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0038・建物の地下




 Side:イシス



 俺はバステトを抱いたまま梯子を下りていく。

 地面まで下りたので、まずは【ライト】の【魔術】を使い辺りを照らす。

 すると、真っ直ぐ先に進む通路があった。

 左右は土の壁で天井も土の壁、特にどうこうも無い地下だ。


 地面にも何も無く、俺はバステトを下ろして先へと進む。

 薙刀はアイテムバッグの中だが、魔物が出てきても短刀で戦えばいいだろう。

 【魔術】があるし、戦えない訳じゃない。


 進んで行くと分かれ道などなく、右に行ったり左に行ったりし、最後には突き当たりに扉があった。

 頑丈そうな金属で出来た扉だったが、鍵は付いていない。

 俺はノブを回して開けると、押して中へと入る。



 「………何だここは?」



 中には円筒形の透明な筒のような物があり、そこから管が何本も伸びている。

 中には何も入っておらず、しかし円筒形の筒の底には黒く濁ったヘドロのような物がこびり付いていた。


 近くにはテーブルなどが幾つもあり、その上には紙らしき物が散乱している。

 手に取ろうとしたら細かく砕けたので、俺は触る事無く慎重に確認していく。


 積み重なった一番上の紙は、かろうじて読めるので読んでみたが、そこにはこう書かれていた。


 <憑依兵器ムンガ・考察レポート>と。



 「……マジか。あの<ムンガ>はここで作られたのかよ。ヤツがこの近くに出てきたのは偶然か?」


 『えっ? <ムンガ>はここで作られたの?』



 バステトも困惑しているが、俺は一番上の紙の端を持って慎重に持ち上げようとすると砕け、持ち上げる事すら出来なかった。



 「やべえ。このレポートを読みたいが、古すぎてページをめくる事すら出来やしない。どうしたもんか……」


 『アイテムバッグに仕舞って、<物品作製装置>に入れたらどうにかならない? あれって物を直したり出来るんでしょ?』


 「………作り直しは出来るが、紙の修復なぁ。出来るかどうかは分からないが、今よりもマシか」



 俺はバステトの助言通り、この部屋の紙束を根こそぎ回収していき、更には円筒形の筒やらも全て回収した。

 設置してある物は回収できないんだが、強引に壊して回収。

 そうやって持って帰るのに成功した。


 全てが無くなりもぬけの殻となった部屋から地下を戻り、バステトを抱いて梯子を登っていき、上の階の部屋に戻ったら一息吐く。

 地上に戻った事で緊張が解けたらしい。



 「ふぅ………やれやれ。下に行っていた間は緊張していたらしい。とはいえ、まさか<ムンガ>があそこで作られたヤツだとはな。しかも憑依兵器って事は、おそらく戦争に使われるものとして作られたって事だぞ」


 『ニンゲンっていうのは碌な事をしないわね。そいつらの所為で、今でも<ムンガ>が暴れてるんでしょ?』


 「それどころか、<ムンガ>はおそらく手当たり次第に暴れ回ったんだろうさ。……つまり人間達は自分達を滅ぼす者を作ったって訳だ」


 『あまりにもバカ過ぎるわね。そいつらが下らない事をしなきゃ、【黒の力】に殺される者も居なかったのに!』


 「でも<ムンガ>が居なきゃ、人間は滅んでないんだよ。逆に言えば、人間が滅んでるからバステトは生まれた訳でな」


 『………』



 運命なんて何処でどうなるか分からない。

 自分の祖先が生まれていなければ、自分という生き物もまた生まれていない訳だ。

 そして、今までの事があるからこそ自分は今を生きていると言える。


 俺が過去に戻って歴史を変えるという事に否定的な理由がコレだ。

 歴史を変えたらお前は存在しなくなる可能性が高いぞ、それでもいいのか? って事なんだよ。

 そして俺自身に突きつけられたら、俺は必ず断る。


 自分が存在しない、なんていう事を許容する筈が無い。

 俺は俺が一番大事だし、俺が存在しない事に納得なんてしない。

 自己犠牲精神なんて欠片も無いからな、石にかじり付いてでも存在してやる。


 ま、俺の事はともかくとして、今はこの建物を全て探索しよう。

 終わったらすぐに<時空の狭間>に帰還だな。

 これ以上は用も無いだろうし。


 …

 ……

 ………


 その後、色々と探したものの、壊れた物ぐらいしか発見できなかった。

 地下が一番残っていたのは皮肉だが、<ムンガ>は何故あの地下室を破壊しなかったのだろう? あの場所こそ、一番恨みと憎しみが強い場所だろうに。


 奇妙だなと思うものの、俺達は探索を終えたのでさっさと戻る事にした。

 ここに長居しても仕方ない。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「お帰りなさい、イシス、バステト」


 「ただいま、ヌン。少し聞きたいんだが、ボロボロになって風化し掛かっている紙を復元できると思うか? <物品作製装置>で」


 「風化し掛かっている紙ですか……。不可能ではないと思いますが、何故そんな事を?」


 『<ムンガ>が作られたっていう、地下室のある建物を見つけたの。そこにあった紙がボロボロで、イシスが手に取ろうとすると粉々になるのよ』


 「成る程。そこまで風化した物を、ですか……。ああ! アイテムバッグに強引に収納したのですね。ふむ……おそらく復元は可能でしょう。イシスが大量に木を詰めていましたし、そこから紙も炭も作製可能です」


 「ま、大丈夫そうなんで、とりあえず行って入れてくる」



 俺達は<物品作製装置>の部屋まで移動し、箱の中に手に入れた物や獲物を大量に入れていく。

 最後に紙束だが、これだけは慎重に取り出して箱に送った。

 何とか上手く塊のまま入ったと思うが、果たして……。


 パネルを触って起動し、ウィンドウをスクロールして探すと、その一覧の一番下に発見。


 <憑依兵器ムンガ・考察レポート>が表示されているがそれだけではなく、<憑依兵器ムンガ・利用法>と<憑依兵器ムンガ・消去方法>というのもあった。


 俺は全て作製し、それを読んでいく事にしたのだが、その前にバステトから要望が出される。



 『イシス。私も自由に移動できるようにしてほしいんだけど? このままじゃ扉を開けたりできないじゃない』


 「あ、そういや不便なままか。犬猫用のドアを付けようと思って忘れてた」



 俺は<物品作製装置>の部屋の扉をヌンに言って外してもらい、それをアイテムバッグに入れて<物品作製装置>の箱の中へ。

 実は極めて特殊な方法で扉は固定されており、取り外しはヌンにしか出来ない。


 空間をどうのこうのと言っていたが、俺には意味が分からない念仏にしか聞こえなかったのでスルーした。

 まあ、ヌンも俺に理解できるとは思っていなかったようだが。


 それはともかく犬猫用の扉を付けた木製ドアを作り、それをアイテムバッグに入れて移動、<物品作製装置>の部屋の扉として付けた。

 後はバステトが移動できるかだが………問題は無いみたいだな。


 俺は個室部屋以外の全てのドアを変え、その後はゆっくりと寝室でレポートから順番に読んでいく。


 どうやら元々ムンガは孤児で、かなり特殊な能力を持っていたらしい。

 それが呪いに対する耐性が非常に高い事。そして魔力量が常人より多いという事。

 この二点で鬼畜どもに目を着けられたようだ。


 ムンガを改造して兵器にした連中は、小国の軍事研究機関であり、この小国は大国の軍事力に常におびやかされていた。

 その恐怖こそが、憑依兵器ムンガという非人道的兵器を生み出すキッカケだったらしい。


 そして陰惨な実験を繰り返した果てに、憑依兵器ムンガは完成。

 そこから憑依させる為の実験など様々な事が更に繰り返されたようだ。

 あの円筒形の入れ物に残っていた黒いヘドロ。

 アレこそがムンガの初期状態だった。


 最初は今のような状態ではなく、ヘドロのようなスライムのような存在で、そこから意思を持った瘴気体になるまでにも時間が掛かっている。

 そして最後の時にムンガを解放した事までが書いてあった。


 どうやら大国に軍事侵攻され陥落寸前まで追い詰められていたらしく、それ故にムンガを解放。敵を殲滅しようとしたんだと。

 それ以降は無いので、研究者達のレポートはここで終わりとなっている。


 結局、どいつもこいつも碌でもないという事が分かっただけか。


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