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0091・ムンガとの戦い




 Side:イシス



 『低俗なゴブリン風情が、我の手をわずらわせおって!! ……ぬ? 我が随分と減っているだと!? これが痛みを感じた原因か!! おのれぇ、いったい何故我が減っ、グアァァァァァァァッ!?』



 <ムンガ>が何か言っていたが、それは後回しだ。

 俺とバステトは一気に浄化の念を篭めた魔力を投網にして<ムンガ>に放った。

 それは<ムンガ>に直撃すると、奴の瘴気をゴッソリと対消滅させる。


 よっしゃ! 不意打ち成功!!



 『グゥッ!! おのれ何奴だ、そこに居るのは分かっているぞ! 殺されたくなければさっさと出て来い!!!』



 そう<ムンガ>が言っているので、俺は【ライト】で明かりを点けながら姿を現す。

 実際に姿を見せるのと見せないのでは、見せる方が得なので出て行くという理由もある。


 何故なら見せていた方が相手の行動をコントロールしやすいからだ。

 ついでに<ムンガ>には挑発が良く効くと知っているしな。

 コイツを怒らせれば怒らせる程こっちが有利になる。



 「よう! 久しぶりだな、<ムンガ>。前に会ったのは一ヶ月半ぐらい前か? もう二度と会わないだろうと思っていたが、再び会うとは思わなかったぞ。できればお前と会うなんて遠慮したいんだがなー」


 『何だ、貴様は!? 我の名を図々しく呼びおって! それに貴様………もしや、人間か!! 何故人間が未だに生きておるのだ、我がすべからく根絶やしにしてやった筈ぞ!!』


 「ここに俺が存在する以上、お前の言っている根絶やしは失敗に終わったって事だろうが。そんな事も分からないのか? それに一ヶ月半前に会ったと言ったろう、前回と違って随分と耄碌してるな。素体がオーガだからか?」


 『なにぃ? …………まさか、貴様! 先程の浄化といい、我を浄化したのではあるまいな!?』


 「おっと。という事はだ、お前を浄化すれば記憶も残らない訳か。こりゃ都合が良い。今回も浄化し尽くしてやるよ、<ムンガ>。頑張って瘴気と呪いを集めろ、よ? ……もしかしてお前の正体は呪いか! だから浄化されたら覚えてないんだな!」


 『チィッ! 人間めが! さっさと死ねい!!』



 <ムンガ>が俺に対して駆け出したが、俺は余裕を持って更に魔力の投網を投げて浄化する。

 当然バステトも行っており、再びゴソッと<ムンガ>の瘴気が減る。


 俺達は呪いを感知する事が出来ないが、少なくとも瘴気を浄化すればついでに呪いも浄化できる事を知っている。

 ならば瘴気が感知出来るだけで十分だ。


 瘴気も然る事ながら呪いが減ったからだろう。

 <ムンガ>は俺への突撃を止めて、慌てて黒いナニカを吸い込み始めた。


 前回と変わらないパターンで推移しているな。

 このまま吸い込ませてヤツを完全に浄化し切る。



 『ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! 負けはせん! 負けはせんぞ!! 我は<ムンガ>、不滅の存在なのだーーーーーっ!!!』


 「ハッ! 浄化されたら消える分際で、何が不滅だ。下らん!! お前も他の生物と同じ、必死になって己の生にしがみ付いているだけじゃないか。よくもそれで偉そうに他の生物を見下せたもんだ。しょせんは己の肉体も無い癖に」


 『おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 貴様のような人間がそれを言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』


 「ああ、すまん、すまん。孤児だったムンガ君は、可哀想にもマッドな研究者どもに利用されて、憐れな黒いスライムになったんだったね。すッかり忘れていたよー」


 「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!」



 凄まじいぐらいにキレ散らかしているが、今回も冷静さを失わせるのに成功した。


 確かに<ムンガ>には同情するべきところがあるんだが、だからと言って人類を滅亡させた事は大罪でしかない。

 もちろんクズ研究者どもが一番悪いのは事実だが、それで<ムンガ>の罪が無くなるかと言ったら、そんな事はあり得ないんだ。


 残念ながらコイツにはキッチリと報いを受けてもらわなければ困る。

 俺が言うのはおかしいが、それでも滅ぼされた人間やコイツに殺された奴らの仇は俺がとらせてもらう。


 俺は襲い掛かってくる<ムンガ>の攻撃を回避しつつ、魔力を篭めて瘴気を浄化していく。

 離れているバステトも投網状に広げて何度も浄化しており、俺達は<ムンガ>の瘴気をどんどんと減らしていく。



 『おのれ、おのれ、おのれ、おのれ、おのぉぉぉれぇぇぇぇぇぇ!! 許さんぞ貴様、今すぐ滅ぼしてくれる!!!』



 そう言って<ムンガ>は俺に向けて両手を出し、黒いナニカを放出してきた。

 前回もこの攻撃をしてきたが、結局通用しなかった事も覚えていないらしい。

 俺達にとってはラッキーだったな。


 対処法が分かっている攻撃ほど楽な事は無い。

 俺は【身体強化】をして避けつつ、俺をホーミングしてくる黒いナニカを次々に浄化していく。


 そしてその隙にバステトが<ムンガ>本体を浄化するので、黒いナニカが無くなったらしく飛んでこなくなった。

 一度無くなったら、コイツは絶対に補充する。


 俺はバステトを【念話】で呼んで近くに来させ、<ムンガ>がまた周囲から瘴気を吸収している最中に、一度<時空の狭間>へと戻る。


 <時空の狭間>へと戻った俺とバステトは、ヌンへの挨拶もそこそこに休み、とにかく体力と魔力を回復させていく。

 ヤツとの戦闘では如何に確実に回復するかが重要になる。


 <ムンガ>が攻撃している最中に戻ると、惑星に移動した瞬間殺されかねない。

 だからこそ戻るチャンスを適切に見極めないといけないんだが、ヤツが吸収する時以外はあまり隙が無いんだよなぁ。


 そんな事を考えつつも、適当に雑談をしつつ回復の終わった俺とバステトは、すぐに魔法陣に乗って惑星へと転移。

 再び戦闘状態への場所へと戻ってきた。



 『貴様らは必ずここで殺す!! 絶対に殺す!! 我が滅びるなどあり得んのだーーーーーっ!!!!』



 まるで、そうあってほしいと言わんばかりだが、俺達は躊躇せずに浄化をしていく。


 <ムンガ>を生かすなんて、百害あって一利なしだ。

 コイツは確実に始末し、そして浄化道具を埋めて二度と出させん。



 「お前が何をどれだけ叫ぼうと、お前がやった事の罪はお前につぐなってもらう! クソみたいな研究者にメチャクチャにされたとはいえ、人類を虐殺した罪が無くなると思うなよ!!!」


 『ふざけるな!! 我をこのようにした野蛮な人間めが!! 我が在る事こそが貴様らの罪だろうが!!』


 「お前こそ、ふざけるな!! それは研究者どもの罪であって、人間全てにある罪じゃねえ!! 極悪人が罪を語るな、このクソボケが!! 黙って消え失せろ!!!」


 『ぬぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!! にんげんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!』



 俺達の魔力操作能力や、装備品が良い物に変わっていたからか、前回に比べてかなり早くに浄化し切る事が出来た。


 <ムンガ>が乗っ取っていたオーガが糸が切れたように前方に倒れる。

 俺は素早く動き、真っ黒なオーガをアイテムバッグに回収。復活させないようにした。


 まったく、ヤレヤレだな。

 やっと終わったという思いと同時に「ホッ」したのが事実だ。

 前回と同じくらいに苦労したらたまったもんじゃない。



 『この惑星の魔王は討ち倒された。指令は完了した為、<時空の狭間>にて報酬を受け取り、次の惑星へと移動せよ』



 「はぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? どういう事だよ! <ムンガ>はまだ消えてないだろ!? ……えっ、マジで?」


 「………」



 バステトも驚いているのか、驚愕の顔をして放心しているみたいだ。

 そもそも魔王が誰かも分かっていないんだが、これで本当に完了なのか? どう考えてもおかしいだろ。


 アレか? <ムンガ>の元となる呪いが無くなったのか?

 ………誰か説明してくれよ。

 全部ひっくるめて、サッパリ分からないんだが?


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