0067・町の様子
Side:町の猫(狩人)
我らは一昨日から始めた狩りで、少しはオークを狩る事が出来たが……。
あまりにも狩れた数が少ない。
一体だけで移動しているオークが少なく、大半は2体一組。
その所為で手を出せるオークが少ないのだ。
『それで、少しはオークの数を減らす事が出来たか?』
『申し訳ございません。思っているよりも一体だけのオークというのは少なく、多少の数は狩れましたが……』
『む……。それほど一体だけのオークは数が少ないのか? では、あの愚か者の孫はどうやって………いや、あの孫も一日に一体か二体だけであったか』
『はっ。ですので元々オークが一体だけで動き回るなど、数は少ないのだと思われます。だからこそ、彼の者らも慎重に一体だけの者を狙っておったのでしょう』
『成る程な。それでも少しずつ数が減らせるならば構わん。犬どもよりも手柄が挙げられればそれで良い。……ぬっ?』
猫長に報告を上げていたのだが、誰か来たな。
あれは……長老の側近の配下の一匹か。
となると長老からの呼び出しか?
長老がわざわざ呼ぶなど……そうか、あの愚か者が長老を動かしたな?
『猫長、長老がお呼びです。至急来られるようにと』
『相分かった。すぐ行く』
猫長は「ニヤリ」と笑うと、側近の配下の先導についていく形で歩いていく。
少なくとも報告は終わりでいいらしい。
やれやれ、面倒な事を言われる前にとっとと戻るとするか。
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Side:長老の側近(猫長)
長老の下に向かうと、あの愚か者がこちらを睨みつけておった。
出し抜かれた事にようやく気付いたか? 愚かなものよ。
その失点を回復する為に私を糾弾しようと呼んだのだろうが、甘い甘い。
『そなたに聞きたい事がある。配下の者をオークの集落の付近に派遣し、オークを殺させておるらしいが……何故だ』
『オークの数を減らす為でございますな』
『何を勝手な事を!! オークどもがこちらを攻めてきたらどうするつもりだ!!!』
『………』
『何とか言ったらどうだ!! 勝手な事をしおって!!!』
『私は長老に従っているのであって、貴様に従っている訳ではない。いったい何を勘違いしておるのだ? 私は猫長だぞ。いつ長老でない者に従うなどと決まったのか、参考までに聞いておきたいのだがな?』
『ぐっ……!』
『はぁ……。オークを減らす為とはいえ、こちらを攻めて来るという危険は確かにあるぞ?』
『放っておいても変わりませんな。あの人間とやらが何れオークの集落に手を出すのは決まっている事。ならばそれより前から少しでも数を減らしておけば、それだけ町への危険は減らせますからな。私はそれをさせたに過ぎませぬ』
『ふむ、成る程。確かにそれはそうじゃ。あの人間の方はオークの集落に行くと言われておったし、オークの集落を攻めた場合、如何になるか分からぬ。数を減らしておいた方が町は安全か』
くくくくくく……。
普通に考えれば当然そうなる。
長老は愚かではない、道理で話せばきちんと通るのだ。
あの愚か者は怒りに震えておるが、私の知った事ではない。
そしておそらくだが、同じ事を指示するであろう。
こちらとしては成果が芳しくなかったのでな、ちょうど良い。
少し早い気はするが、さっさと犬どもに渡してしまうか。
我らは安全にオークの数を減らしたのだ、後は奴等が失敗するのを待つだけよ。
『それでは人間の方がオークの集落を攻めるまでに、なるべく数を減らしておくという事じゃな?』
『はっ。かつてのアンデッドの時の二の舞は御免ですからな。今度は誰が酷い目に遭うか分かりませぬので、出来得る限り数を減らさねばなりませぬ。おっと、そういえばあの時に罪を押し付けられた者らは、最近とんと見なくなりましたなぁ……』
『貴様!! 何が言いたい!!!』
『はて? 私は最近あの者らの顔を見ぬなと思ったまで。何か怒る事でもありましたかな?』
『ぬぐぐぐぐぐぐ……!!』
くくくくく……愚かなものよ。
自らわざわざ傷口を抉りに来るとはな。
頭が悪すぎるわ。
『オークの数を減らすのは構わんが、町に来ぬようにしなければならんぞ?』
『そこは配下の者にも何度も命じております。無理はするなと、決して命を粗末にするなと言っておりますとも。そういえば彼の者らが居らぬようになって、随分と狩りの獲物が減っておるようですが……大丈夫ですかな?』
犬の者どもは顔色が変わったの。
かつては愚か者の孫が随分と犬の側の狩りの成果を押し上げておった。
しかしここ最近見んという事は、おそらく何処かへと逃げたのだろう。
当然であろうがな。
あやつらは、あまりにも不遇にされ過ぎた。
今さら戻ってこいなどと誰も言えまい。
言ったところで奴等が聞くとは到底思えぬからな。
雌を宛がっておれば、まだ留める事が出来たであろうが……。
『ふん!! 貴様に心配される事など無いわ、いちいち我らの事に口を出してくるな!! あのような役立たずが居らずとも、我ら犬族には何の問題も無いのだ!!!』
『そうですかな? それならば良いのですが、他の犬族は随分と顔色が悪いようですぞ? ま、優れた狩人が居なくなっておるのですから、普通は大問題なのですがなぁ……』
『はっ! しょせんは節穴でしかない貴様の目から見ればそうなのだろうよ!』
『そうですか、それならいいですな? ま、我らはこれからもオークの数を減らすのみ。それで、お呼びになられたのはそれだけですか?』
『うむ。オークに手を出しておる理由を聞きたかっただけじゃ。そして人間の方が手を出すのであれば、先に少しでも減らしておくは変な事ではない。呼び出してすまなかったの』
『いえいえ。それでは私はこれで失礼いたします』
ふふふふふふふ……あまりにも上手く行き過ぎたな。
ここまで阿呆が踊るとは思っておらなんだし、あそこまで犬どもが彼の者らを軽んじておったとは思わなんだわ。
今ごろ優秀な狩人が消えた事を知るとは思わなかったし、まさか私が言わねば気付いてもおらなんだとはな。
如何に愚かかよく分かるというもの。
あの阿呆だけではなかったとは。
まあ、それはよい。
あの調子では明日から早速、我らの身代わりをしてくれそうだ。
あまり多くを狩れんと言っておったからな、狩りの連中は引き上げさせるか。
危険を冒すのも馬鹿らしい。
代わりに犬どもが盛大に踊ってくれるだろうし、後は我らが町を守れば良いだけだ。
そうすれば功績はこちらに転がり、犬どもに対して批判は向くだろう。
その批判の矛先は……。
これでようやく次代の長老に我ら猫族を据える事が出来る。
別に今の長老に不満は無い。無いが、我らは猫族なのだ。
猫族の繁栄を考えるが勤め。
長老よ、貴方は悪い方ではない。
ただ己の側近とした者が悪すぎただけだ。
かつての時に責任をとらせるべきだったのだ、あの阿呆に。
それが出来なかった貴方もまた、アレと同じく評価を下げた。
切るべき者を切れなかった時点で、貴方の底は露呈したのです。
悲しいかな、底が露呈した以上は信奉はされぬ。所詮はその程度と思われてしまうだけだ。
長老の椅子はそれで済むほど甘くはない。
犬族は二代に渡り長老の椅子を手にした。
その事に驕っておるのであろう。
長老たる者、己を押し上げた側近でさえ、切るべき時には切らねばならん。
それはかつての長老達がやってきた事だ。
それが出来ておらぬ時点で……。
悪い方ではないが、そこ止まりでしかないのだ。
真に残念だがな……。




