0094・研究室の発見と資料
Side:イシス
オーガの塒を強襲し、ここで殲滅する。
卑怯? そんな言葉は知りませんなぁ。
そう言わんばかりに襲うのだが、こればっかりは弱肉強食。
黙って受け入れてもらおう。
俺とヌンは静かになるべく音を立てずに侵入するが、俺は【ライト】が無ければ見えないので後ろの方をついていくしかない。
流石に光が顔に当たれば、オーガが起きる可能性が高いし。
なので俺はヌンの後ろを進んでいるんだが、ヌンからストップの合図が来た。
『イシス。この先にオーガが寝ていますので、これ以上は来ないで下さい。私は暗闇のままでも問題ないので、このまま【魔術】を使って殺します』
『了解だ。俺は逃げる奴が出ないように、ここで見張っている。まあ、ヌンが逃がすとは思えないがな』
『ええ、なるべく後ろに行かせないようにしますが、もしもの時はお願いします。では、襲撃開始』
俺は曲がり角の向こうに行くヌンを見送りながら、いつでも【ヒートバレット】を撃てるように構えておく。
それと、【魔術】が効きづらいかもしれないので、右手に短刀も握っておこう。
いつ来ても問題ないという風に構えていたら、「ドスッ」という音が幾つか重なって鳴った。
おそらくだがヌンが【魔術】を同時発動したんだろう。
ただし五つか六つ同時に鳴ったように聞こえたので、結構な数の同時発動だったのだと思う。
流石はヌンと言うべきなのかもしれない。
俺は今のところ三つか四つが限度であり、それ以上は無理だ。
五つや六つになれば途端に制御が曖昧になり、【魔術】が形にならずに崩れ去る。
同時発動っていうのは即ち同時制御な訳で、そう簡単な技術じゃないんだよな。
………こっちに来る奴は居ないっぽいし、既に殲滅が終わったんじゃないか?
何か音も聞こえなくなったし……。
『イシス、こちらに来て下さい。オーガを全て殲滅しました』
『了解だ』
俺は【ライト】で照らしながら進んで行き、曲がり角を曲がると、そこには寝ているようにして死んでいるオーガが沢山居た。
中には子供のオーガも見えるが、その数は少ない。
『全員が死んでるって事は、声を出しても問題なさそうか?』
『大丈夫です。他には魔力を持つ者を確認は出来ていません。普通の生命体は居るでしょうが、それは気にする必要の無い者でしかありません』
「そうか。青いオーガが知恵のある者が殆ど生まれなくなったと言っていたが、見た感じ、あの青いオーガしか居なかったんじゃないか? 知恵というか理性のある者は」
『どうなのでしょう? 一気に奇襲して殲滅しましたからね。詳しいところはサッパリです。とはいえ、これで改造されたゴブリンもオーガも居なくなったでしょう』
「まあ、そうだな。……<ムンガ>を始め、過去の小国は碌な事をしていないとしか思えない。ここまでやっていると、最早やりたくてやっていたとしか思えないし、小国とはそういう国だったんだろう」
『危険な研究をする者は何処にでも居ますが、国家予算が使われているなら国が承認したという事ですからね。そういう国と言っても間違いではありません。さて、死体の回収をお願いします』
「了解」
俺はオーガの死体を全てアイテムバッグに回収していくが、オーガは全て額を撃ち抜かれて死んでいた。
血が出ていないところを見るに、おそらく使ったのは【ヒートバレット】だろう。
しかも頭の中に残って火傷を作り出すようにして撃ち込んでいる。
威力が高いと貫くし、低いと弾かれる。
結構難しい筈なんだが、綺麗に中に留まったみたいだな。
この事から察するに、当たり前だけどヌンの技術は相当に上だ。
まあ、分かっていた事ではあるんだけどな。
アイテムバッグに全て回収したら、ヌンと共に奥へと進んで行く。
実はオーガ達が寝床にしていた場所よりも更に先があったんだ。
オーガ達は入り口に近い広間を寝床にしていたらしい。
俺達が更に進んで行くと、その奥には金属製の扉があった。
それもかなり重厚な物で、表面にはオーガが付けたのか傷が大量にある。
おそらく何度も開けようとしたのだろう。
<時空の狭間>に帰って<魔柔鉛>をと思っていたら、ヌンが金属の扉の周りの土を崩し、金属扉そのものを外してしまった。
『イシス、この扉の回収もお願いします。出来るだけ早くして下さい、倒れてくるかもしれませんので』
「わ、分かった」
俺はアイテムバッグを外しつつ進み、ヌンが外した金属扉を回収。
中が見えるようになると、そこには大きな円筒形の透明な筒があった。
『何かの培養装置なのか、それともアレでゴブリンやオーガを改造していたのでしょうね。壁の方には机と椅子がありますし、机の上には書類もあります。イシスはそちらの回収を』
「ああ、それは分かってるが、ヌンはその装置か?」
『ええ。外して回収できるようにしておきます』
俺は椅子や机などを全て回収していくが、書類のような物は慎重に収納した。
それらを済ませていると、ヌンの方も終わったみたいなので回収。
これで全てが終わった。
「これで本当に全てが終わったな。この惑星でする事はもう無い」
『では戻りますか? それともまだ回収しますか?』
「そうだな。草花は回収したいんで、外に出て回収してから戻ろう。……それにしても、本当に終わったんだなー。何だか気が抜けた感じだ。いきなり指令の終了を言い渡されたし」
『そんなものですよ。歴代の<時空の旅人>も「気付いたら終わっていた」と言っていましたし、中には「消化不良で納得がいかない」と言っていた者も居ます』
「あー、やっぱり。綺麗に終わらないから、イマイチ納得できないんだよなぁ。気持ちはよく分かる」
俺とヌンは適当な会話をしつつ外に戻ると、今度は山に生えている草花をどんどんと採っていく。
栄養剤の材料は幾らあっても困らないので、俺達は朝日が出るまで回収し続けた。
朝日が昇っていく光景を見ていると、俺の納得など無関係に時が過ぎていくのがよく分かる。
そもそも終わったとアナウンスされただけマシかと思い、納得できない部分は放り投げる事にした。
草花も出来るだけ入手しておきたいのだが、だからといって集め始めると止まらなくなってしまう。
なので仕方なく今はこれで諦める事にした。
どうせこの惑星にはいつでも来れるのだし、また採りにくればいい。
俺とヌンは<時空の狭間>に戻る事にし、目の前の空間の歪みに身を任せた。
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<時空の狭間>に戻ったものの、当たり前だがバステトはまだ寝ている。
なので<物品作製装置>の部屋に行き、回収してきた物を全て箱に入れ、まずはあそこにあった書類を作製する。
俺はそれを椅子に座って読み始めるが、中身はゴブリンとオーガを遺伝子改造したというものだった。
それによって知性が飛躍的に高まったと記されているが、その結果が叛乱なんだよなと呆れてしまう。
少なくともゴブリン達は人間を殺してあの地を乗っ取った訳だし、おそらくあそこは知恵のあるゴブリン達を観察する場所だったのだろう。
石垣などがあったのは古い施設を流用したからと考えれば分かる。
小国は本当に碌な事をしないが、結果として自分達の首を絞める事に終始しただけだ。
<溺れる者は藁をも掴む>と言うが、藁を掴んだところで助かる事は無いんだよ。
それが如実に現れた結果か。
何と言うか、バカがバカな事をやって人類を道連れにしただけって感じ。
いや、やった事の結果の規模はとんでもなく大きいのだが、やった事そのものは小さいんだよ。
起きた結果から考えると、起点となった事の規模が小さすぎる。
それが人類滅亡まで行くのかという思いがしてきて、読んでると「何だかなぁ」という感情しか湧いてこない。
これは<ムンガ>とは関係ないが、末期の足掻きとしては同じものだ。
<ムンガ>もGも知恵のあるゴブリンやオーガも、どれも人類が滅亡していても不思議じゃない。
その中で、たまたま<ムンガ>が滅亡させただけ。
そういう風にしか思えないんだ。
それぐらいしなきゃ逆転できない相手だったのかね? 大国とやらは。
リアクションありがとうございます




