0075・とある犬の末路
Side:バステト
イシスと共に町の犬猫達の遺体を焼き、アンデッドとして蘇ってこないように穴を掘って埋める。
骨のアンデッドであるスケルトンとやらになる可能性もあるけど、埋まってたら出てこれないでしょ。
上から土が掛かって重たいし、それなら実質大丈夫って事と変わらないでしょうね。
それにスケルトンになっても骨が壊れるだけかもしれない。焼いているから脆くなってるし。
私とイシスは焼き終わった後、穴を掘って埋めて、今は土を盛っているところ。
これが重しとなって尚のこと出てこれないようになる。
ようやく終わったと思ったら、町の入り口から誰かがやってきた。
既に夕方という時間なんだけど誰かと思ったら、長老と共に居たヤツの一頭じゃない。
いったい何をしに戻ってきたのかしら?
『貴様ら、町でいったい何をやっておる!! 誰に断ってそのように土を盛ったりしておるのだ!!!』
『あんたが誰かは知らないけど、私達は遺体を一ヶ所に集めて弔っていただけよ。っていうか、その物の言い方、アンタが町のクソ犬ね?』
『は? 何だと!?』
『クソ犬はクソ犬でしょうが。狩りも碌に出来ないうえ何の役にも立たず、長老を押し上げただけしかない小物。それが町の中でのアンタの立ち位置だと聞いたわよ。空しいヤツねえ』
『貴様、私を愚弄して唯で済むと思っているのか!!』
『じゃあ、どうなるの? この町はオークの所為で壊滅し、まともに生き残っている者も居ない。お前に付き従う下っ端も居ないのに、偉そうに喚き散らしてどうにかなると思ってるの?』
『クッ……! き、貴様らの所為で町は壊滅したのだぞ!! 貴様らが食い物を献上するのが筋であろうが!!!』
『なんなの、コイツ? こんな役立たずが生きていけると思ってるのかしらねえ。狩猟班も壊滅して食べ物も無い。お前を助ける者なんて誰も居ないのに、今日からどうするのかしら。このままじゃ飢え死にしか道は無いみたいだけど?』
『あ、う、ぐ……!!』
『まあ、俺達はお前を助ける気はこれっぽっちも無いから、何処かで野垂れ死んでくれ。お前のようなのが生きていても迷惑にしかならないからな』
『き、貴様らぁ! 許さん、許さんぞ!! ここで殺してやるわ!!』
こいつ……本当にあの犬達が言っていた通りのゴミね。
あまりのクズっぷりに相手をする気にもならないわ。
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Side:イシス
目の前のクズは何故かキレて襲ってきたが、俺は薙刀の刃の側面でバカ犬を横に放り投げる。
地面に叩きつけられて痛かったのか呻くバカ犬。
すると、そのタイミングでアンデッドオークが町の入り口に来た。
俺とバステトはすぐに身構えたが、アンデッドオークは何故かバカ犬の方に向かって行く。
俺達の方が近いと思うのだが、何故か俺達には目もくれないな?
何故かは分からないが、俺達はアンデッドオークを見送る。
バカ犬は呻きつつ起き上がったものの、自分の近くにアンデッドオークが来た事でパニックになり始めた。
『ひぃっ!! 何でアンデッドオークがワシの前に現れるのだ!! 逃げ切った筈であろうが!! クソォッ! 貴様ら、早くワシを助けろ!!!』
『アホか、自分で何とかしろ。俺達はお前が食われようが関係ない。というか、お前みたいなゴミは食われて死ね』
『なんだと、貴様ぁ!!!』
『おそらくだが、お前だろう? 孫に罪を押し付けて逃げたゴミは。そんなヤツに生きる価値は無いんだから、さっさとここで死ね』
『そうよ。お前みたいなヤツが居るから周りが不幸になるんでしょうが。オークに手を出した犬が居たらしいけど、どうせお前が命じたんでしょ。その所為でオークどもが暴れ出したのだから、お前の所為じゃない』
『ふざけるな!! あれは猫どもがニンゲンがオークの集落を攻める前に数を減らしておるというから、ワシが命じただけであろうが! 元々は猫の者どもがやっていた事だ! ワシの所為ではない!!』
『どうせ猫に対抗心むき出しで、絶対にオークを倒せとか言ったんでしょうが。それでオークに手を出すバカが現れたっていうのに、やっぱりバカはバカね。全部お前の所為じゃない』
『違う、違う、違う、違う、違う、違う!!!! 断じてワシの所為ではない!! 全てはワシの命も満足に果たせない無能どもの所為だ!!』
必死にアンデッドオークから逃げながら、それでも自分の所為ではないと連呼するバカ犬。
バステトは魔力の紐を俺にくっつけて【念話】を繋いできた。
『あのバカ犬を追い込む為にワザと適当な事を言ったけど、おそらく当たってたっぽいわね? 猫族がオークを減らしていたんだけど、手柄を取られると思って無理矢理にさせたんでしょうね』
『そしてあの犬達が言っていた、昔アンデッドオークを倒す為に見殺しにされた犬の孫が、逸って手を出したと。その結果が今回の出来事なら、俺達は全く関係が無いな。バカ同士の所為じゃないか』
『バカ同士?』
『猫に手柄を奪われると逸ったバカと、オークに逸って手を出したバカ。どっちにしたってバカの所為で壊滅したのは間違い無いだろう? 結局のところ傾く時ってのは、大抵の場合においてこんなもんだ』
『バカとバカの所為で、まともな者がとばっちりを喰うってわけね。碌なものじゃ、あ!』
「ギャウ!? ギャ、ギュヴッ!?!!??!?」
アンデッドオークに鷲掴みにされた後、見事に喉元を食い千切られたな。
町で好き勝手にし続けた者の最後って考えたら、悪因悪果と言える結末だ。
罪を押し付けて自らの責任から逃げたのだから、こういう最後で然るべきだろう。
あの四頭の犬達も随分と苦労したみたいだし、それを助けもしなかった町の者達。
そこも含めれば、悪因悪果というか因果応報というべき結末と言えるか。
果たして町がほぼ全滅した事が正しいのかは分からないが、少なくとも報いは受けた形だと思う。
記憶の中の事だと、イジメに対して見て見ぬフリをしていたのが社会でのうのうと生きていたが、この星では相応の報いを受けたという形だ。
これはこれで良いのだろうと思うし、こうあるべきと思う部分もある。
勧善懲悪じゃないが、少なくとも善く生きていた奴等はそれ相応の利を得るべきだと思う。
ま、こんな程度の文明の方が、ハッキリと報いを受けやすいんだろうな。
バカ犬は碌に狩りも出来ないらしいので、結局アンデッドオークから逃げる事しか出来ずに殺された。
とはいえ、ここで殺されずとも何れ飢え死にしていただろうけどな。
最悪は西の犬の集落の所に上がりこんで迷惑を掛ける事だったが、ここで無事に死亡したんだ。
これで迷惑を撒き散らす事はもう無い。
なんでこんなに暢気に考えているかと言うと、バカ犬を食った後のアンデッドオークは俺達を襲いたいようなんだが、何故かウロウロしているだけで襲って来ない。
『あのアンデッドオーク、もしかして<清浄のスカラベ>が効いてるんじゃない? だから近付きたくても近付けないんじゃ……』
『ああ、成る程、それでか。なんでウロウロしてるのかと思ったら、浄化効果のある道具の所為で近寄って来れないとはな。アイテムバッグに着けていたが、いつも通り過ぎて忘れてた』
『アレを見てると効果があるんだなと実感出来るわね。ま、いつまでも見てないで、さっさと浄化してしまいましょうか』
『そうだな。あのまま置いておく意味も無いし、さっさと浄化してから焼いてしまおう。流石にアンデッドの素材は要らないし、使いたくもない』
俺とバステトは二人掛かりでアンデッドオークを浄化し、バカ犬の死体と纏めて燃やしていく。
それが終わったら骨を一緒に埋めて終わりとなる。
後はオークの集落があった場所まで行って、瘴気が一番集まっている所に浄化道具を設置するだけだ。
これでようやく一ヶ所目が終わりだが、先は長そうだな。
浄化道具の設置が終わったら、海に行って塩を大量に作ろう。
魚も獲れるといいが、それは実際に行ってみてからだ。
居るかどうかすら分からないし。




