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0070・閉じられた建物・その2




 Side:イシス



 俺とバステトは<獣人計画>について話すも、バステトもその片鱗すら聞いた事が無いとの事。

 やはり計画だけで終わったっぽいと把握。

 <今次計画書>を読み終わった俺は、次に<周辺地図>を見て愕然とした。



 「地図を見て分かったが、南に海があるじゃないか! 海があるって事は塩が作れるんだから、行って塩作りしてこないといけないぞ。しかし、それには結構な時間が掛かるな? アイテムバッグで簡単に海水をゲット出来ないもんか……」


 「それは構いませんが、海水で塩を作り終わった後は、旅先の惑星の海にでも水を戻しておいて下さい。必要な塩程度なら減らしても問題は無いでしょうが、水を減らすと結構な問題になりますので」


 「ああ、惑星の水分をそのまま減らす事になるもんな。そりゃマズいわ。塩は良いならゲットして、水は戻しておくか。どのみち水はここに無限にあるんだし、あの星の環境を悪化させたいわけでもないしな」


 『水を取っていくと環境とやらが悪くなるの?』


 「惑星一つの中で色々と巡ってるんだ。海水が干上がり蒸気になって、それが雲になって陸地へ移動。それが寄り集まって雨になって降る。そしてそれが川から海に流れて再び雲に。分かりやすく言えばそんな感じだ」


 『成る程。水が減ると雲が減るって事ね、そして雲が減ると飲み水が減る。……うん、それは駄目ね。戻さないといけない。流石に飲み水が減ると、喉が渇いて危険よ』


 「そうそう。だから水は戻さなきゃいけないんだが……この地図のここ。何だコレ?」



 俺は得られた地図をジッと見ていたんだが、昔の地図の所為で建物などが沢山描いてあり、今の状況や環境と一致しない。

 その所為で困ってたんだが、変な印がしてる点があって気になった。


 この点の現在の場所は………森のオークの集落か?

 間違い無い、これオークの集落がある場所だぞ!



 「地図の変な点というか印の場所、今のオークの集落に近いぞ。瘴気が溜まるっていうか集まる場所だが、何でこの時代にこの場所に印がしてあるんだ? ヌン、時代によって瘴気の集まる場所って変わるのか?」


 「変わる場合もありますが、変化はし辛いです。瘴気というのは風などの影響を受けません。受けている影響は魔力の流れですが、惑星を巡る魔力の流れ自体が自然環境の影響を受けませんので」


 「うん? って事は、魔力の流れと瘴気の流れは同じって事か。となると、瘴気が溜まっている場所は魔力が溜まってる場所って事かよ。それってもしかして<龍脈>ってヤツじゃ……」


 「そうとも言われますね。他にも<星脈>とも<霊脈>とも呼ばれたりしますが、だからこそ浄化しなければいけないとも言えるのですよ。もちろん全てを浄化しなければいけない訳ではありませんが」


 『全てを浄化しなくてもいい?』


 「ええ。結局は巡っています。それ故に複数箇所で浄化が始まれば、巡っている瘴気も浄化されていきます。フィルターを想像すれば分かりやすいでしょう。一ヶ所でもフィルターが設置されたら、全体に影響が出ますからね」


 『巡っているから、一ヶ所でも浄化が始まれば次の場所へは瘴気が行かない?』


 「そこまで完璧には難しいかもしれませんが、一ヶ所でも浄化が始まれば惑星全体の瘴気量は減ります。それが複数箇所になれば、どんどんと瘴気の量は減るという訳ですね。ですから一ヶ所でも浄化道具を設置する事が必要なんですよ」


 「その設置する浄化道具もなるべく強力な方が、瘴気を沢山浄化出来るんじゃないか? <浄銀>よりも<清浄銀>の方が良いだろ?」


 「それはそうですが、勘違いしてはいけません。<清浄銀>の方が効果が高くとも数が少なければ、数が多い<浄銀>の方が効果は上なのです。惑星を巡る瘴気の量は多いですので、それなりの個数を必要としますからね」


 「となると、<浄銀の輪>はなるべく多く設置しておく必要があるんだな?」


 「そうですね。できれば袋に入れて埋めるか、それとも箱の中に入れて埋めるのが良いでしょう。腐食しないようにしなければいけませんし、箱の素材は<魔鋼>が良いかもしれません」


 「了解だ。鉄は結構採れてるし、銀も結構採れてる。金は僅かだが、<ヴェリアッド>という金属もあったな。聞いた事が無い物なんでサッパリだが、いったい何なんだろうな? <クロム>とか<チタン>なら聞いた事があるが……」



 俺は<物品作製装置>に近付き、<魔鋼>で出来た10センチ四方の箱を作る。

 その中に直径4センチの<浄銀の輪>を入れるのだが、ヌンのお薦めで5個入れておいた。

 これぐらいで良いらしい。


 とりあえず作り終わったので、俺とバステトは魔法陣の部屋に戻り惑星へと転移。

 ビルの調査を続ける。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「この箱ビル、まだ上があるんだよな。外から見てると三階建て程度の大きさはしてるんで、何処かに階段が……っと、あった」



 俺達は階段を上がって上の階へと進む。

 上がった先はガランとしていて、大きな部屋が一つあるだけだった。

 というより階層の半分が部屋で、もう半分が唯のフロアって感じ。

 何でこんな形なんだか……。


 俺は部屋の扉に近付きノブを回すと、あっさりと回ったので扉を開ける。

 中には……何も無かった。

 机も何も無く、ガランとした空間が広がっているだけだ。



 「どういう事だ? 二階の部屋の中には机とかが沢山残されていたのに、何故三階には何も残ってないんだ? 流石におかしい。何かがあったとしても、綺麗に部屋の中の物を持ち出すとは思えないんだがな?」


 『確かに変ね? 逃げ出すような何かがあったって、部屋の中の物を綺麗に持ち出すなんて事はしない筈。という事は、誰かが持って行ったって事?』


 「それしか考えられないが……うん? 何だここ? 奇妙だな……」



 俺とバステトはガランとした部屋の中に入って調べていたんだが、俺は部屋の壁の一部に引っ掛かりを覚えた。

 ふと気付いたんだが、この部屋の中ってフロアより若干狭くないか? という事は……。



 「やっぱり、この壁動くぞ。まさかスライドする壁だとは思わなかった。………開いたのはいいが、中には棒と穴か。まるで消防署のアレだな、消防士が出動する時に使うヤツ」



 何ていう名前かは知らないが、下に繋がっている棒を下りていくと、消防車の所まで下りられるアレ。

 あれとそっくりなのがここにあるんだが、下は真っ暗で分からない。

 しかし、こんなものが壁の中に隠されているとはな。


 俺はバステトに首に来るように言い、バステトは襟巻きのように首に巻きつく。

 そして俺は棒を持ち、一気に下へと滑り下りた。

 結構な距離を下りると着地したが、【ライト】で照らすと、隣に同じ物があった。


 再びそれを使って下りた俺達は、どうやら地下まで下りたっぽいが、よくこんな危険な物を設置したなと思う。

 結構な高さを下りたぞ? マジで。


 三階の高さから下りるって事を本気で考えていたのだろうか?

 何を考えてこんな物を作ったのか知らないが、もう少し考えて設置してもらいたいもんだ。


 着地した俺は、すぐに【ライト】を使って辺りを照らす。

 すると、通路があって先へと進めるようになっていた。

 この通路が何処に続いているかは分からないが、それでも進んで行くしか道が無い。


 戻ろうと思ったら、あの棒を伝って上まで登る必要がある。

 【身体強化】を使えば登れるだろうが……流石にそれは面倒臭い。

 出来ればこの先に別の脱出口がある事を期待して、進もう。


 バステトを首に巻いたままではあるけど、そこはそれ、逃げるならこの方が良い。

 二人纏めて逃げられるし、気にせずに一気に逃走できるからな。

 バステトを気にしなくていい分だけ楽だ。


 通路の先へと歩いていくも、この通路………長いな。


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