0093・ゴーレムとオーガの山
Side:イシス
ゴーレムを作製すると、出てきたのは身長150センチ程の木製の球体関節人形だった。
形としては、球体関節人形そのもののような感じで、特に可も無く不可も無い感じだ。
頭部もツルツルなので、どっちを向いているか分からないが、球体関節人形はこんなものだろう。
床に倒れたままなのだが、どうやって使えばいいんだ?
「イシス。まずはゴーレムに魔力を流して起動して下さい。最初に魔力を流した者がマスター登録されます。以降は変えられませんので、まずはイシスが流さなければいけません」
「了解。流すのは胸の<ゴーレムコア>だな?」
「ええ」
俺はヌンの言う通りゴーレムに自分の魔力を流す。
胴体の中にある<ゴーレムコア>に俺の魔力が届いたんだろう、心なしかゴーレムが起動したような感じがした。
しかしそれだけで、ゴーレムには何の動きも無い。
「魔力を流したんだが……特に動きが無いな? 本当にこれでいいのか?」
「きちんと起動しています。そもそも今のゴーレムは起動しただけであり、人間で言えば赤ん坊と変わりありません。そこから様々な事を教えていかなければいけないのです」
「言葉は悪いが、ゴーレムって面倒臭いんだな。そもそも立ち上がるとか歩くって、どうやって教えればいいんだ? 俺には教え方が分からないんだが……」
「目の前で歩き方を見せたり、立ち上がり方を見せたりを繰り返すのですが、ここには私が居ますからね。さっさと教えていきますよ」
ヌンがそう言うと、突然ゴーレムが立ち上がって体を動かし始めた。
何と言うか、自分の体のスペックを確かめているような感じか。
「見ててすぐに分かったが、ゴーレムを動かしているのはヌンだな? それがゴーレムの教育になっているのか?」
「ええ。私のように乗り移った者が動かしても、ゴーレムはそれを学習します。学習量が増えすぎたら<生物修復装置>に入れて最適化すれば問題ありませんよ。そうすればまた学習できます」
「要らない事を覚えてたら消すのか? それとも情報を圧縮する? または無駄を省いて整列させるのか……。いや、俺が気にする必要は無いな。そもそも知識が欲しい訳じゃないし」
「この後はどうするのですか?」
「えっ? ああ、ゴブリンの山はもう終わったんで、次は東の山に行ってオーガの殲滅だ。そっちに研究室がありそうなんで、調べておく必要がある」
「では行きましょうか? 私も暇でなくなって助かります」
「ああ、うん。了解だ」
まあ、<時空の狭間>に居るだけじゃ暇だよなぁ。
俺なら耐えられないわ。
そんな事を思いつつ魔法陣の部屋に行くと、俺はヌンと共に惑星へと転移。
ゴブリンの山に戻ってきた。
『ほうほう。ゴブリンの山とはこういう場所だったのですね。階段があるという事は人工物ですし、ゴブリンが作ったとはとても思えませんね』
「そうなんだよ。こんな物をゴブリンが作れる筈が無いんで、あからさまに人間の残した物だという事は分かる。それはともかく、まずは浄化道具を埋めないとな。<ムンガ>を倒した後の衝撃で忘れてた」
俺は<瘴気発見器>を使って調べると、針がグルグルと動き始めた。
という事は、今いるこの場所が正解って事か?
『それで正しいのですが、出来るだけ低い所が良いので、階段を下って下に行きましょう。そこで穴を掘れば問題ありませんよ』
ヌンの指示に従って階段を下り、その階段脇の隙間に穴を掘っていく。
既に一度行っているので慣れたものだし、ヌンも手伝ってくれたので簡単に終わった。
5メートルの穴を掘ったら<時空の狭間>に戻り、<魔鋼>の箱と<浄銀の輪>を五個作製。
詰めて蓋をしたら戻り、穴の一番下に箱を置く。
後は穴を埋め戻せば終了だ。
終わったのでゴブリンの山をさっさと出よう。
ここにいつまでも居ても意味は無い。
俺とヌンは<ムンガ>を倒した方向から外に出ると、石垣を二段下りて山を下った。
その後は東へと進んで行き、オーガの山を目指す。
あくまでも東としか聞いていないので、何処にあるかは分からない。
『まあ、そこまで迷うという事も無いと思います。東の山と聞いている以上は、確実に山なのですからね。手掛かりとしては大きいですよ』
「それはそうだが、今は夜中だから探すのが難しいんだよなぁ。それでも移動はしておいた方がいいからするんだが……」
『それなりに移動しなければいけないでしょうが、攻めて来るのですから、そこまで離れてはいないでしょう。オーガとやらが数十キロも移動してきたとは思えません』
「それはな、俺もそう思う。流石に戦国時代とかじゃないんだから、数十キロもの行軍なんてしないだろ。ゴブリンの山に行くまでに何回野営をするんだって話だし、疲れきってしまうだろうからな」
『その言い方ですと、攻めて来たオーガとやらは元気だったのですね。となると離れていても数キロというところでしょう。おそらくは結構近い筈』
「まあ、夜中だから分かり難いし、ウロウロしながらアイテムバッグに色々と回収していくか。何か有用な物があればいいけどな」
『草は生えていますが、少ないですしね。無理に手に入れる必要も無いでしょう。それに、そろそろ山が近付いてきましたよ』
「えっ? 山が近付いてきたって………もしかしてヌンってかなり遠くまで見えてる?」
『遠くというより、数キロは普通に見えていますよ。私には光の有無は関わりありませんので』
「わーお、流石は知性体というべきか。見えてたのなら、そりゃズンズン移動するわな。それはともかく、たとえオーガの山でなくとも色々な物は手に入るだろうから悪くないな。それにゴーレム修復用に木が欲しいし」
『そうですね。手に入れておいて損は無いので、禿山にするぐらい持っていきましょう。どうせ自然の力で回復しますし』
「いやいや、流石に禿山は駄目だろう。間伐する感じで持っては行くが、禿山にはしないよ」
本気か冗談か分からない事は止めてもらいたいが、とにかく山の麓に着いたので、俺とヌンは木々をどんどんと倒していく。
俺は途中からアイテムバッグに回収するだけになり、ヌンが異様な速さで木を押し倒しては次に移動する。
どうも獣道っぽい場所を選んで進んでいるらしく、オーガが作った道っぽい。
なので微妙に文句も言い辛く、俺はヌンの後ろをついていく形となった。
何をやってるんだと思うも、【ライト】を使っている俺よりも見えているので、ヌンの方が正しいルートを進んでいる可能性が高い。
こういう時は邪魔をしない方が良いに決まっているので、俺は木々を回収したり草を回収したりしながら進んでいる。
すると、ヌンが急に足を止めた。
「どうしたんだ、ヌン?」
『イシス。どうやら上の方に10体程度の魔力反応があります。その10体は近くに固まっている為、おそらくオーガの可能性が高いでしょう。ここからは音をさせないようにして進みます』
「了解」
そう言ってヌンは静かに移動を開始した。
先程まで木を倒していたのはヌンなんだが……。
そう言いたかったが、俺は口を噤む。
何故ならヌンの足音が殆どしないからだ。
むしろ俺の方が足音をさせてしまっているぐらいで、ヌンは球体関節人形も上手く扱っているのか、体を動かしても音がしていない。
とんでもないなと思いつつ、俺はなるべく音をさせないようについていく。
ある程度登ってみると分かったが、高さが4メートル程のトンネルがあり、そこがオーガどもの塒だと判明。
俺も魔力を薄く放射してみたが、中に魔力反応があるのが分かった。
というか、ヌンは大分前から気付いてたって事は、それほど遠くから魔力を放射して探り当てたって事だよな?
…………もう、ヌンだけでよくない? なんかそんな気がしてきたぞ。




