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0041・東の犬の里




 Side:イシス



 俺とバステトは惑星に降り立つ。

 最初の場所、というか正しくは一番手前の魔法陣で惑星に転移した。

 つまり森と川の境界に今立っている。


 俺がこの惑星に最初に降り立った場所であり、素材集めなどでお世話になった場所でもある。

 ようやくここから離れる決断をしたが、荒しまくったからか魔物の気配が全くしない。

 何気にかなり酷い事をしたんだと思う。


 まあ、やがては何処かから魔物が流入して、かつてと変わらなくなるだろうけどな。

 それまでには結構な時間が掛かると思うが、諦めてほしい。


 俺達は走って移動し、川下へと進んで行く。

 川は途中から東に曲がっているので、俺達も東に曲がって走り続ける。

 【身体強化】をしているし、連日の戦闘やら何やらで俺も結構鍛えられた。


 基礎的な体力や筋力は向上しているだろう。

 実際の惑星時間でいえば、俺が惑星に降り立って10日ぐらいしか経っていない。

 しかし体感時間では20日は過ぎている。

 理由は<時空の狭間>だ。


 あそこで過ごしている時間が長いので、実際には結構な時間が過ぎているし、初めて降り立つ前にも<時空の狭間>で三日ほど過ごしている。

 とどのつまり、惑星で過ごしている時間よりも拠点で過ごしている時間の方が長いのだ。


 仕方がないし、これこそが<時空の旅人>のアドバンテージなんだからどうしようもない。

 俺はこの事を最大限に利用する必要があるし、そうしなければいけない立場でもある。


 そもそも旅先の惑星の者と同じ時間で指令を果たす必要は無いし、<時空の旅人>はある意味で絶対に負けてはいけない存在だ。

 指令を果たす為には勝つ必要があるし、負ける事は許されない。


 絶対に勝つと決まっていないのに、絶対に勝たなきゃいけないヒーローのような者なんだよな。

 例えが悪いかもしれないけど、その為に拠点と復活する体があると考えれば分かりやすい。


 おっと、思考しながら適当に走るのは良くないな。

 転んだりはしないが、あまりいい事でもない。

 そう思って、少し気持ちを引き締めながら東へと走って行く。


 ある程度の距離を進むと、遠くに土壁が見えてきた。

 アレは猫の里か、それとも犬の里か。

 どちらかは分からないが、何かが住んでいる事は間違い無いだろう。

 とりあえずは寄るか。


 そう考えて近くに寄ると、何やら鳴き声が聞こえてくる。



 「ギャッギャギャギャ!!」


 「ギャギャギャッギャ!」


 「ギャギャギャギャ……!」


 「キャウン!?」


 「キャン、キャン」



 土壁の中から犬の鳴き声というか、悲鳴が聞こえてきたので慌てて飛び込む。

 すると遠巻きに見ている多くの犬と、ゴブリン三体に蹴られている犬が見えた。

 そしてその犬に縋りつく子犬。


 それを見た瞬間に沸騰したのだろう、【アースバレット】を三発同時に作り出し、三体のゴブリンの頭を綺麗にヘッドショットするバステト。


 随分と素早く発射するようになったと思う。

 俺も上達したけど、バステトも上達した。


 俺達は蹴られていた犬と子犬に対して魔力の紐を繋ぎ、話し掛ける事にした。



 『大丈夫だった? あのゴブリンどもが何故貴女を攻撃していたのか知らないけど、何で他の犬達は助けたりしないの?』


 『……猫? あ、ごめんなさい、ありがとう。でも、他の者達を悪く言わないであげて。多くの狩人達が大きな<臭いヤツ>に殺されてしまって、里には戦える者が殆ど残っていないの』


 『大丈夫? ママ、大丈夫?』 『ええ、大丈夫よ』


 『まあ、ここの犬達にも色々と事情があるんだろう。俺達はそこに深く入り込む気は無い。それよりも、先程言った大きな<臭いヤツ>について知っている事を教えてほしい。後、この近くに変な建物というか、奇妙な場所とかがあったら教えてくれ』


 『奇妙な場所………? いえ、それはともかく、大きな<臭いヤツ>が居るのはここよりも東。何かとても硬い壁に囲まれている場所にヤツは居るそうよ。その所為で迂闊に攻められなかったそうなの』


 『硬い壁ねえ……。イシス、それってもしかして』


 『コンクリートか何かだろうなぁ。となると人間の建築物を利用してやがるな。都合が良いというか、何というか。とりあえずブチ殺しに行けば分かるのと、規模はどれぐらいだ?』


 『殺しに行くって、貴女達は何を考えてるの!? この里の狩人達ですら勝てなかったのよ!? それに、妙な長い物も持ってるの! それが振られると簡単に狩人達はやられたらしいわ』


 『振られる、ねえ……。剣か斧かメイスかってところかしら? イシスが警戒していた銃って事は無さそうで良かったわ』


 『銃の可能性はそもそも低いと思ってたけどな。何故なら残っていても壊れてるだろうし、弾が使えない可能性が高い。それなら剣などの方が使える物が残ってるだろう』


 『まあ、情報をありがとう。でも私達は行くわ。奴等は駆逐するべき敵だもの、そいつらから逃げるっていうのは流石にね』


 『ああ。それじゃ俺達は行かせてもらうよ』



 周りの犬達は戦わなかった癖に、こっちをジロジロと見ながら警戒してきて鬱陶しい。

 なので早く離れたかったし、それはバステトも変わらない。

 犬に繋いでいる魔力の紐とは違い、俺に繋いでいる紐では愚痴を言っていた。


 気持ちはよく分かるし、助けた俺達に対して向ける目かよと思う。

 まさに自分さえ良ければいいって感じだったな。


 自分達はゴブリンに虐められていないから助けもしないし、むしろゴブリンを倒した俺達を警戒していた。


 まるで余計な事をしやがってという感じがして、それが余計にバステトの愚痴を加速させていたんだ。


 ゴブリンを殺して余計な事をしやがってというのは、完全に負け犬の発想なんだが、あいつらはそれを理解しているのだろうか?


 どう考えても理解してないよなぁ……。

 理解していたらあんな態度をとったりなんてしていないだろうし。



 『あいつら本当に酷かったわね。私達が助けなかったら殺されていたかもしれないのにさ!』


 『俺達に対して向けていた目を含めて、完全に負け犬の連中だ。ただ、あそこまでになったという事は、そうなって長いんだと思う。心をバキバキにし折られたんだろうが、そうなるまでには時間が掛かる筈だ』


 『私は知らないわねえ。あまり犬の里との連絡とかしてなかったし、係わり自体が少なかったから。もしかしたら誰か知ってたかもしれないけど、私達の里も自分達の食い扶持を稼ぐので大変だったし』


 『普通はそうなんだろ、うん? あの母犬は狩人が多く殺されたって言ってた筈だ。だったらあの里で食料を獲ってきてるのは誰だ? ……もしかして』


 『ゴブリンどもに恵んでもらってるんじゃないでしょうね? だったら負け犬を通り越して恥犬よ。<臭いヤツ>に施しを受けるなんて終わってるわ。むしろそんな連中は潔く滅んだ方が良いわね』


 『流石にそれは言い過ぎだと思うが、しかし狩りが出来なきゃ死ぬだけだ。俺達がゴブリンどもを壊滅させたら、後は自分達だけでどうにかしなきゃいけないんだしな』


 『そうね。なら放っておきましょうか。自分達の食い扶持を稼げないなら、どのみち終わりよ。狩人に任せていたツケが回ってきただけね。ちゃんと自分達で獲ろうとしないからよ』


 『大丈夫かどうかは<神のみぞ知る>ってね。後は犬の連中がやるべき事であって、俺達が手を貸す事でもない。ああじゃなかったら助けてやっても良かったんだが、アレじゃあなぁ……』


 『流石に助ける気にはならないわね。って、アレがゴブリンどもの拠点かしら? 何だか大きいけど、どれだけ居るのやら』



 これは……郊外型の大型店舗か? 二階まであるし結構広いぞ。

 おまけにコンクリート製みたいな壁で囲まれている。


 場合によっては色々と手に入りそうだな。


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