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0087・ゴブリンとオーガの戦い・その3




 Side:イシス



 休んで疲れを取り、十分に回復した俺とバステトは、現在魔法陣の部屋で最終確認をしている。


 確認する事自体は少ないが、寝ていたので感覚がズレて緊張感が無くなっており、その為に確認をしている訳だ。



 「バステト。まず一段目の石垣については調べられていないし、二段目の石垣も完全には調べられていない。ただしオーガの連中が登って来ているので、そこからゴブリンは撤退しているだろう。敢えて俺達が調べる必要は無いと思うが、どうする?」


 『私としては無理に調べる必要は無いと思う。仮に調べたとしても、何も無いのが分かるだけだろうし、それは時間の無駄じゃないかと思うのよね。それに………オーガの山っていう東の山にも行かなきゃいけないでしょ?』


 「それは確かにそうだな。山のゴブリンやオークにオーガを皆殺しにしても、それでオーガの本拠の者が全員死んだ訳じゃない。後で占拠して掘り返される可能性があるなら、ゴブリンの拠点が終わった後に殲滅しておく必要がある」


 『そっちにも研究室みたいなのがあるかもしれないし、そういう意味でも行くしかないのよね。ゴブリンの山にも研究室はあるそうだけど』


 「そうだな。何か良い物が残っていれば助かるんだが、長い時間が過ぎているから碌な物は残ってないだろう。それでも調べておく必要はあるし、壊れた物でも<物品作製装置>に入れれば修理できるかもしれない」


 『そう考えると全て総浚いして確保しておく必要があるのよねえ。いちいち面倒だと思うけど、その御蔭で首輪が良い物になったりするんだからバカに出来ないのよ』


 「素材の中には良い物もあるし、何と言っても金属系はありがたいと言える。<物品作製装置>に入れると修理出来る可能性が高いからな。有機物は駄目になったらどうなるか分からん。案外、即座に廃棄されているかもしれないし」


 「その可能性は低いです。今までの<時空の旅人>の事をかんがみても、有機物であろうが欠けた部分を補うように修復している可能性が高いでしょう。どうやってそれを成しているのかは知りませんが」


 「有機物を金属みたいに補修しているのか? 確かに凄いが、前に駄目になったら<時空間のひずみ>に廃棄されていると言ってなかったか?」


 「それは魔力を流しすぎて劣化した場合です。物理的な欠けならば補修されるでしょうが、魔力を流した際の劣化は全体に及びます。なので廃棄するしかなくなる訳ですね」


 「ああ、成る程、そういう事か。………うん? それってもしかしてだが、<魔力操作補佐杖>ってとんでもなく劣化しやすいって事では?」


 「魔力を流しているという意味では劣化しやすいですが、素材によってどこまでの魔力に耐えられるかは別です。魔力関係の金属よりも有機物の方が魔力に対する耐性は高いですが、それはあくまでも一般論に過ぎません」


 『という事は、強い魔力に耐えられる金属もあるって訳ね?』


 「ええ。魔力に対する耐性が非常に高い金属というのも存在していますし、それを持っていた<時空の旅人>も過去に居ます。もちろん代替わりすれば全て廃棄されますので、今はもう残っていませんが」


 「俺が<物品作製装置>を見た時には何も無かったから、中の物の引継ぎは無いと思ってたよ。もちろん残ってた方がありがたいが、こればっかりは決まりみたいだから仕方ない。とりあえず武器を全部作り直してくる」



 俺はそう言って<物品作製装置>の部屋に行き、武器の作り直しを始めた。

 素材は今までのままでいいので、ささっと作り直して新品にした俺は、魔法陣の部屋へと戻り惑星へと転移する。


 再びゴブリンの山に来た俺達は、杭を全て抜いた場所から先に進もうとして慌てて隠れた。

 何故なら後ろから何かが来たからだ。



 『なんで急に後ろから来るのかしら? 少し前に青いオーガが二体の赤いオーガを連れて行ったばっかりよね?』


 『その筈だ。奴等は向こうに行った筈だから、こっちに戻ってくるのは変なんだがな……?』



 疑問に思いつつも待っていると、こちらに来たのはオークと赤いオーガ達だった。

 そいつらは血のにおいがするからか、立ち止まって辺りのにおいを嗅ぎ始める。


 俺とバステトに緊張が走り、先制で攻撃するかを迷い始めた頃、突然オーク達が顔を上げて何かを言い始めた。



 「フゴッ! フゴッ!」


 「ブルルル、フゴッ!」


 「ブルァ!」


 「「「「「「「ブルァッ!!」」」」」」」


 「ガウ?」



 オークが急に前に走りだし、そのまま進んで行ってしまった。

 赤い皮膚のオーガは首を傾げた後、オークの後を追っていく。


 俺達はオークとオーガが居なくなって安堵の息を吐いたが、いったい何故オークが走って行ってしまったのか分からない。

 おそらくは奥の方から何かのにおいを嗅ぎ付けたんだと思うが……だったら何故俺達はスルーされたんだ?



 『もしかして俺達がスルーされたのは、【クリーン】でこまめに汚れを落としているからかもな。実際に<時空の狭間>では綺麗にしてるし』


 『あそこでは綺麗にするっていうより、汚れが落ちたら自動で<時空間のひずみ>に捨てられるじゃない。ゴミの残りようが無いわよ』


 『まあな。そしてそんな俺達に気付かず向こうに行ったって事は、向こうにゴブリンが居るからって可能性が高い。青いオーガが見逃していたのか、オーガ三体だからにおいに気付かなかった?」


 『とりあえず後ろをついていけば分かるんじゃない? 隠れながら見つからないように移動しましょう』


 『ああ。そうしよう』



 俺はバステトを抱え、足早に移動していく。

 もちろんなるべく足音を立てないようにしつつ、先程のオークやオーガ達を追う形で進んでいく。


 すると、またもや罠が大量に立ててある場所があったらしく、オークが座って足を押さえている。



 「ブルルルル……」 「ブル……」


 「ガァッ!!」


 「ブルゥ……」


 「「「「「「「ブルァ!!!」」」」」」」



 どうやら足に杭が刺さった三体は放置していくらしく、七体のオークとリーダーらしきオーガは慎重に罠を避けて歩いていく。


 三体のオークは足を貫通したのだろう、既に歩く事も難しいような状態だ。

 やはりオーガは足の皮膚も硬いのだろう、青いオーガと居たオーガはひょこひょことはいえ歩く事は出来ていた。

 その辺りを見れば強さの違いは明白だ。


 七体のオークとリーダーのオーガが居なくなった後、俺達は隠れながら近付き、三体のオークを【ヒートバレット】でヘッドショット。

 すぐにオークを回収する。


 他のオークなどに見つかるとマズいので早く回収したかったのだが、どうやら上手くいったようだ。

 その後は土を柔らかくして抜きやすくし、どんどんと杭を回収していく。


 全ての杭を回収し終わった丁度その時、奥の方から大きな声が聞こえてきた。



 「ギィィィィィィィィ!!!!」


 「ブルァ!!」 「ブルゥ!!」


 「ガァァァァァ!!!」


 「「「「「ブルァ!!!」」」」」


 「ギャギャ!!」 「ギャーギャギャ!!」


 「「「「「「「「「「ギャギャ!!!」」」」」」」」」」



 俺とバステトは顔を見合わせ、互いに頷くと移動を開始。

 ほぼ間違い無いだろうが、ゴブリン軍とオーガ軍が争いあっている。

 わざわざあれだけの杭を設置していた場所だ、何がしかの理由があって守っていたのだろう。


 それが人間の作った研究室の可能性がある。

 気になる俺達はなるべく見つからないように。

 しかし急いで移動して行ったのだが……。


 そこで見たものは一方的な蹂躙だった。


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