気がするのであろう?―

「うん!」

―主の感は鋭いからのう―

「かん?」

―独り言よ。ほれ、見えてきたぞ、あとは本人に聞こうではないか―

「はーい」


かんというのがよくわからないけれど、なんだかシロも楽しそうだからきっといい事な気がするわ。



 よし、と深呼吸をして、扉をたたくの。

 コンコンコン……

「お師匠さま、セシルが参りました」


 そうするといつもお師匠さまが扉を開けてくれてこういってくれるの

「お入りなさい」

って。



ご覧いただいたかた、本当にありがとうございます。

以前シリアスに書こうとしてやめた内容だったので、機会があれば挑戦します…。

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