0031・ムンガとの終わらない戦い
Side:イシス
休んで十二分に回復した俺とバステトは、魔法陣部屋にて自分達の立ち回りを確認した後で転移する。
再度降り立った俺達は、すぐに<ムンガ>の攻撃をかわして距離をとった。
『シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネェ!!!』
「もはや狂ってるとしか思えないな。いったい何の為に集まって自我を持ったのか理解不能だ。ただ「シネシネ」言う為に集まったのか?」
「ガァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「ニャー………」
こちらに戻ってきた途端に煽ると、バステトが呆れた声を上げる。
俺は気にせずに浄化を始めると、バステトもすぐに浄化を始めた。
<ムンガ>は俺しか見えていないかの如く腕を振り回してくるが、その程度の攻撃が当たる筈もなく、俺は余裕を持って回避し続ける。
ハッキリ言ってこの程度であれば、このまま余裕で押し切れるのだが、仮にも永遠を貪る者なんて格好をつけてたんだし簡単じゃないよな?
そういう風に俺が考えていると、浄化されてきたからか益々<ムンガ>は体全体で俺に攻撃を仕掛けてくる。
ここまで怒り狂ってると、攻撃が単調で回避が楽なので余裕は十分。
なので当たる事は無いんだが、何故かこのまま終わらない気がしてきた。
何だか嫌な予感だけが、ずーっと流れている感じだ。
俺としては、このまま押し切りたいんだがなぁ……。
「グルァァァァァァァァァ!!!」
「もはや狂った獣と何も変わらんなー。程度が低すぎるし、当たる事も無い。お前は自分が情けないと思わないのか? それともまともな相手が居なくなった星でボッチだったから、恥という感情も忘れたか?」
「ギィィィィィィィィィ!!!!」
相変わらず怒り狂っているので、このままゴリ押しで勝利したいところだ。
未だ嫌な予感は消えないが、かなり浄化できた。
このまま更なる浄化をしてしまい、完全にコイツをここで消滅させる。
「オォォォォォアァァァァァァァ!!! ……ガッ!?」
「お? 息切れか? バカみたいに狂ってるからだぞー。無様な姿を晒してるって自覚も無さそ、う?」
「アァァァァァァァァァァ!!!!」
何を思ったか立ち止まった<ムンガ>は、再び黒いナニカを吸収し始めた。
せっかく浄化したのにまたかと思いつつも、それでもこの星から<ムンガ>が減っているのは事実なので良しとするか。
そう思っていたら、<ムンガ>が急に冷静な顔をしてこっちを見てきた。
何だ、急に?
『我を怒らせて攻撃を甘くし、その間に浄化をしてしまうか。下らぬ事を考えるものだ。下等生物の悪足掻きなど、もはや完全に見切ったわ』
「その割には怒り狂って泡を吹きそうになってたがな? 何か無理矢理に冷静になろうとしている感じだが、その時点で既に駄目だと分からないもんかねぇ」
『クッ! ………危ない、危ない。また下等生物の下らぬ罠に引っ掛かるところであった』
「だーかーらー。一回でも掛かってる時点で、他人の事を下等生物とか言えるのか? って言ってるんだが……。分からないって、悲しいな」
『…………ふん!! 貴様の手には乗らんぞ! 我は<ムンガ>、全ての文明を滅ぼしてきた者なり。貴様もそれらと同じく、ここで散れ!!!』
何も思ったのか、<ムンガ>は突然俺に対して黒いナニカを放出してきた。
俺は咄嗟に足に【身体強化】をして回避するも、黒いナニカは俺を追いかけてくる。
これが<ムンガ>の奥の手というか、嫌な予感の正体か?
こうやって勝てない相手を乗っ取ってきたって訳なんだな、<ムンガ>という存在は。
やはりコイツは自分が滅ばないからといって、調子に乗っている。
おそらく星中に自分という存在が散っていて、何処かで復活できるからという余裕がコイツの欠点だ。
ならそれを利用したいところなんだが、そうそう上手くは行きませんってな。
今は回避しながら黒いナニカを浄化しているが、このペースじゃ簡単には終わらない。
もっと効率よく一気にやらないと押し切られる。
なので俺は魔力の紐を袋のように広げ、一気に黒いナニカを覆って消す。
しかし量が多い所為か一回では完全に消せず、二回に分けなければ無理だった。
『チィッ!! 我の力を消しおって。それに貴様、何かズルをやっておるな! 魔力が失われずに有り続けるなど、おかしいにも程がある。貴様のその力の源泉、暴いて潰してくれるわ!!』
「何を言ってるんだ、お前は? 俺がズルをしているなら、お前は卑怯者だろうが。誰かの体を乗っ取る事でしか存在できないのがお前だ。かつては存在したのだろうが、今は誰かの体を借りなければ存在できまい」
『ハッ! これだから愚かな下等生物は困る。我は肉体から解き放たれた完全なる存在! 永遠を生きる事が出来る者ぞ!!』
「だから無様だって言ってんじゃん。俺はそもそも寿命も何も無いし、死んだって幾らでも復活するぞ? そうでありながら、お前のように空しい存在じゃなく、ちゃんと自分がある。お前は誰かに依存しないと生きられないじゃないか。この差はとてつもなく大きいんだが、お前じゃ分からないか」
『なんだと!? …………ハッ! 下等生物の嘘か、つまらん。所詮は口からでまかせを言う程度のヤツ、聞くに値せんな!』
「いや、聞く必要は無いぞ。俺は純然たる事実だけを話してるし、お前がどう思うかなど極めてどうでもいいからな。そもそも穴だらけの存在に、いちいち聞かせてやる価値も無い」
『おのれ、何度も何度も我に向かって偉そうな口を叩きおって! 今すぐ潰してくれる、ぐわっ!!』
おっと、流石に減らしすぎて気付かれたか。
それでも、この瞬間に俺とバステトは<時空の狭間>へと戻る。
流石に魔力が無くなってきたからな。
目の前の景色が歪み、次の瞬間には俺達は魔法陣部屋に立っていた。
ヌンとの挨拶もそこそこにベッドで寝転び魔力や体力を回復すると、すぐに魔法陣部屋に戻って再び惑星へ。
『ぐぅ……。おのれ狡い事ばかりしおって! もう許さんぞ、貴様ら纏めて我の力の贄としてくれるわ!!!』
<ムンガ>がそう口にすると、黒いナニカが再び<ムンガ>の体に集まり始め、更にそれを放出してきた。
俺とバステトはすぐに走り出し、回避しつつも魔力を袋状にして包んで消していく。
しかし今回は放出し続けているので、次から次へとおかわりが飛んでくる有様だ。
このままじゃ何れ黒いナニカに喰われかねない。
とはいえ浄化するしか道が無く、俺とバステトは必死になって浄化し続ける。
『ククククククク………!! そら、踊れ、踊れ!! 無様な下等生物どもよ! 貴様らはやがて我に潰されて滅ぶのだ! 永遠の存在たる我を侮ったその罪、万死に値するのだからな!!』
お前がそんな存在かよ。と思うが、今はそれどころじゃない。
ヤツが黒いナニカを放出し続けている所為で、俺達はいつまで経っても逃げ続けるしか対処方法が無いんだ。
流石に浄化も簡単に出来る訳じゃなく、魔力も無限にある訳じゃない。
ヤツからすれば俺達の魔力は無限に思えるのかもしれないが、俺達は毎回戻って回復しているだけだ。
今回もまた限界に近いな。
俺は再び戻るべく帰還を願い戻ったものの、次に惑星に戻った際にズレるのは確定だ。
俺とバステトは惑星に下りる際には同じ場所に出てしまう。
それはつまり黒いナニカに追いかけられていたバステトが、突然、瞬間移動をしたみたいになってしまうのだ。
あの<ムンガ>が<時空の狭間>に気付く事は無いと思うが、何がしかの疑いを持たれるのは確実だろう。




