0061・鉱山内部・その6 Gの大群2
Side:イシス
縦坑の中は広く大きく、少しぐらい可燃物やGが燃えた程度では空気というか酸素が無くなったりしないらしい。
もしかしたら何処かから新鮮な空気が供給されているのかもしれないが、そこまで俺達には分からない。
とはいえ坑道である以上は何処かから酸素が供給されてないと窒息するので、おそらくは何処かから供給されている筈だ。
『あの黒い虫って、やたらめったらに燃えるのねえ。イシスが持っているそれを放り投げて燃やしてるんだけど、気持ち悪い鳴き声が鳴り止まない程に居るとは……』
『あのG。俺は正式名称を言いたくない程なんだが、それはともかくとして、あいつらは通称でアブラムシという名前がある。体の表面に揮発性の高い油分を含んでいてな、燃えやすい虫でもあるんだよ。元々は自然界の掃除屋と言われるんだが……』
俺はそう言いつつ新たな火炎瓶をGの川のようになっている箇所に放り込む。
【身体強化】をしたパワーで放り込まれた火炎瓶はGの大軍の中心に投げ込まれ、派手な炎を周囲に撒き散らしてGを燃やしていく。
それを見ながらも飛んでくるGなどを【ダウンバースト】などで縦坑の下に叩き落す。
こちらに近づく為の道に居るGは、バステトが【ヒートバレット】や【ヒートボール】で焼き殺している。
『アブラムシねえ。ニョロニョロしてないなら何の問題も無いんだけど、流石にアレだけ大量なのは私も駄目よ。余りにも多すぎて嫌悪感が凄いわ。意地でも近づけたくないし、気持ち悪すぎる』
『俺はそもそも嫌悪感が酷いがな。それはそうと数はそれなりに減ってきたな。今だ結構な数が居るものの、最初に比べれば相当の数が焼け死んだらしい。それでも手を抜かずに全滅させるがな』
『まあ、あれらは確実にこちらに恨みを抱いているだろうから、ここで全滅させておく必要があると思う。というか、あの黒い虫が居るからこそ、ネズミもムカデも生きているんだろうしね』
『ネズミは知らんが、ムカデはGを食うと知識にあるな? その所為で魔物化してあんなにデカかったのかもしれん。とはいえGが魔物化していない理由は分からないが……いや、待てよ? Gの女王みたいなのが居るんじゃ……』
『なにそれ……本当にそんなのが居る可能性があるの? だったらそれを殺さなきゃずっと増えるじゃないの』
『本当に居るかどうかは分からないが、居るなら殺しておく必要があるな。Gは共食いだろうが何だろうがするから、魔物化した個体が居れば結構ヤバい。そいつはGを生みながらGを食ってる可能性すらある』
『うぇ、それは勘弁して。流石に共食いで生き永らえてるのは気持ち悪いし、ちょっと……』
『そもそもGは元々森林などに居て、腐ったもんだろうが何だろうが食う虫だ。それで腐った物を分解して糞にする。それは土の栄養となる結果な訳で、だからこそ自然の掃除屋と言われるんだよ』
『腐って食べられなくなったのを食べてる虫とか居るわね。成る程、そのタイプの虫か』
再び上がって来ようとするGの群れに火炎瓶を放り込み、一気にGの群れに火を着ける。
そもそもGが燃えてパニックを起こし、他のGに引火して燃えるのを繰り返す。
なので火炎瓶一個でも、燃やす範囲は広い。
それに火の着いたGが暴れてどんどんと燃える範囲が広がったりもしている。
その御蔭かGの群れは殆どを壊滅させられたと思う。
火炎瓶を10個持って来たけど、現在使ったのは六個であり残りは四個。
バイオエタノールがどれだけ作れるか分からないので、使いきらずに温存しておきたい。
さっき言っていたGの魔物が本当に居た場合、火炎瓶でないと対処できない恐れがある。
なのでここで使いきりたくないんだが……。
『結構減ったけど、まだその火炎瓶とやらで燃やすの?』
『出来るだけ使わずに温存したいんだが、あれほどのGが居た以上は簡単に全滅はさせられないだろう。残っている数が少ないなら【魔術】で処理するんだが、逃げた可能性が否定できないんだよなぁ』
『あの虫、魔物じゃないからね。魔力を放出しても分からないし、そうなると目で見て見つけるしかないもの。なかなかに厄介よ』
『そうだな。俺達の弱点とも言えるが、魔力の無いヤツの反応がサッパリ分からん。ま、俺達も魔力回路の御蔭で同じように隠れられるんだから、あんまり大きな声で文句も言えないけどさ』
『そうね。私達も魔力回路だから、魔力を励起しない限りにおいて魔力を察知されない。ま、使えば察知されるから色々とアレだけど、そこは同じだから諦めるしかないわね』
『励起しないとバレない時点で、魔石持ちよりは有利だからなぁ。そこら辺は仕方がない部分でもある。……【ライト】で照らしている部分にはGが居ないな。そろそろ下りてみるか?』
『………そうね。でも火炎瓶っていうのを補充してからの方が良いんじゃない? いきなり必要になっても困るでしょ』
『そうだな、準備はしっかりしていくか。なるべく消費はしたくはないが、ケチったところで得をする訳じゃない。幾ら復活するとはいえ、命は大事にしないとな』
バステトの言う通り<時空の狭間>に帰還し、火炎瓶を補充した後に少し休憩。
十分に体力と魔力を回復した俺達は、再び縦坑の手前に転移すると、今度は大きめの【ライト】で照らしながら進む。
縦坑の中の螺旋になっている道を進みつつ、慎重に下へと下りていく。
まだ生きているGが居るものの、そいつらは【ヒートバレット】で焼き殺す。
まあ、体の大半は潰れているので、実際には焼いている訳じゃない。
とはいえ潰すだけなのと、そこに熱を加えているのでは殺傷能力が結構変わる。
俺達としては魔力の消費もそこまで大きくない【ヒートバレット】は、殺傷能力の意味でも扱いやすい【魔術】だ。
螺旋の道を下りつつ、焼け死んだGを【ブロワー】で吹き飛ばして下に落とす。
同じ名前の機械を参考にして即興で作ったが、なかなかに役に立つ【魔術】だ。
バステトも真似してGを下に落としている。
『下に落とすのはいいけど、一番下が最悪の状況にならない?』
『穴を掘って埋めれば済むさ。ここは坑道だからな。一番下を更に掘り下げても落盤する危険は無いよ』
『ああ、確かに下に埋めてしまえばいいわね。こいつらの死骸が多すぎて鬱陶しいけど、確かに埋めれば邪魔にはならないか』
流石に俺とて何も考えてない訳じゃないんだがなぁ。
とはいえGが見えた瞬間逃走はしたけど、あれは嫌悪感が酷すぎて無理だっただけだ。
だいたい死骸が多い今も結構キツいんだぜ、思っていた以上には。
そんな愚痴は心に秘めておき、黙々とGを下に落としながら進んで行く。
時間は掛かるものの少しずつ進んでいき、一番下近くに来た時に思わず叫びそうになった。
『どんだけ居たんだよGの奴等。確かに大群だったけど、死体も多すぎるだろ! 全部を灰にしたいくらいに多いぞ!』
『うわぁ……あれは酷い。あんなに殺した事よりも、あんなに居た事の方が驚き。どれだけ居たのか考えたくないくらいに多いわね。これは本当に魔物化したヤツが大量に生んでそう』
もはや降り積もった何かと言えるほど大量のGの死骸が目の前にある。
俺達は無言で【魔術】を使いながら一番下の地面に大きな穴を掘っていき、そこに【ブロワー】で死骸を放り込んでいく。
全てを放り込もうとしたが穴が足りず、途中で穴を更に深くして放り込み続ける。
全てを放り込んだら<金属探知機>を使い、金属を含まない土だけで死骸の穴を埋めた。
それなりには金属を含んだ土があったので危なかった。
危なく何も考えずに埋めるところだったよ。
ここには金属を採りに来ている事を忘れちゃいけない。




