0066・閉じられた建物
Side:イシス
十分に回復した後で惑星に移動し、俺達はさっさと鉱山を出た。
久しぶりに出た外は真っ暗で、現在時刻は夜中らしい。
俺とバステトは【ライト】を使って周囲を照らすと、一気に山を下りていく。
近くに魔物が居ても無視し、どうしても倒す必要があるのは新型の<魔力操作補佐杖>で【ヒートバレット】を撃ち込む。
新しい赤銅色の杖に変わっていると分かったバステトは文句を言って来たが、巨大Gの魔石が付いている事を言うと何も言わなくなった。
気持ちは分かるが、後で<エインス銅>の何かを作っておくか。
俺達は走り続け、犬と猫の町の近くまで戻ってきたら、次は東へと向かう。
鉱山と同じで真っ直ぐ東に行けば着くのかは分からないが、この辺りは平原なので見通しは良いから見つかるだろう。
多少疲れたら歩き、回復したら走るを繰り返した結果、夜の間に建物に到着した。
少し南だったが、概ね東と言ってもいいんじゃないかと思う。
何故鉱山だけと思わなくもないが、山の中は分かり難いんだろう。
閉じられた建物の見た目は箱ビルであり、入り口がしっかりと閉まっているようだ。
観音開きのドアだが、取っ手を掴んで引っ張っても開かない。
となると鍵が掛かっているとみて間違い無い。
どうしたものかと思い、一旦<時空の狭間>へと戻る事にした。
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「お帰りなさい、イシス、バステト」
「ただいまなんだが、ヌン。鍵を開けるにはどうしたらいい? 実は閉じられた建物は箱ビルのような形の建物だったんだが、どうも扉に鍵が掛かっていて開かない。扉を壊してもいいんだが……」
『イシスは探索が終わるまで、余計な連中を入れたくないみたいなのよね。扉を壊して入ると、他の連中も入れるようになっちゃうでしょ。それじゃ困るって事みたい』
「ああ、そういう事ですか。ならば<魔柔鉛>でも作って持って行けばいいのでは? 確か<物品作製装置>の作製可能なリストの中にありましたよ?」
「<魔柔鉛>?」
「ええ。魔力を流すと柔らかくなる鉛の一種です。それを魔力を流しつつ鍵穴に突き刺して型をとり、それを元に鉄か何かで鍵を作れば良いでしょう。それなら問題なく鍵が作れますよ」
「そんな便利な物があったのか。とりあえずさっさと作ってくるよ」
俺は<物品作製装置>の部屋に行き、<魔柔鉛>を作ると惑星へ移動。
ヌンの言っていた通りに型をとり、それを抜いたら<時空の狭間>へと戻る。
<物品作製装置>の部屋で箱の中に放り込み、一番下を見ると<魔柔鉛でとった型の鍵>とあったので、それを魔鉄で作った。
理由は魔鉄だと非常に錆び難いと聞いたからだ。
どうせ作るのに鉄しか使わないのだから、なら魔鉄で作っても問題は無いだろう。
あっさりと出来た鍵を手にして、俺は再び惑星へと移動する。
魔法陣の部屋で鍵が出来るまで待っていたバステトを連れ、再び惑星に移動した俺は、魔鉄の鍵を差し込んで捻………れなかった。
「硬いなぁ。鍵穴が錆びついてるのか? 仕方ない。魔力を流して魔鉄を強化したうえで、【身体強化】までして回してやろう」
俺は鍵を強化したうえで強引に回し、無理矢理に鍵を開錠した。
開いた瞬間「バキッ」っという音がしたが、鍵は壊れていないようだ。
これで壊れていたら、何の為に鍵を作ってきたか分からないところだったな。
俺は焦ったものの、壊れなかった事に安堵しながら鍵を抜いて扉を開ける。
ギギギギギギギ……という音をさせながら開くと、長い間ずっと閉じられていたからか、中に空気が吸い込まれる感じがした。
すぐにその感覚は無くなったが、どうやら相当の期間だれも入っていない事は確実のようだ。
何かある可能性もあるので慎重に調べよう。
『バステト。相当長い間だれも入ってないみたいだから、何が起こるか分からない。出来るだけ慎重に進むぞ』
『了解。ここにもおかしな虫が居るかもしれないし、気を付けるに越した事はないわ。あんなの二度とゴメンだし』
そりゃ俺もそうだけど、あんなのは二度と無いと思うぞ。
幾らなんでも同じ事をしている奴は他には居ないだろう。
研究が重複するなんて、国にとっても無駄だしな。
そんな無駄な金は出さないのが国ってもんだし、そんな金持ちなら世の研究者は誰も苦労しないだろうさ。
それはともかく中に入った俺は、扉を閉めて鍵をした。
中からの鍵は捻るだけの簡単な物だったので、すぐに閉めておく。
誰かが入ってきても困るしな。
【ライト】で照らされている範囲を見れば、そこは普通の会社の受付みたいになっていた。
建物自体がそこまで大きくないので狭いが、小企業のオフィスビルと考えれば間違ってはいないと思う。
何でこの建物だけが残っているのかは奇妙だが、とりあえず探索を始めよう。
俺達は一階の受付をスルーして、奥にある階段を使って二階へと上がる。
下への階段は無いので、おそらく地下は無いのだろう。
二階へと上がると廊下になっていたので歩くが、すぐ右に扉が見える。
ノブを捻ると簡単に開いたので、鍵が掛かっている訳ではないらしい。
引いて開けて中に入ってみると、そこには机が沢山あった。
『机が沢山あるって事は、ここは本当にオフィスビルだったんだな。しかし、なんでここの建物だけが残ってるんだ? 周りには一切建物は無いっていうのにさ』
『不思議よねえ。こんなに長持ちする建物を作れるなら、他にも作っている筈よ。なのに何故これしか残っていないのかしら?』
『さっぱり分からないが、とにかく何かないか探っていくか』
『それよりアイテムバッグに収納した方が早いんじゃない? 紙とかあって崩れても困るし』
『……確かにそうだな。纏めて突っ込んだ方が早いか』
俺はバステトの言う通り全てアイテムバッグに回収し、部屋の中の物を全て収めた。
何も無い事を確認したら部屋を出て、反対側である廊下の左の部屋へと入る。
こちらもノブはあっさり回ったので、錆びついている訳ではないらしい。
中は先程の部屋と同じだった為、再び全てアイテムバッグの中に詰めたら、一旦<時空の狭間>へと戻る。
<物品作製装置>の箱に手に入れた物を全て入れ、パネルから起動してウィンドウをスクロール。
一番下を見ると、そこには<今次計画書>と<周辺地図>と出ていた。
俺はすぐに両方を作製し、まずは<今次計画書>を読む。
これはどうやら小国の軍事的な計画書のようだ。
<ムンガ>の事も巨大Gの事も書かれている。
あくまでも計画だけなので具体的な内容までは書かれていないが、それでも幾つか知らないものも記されていた。
それが<避難計画>と<獣人計画>だ。
<避難計画>はともかくとして、<獣人計画>っていうのは何だ?
いわゆるゲームなんかで登場する獣人の事だとしたら、人間の遺伝子を弄るって事か?
正気かと言いたくなるが、マッドなヤツは何処にでも居るしなぁ。
それはともかく、どちらの計画も進捗率が2%とか4%なので完成はしなかったんだろう。
獣人なんて見てないしな。
それでも、あのビルはきっちりと調べる必要が出てきたな。
科学者はともかく軍のビルだったのなら、絶対に安全の事を考えている筈だ。
自分達に牙を剥く兵器なんて、軍人は絶対に認めない。
暴発などの際の安全性は、必ずと言っていい程に求めるのが軍だ。
使うのが自分達であるが故に、必ずと言っていい程に安全性を求める。
自分の身を危険に晒す武器など使えないのは当たり前だしな。
そういう意味では<ムンガ>に対抗する何かを、軍は用意していた可能性がある。




