0062・鉱山内部・その7 巨大G
Side:イシス
苦労をしたもののGの死骸を全て埋めた俺達は、縦坑の一番下から伸びている支道を見ながら悩む。
螺旋の道は右にあり、そこから北西南にそれぞれ道が分かれているんだ。
『バステト。最初にどっちに行く? どうせ全て見て回る事になるんだけど、最初に何処へ行くかは悩むもんなんだよなぁ』
『そう? どうせ全部見回るなら何処でもいいじゃない。………こっちに行きましょうか』
バステトは北を選んだので、俺達は北へと進んで行く。
今だGが全滅したとは思っていないので、必ずや何処かにGの親玉が居る筈だ。
そういう気持ちと緊張感を持って進む。
流石に緊張感を切らすのはマズい。
少し慎重になりつつも進んでいき、狭い坑道の中を黙々と警戒しながら歩いていくと、また分かれ道があった。
再び右を選んだ俺達はそちらに進むと、何故かツルハシらしき物が残っている突き当たりに到着。
『突き当たりではあるんだが、何故かツルハシの刃だけが残っているな。長い時間が経っても金属だから残ったんだろうけど、錆びていないところを見るに鉄じゃないんだろう。いったい何で出来ているか知らないが貰っとくか』
『そのツルハシって多分だけど掘る道具よね? となると、ここではまだ掘ってたのかしら? それとも居なくなる時に置いて行った?』
『さてな。その辺りは古すぎるし、何より残っている道具なだけだから何とも言えん。とにかくここを掘っていこう、金属が手に入る可能性は高そうだ』
俺とバステトは【魔術】を使って掘っていき、出てくる土などに<金属探知機>を向けて調べていく。
金属反応が出るものはどんどんと収納していき、要らない土は圧縮して放置。
それを繰り返して行き、十分に掘ったと思えたら止めた。
何度か<時空の狭間>に戻ったので、それなりに金属は掘り出せたと思う。
俺とバステトは分かれ道を戻り、次は左の道へと進んで行く。
少し緊張感が切れているものの、それでも警戒しながら進むと、奥には綺麗な場所があった。
『これは水晶か? こんな所で水晶が大量にある部屋があるとは……。しかし何故か掘った形跡が余りないな? となると、この部屋にぶち当たった事で掘るのを止めたのか?』
『なんで掘るのを止めたのかしらね? この部屋があっても先を掘ればいいじゃない』
『さあな。何故かは分からないが、周囲の壁も何もかもを掘った形跡が無い。ま、俺は水晶も頂いていくんで掘るけども、昔の人間は水晶が要らなかったんだろうな』
『こんなに綺麗なのに?』
『そんな状況じゃなかったのかもな。<ムンガ>のレポートにもあったが、大国から戦争を仕掛けられていたらしいし、その当時に掘っていたなら金属しか求めてなかったろうさ。おそらくだけどな』
『そういうこと。戦ってる最中だから、武器の材料とかしか必要じゃなかった訳ね。それならこういう綺麗な物が残されていても普通……なのかな?』
俺は疑問を感じているバステトを置いておき、水晶をどんどんと採っていく。
根こそぎに収集したら今度は<金属探知機>を使って調べると、数ヶ所が反応したのでそこを掘って手に入れていく。
バステトも手伝ってくれるので一気に進み、俺達は金属も根こそぎ頂いた。
それが終わったら縦坑の下に戻り、次は西へと進む。
こちらは真っ直ぐに進むと、すぐに突き当たりがあって終わっていた。
僅かしか掘られていないのには理由があるんだろうか? 試しに突き当たりを掘ると壁が「ガラッ」と崩れ、奥への道が出てきた。
『わざわざ隠していた? いったい何の為になのか知らんが、一気に怪しくなってきたな』
『確かにね。何故いちいち隠す必要があったのかを考えると疑問しかないわ。そもそも鉱山なんて掘る人達しか来ないんでしょ? だったらわざわざ隠す意味は無いでしょうに』
俺もバステトも怪しみつつ慎重に先へと進んで行く。
すると、その奥には黒いプールがある以外には特徴の無い部屋があった。
この臭い、おそらくは……。
『何かしら、この水。異様に臭いんだけど……』
『これはおそらく石油だ。なんでこんな所に湧いているのか知らないが、俺達はよく息が出来ているな? 何処からか空気が循環してるんだろうが……とにかくアイテムバッグに回収しよう』
隠されていた道の先には石油が溜まっているプールがあり、だいたい25メートルプールくらいの大きさが見えている。
俺はアイテムバッグを開けると左手で持ったまま、右手の人差し指を石油につける。
すると猛烈な速度で石油がアイテムバッグに吸い込まれ、25メートルプールの石油は空になった。
綺麗にとまではいかなかったが、所々に少し残っているだけで、それ以外は全てアイテムバッグに入っている。
俺は一旦<時空の狭間>に戻って<物品作製装置>の箱に石油を流し込み、それが終わったら戻る。
再び戻ってきたものの、石油が湧いているような気配は無い。
おそらくここに溜まっていただけで、火を使うと危ないから封印したんだろう。
石油があった所に下りて<金属探知機>で確認するも、何も見つからなかった。
俺達は道を戻って縦坑の下に着くと、最後に残った南へと向かう。
すると、すぐにGが現れたので【ヒートバレット】で処分。そのまま進んで行く。
Gが居た以上、おそらくはこの先がGの巣だ。
俺は<金属探知機>から火炎瓶に持ち替え、ゆっくりと進んで行く。
Gが出てきたら即座に始末し、時間を掛けてでも確実に怪我を負わずに進む。
そうして先へと進むと、そこには大きな縦穴の部屋があった。
一番下を覗くと、そこには黒い池の如くGが蠢いており、その中央にバカデカいGが居る。
俺もバステトも悲鳴を上げそうになったが、かろうじてそれを堪える事が出来た。
それは正しく奇跡と言ってもいいだろう。
(おそらく中心に居た巨大なGが魔物なんだろうが、少なくとも10メートルを超える大きさをしてたぞ! あまりにもデカ過ぎるだろうし、アレ程のは想像すらしてねえよ!!)
俺とバステトは後ずさりしながら戻り、多少戻って「ホッ」としたところでアイテムバッグから火炎瓶を全て出す。
『いいか、バステト。俺はこの火炎瓶を一気に放り投げていく。最後の一本、いや二本は入り口に投げ込んで燃やす。そうすればGを出さない火の壁のように出来るはずだ。俺達は更に下がり、そこから出てきたGを殺す』
『わ、分かった。………それにしても何よアレ! デカ過ぎるでしょ!! 幾らなんでも大きさにだって限度というものがあるわよ!!!』
『もしかしたらあの巨大G,数百年は生きているのかもしれん。魔物になったら寿命が増えるなんていう可能性も無い訳じゃない。虫の中には若返りを繰り返す虫なんていうのも居るらしいしな』
『あんなのが数百年………。それを知らずに暢気に生きていたのが恐ろしく感じるわね』
『とはいえ部屋の大きさ以上になっているから、おそらくあの部屋から出られないぞ? だから火炎瓶攻撃でおそらく焼け死ぬ筈だ。ただし、どれだけの勢いで燃えるか分からないのがなぁ……。正直に言って怖い』
『アブラムシだからメチャクチャ燃えるかもしれないって事ね。そうなるとどこまで火がこっちに来るか分からないじゃない』
『だから投げ込んだら一気に逃げるんだよ、じゃないと凄い熱風が飛んでくるかもしれないだろ? ………そうだな。戻るんじゃなくて、この坑道から一旦出るべきだ。縦坑の一番下までバステトは戻れ。俺は投げ込んだら一気に戻る』
『分かった。気をつけてね』
俺はバステトが戻っていくのを見送り、用意した火炎瓶を見る。
果たしてこれで足りるのだろうか?




