0042・大規模店の廃墟・侵入
Side:イシス
俺達は大規模な店のような場所を前にどうするかを相談している。
壁の無い空いている場所はあるんだが、そこにはゴブリンの歩哨が立っていた。
俺達はそいつらに見つからないように迂回し、途中から歩哨には見えない角度から近付いていく。
目を【身体強化】した場合の効果として、視界の動くものがスローに見える効果と、遠くまでハッキリと見える効果がある。
俺達はそれを使い、ゴブリンからは見えない距離で死角に入った。
ゴブリンの目はそこまで良くないらしく、人間の視力で言えば0.5ぐらいだと思われる。
しかも遠くはボヤけているのか分かっていない事も多い。
ただし近くは十分に見えているようだ。
ちなみに猫の目も良くないのだが、何故かバステトさんは人間でいうところの2.0ぐらいある。
ちなみに俺もそれぐらいあるが、その理由は<生物修復装置>だ。
最適化したら、自動的にそれぐらいにされるようである。
俺はそうなっても気付いてなかったが、バステトはそこまで良くなかったので早い段階で気付いていたらしい。
ただ、損は何も無いのでいちいち口にしなかったそうだ。
それはともかくとして、壁の近くまで来ている俺達は、薄く薄く魔力を放出しつつ中を探る。
ゴブリンも魔石を持っているからか、中にどれだけ居るかを探るのは難しくない。
『それにしても厄介なぐらいに居るな。総勢で100以上は確実に居るし、ここからじゃ大きなゴブリンが判断出来ないぞ。二階に居るのか、それとも外に出ているのか。その辺りがサッパリだ』
『外からでは分かる事に限度もあるし、今は調べるだけ調べて、それから歩哨を倒しましょうか?』
『出来れば静かに倒して中に潜入したいが、バレる可能性が否定出来ない以上、ゴブリンの里と同じく乱戦になる事も考えておかないとな』
『そうね。とはいえ乱戦になったらなったで、かわしながら殲滅していけば良いだけなんだけど。ただ、前と同じように逃げられるかもしれないのが……ちょっと気掛かりよ。犬の里の方に行く可能性もあるし』
『行ったら行ったで逃げるだろ。流石に逃げられない訳じゃないし、あそこの里の壁は何故か四方が壊されていたしな。それがそのままって事は、魔法が使えるヤツは殺されたのかもしれん』
『その可能性はありそうね。私達の里も全員が全員、魔法が使えた訳ではないし。でも戦士達には魔法が使えるのも多かったから、やっぱり犬の狩人にも魔法が使えるのは多かったんじゃないかしら』
『かもな。さて、そろそろゴブリンの場所も分かったし歩哨を倒そうか。歩哨の歩哨とか、歩哨の監視とかが居たらどうにもならないが、そこは素直に諦めるしかないな』
『そうね。そこまで考えて動いていたら何も出来ないわ。そうなったら乱戦で殲滅よ。どっちにしたところで可能な限り殺す事に違いはないんだし』
『そうだな。よし、そろそろ始めるぞ。俺は向こう側を殺る。だからバステトは手前を殺ってくれ』
『了解』
俺達は銃弾型の土を浮かべ、俺が発射したすぐ後にバステトも発射。
歩哨のゴブリン二体が倒れたらすぐに走り出し、入り口まで近付いたらゴブリンの死体をアイテムバッグに回収する。
その後、入り口から中を見るものの、他のゴブリンが気付いた様子は無い。
俺とバステトは入り口の左右に隠れつつ「ホッ」と胸を撫で下ろす。
とりあえず第一段階はクリアだが、次は難しい潜入だ。
俺達は顔を見合わせると、中を確認したら一気に侵入。
建物の壁まで近寄り、そこから建物をグルッと見回る。
何処か侵入できそうな所があれば良いんだが、かつては窓だったらしき場所はあるんだ。
しかしそこに外から魔力を放射すると、中にだいたいゴブリンが居るんだよ。
中を見たいものの、顔を近づければ流石にバレてしまう。
実際にゴブリンの声すら聞こえているからな。
「ギャッギャギャギ?」
「ギャギャッギャ、ギャギャー」
「ギャギャギャーギャ、ギャーギャギャ」
一室に三体ぐらい居るのか。これは面倒だな。
一体だけなら即殺すれば済むんだが、ゴブリンの数が多い所為か、どこも必ず二体以上が居やがる。
困った事にバレずに侵入できる場所が無い。
建物の入り口から入ったら間違いなく見つかるだろうし、このまま一周して駄目だったら、二体の部屋から強引に入るしかないな。
『イシス。この部屋はどうも一体だけみたいよ? 少しだけでも覗いてみる?』
『いや、止めた方が良いだろう。もし覗くなら、それは中のゴブリンを殺す時だ。そうでなければ出会い頭に目が合うっていう、最悪の展開になりかねん。相手を殺す準備が整ってからだな、中を見るのは』
『それじゃ準備をしなきゃね。流石にここ以外に入れそうな場所も無いし。そのうえ、ここ建物の奥だもの。周りからも見え辛いから、ここに決めるしかないでしょ』
『それは分かってる。ここから入るのは確定だ。それじゃ【ヒートバレット】を準備して………行くぞ!』
俺は窓だったと思わしき場所から中を確認。
即座に動こうとしたら、中のゴブリンは床で寝ていた。
ただし猛烈に臭く鼻が曲がりそうなので、俺は臭いにやられながらも素早く寝ているゴブリンの頭を撃ち抜いた。
ゴブリンはビクッとしたが、その後は何も無く沈黙。
俺は窓らしき所から素早く侵入。中に入るとゴブリンの死体を回収する。
バステトも入ってくるが、中の悪臭に顔を顰めている。
『クッサ!! こんな臭い中でよく普通に暮らせるわね。頭がおかしいんじゃないの!?』
『誰しもそうだが、自分の臭いっていうのは感じ辛いものなんだよ。鼻が慣れると臭いを感じ辛くなるらしくてな、その所為で自分の臭さに気付かないというのはあるんだ』
『それは私も臭いって言いたいわけ?』
『違う、違う。ゴブリン達は、自分達の臭さに気付いてないって事さ。どんな悪臭も自分の臭いなら身近にあり過ぎて、鼻がバカになるんだよ。それに関しては生き物全般の能力とも言える』
『能力?』
『限度があるとはいえ、自分の臭さをずっと感じるなら、他の臭いが分からなくなるだろ? だから意図的に自分の臭いは排除して、他の臭いが分かるようになってるって訳だ。じゃないと敵に気付けないしな』
『成る程ね。犬の連中なんて私達以上に臭いに敏感だもの。確かに自分の臭いで分からないんじゃ、臭いを嗅ぐ意味が無いわねえ。だから自分が臭くても、自分の臭いは除外する訳だ』
『そういう事。よし、部屋の中の物はあらかたアイテムバッグに入れた。そろそろそこから出ようか。多分ドアがあったんだろうが……』
『今は何も無いわね。他の部屋もおそらく同じでしょうし、声を上げられたら一発でバレるわ。上手く殺していかないといけないけれど、おそらく難しいでしょうねえ。流石に』
『バレるのは仕方ない。建物がこれだとバレる事は時間の問題だしな。だからバレるまでに出来るだけ多くのゴブリンを殺しておこう』
俺達は互いに頷き合い、ドアがあったであろう場所から外を伺う。
すると、ここは奥の一室であり、右に向かって廊下が伸びていた。
そして多くの部屋から「ギャアギャア」聞こえる。
俺達はそろりそろりと歩きだし、ドアがあったであろう空間から他の部屋を覗き見る。
そこでは三体のゴブリンが「ギャアギャア」と話し合いをしていた。
俺は二本のナイフを浮かべると、天井付近からナイフを部屋に侵入させ、ゴブリンの頭の上にセット。
そして一気に【スロー】し、最後の一体に対してはバステトが【ヒートバレット】で頭を撃ち抜く。
思っている以上に上手くいき、思わず安堵しつつも素早く部屋に入る俺達。
俺はすぐに死体をアイテムバッグに回収し、部屋の中を物色し始めた。
地図01
D
C
A
B E
F
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A:初期地点
B:猫の里
C:ゴブリンの集落
D:地下研究所のある建物
E:犬の里
F:ゴブリンの拠点の建物
地図は上が北
アンダーラインの南は海だが主人公もバステトも気付いていない




