0099・魔物狩りへ
Side:バステト
私達は村を出て、現在は魔物を探して歩いている。
あまり村の近くには居ないみたいだけど、これは村の開拓者が魔物を狩っているからかしら?
魔物だってバカじゃないし、あそこに近付いたら危険だって分かってるんでしょうね。
そういう意味では村の近くは安全だと言えるし、良い意味で魔物が近付いてこないのだと思う。
悪い意味で近付いて来ないというのは、虎視眈々と付け狙ってるって事だけど、そういう風には見えなかったわ。
平和な感じがしたし、猫の里とは随分違う感じだった。
やはり数が多いと守りやすいのでしょうし、良い意味で団結すると守れるのだという事がハッキリと分かるわ。
猫と犬の町みたいに失敗しているようには見えなかったしね。
『前方300メートルほど先に魔物が居ます。ただし地面の下なので、モグラ系やネズミ系の可能性が高そうです。もしかしたらウサギ系かもしれませんが』
「とにかく地面の下を探ってみるか。300メートル先を探る事は………出来たな。確かに何か居る」
『私も分かったわ、それでもギリギリだったけどね。それはともかく、どうやって獲るの? 地面の下だと奥の方に逃げられたら追いかけるのは無理じゃない?』
『【魔術】を使えば倒すこと自体は容易いのですが、その後に取り出せるかといえば難しい可能性がありますね。となると、巣穴の奥の方の温度を上げますか? そうすれば耐えられなくなって出てくるでしょう』
『容赦ないわねえ。まあ、自分から出てくるように仕向けなきゃいけないんだから、そういう方法もアリだとは思うけどさー。本当に容赦が無いと思うわ』
「まあ、いいじゃないか。無駄に殺すぐらいなら、誘き出して始末した方がいい。それにどれぐらいで売れるかも分からないから、まずは狩って持って帰るしかないしな」
イシスがそう言った辺りで、私達は穴の上に到着した。
中の魔物は出てくる気が無いらしく、穴の奥に居るままみたい。
寝ているのか、それとも私達に気付いているのか……。
仮に気付いているとしたら、何故出てこないのかは謎なのよね。
魔物って割と好戦的な筈なんだけど、この巣穴のヤツは違うのかしら?
「まずは俺がやってみる。駄目ならヌンに頼むから、準備はしておいてくれ」
『ええ。分かりました』
イシスは薙刀を持って刃を下にし、巣穴の上で刃を待機させる。
出てきたらいつでも刺せるようにしているみたい。
そして【魔術】を使い、穴の奥を熱し始めた。
私は魔力を放射して調べていたんだけど、中の魔物はすぐに異変に気付いたのか慌てて出てきた。
そして出てきた瞬間にイシスに突き刺され、それでもシタバタと暴れ始める。
「うぉっ! 思ってるよりも力が強いな。ネズミの一種だろうけど体がデカイぞ、バステトと変わらないぐらいにある。普通の猫と同じっていうのも凄いな」
『なかなかに大きなネズミね。それなりに食い応えはありそうだけど、今はネズミなんて食べる気もしないから、どうでもいいわ』
『あの村なら食べるんじゃないですか? どのような星でも文明度が低いうちは、ネズミ肉は食料になる筈です。農耕はともかく牧畜をしているかは分かりませんので、可能性としては有ると思いますよ』
「ネズミ肉なぁ……、俺はパスだわ。適当に食料を持っているから断っとこう。いや、宿に泊まる際に食事抜きにした方がいいか? なるべく節約してお金を貯めたいと言えば、言い訳にはなるだろ」
『確かになるでしょうが、あまり良い客だとは思われないかもしれませんよ? 向こうが食事をつけるかどうか聞いて来た時に話すべきでしょう』
「先に断りを入れると、確かに反感を買うかもしれないな。仕方ない、ネズミ肉が出てきたら我慢するか。食いたくないんだがなぁ……病気とか怖いし」
『天然だと、どんな病気の元を持っているか分かりませんからね。とはいえ村人が普段から食べているなら、病気になる可能性は低いと思いますよ』
『そういう意味でも諦めるしか無いんじゃない? 食べた後で<生物修復装置>に入ったら?』
「そうだな。そうするしかないか……」
ネズミの暴れる力が弱まってきたみたいだけど、なかなかにしぶといわねえ。
予想以上に暴れたけれど、流石に首元を突き刺されてたら逃げられないからか諦めたみたい。
イシスはそれでも突き刺したまま、まだ抜こうとはしていないわね。
まだ暴れる可能性があるって事なのか、それとも確実に死ぬまで刺しておくのか。
「そろそろ死んだか? 死んだフリをする魔物も居るからな、流石に油断したりはしないぞ。頭を潰せばこんな事をする必要も無いんだが、それをすると刃が欠けそうでちょっと抵抗がある」
『そういえばかつて刃が欠けた事がありましたね。その後は強化するようになったからか、それは無いようですが……。先程は強化していませんでしたが、何か理由でも?』
「簡単に言えば、素の切れ味でどうなるか知りたかっただけだ。オーガの角製の薙刀は使うのが初めてなんだよ、そのうえ別の星だしさ。だから確かめたんだ」
『二重の意味で確かめた訳ですか。まあ、星が変わっている以上は、どれほどの魔物か確かめておく必要がありますね。そこまで変わるとは思えませんが、それでも効く効かないはありそうですし』
「そうそう。今まで使ってた物が、次の星のヤツには全く効かないなんて可能性も無いとは言い切れないしな。重力とかが違うと、色々と変わってきそうだし」
そんな話をしながら薙刀を抜き、ネズミを引っ張り上げて確認するイシス。
完全に死んでいるのでピクリともしないのを確認したら、イシスは死体に対して【魔術】を使い始めた。
何をするのかと思ったら、ネズミの死体から血が大量に噴き出してくる。
どうやらイシスが【魔術】で血を操っているらしい。
いったい何の意味があるのかしらね?
「獲物は素早く血抜きをするのと内臓を抜く、そして川などに浸けて死体を冷やす……だったかな。そうすると獲物の肉は悪くなり難くなるんだ。そう、どっかの漫画で読んだ事がある」
『マンガ、ねえ……』
『内臓や血の温度で腐りやすくなるというのは事実ですよ。それに内臓には腸が含まれますし、アレの中には糞が入ってますしね。時間が経つと雑菌やバイ菌の温床ですから、早めに捨てておくに限ります』
『ふーん……』
よく分からないけど、そうやっておいた方が良いなら否は無いわ。
美味しいお肉になるのなら尚更ね。
イシスは血を抜いた後でネズミの腹を裂き、慎重に内臓類を出していた。
適当にやって腸が破けたら、肉が糞塗れになるみたい。
それは慎重にもするでしょうよ、糞塗れの肉なんて食べられないじゃない。
猫の里の戦士達は狩った獲物をどうしていたのかしら?
今さらになって恐くなってきたわね。
そんな事を考えていると、ネズミの死体をアイテムバッグに入れたイシスが話し掛けてきた。
「どうしたんだ、バステト? 何だか妙に考え込んでいるみたいだが……」
『かつての猫の里ではどうしていたのか、今さらながらに心配になってきたのよ。もしかして、そんな汚い肉を食べてきたんじゃないかってね』
『それは殆ど無いと思いますよ? 獲れた獲物の内臓はすぐに食べるのが自然な事です。ですので腸などは狩りをしていた者達が食べていたのだと思いますよ』
『それはそれで微妙な話ねえ。彼らが腸を食べていたって事は、つまり……』
「中の糞も食らってた可能性が高いな。自然ではよくある事っていうか、ウサギだって食糞行動っていうのをするぞ? 自分の糞を食うらしい」
『ウゲッ!? 何でそんな事をすんのよ!』
「確か、消化し切れていない物をもう一度食う事で消化し切る為じゃなかったかな? 俺も詳しくは覚えていないが」
理由があったとしても、自分の糞を食べるなんて理解できないわ。
あり得ないでしょ!




