0069・怨みと憎しみと悪因悪果と
Side:オークに追いかけられている犬
クソォ!! オーク如きオレが一捻りだと思ったのに、こんなに強いなんて聞いてないぞ!
祖父さんを見殺しにしたクズどもでも倒せるんじゃなかったのか!
だったら、オレなら楽勝の筈だろ!
それが何であんな大量のオークに追いかけられなきゃならないんだよ!
しかも追いかけてくるオークの後ろから、更なるオークが追いかけてきやがる。
本当に何でこんな事になったんだ!!
オレは必ず祖父さんの仇討ちをするって誓ったんだ。
なのにオーク一匹満足に殺せやしない。
おかしいだろ! 祖父さんを見殺しにしたヤツだって殺せる程度の相手だろうが! 何でこんな事になってるんだよ!
チクショウ! オレが見殺しにしたクズどもより劣るっていうのか?
そんな事は無い! 絶対に無いんだ!!
あいつらよりも役に立つ、オレは見殺しになんてしない強さを持つんだ! そうやって鍛えてきたんだぞ!
なのに何で無様に逃げなきゃいけないんだ!!
こんな事は何かの間違いだ! あってはいけない事なんだ!! このままじゃオレが祖父さんの血筋を傷つけちまう。
祖父さんの孫がクズだなんて事になったら、見殺しにされて無念の内に死んだ祖父さんに顔向け出来ない。
なんとしても町には向かわないようにしないと。
でないとオレは………?
アハハハハハハハ!!! これは祖父さんの導きだ! コイツらがこんな所に居るなんてなぁ!!
貴様らにぶつける為にオレはこっちに来てたんだ。
これは間違いなく祖父さんのお導きだ。
お前らはオークに殺されりゃいいんだよ!!!!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Side:長老の側近の孫
今日も元気に狩りに出掛けるんだが、昨日はちょっと良い雰囲気になれた子が居たんだがなぁ。
あんまり盛り上がらなかった。
まあ、急いではいないから気にはしないけどよ。
それでも今までとは雲泥の差だぜ。
オレ達にも番が出来るかもしれねえってんだから、本当に町を出て良かった。
他の奴等もそれぞれでいい子が見つかったらしいし、本当に何でもっと早く町を出なかったんだろうな?
今となっちゃ不思議で仕方がないぜ。
あんな所に居てもオレ達の幸せなんて無かったんだ。
にも関わらず、何故あんな所に居続けたのかって考えたら……たぶん意地を張ってたんだろうなぁ。
今なら何となく分かる。
あいつらがオレ達を無視できなくしてやる。
そんな事しか考えていなかったって、今ならハッキリと分かる。
そんな事をしても無駄だし、感謝もしないような奴等だからな。
意味なんて無いのに。
よくもまあ、奴等の都合の良いように使われてたもんだ。そんな自分に呆れてくるぜ。
さっさと出るのが一番良かったんだ。
今幸せなのを考えたら、すぐに分かるこった。
おっと、この臭いは……うん? 前から何か来るぞ?
『おい、止まれ! 前から何か来るぞ!』
『あん? ……本当だな。何だあれ?』
『………何かに追いかけられてるのか? 遠すぎてよく分からねえな。もっと近付いてくりゃ分かるが、戦闘態勢になっておこうか。いつでも逃げられるようにしておかないとマズい気がする』
『何か後ろの方についてきているのが居るな? こっちが風上の所為で臭いが分からねえ。臭いさえ分かったら判別できるんだが……』
『しっかし何かに追っかけられてるヤツが、何でこっちに来るんだ? もしかして魔物を集落に擦りつけようとしてるんじゃねえだろうな?』
『なら町の奴等か? だとしたら舐めた真似しやがって……』
『オークに手を出して逃げたのか? それなら大量に来る理由も分かるが……』
かなり近付いてきたな。
もう少しで………って、ありゃオークじゃねえか!
しかも先頭で追っかけられてるのは、誰だ?
何か見覚えがあるような気がするが、若いヤツか。
『見つけたぞ、クズども!! アハハハハハハハ!! お前らにこのオークどもをぶつけろって、祖父さんが言ってるんだよ!! だからオレと一緒に死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
『あいつ、あの時に死んだヤツの孫じゃねえか!? オレ達が見殺しを命じられた時の!』
『チッ! そういう事か! あの町を出たにも関わらず祟ってきやがる。マズいぞ、どうする!? 集落には迷惑は掛けられねえ!』
『町の方に行くぞ! アイツがオレ達を狙ってるなら、オレ達が行く方向に向かってくるだろ! 集落の方には絶対に近寄らせるな!!』
『『『おうっ!!』』』
オレ達は町の方向に向かって一気に駆け出す。
このまま追いかけられているヤツを行かせるのはマズい。
そんな事をしたらオレ達の所為で集落が壊滅しちまう。
流石にそんな事は許せねえ。
だいたい見殺しが気に入らねえなら、ぶつける先はあの老害だろうが。
何でオレ達の方に来やがるんだ?
もしかして誰か入れ知恵したヤツでも居るんじゃねえだろうな? オレ達の所為だって。
ふざけんなよ。
もし居たら、町の奴らはやっぱり全員クズでしかねえ。
ま、オレ達にはもう関係ないんだけどな。
『よし、あのバカとオークどもが反転したぞ。このまま町に擦り付けてやれ! 元々向こうが連れて来たもんだからな、正しい所に送り返すべきだろ!!』
『おう! まったくもって、その通りだ。だが問題は、あのバカの体力が落ちてきてるってこった。このままだと町に戻る前にオークに食われるぞ!』
『アレが喰われるのはどうでもいいが、中途半端な所で食われるとオークがどっちに行くか分からないぞ。森に戻る可能性が高いが、だからといって必ず戻るとは限らないしな』
『見えているオレ達に寄ってくるだろうから、このまま町まで引き連れて行くしかないだろ! 奴らの所為なんだから、奴らに何とかさせろ!』
『だいたいオークどもに迂闊に手を出さない、それは常識の筈だろうが! なんであのバカは手を出して追っかけ回されてるんだよ!』
『知らないが、前から犬が来るぞ! 気をつけろ!!』
オレ達は町の犬どもに近付くが、そのままスルーしようとして声を掛けられた。
いちいち余計な事をすんじゃねえ、って狩猟班のリーダーじゃねえか。
こいつはそこまで悪いヤツじゃないんだよな。
『お前達、いったい何処に居たんだ? いや、それより何故こっちに走ってきてる!?』
『そりゃ、あのバカがオレ達を追っかけてくるからに決まってるだろ! オレ達が見殺しにたのが気に入らねえんだとよ! だからオークに殺されろなんてホザいてたぜ?』
『何て事をしてるんだ……。それより町に向かってるって、お前達まさか!!』
『まさかも何も、町の奴らの失態なんだから、町の奴らが責任をとるのが当たり前だろうが! オレ達には何の関係も無えよ!』
『待て! 我らが悪いというのは分かる。だが町に持って行くのはマズい!! 町の者への知らせは出したが、だからと言って逃げられたかどうかは分からん!』
『そんな事は知るかよ! オレ達は既に西の犬の集落に受け入れられてる! てめぇらがどうなろうが知った事か!!』
『そうだ! 責任だけ押し付けて逃げたてめぇらがどうなろうが、どうでもいいっての!!』
『正気か!? お前達の親も居るんだぞ!!』
『その親はオレ達を平気で見捨てたクズじゃねえか! そんな奴らが死のうが知った事か!!』
『てめぇらみたいに自分さえ良けりゃいい奴らなんぞ、オレ達ゃ今後一切助けもしねえし、どうなろうが興味なんてねえよ!!』
『お前ら……』
『世の中なんて、そんなもんだろうが! 誰かを助けもしねえ奴らは、自分も助けてもらえねえんだよ! てめぇらはオレ達に何かを言う資格なんて無え!!』
『………』
「ギャン!? ギャウー!! ギャヴァッ!!?!??!?」
『クッソ! こんな所で食われやがって!! まだ町まで距離があるじゃねえか!!』
『仕方ない。奴らの動きを見て、次の行動を決める。それまでに息を整えろ!』
このままじゃマズいぞ。
少なくともオークが30以上いやがる。町の狩人全員で戦っても勝てやしねえ。
何とか何処かで逃げないとマズいな。
どうするか……。




