0033・ようやくの勝利
Side:イシス
これで何度目か分からないが、俺達は再び惑星へと降り立った。
事前の話し合いで、すぐに動き出さないと危険だというのは分かっていたので、降り立った瞬間から動き出す。
『ぬ? いきなり魔獣が移動しただと? ……貴様ら、やはり何か訳の分からぬ事をしているな!? いったい何をしている!!』
「仮に何かをしていたとしても、それを説明する阿呆が居ると思ってるのか? これだからバカは困る。何でも自分が聞けば答えると思っているのだから、始末に負えないな」
『死ねぇ!!』
更に黒いナニカを放出してきたが、<時空の狭間>に戻る前とは違って浄化が楽に出来るので助かる。
やはりRPGなどと同じく、装備品という物は重要らしい。
<魔力操作補正杖>は思っていたよりも効果が高く、<魔操の指環>と合わさって、思っていた以上に魔力の操作が楽になっている。
ついでに対消滅させる際の魔力も可能な限り薄くし、なるべく無駄なく魔力を使用していく。
何度も<時空の狭間>に戻るのも面倒だし、なるべく一度に多くの黒いナニカを消したい。
バステトも出来るだけ効率よく消しているみたいだし、今まで以上に浄化が楽に進む。
おそらく装備品があるというのも、心にゆとりを持たせてくれているんだろう。
俺達はどんどんと黒いナニカを消滅させる。
すると、ついに<ムンガ>の方が耐えられなくなった。
『クソッ! かなりの広範囲から持って来たというのに……! まさかここまで浄化されるとは計算外だぞ!! お前達いったい何をやっている!? 明らかにニンゲンの持つ魔力量ではなかろうが!!!』
「そんな事は知らんし、お前の実力不足を他人の所為にするなよ。もうちょっと頑張ればいいだけだろう、お前がな!!」
『おのれー! 許さん、許さんぞ! 虫ケラめが!! かつて我を散々に苦しめ、このような姿に変えたニンゲンめ! 未だに生き残っているとは思わなかったが、ここで確実に滅ぼしてくれるわ!!』
「お前のその姿は自分でやった訳じゃないのか。成る程、成る程。つまりお前を消滅させれば、二度と復活しないってこったな。答えを教えてくれてありがとう?」
『やれるものなら、やってみるがいい! 下等生物めが!!!』
更に無理矢理に黒いナニカを集めたのだろう、自分の体というか元ゴブリンの体を媒介にして、黒いナニカを更に飛ばしてくる。
しかし俺もバステトも<ムンガ>との戦いで相当に慣れた為、大量の黒いナニカが飛んで来ても、それを上回るペースで浄化していく。
その結果、遂に<ムンガ>が集められる黒いナニカの限界を超える事が出来た。
もはや<ムンガ>は立っているだけで、何も出す事は出来ていない。
そんな<ムンガ>に対して、俺達は容赦なく浄化を行う。
『グゥォォォォァァァァァァ!!! おのれ! おのれ!! 許さんぞ!! 我は何処かで復活し、必ずや貴様らを殺す!! 我は永遠であり、不滅なのだからなぁ!!!!』
俺とバステトは<ムンガ>の体全体を覆いながら、何度も何度も浄化する事で、遂に<ムンガ>を完全に浄化し切った。
その瞬間、<ムンガ>が乗っ取っていた元ゴブリンは前のめりに倒れていく。
「ドサッ」と音がしたが、それ以上は動く事も無くピクリともしない。
どうやら完全に勝ったようだ。
夕日が俺達を照らすなか、やっと勝ったという思いが爆発的に溢れてきた。
「やーーーっと! 終わった!! 本当にふざけやがって! しつこ過ぎるだろ、アイツ!!」
『本当にね。かつて居たニンゲン? とやらに何かをされたんだろうけど、私達や里の皆には何の関係も無いでしょうに。恨みか何か知らないけど、いい加減にしてほしいわね』
「とりあえず、あの死体をアイテムバッグに入れよう。真っ黒で元が何だったかすら分かり難いが、コイツもよく考えれば被害者なんだよな。<ムンガ>に利用されただけっていう」
『そういえば、そうね。ただしゴブリンっていうだけで襲ってくるから、同情なんて欠片もしないけど。………あれ? 私達や犬の連中から<ムンガ>に乗っ取られたのって居たっけ?』
俺はアイテムバッグに黒い死体を入れたが、バステトの言う事に引っ掛かりを覚えた。
もし犬猫に乗っ取られたヤツが居ないなら、ヤツが乗っ取れる相手は限定されている?
俺は疑問に思いつつも、一旦<時空の狭間>へと帰る事にした。
ヌンにも聞いてみたいしな。
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「お帰りなさい、イシス、バステト。作った物は役に立ちましたか?」
「ただいまだ、ヌン。「ニャー」。本当に役に立ったというか、コレがなかったら余裕が生まれなかっただろうし、また回復の為だけに帰ってくるところだった。で、倒したは良いんだが、コレが<ムンガ>が乗っ取っていたゴブリンの死体だ」
俺は魔法陣部屋に黒いゴブリンの死体を出した。
おそらく何処かからヌンは見ているんだろうが一言も無い。
色々と観察しているのだろうから好きにさせ、俺達は休憩する事にした。
バステトも床に寝転がって丸くなっているので、お疲れでの休憩モードになっている。
「ふーむ………。確かに瘴気とは微妙に違いますね。どちらかというと呪い寄りでしょうか? イシスとバステトが苦労して浄化していたのも、おそらくその為かと。呪いも混ざっているのなら、簡単には浄化できません」
「<ムンガ>というヤツが最後に言っていたが、自分で黒いナニカになったのではなく、過去あの星に生きていた人間に何かをされたらしい。ヌンが呪いというのなら、そういう実験に使われてたのかもな」
「その可能性はありそうですね。瘴気に近い物と呪いで構成されており、更に自我らしきものもあると。なかなかに面白い存在ですが、おそらく再現は不可能でしょう。偶然そうなった可能性が高そうです」
「もし狙ってやれるなら、<ムンガ>以外にも居るだろうしな。永遠の命を欲しがる阿呆って古くから居るし」
「それは色々な惑星で変わらない事です。<時空の旅人>は皆が辞めていくんですけどねえ、何故か寿命のある者は永遠の命を欲しがるのですよ。実に愚かな事ですが……」
「本当に愚かな事だよ。それはともかく、調べ終わったなら<物品作製装置>に持って行くが、いいか?」
「もう構いませんよ。つまらない存在だと分かったので、興味は無くなりました。瘴気と呪いが混じったような者ですから、浄化するだけで倒せるでしょう」
「指令が終わったというアナウンスは無いから、やはりまだまだ<ムンガ>が残ってるんだろうなぁ。あいつが魔王とも決まってないし、難儀な事だぜ」
俺はアイテムバッグに死体を入れて、<物品作製装置>のある部屋まで行って箱の中に死体を入れる。
その後に作れる物を調べていたら、<瘴気集積装置>が作製可能になっていた。
どうやらあの死体に含まれていた、<瘴血>と<呪いの皮膚>の御蔭で作れるようになったみたいだ。
コレで<ムンガ>の元を先に集めて浄化してしまえば、いちいち<ムンガ>と戦わなくて済むかもしれない。
俺は<瘴気集積装置>を作ると、出てきたのは灰色の四角い箱だった。
試しに開けてみたが中には何も無く、おそらく開けている間は瘴気を吸い込み続けるのだろうと思う。
そういう道具っぽいし。
とりあえず使うのは惑星に降りてからなので、一旦寝室に戻って寝る事に。
多少の仮眠はとったが、ある程度寝て回復しておかないと、夜の戦いでポカをやらかしそうだ。
流石に<ムンガ>との戦いは大変だったので、バステトもそうだがゆっくりと寝たい。
寝室に着いた俺達は【クリーン】で綺麗にした後、すぐにベッドに寝転がって目を閉じた。
バステトも本当に疲れているのか、すぐに寝入ったみたいだし、俺もさっさと寝よう。
それじゃ、おやすみ。




