0055・鉱山内部・その2
Side:イシス
寝室で仮眠をとってスッキリした俺達は、鉱山内部に降り立つ。
分かれ道の右の先、つまり突き当たりに再び立った俺は、<金属探知機>を使って壁を調べる。
が、一切反応は無かった。
【魔術】を使って壁を壊し、その破片に向かって<金属探知機>を向けるも反応は無し。
やはり金属が掘れなくなったから、ここはこれ以上掘られていないのだと判断。
俺達は引き返して左の道を行く。
バステトは落ち着いたのか、今は自分の足で歩いているので、やはり不意打ちだったのとニョロニョロしたのに嫌悪感があるのだろう。
猫の弱点というか、生理的嫌悪感は避けられないってところだろうな。
「バステト、気をつけてくれよ? またムカデが出てくるかもしれないからな。もし出てきたら【ヒートバレット】で熱を加えてやれ。普通のムカデだって、簡単に殺すにはお湯に沈めるんだしな」
『そうなの?』
「ああ。ムカデって生命力が強いしニョロニョロしていて捕まえ難い、そのうえ毒持ちだ。でもお湯というか熱には弱い。もちろんどんな生物だって同じだが、火傷するような熱に全身を浸けられれば死ぬ」
『それはそうでしょう』
「まあ、例外は居るからそれは除外するけどな。それはともかく、ムカデは熱を喰らわせるのが一番手っ取り早い。それさえ覚えていれば、そこまで厄介な相手じゃないんだ。こっちが先に見つけて倒せばいいだけさ」
『あの大きなムカデは魔石を持っていたから魔力反応はあるのよね。なら先に見つけ出すのは難しくないわ。とはいえ、あの時は油断していて失敗したけど』
「あんなデカイのが出てくるなんて想像も出来なかったんだから仕方ないさ。俺だってあんな大きなムカデが出てくるなんて予想も出来なかったしな。だいたい何食ったらあんなにデカくなるんだよ?」
『そうよね。あの大きなムカデはどうやってあんなに大きくなったのかしら? そう思うくらい不思議な大きさをしてたし、いったいどうやってなったのか訳が分からない。もう一度言うけど、普通のムカデはあんなに大きく無いわよ?』
「普通のムカデは魔物じゃないのかもしれないな。小さいムカデは虫で、大きいムカデは魔物。そう考えれば大きさの違いは分からなくも無い」
『魔物だからかー……。それはありそう、って、光ってる!』
「え? うわっ、マジだ! <金属探知機>が光ってる!」
俺は慌てて進んでいる坑道の中を調べる。
すると左の壁にピカピカ光る場所があるので【魔術】で掘っていく。
ある程度掘ったら選別し、<金属探知機>が光る部分だけ回収。
更に掘るものの、もう何も無かった。
「あったのは少しだけだったみたいだな。俺も詳しくないが、鉱脈というのに当たると大量に手に入るらしい。んだけど……それが何処かはサッパリ分からん。そもそも俺は山師じゃないし」
『やまし?』
「鉱山とか鉱脈とか発見する仕事の事だよ。発見すれば莫大な富を築けるが、当たらなきゃ何も得られない。そんな連中を山師って言うんだ。一応そういう人達には根拠とか論拠とかがあるんだろうけどな、俺は知識が無いんで知らない」
『ふーん……。でも<金属探知機>があるから気にしなくて良いんじゃないの?』
「まあ、そうなんだけど。山師って壁の模様って言ったら伝わるか分からないが、断層のような物を見て鉱脈があるかどうか判断したりするそうなんだよ。<金属探知機>で分かるのは多分だけど表面だけだ」
『つまり奥の方に金属が有るかどうかは<金属探知機>じゃ分からない?』
「そういうこと。でも山師は見て大凡を判断するそうだ。ただし当たらない事もある訳だがな。鉱脈があると思ったら、ちょっと掘って出なくなるとか」
『ああ、そういう事ね。でもそれは仕方ないんじゃないの?』
「だろうな。っと魔物が出たぞ」
前からネズミが3匹現れたが、バステトが2匹倒し、俺が一匹倒して終了した。
やはりバステトはネズミに容赦が無いなと思いつつ、さっさと死体を回収して先へと進む。
<金属探知機>を坑道の壁に向けつつ進むものの、先程のような反応は見られない。
たまたまだったのかと落胆しつつも先へと進むと、またもや右と左に分かれている道へと出た。
俺は迷う事なく右へと進み、壁に<金属探知機>を向けて調べる。
段々と坑道は狭くなっており、今は高さ2メートル50センチで幅が3メートルぐらいだ。
随分と狭くなっている。
そんな中をバステトと歩いているのだが、やはり奥に入ってくればくる程に魔物は少ない。
当たり前と言えば当たり前だが、洞窟の中じゃ食べる物が無いので、生き物そのものが少ないのが普通だ。
それを考えれば先程のネズミは何を食べているのか不思議で仕方がない。
ネズミとムカデで食い合いをしているのだろうか? そんな事を考えつつ進んでいると、奥から臭い臭いが流れてくる。
「奥からの風が臭いけど、臭いって事は多分コウモリが居るな。バステトは天井に気をつけてくれ。コウモリは天井にとまっている」
『天井って……。変な生き物も居たものねえ』
「コウモリは空を飛ぶし、大きな牙で噛みついてきたりするぞ? バカにせずに警戒しておいた方がいい。こっちの攻撃が当たり難い可能性もあるし、場合によっては撤退しなきゃならないかもな」
『そんなに?』
「コウモリってだいたい群れてるんだよ、それも大量に。だからだ」
『ああ、群れかー……』
バステトもコウモリの面倒臭さを理解したようだ。
俺達が慎重に進んで行くと、先には大きく広がっている空間があった。
もしかしたら元々天然で大きな空間があり、掘っていく過程で見つかった場所なのかもしれない。
俺達はその部屋に入らず、バステトに魔力の紐を付けて話し合う。
何故かというと、中に向けて魔力を放射したものの反応が無いからだ。
『おかしいぞ。魔力を放射したのに全く反応が無い。となると……』
『考えられるのは二つ。コウモリとやらが居ないか、それとも魔石を持っていないか』
『魔石を持ってないから反応しない。そっちの方が可能性は高そうだよなー……。となると、居るのは普通のコウモリか。それでも群れられてると苦しいな。こっちに攻撃してくるかは知らないが』
『どうするの?』
『部屋の大きさがどれぐらいかは分からないが、一番簡単なのは光で誘き寄せる事だろう。こっちの狭い坑道に誘き寄せて【ヒートバレット】を乱射してやればいい』
『大きな部屋になっている所に踏み込まなくていいの?』
『そっちに入るとコウモリが有利なだけだ。広い空間だと俺達は四方八方から襲われる。だが狭い坑道の方だと、狭いだけにコウモリも満足に動けない。だから狙い撃ちがしやすくなる』
『成る程ね。確かに飛んでるヤツには簡単に当たらないもの、狭い所に連れて来た方が都合が良いか』
『そういう事だ。じゃあ、ちょっと待っててくれ。俺が中へ行って誘き寄せてくる』
『了解。気をつけてね』
バステトをその場に残し、俺は奥の広い部屋に入る。
コウモリが居るのは確実だが、果たしてどれだけ居るのやら。
ネズミとかも生きている以上は、そこまで食う物が無いという訳じゃないと思うんだが……。
逆にそれだと数が多そうで嫌なんだよなぁ。
どっちかは分からないが、数が多いと仮定しておいた方が良いだろう。
少なく見積もった所為で多くてビックリし、動けないなんていう情けないのはゴメンだ。
そのうえ動けないんじゃ命の危険がある。
流石に死にたくないので、大量でも動ける心構えをしておこう。
コウモリが大量とか、それ自体が恐怖でしかないが。




