0071・閉じられた建物・地下
Side:イシス
地下の通路を辿っていく俺達は黙々と歩く。
【ライト】で照らしているので十分に見えているが、周りは土壁で補強などはされていない。
それでも長い時間が経っても崩落はしていないんだから、それなりに強固に作ってあるのだろう。
途中でブレーキを掛けていたから良かったものの、これは結構な深さまで潜ったんじゃなかろうか?
かつては近くに色々な建物があったのだろうし、それの邪魔をしない深さにこの通路はある筈。
とはいえ、その高さはたった二回で下りるような高さではないと思う。
よくもまあ、あの棒は体重を支えられたもんだ。
思い出してみれば錆びついてもいなかったし、あれも特殊な金属で出来ていたんだろうか?
もし戻れるなら取って行こうかと思うぐらいには優秀そうだ。
そんな事を考えていたら、行き止まりに辿り着く。
金属製の扉があるんだが、どうやら鍵が掛かっているらしくノブを回しても開かない。
ついでに中から「カタカタ」と音が鳴っている。
正直に言って開けていいものか迷っているんだが、アレを戻るのもイマイチ気が進まないので、<魔柔鉛>を使って型をとろう。
<時空の狭間>に戻った俺達は、<物品作製装置>の部屋に行き<魔柔鉛>を作製。
次に惑星に戻って鍵穴に差し込んで型をとったら、戻って型を元にした鍵を<魔鉄>で作る。
再び惑星に戻った俺は、バステトを床に下ろしてから今後の作戦を確認。
「バステト。この部屋の中で音がカタカタ鳴ってるって事は、中に何か動いているものか、動いているヤツが居る筈だ。生憎と魔力を放射しても分からんので、魔石を持ってない生き物なのか、それとも機械が動いているだけか。その辺りは不明だ」
『厄介な事よね。魔力でもうちょっと分かる様にならないかしら?』
「魔力を放射するんじゃなくて、魔力の紐を伸ばしてみるか? それなら何か分かるかもしれないが、時間が掛かると思うぞ?」
そう言いながらも俺は、魔力の紐を使って部屋の中を探る。
目隠しで手だけを使って触覚で探るようなものだから、あまり意味が!? って、コレは瘴気か!?
俺はすぐに瘴気と思しき物に対して魔力で包み、浄化を念じて相殺する。
そこまで強い瘴気じゃなかったのか、二度消すと瘴気は失われたのか感じなくなった。
「ビックリしたが、中に瘴気を持った何かが居たぞ。既に浄化したけど、いったい何が居たんだ?」
『こっちにも瘴気を持ったヤツが居たわ。私も浄化したから今は感じないけど、念入りに部屋の中を調べてから入るべきじゃない?』
「だな。流石に中にアンデッドが居る可能性が高いんじゃ、迂闊に鍵を開ける訳にはいかない。それにしても厄介な事だよ、まったく」
俺は愚痴りながらも魔力の紐の先を網の形に変えて、投網のようにして部屋の中へ放り込む。
バステトの魔力とぶつかってしまったが、その感覚はお互いに分かっている。
俺はバステトに投網の解説をし、バステトも理解したのか投網の要領で部屋の中を探す。
しかし見つからなかったので、一旦<時空の狭間>へと戻って休み、再び地下の部屋前へと戻る。
投網式の魔力投射は、魔力の紐より当然消費量は多い。
もちろんそれが重いほど魔力量の少ない俺達じゃないが、アンデッドが居る可能性を考えて、万全の状態で部屋の中へと入りたかった。
「よし! それじゃ、鍵を開けるぞ?」
『ええ、いいわよ』
俺は鍵を差し込んで捻ると、鍵はあっさりと開いた。
俺は鍵を抜くと、ノブを回してゆっくりとドアを引く。
開いたドアから見えたものは、部屋の中に散らばっている白骨死体と大量の物と奥のドアだった。
「腐ったような臭いが酷いな……。これはもしかして、中で死んでアンデッドになったって事か? 死因は分からないが、死体が腐って骨しか残らなかったのは分かった」
『ここまで来てるヤツが居るって事は、これって人間よね? つまり<ムンガ>に殺されずに助かったって事かしら? 結局ここで死んでるけど』
「ああ、そういう風にも考えられるな。もしかして<避難計画>とは別に、ここはさっきのビルの奴等が避難する場所だったのか? そう考えれば開けた缶詰らしき物も見えるし、ガラス瓶みたいな物も沢山見えるな」
俺はせっかくなので、【クリーン】を使いながら缶詰やガラス瓶などを収納していく。
こういうのも素材としては役に立つので、十分にリサイクルして使える物だ。
どうせここに置いていてもゴミなのだから、俺が持って帰って有効利用した方が良いだろう。置いていても意味が無い。
よし、理由はそんなところで良いだろう。
やってる事は盗人……いや、ゴミ拾いだからセーフか。
色々な缶などがあったが、中には一斗缶のような物まであったので全て回収。
それなりに金属の種類が増えそうだが、それは横に置いておくとして、回収し終わった俺達は奥のドアに近付く。
「この先にもアンデッドが居るかもしれないから……いや、感じないな。となるとアンデッドは居なさそうだ。なら……動くだと!?」
「ニャアッ!?」
奥のドアの前でバステトに話しかけていたら、突然部屋の中の白骨死体が動き始めた。
俺とバステトは素早く二体の白骨死体に対して向くと、すぐに浄化して瘴気を消滅させる。
すると、再び唯の骨に戻った。
「もしかして、ここは瘴気が多いのか? アンデッドのように溜まっていると分かるんだが、漂ってる瘴気の量は分からないんだよな。<瘴気発見器>も、あくまでも瘴気の濃い方向を示すだけだし」
『<ムンガ濃度測定器>は? ……ってアレは、ムンガを測定するだけだもんね。なら駄目か……』
「この白骨死体を壊せば、多分だけど復活はしないと思うんだよなー。とはいえ……いや、ここはアンデッドになりたくないと言っていると思おう。実際に死んだ後もアンデッドとして動くって嫌だろうしな」
俺はアイテムバッグに入れた一斗缶を取り出して短剣で蓋を切り開き、中に骨を入れたら足で踏み砕いていく。
全ての骨を入れて踏み砕いたら、そのままアイテムバッグの中へと仕舞う。
コレは海に流せばいいだろう。
白骨死体というかスケルトンを粉々にした俺は、奥のドアの鍵を開けて外し、ノブを回してドアを開けた。
何故かこちらからの内鍵だったので、また合鍵を作る必要は無くて済んだ。
ドアの先は再び通路となっており、俺達は再び歩いて進む。
あの部屋に辿り着くまでにも結構な距離があったのに、再び結構な距離を歩かされそうだ。
いったい何処に繋がってるんだろうな、この通路。
『また長い距離を進まなくちゃいけないみたいだけど、何でこんな所に通路なんて作ったのかしら? いえ、そもそもこの通路って要るの?』
「さあ? 俺に言われても困るし、俺だって答えを知らないからなー。そのうち終わりは来るだろうから、今はひたすら歩くしかないだろうさ。地下を延々と歩くって微妙な気分だけどな」
流石に陰鬱な気分にはなってこないし、鉱山と比べれば遥かにマシだが、それでもあんまり気分の良い状態ではない。
それでも黙々と歩き続け、ようやく終端が見えてきた。
一番奥には梯子があり、どうやら外へと出られるようだ。
バステトと顔を見合わせた俺は、走って梯子の下へと行くが、その場所からは変な声が聞こえてきた。
『バステト。上から「ブルブル」とか「フゴフゴ」とか聞こえないか?』
『聞こえてる。これって間違いなくオークの声よ。つまり、あそこからオークの集落まで繋がってたって事ね。いったい何故かは知らないけど、それよりも上のオークをどうするかよ』
『そこまで近くから聞こえたりはしないから、おそらくオークが話している場所からは遠いんだろうけどな。梯子をある程度登ってから、魔力を放射して周囲を確認した方がいいだろう。どれぐらい居るか分からん』
『場合によれば私達が勝てないほど居るかもしれないからね』
『そうなれば、上に上がった後は逃げの一手だな。全力で逃げれば大丈夫だろう。その後に反転して逆撃だ』
今後の作戦を決めた俺達は、俺がバステトを首に巻いて梯子を登る。
ここからは慎重に動かないといけない。
ゆっくりと行こう、ゆっくりと。




