0095・イシスの報酬とバステトの報酬
Side:イシス
俺が少し感傷的になっていると、ヌンが声を掛けてきた。
何故かゴーレムは同じ部屋に居るままだが、声を掛けてきたのはヌンの本体だ。
「イシス。バステトにだけではなく、貴方にも報酬が来ていますよ。正確には報酬が来ているというより、施設の機能が解除された形ですね。これで<作物収穫室>が使えます」
「<作物収穫室>?」
「ええ。その名の通り、作物などを育てられる部屋です。ここは水が無限にありますからね、それを活かして栽培する事が可能なのですよ。ただし肥料が続く限り、ですが……」
「ああ、水耕栽培みたいなものか。で、育てる為の肥料が必要だと。ま、当たり前の事だが、とりあえずその<作物収穫室>を作ってみるか」
その結果、<時空の狭間>をこのように変える事になった。
―――――――――――――――
F
□G
D□E
□ C C
B□□□□□
□ C C
A
□:通路
A:魔法陣
B:訓練場
C:ベッドのある個室
D:生物修復装置
E:物品作製装置
F:寝室
G:作物収穫室
―――――――――――――――
収穫した作物はどうせすぐに<物品作製装置>に入れるんだし、なら近い方がいいよな?
となった結果、こういう配置に変更する事に。
特に変わっていなくて、単に寝室の前に通路を追加したのと、その途中に<作物収穫室>を作っただけである。
あまり大きく模様替えした結果、分からなくなっても困るのでこれでいい。
俺は早速<作物収穫室>へと行ったが、そこには水の流れている水路と、そこに白い不思議な材質の物が浮いていた。
水の流れでどうにかなる事も無く、自然に浮いているようにも見える。
「その浮いている白い物質に種を乗せると、後は自動で発芽から成長までさせてくれます。ただしその部屋の角にある肥料ボックスに肥料を入れないと、育つ事は無く枯れてしまいますけどね」
「成る程。つまり肥料が補充され続ければ、半永久的に作物を育て続ける事が出来るんだな。ちなみにだが、木を育てる事は可能なのか? 果実などを手に入れたい場合だが……」
「はい、大丈夫です。場所はとりますが、木々を育てる事も伐って回収する事も可能です。イシスも様々な物を採ってきているのですから、<物品作製装置>を確認してみては? 種があるかもしれませんよ?」
「そうだな。何がしかの育てられる作物の種があるかもしれない」
俺は<物品作製装置>の部屋に行き、パネルから起動。
ウィンドウを眺めて調べていくも、それより気になる物を複数発見した。
「<魔力増強薬Ⅱ>と出てるんだが、これ当たり前だけど、前回のヤツより優秀な物だよな?」
「そうですね。当然、今まで飲んできた物より効果の高い物です。これからはそれを飲んで魔力量を増やしていくしかありませんね」
「やっぱりか。一本しか作れないから、俺かバステトか悩むな……。ま、それは後にして、ちょっと本格的に色々と作っておこう。何といってもオーガの素材が使えるようになってるしな」
二足歩行で人型の魔物とはいえ、魔物は魔物。
使えるなら当然のように素材は使う。
まずはゴブリンの牙とオークの牙とオーガの牙や角で棒を作製。
それに魔力を流してみたが、やはり強化具合はオーガの物が一番優秀だった。
これは予想通りだ。
なのでオーガの角で薙刀の刃や短刀の刃を作製。
ついでに投擲用のナイフはオーガの牙で作る。
そしてオーガの皮で革鎧に指貫グローブに剣帯にブーツを作製。
それぞれを交換する。
要らなくなった物は箱の中に放り込み、ジャケットとズボンもオーガ皮で作ると在庫がかなり減ったので自重。
とはいえ今のところはこれ以上オーガの皮で作る物は無い。
<魔操の指環>を外して箱の中に入れ、<エンシア銅>で作り直す。
こう……、あれだな。装備が変わるとテンションが上がるのは何故だろうか?
ちょっと気分が高揚している。
とはいえ戦闘をしに惑星に行く気は無いし、訓練をする気も無い。
大人しくウィンドウの確認をしよう。
種を探していると<植物用栄養剤>を発見。
これが肥料で間違い無いとヌンからもお墨付きを貰ったので、木箱の中を指定して作製。
すると1メートル四方の木箱になみなみと入った状態で出てきた。
流石にアイテムバッグに回収して、それから今度こそ種を探し始める。
すると幾つかの種を発見したが、その中でも薬に使える花は栄養剤にも使える事が判明。
それを育てる事にした。
ちなみに薬としての効果は毒消し。
ただしファンタジーに出てくるような、飲んだ瞬間効く毒消しではなく、体外に排出するのを促進するタイプの毒消しだった。
効果としては正しく毒消しなので問題は無く、十分に使える薬だというのが分かる。
この花は<フィルティア>と言うらしいので、これの種を幾つか持って<作物収穫室>へと向かう。
まずは肥料箱に木箱の中の<植物用栄養剤>を放り込み、その後に浮かんでいる白い物質の上に種を乗せていく。
一定の間隔を開けて乗せると、後は放置しておくだけなんだそうだ。
俺が他に出来る事も無く、なので寝室に移動して寝る事にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「イシス、起きて下さい。バステトが目を覚ましたので、そろそろ起きて下さい」
「ん………ふぁ~あ! ふぅ……。バステトへの報酬を渡し終わったって事か。長い時間が掛かったような気がするが、何があったんだろうな?」
そう言いつつ<生物修復装置>に行くと、そこには茶色というより褐色になったバステトが居た。
何故か毛の色が変わっているが、これはもしかしてバステト神に近付いたという事だろうか?
俺は「開け」と言い<生物修復装置>の蓋を開けると、中からバステトが出てきた。
が、何やら微妙な表情をしている。
「どうしたんだ、バステト? 何だか微妙な表情をしているが……」
『報酬として得たものがあるんだけど、それを理解して微妙な気分になっているのよ』
「微妙?」
俺がそう聞き返すと、バステトは溜息を付いた後に目を瞑った。
何かに集中しているようだが、何をしているんだろう? そう思った矢先、バステトが光ると徐々に大きくなっていく。
そして、身長170センチぐらいの二本足で立つ人型の猫になった。
人型だが完全に猫なので、胸も何もかもが毛で隠れているからか何とも思わないな。
「二本足で立てるようになったのが報酬なのか? いや、獣人になれるようになったのが報酬か。何とも不思議な報酬だが、おかしくはないし微妙でもないような?」
『コレだけじゃないのよ……』
その状態で今度は光輝くと、そこには猫の頭部を持つ女性が居た。
っていうか、裸じゃないか!!
俺は慌てて後ろを向き、バステトの裸体を見ないようにする。
体系はスレンダーで、足が長かったな。
一瞬ではあったが見えたのは仕方ない。コレは事故だ。
「人間のようになるならそう言ってくれ。流石にマナーとして、女性の裸を見たりはしない」
「あーー、あーー………ゴホンッ! ごめんなさい。とはいえ何故か顔は元のままなのに、人間の言葉が喋れるわね? いったいどういう事かしら?」
「現在の人間に近い状態では口の中や舌などの構造が人間に似ているからでしょうね。おそらく猫状態か獣人状態では喋る事は無理で、そのバステト状態なら喋る事が可能なのだと思います」
「バステト状態………って、まあそうか。猫の頭部を持ち、それ以外は人間の女性の姿なのが女神バステトの一形態だしなぁ。そう考えると、バステト状態で間違って無いのか。とにかく猫の姿に戻ってくれるか?」
「分かったわ」
背後が「ピカッ」と光輝いたと思ったら、バステトは猫の姿に戻っていた。
どうやら大きくなる時は時間が掛かるが、小さく戻る時はすぐらしい。
不思議なものだと思うが、そんなものなのだろう。
『とりあえず猫の姿が一番楽だけど、食事をするのは獣人状態かバステト状態が楽そうね。それより私の報酬は終わったから、そろそろゴブリンの山に行きましょう』
あっ、そうだ。
バステトは全部終わった事を知らなかったんだったな。




