0037・森と蜘蛛と建物と
Side:イシス
武器の使い方を頭にブチ込んだ後、起きた俺はバステトと合流。
そのまま魔法陣の部屋で森へと移動した。
朝日が顔を出している時間だが、俺達はそんな中を草を採ったりしながら魔物を探して歩く。
蜘蛛の魔物を見つけられれば良いんだが、他の魔物でも問題は無い。
何より肉の元なのでバステトも嫌がらないだろう。
実際に狼の肉は歯応えがあって好きらしいし、熊の肉は食い応えがあるしな。
そういえば<物品作製装置>を使った熊肉は、知識の中にあるような臭味は無かった。
これはあの熊が臭くないのか、それとも<物品作製装置>が凄いのかどっちなんだろう? その辺りは分からないままだ。
まあ、臭い肉を食いたい訳じゃないので、無理に知ろうとも思わないんだけどさ。
それでも気になる事は気になる。絶対に調べはしないけど。
朝日の中を歩きつつ、魔物が居れば叩き殺し、草花があれば採っていく。
木はある程度の数を手に入れているので、今は無理して木を手に入れる必要は無い。
そんな中、現れる蜘蛛の魔物。
俺達は【ヒートバレット】で攻撃し、どちらかの攻撃が外れても片方の攻撃は当たるようにした。
そうやって交互に攻撃していると簡単に【ヒートバレット】は命中し、焦った蜘蛛の足を薙刀で叩き切る俺。
片側を2~3本切ってやると動けなくなるので、後は殺してしまうだけになる。
そんな感じで蜘蛛を殺してゲットしつつ、森の中の破壊を続けていく。
蜘蛛には縄張りがあるらしく、群れてはいない。
代わりと言っては何だが、縄張りが変わると出てきてくれるので、探し回らずに済むのは助かった。
余程に飢えているのか、それとも縄張りを荒らしていると思われたのだろう。
俺達が縄張りに入ると、向こうからやってきてくれるのだ。
俺としては蜘蛛糸の原料としか思っていないので、根こそぎ全滅させるレベルで倒している。
「いやぁ、蜘蛛が向こうから現れてくれるなんて、実に都合が良いよなー。こっちからするとバカで助かる」
『それにしても倒しすぎじゃない? 蜘蛛がこの一帯から完全に居なくなるんじゃないの? 根こそぎ倒してる気がするんだけど……』
「蜘蛛って一回で大量に産卵するから、新しい蜘蛛がまた縄張りを主張して元に戻ると思うけど? それよりも、最初に戦った蜘蛛が一番大きかったのが何とも言えないな。もっと大きいのが出てきてほしいんだが……」
『どれだけ蜘蛛の糸が欲しいのよ……』
「でもバステトだって蜘蛛糸の布、気に入ってたじゃん。アレに包まって寝てたぐらいなんだからさ」
『まあ、それはそうだけども……』
俺達はそんな話をしつつ山の中をうろうろし、多くの蜘蛛の魔物を倒していたのだが、その途中で妙な場所を発見した。
それは蔦などで覆われているものの、何かの大きな建物っぽい場所だ。
「ここに大量の蔦が絡まってるんだが、これどう考えても何かの建物だよな? 何でこんな所に建物があるのか知らないけど、もしかしたら、かつての人間が作った物か?」
『建物………うん、何となくは分かる。でも、ニンゲンとやらが滅んだのは随分と昔なんでしょ? まだ建物が残ってるっておかしくない?』
「別におかしくはないさ。例えば石で作られた建物なんて、数千年経っても残ってたりするんだ。人間がいつ滅んだかは知らないけど、数百年なら十分に残っている可能性はある。仮に石じゃなくてもな」
『そうなんだ……』
俺はそんな話をバステトとしつつも、【身体強化】をしながら短刀で蔦を排除していく。
石の壁みたいなのが見えると移動し、再び蔦などを排除していく。
それを繰り返した結果、ようやく中に入れそうな入り口を発見した。
「こんな所に入り口があったのかよ、蔦が一面を覆ってるから分かり難くてしょうがないな。それでも中には入れそうだからいいけどさー……」
『おつかれさま。随分と苦労してたけど、やっと入り口が見つかったわね。それにしても、こんな山の中に昔の建物とやらがあるなんて思わなかったわ。森の中なんて滅多に行かなかったし』
「それなら知らなくても当然だろう。そもそも森の中って危険だしな、あんまり近付いたりする場所でもない。俺だって蜘蛛糸が欲しいから動き回ってただけだし、それも戦える実力がなきゃしないさ」
俺達は入り口というか、かつては扉があったであろう場所から入っていく。
蔦で覆われる以外は何も無いって事は、かつては木の扉だったんだろうか?
それともガラスでも嵌め込まれた場所だったのかな?
建物の素材はコンクリートみたいな感じの色と質感だ。触った感触もそんな感じだろうと思う。
汚れた手を【クリーン】で綺麗にしつつ先へと進む。
中はガランとしていて何も無いっていうか、長い年月で壊れていったのだろう事が分かる。
地面に何か壊れた物が散乱しているが、それが何かは分からない。
既にそれぐらいの時間が経っているのだろう。
開いている場所から更に先へと進むと、色々な方向に通路が伸びている。
俺達はそんな中を一つずつ調べていくも、全ての部屋で壊れた物が散乱しているだけだった。
元が何だったかも分からないほど壊されており、その破片を適当に拾ってアイテムバッグに入れていく。
もちろん入れているのはある程度の大きさの物で、細か過ぎる破片なんかは置いてきた。
金属っぽい物もあるのだが、鉄のように錆びついている物もあれば、錆びずに残っている金属もある。
俺としては、その錆びない金属に興味があるんだ。
何かは知らないが、武器に使えると助かる。
そうやって部屋の中を調べつつゲットしていると、一つの部屋で魔物を発見。
蛇だったのでさっさと倒したのだが、何故こんな建物の中に居たんだろう?
『間違って入り込んだんじゃない? あの蛇はあまり大きくなかったし』
「そうかもしれないが、だったら何処から入ったか気になるのと、ここに入ってきてもエサというか食う物も無いと思うんだがな……。何でわざわざこんな所に入ったのやら」
『食べる物が無いとは知らなかったとか? もしくは初めて入ったから分からず、私達のように調べてた?』
「その可能性も無いとは言わな、うん? …………これ、扉か?」
下に落ちている物を回収していた時、地面に扉が付いているのを発見した。
引っ張り上げれば開くだろうが、御丁寧にも鍵が掛かっている。
しかも見た目は南京錠みたいな物だ。
困った俺は仕方なく熊の短刀を持ち出し、魔力をかなり流しつつ南京錠に振り下ろす。
するとあっさり南京錠は切れ、俺は鍵を横に放り捨てると、地面の扉の取っ手を強引に引っ張り上げる。
ギギギギーーーッ、バタン!!
扉を開けて放ると地面に落ちて凄い音がしたが、中に見えた梯子で少し緊張する。
地下には何があるのか、何の為に鍵が掛かっていたのか。
それを考えると嫌な予感がしないでもない。
とはいえ下に降りて確認しないと何の解決もしないしな。
ここは勇気を出して下に降りてみるしかないだろう。
バステトは嫌な顔をしているが。
「どうする、バステト。このままここに残るか? 地下は俺だけで見に行ってもいいぞ?」
『いえ、行く。こんな事で怖気づいても仕方ないしね。流石に気合いは入れなきゃ駄目だけど、それでもイシスだけ行かせて残るのは無いわ。最悪は即帰還させてもらうけど』
「それは構わないぞ、駄目なものは駄目だろうしな。よし、行くか」
俺は左手でバステトを抱きながら、右手を使って梯子を下りていく。
この先に何が待っているのか分からないまま。




