0076・浄化道具設置・一ヶ所目
Side:イシス
バカ犬とアンデッドオークを埋めた俺達は、町の廃墟というか跡地から出ようと思ったのだが、入り口付近から幾つかの魔力反応がやってきた。
アンデッドオークが出たから一応探ったのだが、まだ何か来るらしい。
そう思って待つと、入り口から現れたのは猫だった。
『お前達は確かニンゲンとかいう……。誰もいない町でいったい何をしているのだ?』
『俺達は死んだ者達を焼いて埋める。いわゆるところの弔いをしたり、アンデッドオークを倒したりしていただけだ。お前さん達は逃げた町の連中か?』
『ああ、そうだ。我々は猫族を纏めて逃げたのだが、町が静かになっていると聞いて戻ってきた。そうすると、お前達が居たと言う訳だ。そこの土が盛られているのは?』
『その土が盛られているのが、焼いた後の骨を埋めている場所だ。結構な数の遺体があったのでな、それ相応の場所をとっている。それと、あっちの小さいのがアンデッドオークとバカ犬を埋めた場所だ』
『バカ犬?』
『バカ犬っていうのは、昔に見殺しを命じた長老の側近だったヤツの事よ。私達が無視して助けなかったら、アンデッドオークに食われて死んだわ』
バステトがそう言うと、入り口から笑いながら入ってくる猫が現れた。
『ハッハッハッハッハッ! これは傑作だ。あの愚か者はアンデッドオークに食われて死んだか。長く下らぬ事をして町の者を不幸に陥れていたのだ。そのような末路が当然よな』
『それはどうかは知らないけど、アンデッドオークと纏めて埋めたから触らない方が良いわよ』
『もちろんだ。まあ、骨だけとはいえ、出来れば町の外に埋めてほしかったがな。しかし贅沢は言えん。我等がやった訳ではないのだ』
『ま、俺達が勝手にやった事だが、気に入らないならば後は自分達で何とかしてくれ。それじゃ、俺達はもう行く。これからも、やらなければいけない事があるんでな』
『うむ。もうすぐ夜だというのに、人間とは大変なのだな。それはともかく、そちらの猫族の者。そなたは人間に着いて行くのか? 旅は危険だと思うぞ? それならば……』
『断らせてもらうわ。数も減ってるから、ここで私の力を得ておこうっていう魂胆でしょうけど、オークに手を出して町の破滅に関わってたヤツの言う事なんて信用する訳がないでしょ』
『なっ!?』
『俺達が知らないとでも思ってたか? オークに手を出すなと言っておいたのに下らない事をした。そんなお前達の言う事を信じる者なんて居ると思うのか? バカ犬と同じ程度でしかないな、お前も』
「………」
『必死に睨んでるところ悪いんだけど、生き残ってるのが貴方達だけなら、この猫は第二のバカ犬ね。そのうち自分が支配者だと思い込み、バカ犬と同じ事をし出すわよ』
『お前達は違うと思うかもしれないが、他の者を従える立場になったら簡単に狂うヤツなんて沢山居るからな? というか、それが〝普通〟なんだよ』
『貴様ら……』
『あー、はいはい。そうやって私達を見下して睨んでくるの、さっきまで生きていたバカ犬そっくりね。何も理解していないんでしょうけど、頭が悪すぎるわ。ま、私達には関係ないから、そろそろ行きましょうか』
『そうだな。町の片付けはしたし、ここにもう用は無い。それじゃ行くか』
俺とバステトは悠々と歩いて町を出て行く。
奴等がこの後どうするのかは知らないが、少なくとも猫は多少とはいえ生き残ったみたいだ。
とはいえ狩猟班というのが多く死んでいるので、狩りは難しいだろうがな。
町を出た俺達はオークの集落の方に進んで行く。
未だあそこの浄化を行っていないので、早めに終わらせておきたい。
そもそもここに来たのは瘴気の集まる場所を浄化したかったからであり、町の揉め事とかに巻き込まれる為じゃないんだよ。
何故か色々とあったが。
俺達はある程度の距離を進み、森の手前まで来たら一旦<時空の狭間>へと戻る。
戻った俺達は食事をし、それを終えたらしっかりと眠っておく。
起きたら準備を整え、最後にヌンに確認をしておこう。
「ヌン、これから瘴気の集まっている場所に向かって、そこに浄化道具を埋めるんだが……深さはどれぐらいが良いんだ? あまり浅かったら雨の影響を受けたりして錆びるよな?」
「どのみち埋める深度であれば、少しであろうと影響は受けますが……。埋める最適な深さとしては、5メートルぐらいですかね? それぐらいで十分だと思います」
「5メートルって……結構深いと思うけどな? 決して〝ぐらい〟っていう深さじゃないと思うぞ。まあ、【魔術】を使えば難しくないけど、思っていたよりも掘るんだなぁ」
「それでも浅めではあるんですけどね。あんまり浅過ぎても効果が減りますから、しっかり掘ってください」
「本当に5メートル掘れたかなんて自信ないし、長い棒を作って持って行くか。2メートル50センチで良いだろう。それが二本で5メートルだ」
俺は<物品作製装置>の部屋に行き、2メートル50センチの木の棒を二本作って収納。
そして魔法陣の部屋に戻ったら、今度こそ惑星へと転移した。
既に辺りは暗くなりかけているので【ライト】を使って明るくすると、<瘴気発見器>を使いながら森の中へと踏み込んでいく。
『オークは減っているとはいえ、ゼロになった訳じゃない。何処かから戻ってきている可能性もあるし、警戒しながら進もう』
『ええ。私がしっかり警戒するから、イシスは瘴気の方向をお願いね』
『ああ、分かってる』
俺も魔力を放射して調べるものの、<瘴気発見器>を見て方角を決めなきゃいけないからな。
なのでバステトに比べれば精度が落ちるのは仕方がない。
手元や前を見つつ<瘴気発見器>の指し示す方向へと進んで行く俺達。
昼間に散々オークどもを殺したからか、森は静まり返っている。
俺の足音だけが鳴る夜の森を進み、時間は掛かったものの瘴気の集まる中心地点をようやく見つけた。
そこは何の変哲も無い森の中で、目印になるような物は全く無い場所だった。
こんな場所が瘴気の一番集まる場所かとも思うが、それが事実なのだから諦めて掘ろう。
周りの木々が少々邪魔だが、俺達は気にせずに【魔術】で掘っていき、2メートル50センチの棒が二本縦に並ぶほどの穴を完成させた。
直径50センチほどの穴になったのはご愛嬌というところだろう。
そして底に<魔鋼>製の箱を置き、棒を撤去したら今度は埋めていく。
埋めるのは難しくないのでさっさと終わらせ、完全に埋めたら終了。
これで一ヶ所目の浄化が始まった。
『特に何かがある訳じゃないけど、それでも浄化が始まったのよね?』
『ああ。ヌンの言う通りに埋めたから間違い無い筈だ。これで少しでも瘴気が減ってくれれば、<ムンガ>が復活する可能性は減る。ま、とりあえずこれで終わりだから、草を回収しつつ東へ抜けるか。次は海で塩作りだ』
『海水をアイテムバッグに入れて何度も運ぶのよね?』
『塩作りと言っても、やる事はそんな事だけなんだよなー。バステトは海の魚でもゲットするか?』
『それでも良いんだけど、そもそも海の魚ってどうやって捕まえるのかしら?』
『………さあ?』
釣竿とかなら作れば済むんだが、バステトは猫だから釣竿は使えないし……。
【魔術】で海水ごと魚を持ち上げるというのは多分だけど可能だろう。
でも、そもそも魚の場所をどうやって特定すればいいんだ?
魔石を持っていない相手の場所を特定するのは今のところ無理だぞ。
それが出来れば可能だろうが……。ま、それもこれも行ってからだな。
行って色々やっていれば、また何かを思いつくかもしれないし。




