0039・憑依兵器ムンガについて
Side:イシス
俺は残っている<憑依兵器ムンガ・利用法>と<憑依兵器ムンガ・消去方法>を読み進めていく。
<憑依兵器ムンガ・利用法>は早々に読み終わったが大した内容ではなかった。
あの国の中枢のヤツを暗殺するだとか、駐屯している軍の建物に侵入させて全員を殺させるとかしか書かれていない。
酷くつまらない内容だし、こんな事の為に非人道的な事をしたのかと呆れてくる。
独裁政権の国ならやらせるかもしれないが、言葉の端々から小国がそうでもないのは分かっている。
議会がどうとか、平和派はバカだとか書かれていたからな。それとこれとは違うだろうと思ったが。
それは横に置くとして、最後の<憑依兵器ムンガ・消去方法>を読もう。
これが一番大事な物の筈だ。
…
……
………
んー……やってやれない事もないなぁ。
一番厄介なのは、やはり浄化する為の道具を作る事だろう。
それが出来れば<ムンガ>を滅ぼす事は可能だ。
だが、コレを書いた人類では不可能だろうと思う。
何故これを書いた人類では不可能かと言うと、それは魔力が絶対的に足りない事にある。
ムンガ消去法は二つの事柄から成り立っているが、それ自体はとてもシンプルで分かりやすい事でしかない。
一つは<ムンガ>を集める事、もう一つは<ムンガ>を浄化する事。
この二点で構成されているだけなのでシンプルなのだが、圧倒的なまでに魔力が足りないのだ。
この<憑依兵器ムンガ・消去方法>では多くの人員を使う事で可能となると書いてあるが、今はそんな大量の人員など居ない。
なのでどう考えても足りないし、多分だけどその当時も足りなかったのだろうと思われる。
<ムンガ>を滅ぼそうと決めたとなれば、<ムンガ>からの被害がバカにならなくなった場合だ。
そうなっている時点で市井はパニックだろうし、簡単に人は集まらない。
しかも相当の大人数が必要になる。
そうやって人が集まれば、当然ながら<ムンガ>に狙われるだろう。
自分達の作った兵器に自分達が滅ぼされるなんていう皮肉な結果に陥ったのは、間違いなくその所為だ。
必要になってから集めたとて集まる訳が無い。
そういうのは必要になる前から集めなければいけないのだが、そこまでは出来なかったようだ。
それと魔力を溜めこんでおく装置を開発していたらしいが、それは結局完成しなかったんだろう。
もし完成していれば、<ムンガ>はとっくに消え去っている筈だからな。
未だ【黒の力】として暴れている以上、この惑星の人類は敗北したと見て間違い無い。
まあ、<ムンガ>のような者を作る連中だから滅んでいても一向に構わんのだが、問題はどう滅ぼすかだ。
<ムンガ>を集める装置は多分だけど作れると思う。
必要な円筒形の筒の中の黒いヘドロは持って帰って来ているしな。
後は<ムンガ>が使っていたゴブリンの体で作製可能だろう。
問題は浄化作用のある道具だ。
それも高い浄化能力を持っていないと<ムンガ>は浄化できない。
ヌンも言っていたが、アイツは呪いまでプラスして強くなってる。
それを道具で浄化するんだから、当然ながら簡単な事じゃない。
集めるのはともかくとして、浄化の方は現状手詰まりだ。
一応<物品作製装置>を見に行くが、おそらく作製は無理だとしか思えない。
それっぽい素材に心当たりも無いからな。
<物品作製装置>の部屋に着いた俺は、パネルから起動してワインドウをスクロールさせる。
すると幾つかの浄化用の道具が作れるようになっていた。
「<浄化のネックレス>、<浄化のブレスレット>、<浄化のバングル>。この辺は作れるようになっているが、<浄銀>という素材があるからか……。これ、もしかして円筒形の入れ物の基礎部分に使われていた物か?」
「おそらくそうでしょう。瘴気を元に<ムンガ>という者を作ったのであれば、それが漏れ出さないように封をするのは当たり前ですので」
「この<浄銀>が沢山有れば良い物が作れそうだが、少ししかないからか、何か一つしか作れないな」
「<浄銀>というのも登録されていませんか? もし登録されているなら素材を集めて作れば良いのですよ」
「ああ、確かにな。必要な物の素材から作ってしまえば………それってすっげぇ大変じゃね?」
「必要な物ならば仕方がないのでは? 指令を終わらせなければ次の星に進めませんし」
そうなんだが、微妙に納得いかないな。
そう思いつつも調べてみると、必要なのは銀だけだった。
どういう事なんだ?
「必要な物は銀だけですか……。他に必要な物が魔力だけなら、そうなる事もあり得ます。あくまでも可能性としてですが、そこまで大きく間違ってはいないでしょう」
「<浄銀>だけじゃなくて<清浄銀>とか<聖銀>っていうのもあるんだけど、こっちの方が凄そうだな。代わりに聞いた事が無い素材が必要だけど」
「そちらの方が良いなら現在は保留しておき、集める装置だけ作ったらどうですか?」
「ああ。そうするべきなんだろうけど、特殊な物は全部一番下に来てるんだろうな。<ムンガ集積装置>と<ムンガ濃度測定器>っていうのがあるぞ。しかも両方作れるって、これもう作れっていうお達しだよな」
そんな事を言いつつさっさと作製。
<ムンガ集積装置>は箱だった。
ただし黒と灰のグラデーションの箱であり、見た目があまり宜しくない。
そして<ムンガ濃度測定器>は、古い水銀式の体温計みたいな物だった。
<ムンガ>の元である【黒の力】の濃度が濃いとゲージが上がるみたいだ。
ある意味で分かりやすい。
他に作れる物を見たら、蜘蛛糸のシャツや下着が作製可能だったので作って着ていく。
今までのは箱の中に放り込み、更に色々と作製できる物を探してウィンドウをスクロールする。
そうしていると、<魔力操作補佐杖>があった。
ただし今までとは違う物で、金属で出来ている物だ。
使われているのは<浄銀>ではなく、<フェルート銅>という金属のようだが……聞いた事が無いな。
とりあえず<フェルート銅>の杖を作製。
すると、銀色の杖の先端に赤い玉が嵌まっている物が出てきた。
銅って一口に言っても、色々な混ぜ物で色が変わるんだよな。
コレに何が混ぜられているのかは知らないが、銅の中には白銀色もあった筈なので変な色じゃない。
そう思いつつ手に取り、魔力の流れを感じてみる。
今までの杖も取り出して交互に使い、すぐに違いが分かった。
この<フェルート銅>の杖の方が明らかに魔力の操作が楽だ。
唯の木で作られた物とは根本的に違うらしいな。
<フェルート銅>の残りがどれだけか分からないが、まずはバステトの為の首輪を作製。
今回のはウサギ皮に<フェルート銅>を組み合わせた物で作っている。
今までの狼革だけよりは確実に良い物だ。
まだ作製出来るので<魔操の指環>を作製し、今まで着けていた物と交換する。
これでグレーアウトしたので、これ以上は<フェルート銅>が無いようだ。
あの建物で拾っていた物がそうだったのだろうが、錆びていた物も多かったので、それが量の少ない原因だろうな。
それでも杖が作れたぐらいなのだから、それなりの量は確保できている。
他にもああいう建物を探した方がいいな。
中には有用な物が眠っている可能性が高い。
普通の人間じゃ役に立たなくても、<物品作製装置>のある俺にとっては宝の山に等しい。
今後はバステトと相談しなきゃいけないが、そろそろあの辺りを後にして、色々な所を巡るしかないだろう。
その旅の果てに<ムンガ>を滅ぼせる筈だ。




