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0072・オークを連れて町へ




 Side:長老の側近の孫



 オレ達はオークに食われるバカを見ながら、ゆっくりと息を整える。

 これからも走らなきゃいけねえし、まだまだオークどもの体力も残ってる。

 そう簡単にこいつらをどうにかするなんて出来ねえ。


 にも関わらず、あのバカはオークに手を出して追いかけ回されていたらしい。

 何も知らずに怨みだけで動いた結果だそうだが、あの老害と同じくらい頭の悪いヤツだな。

 同じように碌な事をしないぜ。



 『で、どうするんだ? このままオレ達はオークどもを町に引っ張って行くぜ? そもそも西の集落は何の関係も無いんだ。そっちに擦り付けるのはクズのやる事だって分かるよな?』


 『当然だ、私とてそんな事をしたりなどしない。そもそも、あの愚か者が西に向かって逃げなければこんな事にはなっていなかった。まあ、その場合は我々が森で死ぬしかなかったのだが』


 『あれだけの数のオークだからな、どう考えたって勝てる訳がない。30もの群れなんて殺してくれって言ってるようなもんだ。何であのバカはオークの恐さを知らねえんだ? 普通はしつこく教えられるだろうが』


 『すまんが、それは分からん。……ヤツを食い終わったオークがこっちを向いたぞ。町まで引き寄せるのは仕方がない。ただ、ある程度からは落とし穴を掘るからな?』


 『そんな事したって意味あるかよ。落とし穴なんて前から準備しておかなきゃ駄目に決まってるだろ。戦闘中に掘れるのなんて精々少しだけだ。足を引っ掛けたらラッキーという程度でしかないぞ!』


 『それでもやらねばならんのだ。町に近付くオークを少しでも減らさねば、町そのものが壊滅しかねん。あの愚か者の所為だとはいえ、今さらそんな事を言っても意味は無い!』


 『大変なこったな。ま、オレ達には関係ねえ。ある程度まで行ったら、後は逃げさせてもらうぜ。最早オレ達には未練も何も無いんでな』


 『そうか。逃げる際には気をつけろよ』


 『ハッ! アンタは自分の命の心配をしてろ』


 「「「「「「「「「「ブルァァァァァッ!!!!!」」」」」」」」」」


 『来るぞ! 町の方へ逃げろ!!』



 オレ達は狩猟班のリーダーの合図で必死に逃げる。

 ここはまだ町と西の集落の間ぐらいだ。

 こんな所で放置したら西の集落に迷惑が掛かる可能性が高い。

 だからこそオークども全てを連れて逃げるしかねえ。


 面倒なこったが、流石にこいつら連れて逃げるくらいならどうにでもなる。

 後は町の奴らに任せてオレ達はオサラバだ。

 散々オレ達を馬鹿にして見下してきた奴らなんぞに力なんて貸すかよ。


 都合の良いようにオレ達を利用しやがって、町の奴らは全員碌な奴らじゃねえ。

 仲間達の親も、オレの親も同じだ。

 親父は謝ったが、だからといって助けてもくれなかったからな。

 他の連中と大して変わらねえ。


 結局は自分が大事なんだから、オレ達が自分を大事にしたって町の奴らに文句を言う資格なんて無い。

 オレ達はオレ達の為に生きる。

 二度と町の奴らに都合の良い使われ方なんてしねえ。


 そう思いながら走っていると、前から犬と猫が来るのが見えた。

 どうやら町からの援軍が来たらしい。

 これでオレ達のやる事は終わりだ。後は奴らがどうにかするだろ。



 『リーダー! ここで何としても止めます!! でないと町が壊滅しかねません!』


 『分かっている! 皆の者、何としてもここで止めるんだ!!』



 オレは仲間達と顔を見合わせ、戦場になりそうな場所から遠ざかる。

 そこで息を整えながら戦いを見て、チャンスと分かったらさっさと西に帰ればいい。

 まったく、いちいち面倒臭い事になったもんだ。


 そう思っていると戦いが始まったが、同時に犬と猫がこっちに来た。

 オレ達にいったい何の用だ? こっちには用なんてねえぞ。



 『お前達なにをやっている! 何で戦おうとしない!!』


 『てめぇらや町がどうなろうが知った事か! オレ達はオレ達の為に生きるんだよ!! 散々オレ達を都合よく使ってきた奴らに味方なんてする訳ねえだろうが!!』


 『そうだ! 今さらオレ達に戦えとかよく言えたな!! 散々オレ達を利用していただけの奴らが、どのツラ下げてホザいてやがる! ふざけんじゃねえぞ!!』


 『いい加減にしろってんだ!! オレ達は町を出たし関係もねえ! 何より今回の事はてめぇらが原因じゃねえか! オレ達は関係ねえんだよ!!』


 『オレ達にゴチャゴチャ言ってる暇があったら、さっさとお前らが戦えや!! 他の奴らが決死の覚悟で戦ってるのに、てめぇらは見て見ぬフリか?』


 『くっ……!』


 『お前ら、二度と町に戻れると思うなよ!!』


 『ハッ!! オレ達は既に町を出たっつってんだろ! てめぇらはさっさと行って戦ってこい!! ここでオレ達を相手にする事で逃げようってハラか?』



 犬と猫は悔しそうな顔をした後で、戦場の方へと移動して行った。

 しかし戦いたくないのか、戦ってる奴らに近付いて戦うフリをしているだけ。

 結局、町の奴らの大半はあんなものだったんだな。それがよく分かる。



 『狩猟班の奴らが必死に戦ってるってのに、他の奴らは何の役にも立ってやしねえ。にも関わらず町では偉そうな顔してオレ達をバカにしてやがった。本当に町の奴らは救いようが無えな』


 『まったくだ。狩りがどれだけ大変かも分かってねえ奴らが多すぎる。特に町の修繕とか水瓶とか作ってた連中は役に立ちゃしねえ。水は確かに必要だが、魔法が使えりゃ誰でも出来るこった』


 『その程度でオレ達に対して偉そうにしてやがったんだからな、いい気味だぜ。どれだけ戦いが大変か思い知りやがれ』


 『オークの数を減らしてたのはオレ達だけだからな。一番大変なところをオレ達に押し付けて逃げてやがった連中だ、それだけの苦労をすりゃいいんだよ』


 『さて、息も整ったし、そろそろタイミングを図って逃げ出……あのクソども、ふざけんじゃねえぞ!!』



 さっき絡んできたゴミが、オレ達の方に向かってオークを引っ張ってきやがった!!

 クソが! 碌な事をしねえゴミだぜ!! だったらてめぇらだけで死ねや!!


 オレは【土魔法】を使って犬と猫の足下に穴を掘ってやる。

 思っていた通りに転んだバカどもは、オークに追いつかれて鷲掴みにされた。



 『今の内にさっさと逃げるぞ! このままじゃオークどもがオレ達を追っかけてくる! まずは町の方に逃げろ、急げ!!』


 『『『おうっ!!!』』』


 「ギャヴァ!?!!?」 「ギニャァァ!?!?!!」



 早速食われたか。

 バカどもが死んだ事はどうでもいいが、このままだと碌な事にならねえ。

 あのバカがやった事が始まりだが、このままじゃ町が壊滅するな。

 しかしオレ達の所為じゃねえし、関わりも無い。


 むしろせっかく新しい生活に馴染もうとしていたのに、町の奴らはとことんオレ達に祟りやがる。

 あの町に生まれた事自体が、オレ達の不幸の始まりなのかもしれねえな。

 あの町にさえ生まれなきゃ……。


 チッ、今はそんな事を考えている場合じゃねえ。

 とにかく生き残る為に町へと連れていく。

 今さら町の奴らが云々とは思わねえし、そもそも狩猟班のリーダーは町の奴らに伝令を飛ばしたって言ってたしな。


 なら町まで連れて行って問題ねえだろうよ。

 そもそもオレ達の所為じゃねえしな。

 いや、森の中に入ってオークの目を眩ました方が楽か? あいつらも鼻が良いが、それでもオレ達ほどじゃねえ。


 よし、そうなっ、なんだアレ? ……もしかしてアンデッドオークか?


 クソッ! 最悪だ! まさかアンデッドオークが生まれてるなんてよ。

 しかも町の中にオークどもが入り込んでるじゃねえか!!



 『駄目だ、町は使えねえ!! オークどもの森に行くぞ! そっちでオークどもの目を眩ませて撒くんだ。それしか方法は無え!!』



 クッソ! 何でこんな事になったんだよ!!


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