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0086・ゴブリンとオーガの戦い・その2




 Side:イシス



 ゴブリンどもが二段目の石垣の上から石を投げている。

 が、そんなもので止まるオーク達ではなく、結局ゴブリン達は二段目の石垣からも撤退した。

 そして登ってきたオーク達はゴブリンを追いかけ始める。


 俺達はそれを見送ったが、その後のっそりとした感じで上がってきた赤い皮膚のヤツ。

 間違いなくアレはオーガだろう。

 身長が3メートル近くもありやがる。

 どんだけデカいんだと思うも、そのデカさで体が目立ち過ぎだ。


 隠れている所からでもよく見えるし、向こうは間違いなくこっちが見えていないだろう。

 更に言えばオークのように鼻が良い訳でもないらしい。

 こちらを気にする素振りも無いし、オークの行った方にとりあえず行くという感じだ。


 俺達は素直に見送ったが、身体能力に全振りした脳筋って感じだろうか?

 あんまり魔物を舐めない方がいいのだが、そんな感じがする。


 仮に俺の考えが正しいとすると、幾らでも戦いようはあるな。



 『頭の悪そうな感じの魔物だったな、オーガってヤツは。ほぼ予想通りって感じだが、あまり舐めない方が良いので決め付けはしないでおく。それよりもオークとオーガが暴れるなら、出来るだけ暴れさせておいた方が……!!』



 その後も二体のオーガが上がってきたのだが、最後に上がってきたのは青い皮膚のオーガだった。


 見た目はオーガと同じなのだが皮膚の色が違っている。

 しかも違いはそれだけじゃなく、青いオーガからは明らかな知性を感じる。



 『お前達はこちらの道を行け。出てくるゴブリンは全て始末せよ。我らが祖先を殺したゴブリンどもに容赦などするな』


 「「ガアッ!!」」



 返事をした赤い皮膚のオーガ二体は、先程オークやオーガが行った方向とは逆に進んで行く。

 おそらく向こうの敵も殲滅して安全を確保しようという事だろう。


 しかし……オーガにも知性のある者が居るとはな。

 もしかしてコイツを作ったのも人間か?



 『我らの本拠たる東の山には手掛かりが無い。今度こそゴブリンどもが巣食っておるこの山を手にし、我と同格の者が生まれるようにせねば。このままでは同胞にケダモノしか居なくなってしまうわ』



 そう言いながら、青いオークは先程の二体のオーガを追いかけるように歩いていく。

 俺はそれを見送りながらも、この争いの構図を理解した。


 どちらも人間に改造された者達が上に立ち、片方は改造する方法があると思い、もう片方は攻めて来る敵から必死に防衛しているという形だ。

 そしてゴブリンの方を考えてみるに、おそらく知恵を付けさせる事は出来ないのだろう。



 『それで間違い無いと思うわ。しかしゴブリンとかオーガとか、頭の悪い種族は大変ねえ。私達や犬は十分に考える事が出来るし、頭のおかしい者が生まれたりしないけど、あいつらはケダモノが生まれてくるっていう事でしょ?』


 『ケダモノが生まれてくるというより、それが大元なんだろうな。つまり知恵を持たされたが、それが世代を重ねる毎に薄れてきたんだ。そして元々のゴブリンやオーガに戻ろうとしているって事だろうな』


 『元々がケダモノだったのを、人間が知恵を付けてマシにさせたって事? だとしたら、何でそんな事を人間はしたのかしら?』


 『引っ掛かってるのは<獣人計画>だ。アレは進捗率が4パーセントしかなかったが、<獣人計画>の代わりにゴブリンやオーガを使う事に切り替えた可能性がある。獣に人のような肉体と知恵を持たせるより、ゴブリンやオーガに知恵を持たせた方が簡単だと思ったんだろうな』


 『成る程。あの青い皮膚のオーガもそれで生まれたって事。で、ここはゴブリンの拠点だけど、ここに知恵を生み出す秘密があると思って攻めて来ているってわけね』


 『ところが人間が居ない以上、ゴブリンもオーガも徒労に終わる。ちなみに言っておくが、当時の人間が何をしたのか知らないから、俺が人間だと言っても何も出来ないぞ? そもそもする気も無いが』


 『そんな事を言ったりしないって。それにゴブリンやオーガが賢くなっても碌な事をしないでしょうしね。自分達が覇権を握るとか言い出されても困るし、このまま知恵のある奴は滅んでくれるのが一番良いわ』


 『俺もそう思う。ゴブリンもオーガも知恵を付けていけばどうなるか読めん。そのうえゴブリンに関しては<ムンガ>が憑依できる連中だ。なるべく数を減らしてくれた方がありがたい』


 『それもあったんだったわね。尚の事、数を減らしてくれた方が都合が良いわ。ここはオークとオーガに期待しましょうか』


 『そう……!』



 俺はバステトを抱きつつ腰を浮かす。

 理由はオーガが戻ってきたからだ。

 オークが行った方向は誰も戻ってきていないが、青いオーガが行った方向からは二体のオーガが戻ってきた。


 そしてその後ろから青いオーガも戻ってきている。

 二体のオーガは足を妙に気にしているな?

 ………ああ、おそらくだが罠を踏んで怪我をしてしまっているのだろう。

 ひょこひょことした歩き方になっている。



 『ゴブリンどもめ! いちいち面倒な物を仕掛けおって! お前達、ゆっくりでいい。向こうの連中に合流するぞ。場合によっては向こうも木を踏んでケガをしておるかもしれん』


 「「ガウ」」



 二体のオーガはひょこひょこ歩きつつ足早に移動をしていき、その後ろを青いオーガが激励しながら去って行った。


 俺達はそれを見送った後で立ち上がり、さっき青いオーガが行っていた方向に走る。

 なるべく音を立てないように走っていくと、斜めになった木の杭が大量に設置してある場所があった。


 その木の杭に青い血が点いている事から、間違いなくオーガが踏んでしまった事が分かる。

 それ以外にも結構な数のゴブリンが背中から杭の上に落ちた姿で死んでいた。


 俺は土を柔らかくして全て回収し、一旦<時空の狭間>へと戻る。

 今の内にアイテムバッグの中身を減らしておくのと、食事と睡眠をとっておきたい。

 理由は夕日が出始めてきたからだ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「お帰りなさい。イシス、バステト」


 「ただいまだ、ヌン。「ニャー」。俺達は山に居るんだが、そこは古い時代の防御施設らしい。石垣が二段に渡って組んであった。その上には罠が仕掛けてあるんだが、そこは現在ゴブリンどもの拠点になっている」


 「はぁ……。何故そんな所に行っているので?」


 「それは、その山の頂上付近が瘴気の溜まる場所だからだ。<瘴気発見器>が頂上の方を指していてな、そうでもなければ俺達だって面倒な事はしないさ」


 「確かにそんな理由でもなければ、面倒な防衛施設を登っていくなんてしませんか」


 「まあな。しかもそこにオーガが攻めて来たうえ、その中にはまともな知恵を持っている個体まで居た。どうやら昔の人間に改造されたオーガの子孫らしい。ついでにゴブリンにも似たようなのが居た」


 「それはまた……。小国が戦争で使う為に作りだしたのでしょうか?」


 「それは分からん。俺達は一ヶ月ぐらいに渡って東に歩いている。時速で4キロと仮定しても、一日で96キロ。それを30日として2880キロだ。そこまで移動したら小国の範囲は出てないか?」


 「小国というぐらいですから、おそらくは出ていると思います。とはいえ2880キロですから、小国の端まで行っただけかもしれません。距離的には微妙でしょう」


 「そうか。まあ、小国といっても、大国に比べての小国かもしれないしな。どれだけの大きさをしていたかは不明だ。とにかく戻ってきたのはアイテムバッグの整理と食事と睡眠だ。向こうは夕日が出始めている」


 「成る程。それで戻ってきたのですね」


 「ああ」



 俺は<物品作製装置>の部屋に行き、箱の中にゴブリンや木々などを入れたら栄養剤を作って飲む。


 バステトも嫌そうな顔をしているが、俺も未だに慣れる事は無い。

 適当に料理を作って口直しをし、それが終わったら寝室で寝る。


 ゴブリンとオーガとの夜間戦闘だ。

 十分に回復しておかないと足を掬われる可能性がある。

 しっかりと休んで英気を養っておこう。


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