0043・大規模店の廃墟・探索
Side:バステト
私達はゴブリンどもが根城にしている、廃れた建物の中を探索している。
先程イシスと共にゴブリンを始末し、今はイシスが部屋の中の物を根こそぎアイテムバッグに入れているけれど、本当に容赦が無い
たとえ壊れている物であったとしても、<物品作製装置>の箱に入れてしまえば全て利用可能な素材になる。
なのでイシスは逃す事も無く全てアイテムバッグの中へ入れていく。
私はそれを見ながら魔力を薄く放射し、周りの音にも警戒しながら待つ。
ゴブリンが臭すぎて、臭いで調べる事は出来ない。
今も臭いものの、鼻が塞げないからどうにもならないのよ。
まあ、鼻を塞ぐと呼吸がし辛いから戦いにくくなるし、結局いい事じゃないからしないけどね。
でも塞ぎたくなるぐらいには臭い。
私やイシスは汚れを【クリーン】で綺麗に取ってるからいいけど、ゴブリンどもはそんな事をする訳もないだろうしね。
全身汚れだらけなんでしょう。
あー、いやだ、いやだ。
やっぱり碌でもない存在でしかないわね。
イシスが全てアイテムバッグに入れ終わったから、私達は部屋の入り口から慎重に外を伺う。
別の場所から新たなゴブリンが来るかもしれないし、迂闊に顔を出す訳にはいかないのよね。
私達は大丈夫なのを確認して部屋を出ると、次に横の部屋の入り口に近付き、再び魔力の放射で中の人数を確認する。
『中にはゴブリン二体。一応だが【ヒートバレット】の準備をしておいてくれ。使わない可能性が高いが、何があるか分からないからな』
『了解』
イシスから言われたので、私は【ヒートバレット】をいつでも撃てる状態に準備し、それからイシスと共に部屋に侵入する。
イシスは浮かせたナイフで一気にゴブリンの頭を突き刺して始末、私の出番は無かった。
とはいえ敵に備える事は悪くは無いし、場合によっては避けられるか一撃で死なない場合もある。
やはり私が控えている事は間違ってない。
うん、だから使った魔力は無駄じゃないのよ。
再び私が警戒し、イシスが部屋の中の物を回収していく。
イシスいわくガラス? とかいうのも散乱しているので、これも<物品作製装置>に入れれば大きなガラスに出来るそうだ。
よく分からないけど。
回収したら部屋から出て、隣の部屋のゴブリンを殺して回収。
それを繰り返して行き、ここ一帯のゴブリンは全て殺した。
建物に入ってきた部屋は突き当たりで、伸びている廊下の全部屋は始末し終わったんだけど、逆の突き当たりは左に曲がる道となる。
つまり中へと続いているものの、そこへと踏み込むのはちょっと大変だ。
『あの先が大きな部屋かホールに繋がっている可能性は高い。そうなると広々とした場所だからな、高い確率でゴブリンに見つかるだろう。一旦外に出て、外から部屋の中のゴブリンを殺すか?』
『イシスが言う、窓があったであろう所から中のゴブリンを殺すって訳ね。上手く中を確認出来るなら大丈夫でしょうけど、中の人数が多かったら声を上げられる可能性が高いわ。その場合は……乱戦?』
『ああ。見つかったなら素直に乱戦だな。それが一番良いし、建物の敷地の外に出て自由な場所で乱戦だ。じゃないと四方八方から攻められるからな。外なら問題ない』
『そうね。ゴブリンの集落は数が少なかったし、イシスが囮になってたり、<ムンガ>が出てきて混乱してたから無事だったけど……』
『ここじゃ、ゴブリンどもは怒り狂って俺達を取り囲んでくるだろうからな。その状態で敷地内は流石に不利だ。乱戦で俺達が勝つには、出来るだけ広いところで戦う必要がある』
『そうね。じゃなきゃ囲まれて袋叩きにされて終わりよ。流石に数の差は甘いものじゃないし……』
『案外、その数の差で犬の里はやられたのかもな。そして反抗できなくなった、と』
『それでも負け犬で恥犬なのは変わらないけどね。戦って勝てなかった事と、心まで負けるのは違うでしょうに。あれらは卑屈なだけよ』
『ま、それはな』
私達は一度確かめる為に部屋を出ると、突き当たりの曲がり角で息を潜める。
その後、魔力を放射しつつゆっくりと先を確認。
すると廊下が続いており、突き当たりは再び左に曲がっている。
イシスと私は先へと進み、曲がり角で身を隠しつつ魔力を薄く放射。
確認した後で、そっと曲がり角から顔を出して調べ、すぐに顔を引っ込めた。
『やっぱりホールだったか。しかも大量のゴブリンが雑魚寝をしてる場所だから、流石にあそこのゴブリンを暗殺は出来ない。一体でも殺せば確実に騒ぎになる。ホールは無視して一旦戻り、部屋から外に出よう』
『そうね、それが良いわ。流石に大量のゴブリンどもは最後に戦うべきよ。それまでは地道に数を削っていきましょう』
私達は方針を再確認し、一度部屋のあった場所に戻り、部屋の中の窓だったと思しき所から外へと出た。
そして建物の外側をぐるっと一周して入り口付近へと戻る。
建物の外側を確認したら再び道を戻って行き、まだ中にゴブリンが居る部屋の外で止まる。
窓近くで息を殺しているが、中からは「ギャアギャア」という声が聞こえるので確実に居るのは間違い無い。
何より臭いし……。
『中には二体か。それなら俺達で一気に殺せば済むな。俺がバステトを抱き上げるから同時に発射して一気に仕留めよう』
『自分だけで同時発射は出来るけど、狙い済まさないといけない場合は自分だけじゃ同時は無理だものね。どうしたって狙わなきゃいけないから同じタイミングは無理だし』
『そうなんだよな。やってやれなくはないのかもしれないが、今は無理だ。特に大きな声を上げられたら困る今のような状況じゃ、尚の事、不確実な事に頼る訳にはいかない』
『よしっと。準備は出来たわ、いつでもいいわよ』
『じゃあ、行くぞ。一、二の、三!!』
イシスは地面に<魔力操作補佐杖>を置き、その後に私を抱き上げた。
そしてタイミングを計り、窓から一気に中が見える場所へと出る。
ゴブリンが驚いて呆気にとられている瞬間、私達の【ヒートバレット】が額に命中。
ゴブリン二体は即死した。
私達は周りを確認し、バレていない事が分かると「ホッ」と安堵の息を吐く。
私が先に中に入り、その後に<魔力操作補佐杖>を持ったイシスが部屋の中に入ってきた。
イシスは素早くゴブリンを回収すると、部屋の中の物を回収していく。
色々な物があり、私にはどれが役に立つかは分からない。
壊さないと手に入りそうもない物もあるけど、そういうのは今は無視するみたい。
回収が終わったので部屋の入り口に近付き、魔力を薄く放射してゴブリンの居場所を確認する。
部屋の外には居なさそうなので、私がチラリと部屋の外を確認して顔を引っ込める。
下の方は見えていないみたいなのよね、ゴブリンって。
『ここも廊下があって、部屋が沢山並んでいるだけみたい。先程の所と変わらないわね。一部屋ずつ順番にゴブリンを始末していきましょう。それで済む筈よ』
『ああ。慎重に殺らなきゃいけないが、先程の場所と同じように行くだろう。問題は二階に上がる場所が何処か分からないって事なんだよな。そこに上手く行けたら、先に二階を殲滅するんだが……』
『上の方が偉そうなヤツが居そうだし、確かに上の奴等を先に殺したいわね。そうしておけば指揮をとるヤツも居なくなるもの。ザコの群れと化すわ』
『できればそうしたいんだが、そうそう上手くは行かないだろう。ま、とりあえずは二階へ上がる為の場所探しだ』
バレずに二階に上がる場所があれば良いんだけどね。




