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0029・殲滅終了と黒の力との戦い




 Side:バステト



 回復した私は、再び魔法陣からゴブリンどもの集落へと戻る。既に多くのゴブリンを殺しているし、中には子供と思われる者も居たが殺した。逃げ惑ってるヤツだろうがお構い無しに始末している。


 生き残らせてやる価値は無いし、私達の里の者も同じ目に遭わされたのだ。ゴブリンだけ許されるなどという事はあり得ない。確実に殺す。


 そうやって始末していると、中には私を襲ってくる者も居る。とはいえ私からすれば簡単にかわせる攻撃でしかなく、何より私が近付く必要など何処にも無い。遠間から【魔術】で撃ち殺せばいいだけだ。


 そもそも<銃>とはそういう武器らしく、この【アースバレット】もそれを真似たものだとイシスは言っていた。「遠間から撃ち殺して何が悪い、戦いとは生きるか死ぬかだ」。そう言っていたのを思い出す。


 本当にその通りだ。この2対多数の状況でも勝てる以上、戦い方としては間違っていない。危険には近付かず、安全な遠間から射殺す。私達だけで勝つ為には、これが最良の方法でもある。


 里の戦士達は怒るかもしれないけど、私は間違ってるとは思わない。もしあの時に遠間から攻め立てていれば、【黒の力】のヤツを倒せたかもしれないんだ。にも関わらず、戦士達は近接戦を挑んで散っていった。


 戦士の矜持だか何だか知らないが、その所為で女子供まで殺されてしまったのだ。果たしてそれでも戦士の矜持など守る価値があったのか? 戦士達の気持ちも分からないではないが……私には理解できない。


 考え事をしながらでも戦えてしまう為、私は作業のように次々とゴブリンの頭を撃ち抜いていく。そして気付けばイシスの周り以外は居なくなっていた。


 私はゴブリンの集落の四隅に移動し、魔力の放射をする。しかし集落の外に反応は無かった。それよりも遠くに逃げているか、残っているもの以外は殲滅し終わったかだ。


 私はイシスの近くに駆け寄り、ゴブリンの頭を次々に撃ち抜いていく。もはや慣れた作業のように可能だし、どれぐらいの魔力を篭めれば頭が撃ち抜けるかも分かる。


 残っていた3体のゴブリンも始末したので、後は【黒の力】だけだ。でもまずは休憩が先だと思う。イシスは休む事無く相手をしていたんだし。


 そう思っていたら目の前の景色が歪み、魔法陣部屋に戻ってきていた。



 「ふー………! あー、疲れた。あの【黒の力】を持つゴブリン、物凄く頭が悪いぞ。御蔭で助かったけど、冷静なヤツならとっくにおかしいって気付いてる筈だ。何か変だったな?」


 「お帰りなさい、イシス、バステト。ゴブリンが変……ですか?」


 「ただいまだ、ヌン。バステトもお疲れさん。ゴブリンが変っていうより、【黒の力】が変って感じだな。挑発が上手くいったのはいいんだが、一度怒り狂ったら、ずっと怒り狂ってる感じだ」


 『確かに「がー」とか「ぐるぉ」とか言い続けていたし、怒りの咆哮を常に上げるって、ちょっと変ではある』


 「<負の想念>だからではありませんか? だからこそ自身の想念に囚われてしまっている可能性が高そうです。一度怒らせれば、ずっと怒り狂わせる事が可能なのではないでしょうか?」


 「そんな感じなんだけど、状況によっては、むしろやらない方がいいかもな。少なくともゴブリンの体を乗っ取ってるのが【黒の力】なんだろうが、アイツ全くと言っていいほど体力が減ってない」


 「つまり怒り狂った状態で動き続けると?」


 「そうだ。ヌンがアンデッド間近って言ってたのも分かるぐらいには疲れる事が無い。元気に両腕ブンブン振り回してるだけだから余裕だが、ちゃんとした技術とか持ってる相手だとマズい」


 『無限に体力があるなんて反則もいいところ。昔の方達がそれだけの犠牲を出す筈よ。強いヤツが乗っ取られたなら最悪じゃないの』


 「それがあの惑星の魔王なんじゃないかと思ってるけど、今のところは分からないな。もっとハッキリとした情報があるかもしれないが、無いかもしれないし……。案外と手探りで何とかするしかないかも」


 「そういった話は後で行うべきでしょう。まずは十分に回復してください。今はまだ【黒の力】という者は倒れていないのでしょう? 気を抜くのはそれを倒してからです」


 「確かにヌンの言う通りか。とにかくまずは寝て回復しよう」



 俺はバステトを連れて寝室に行き、【クリーン】で綺麗にした後ベッドにダイブ。ゆっくりと仮眠を取る事にした。


 …

 ……

 ………


 少しでも仮眠をとれば回復はするもので、パッと起きた時には心も体も大分マシになっていた。


 あの【黒の力】との戦闘は、思っていたより神経をすり減らしていたらしい。十分とはいえないものの、これ以上は眠れないので魔法陣の部屋に行く。バステトも既に起きているので、後ろを歩いている。


 魔法陣の部屋についた俺達は、自分達が立つ魔法陣を前にミーティングを行う。



 「よし、バステト。俺達はこれから【黒の力】と本格的に戦う訳だが、先程までと同じく俺が囮になる。正確にはヤツの怒りは俺に対して大量に向いているから、今の時点でヤツの怒りをバステトに向ける事は無理だろう」


 『あそこまで怒り狂ってたら、それは無理でしょう。私はヤツに見つからないように浄化するって事ね』


 「そうだ。俺もやるけど、戦闘をしながらだと精度が甘くなるのは確実だしな。特にあの死体のように、隅々まで完全に浄化する必要があるだろう。魔力が無くなれば戻ってきて回復。それを繰り返して確実にヤツを消滅させる」


 『分かってる。あの【黒の力】こそが皆の仇。確実にここで滅ぼす』


 「作戦は決めた通りだ。それじゃ、行くぞ!!」



 俺達は魔法陣に乗って戦場へと転移する。確実にあの【黒の力】はここで始末しておかないとマズい。またぞろ別の魔物を乗っ取って、こっちをつけ狙われても困る。そういう意味でも、ここで始末しないとな。


 目の前の景色が歪み、そして目の前にはあのゴブリンがこちらを射殺さんと睨みつけていた。俺が槍を突き付けると、それを腕で弾こうとしたので、引いてから再度ヤツに突き付ける。


 そんな行動をしている隙に、バステトはヤツの後ろに回り込み、魔力の紐を伸ばして浄化を始めた。すると、俺の事を無視してバステトの方に向く【黒の力】。


 どうやら浄化が厄介な事は知っているらしい。もしくは初めて危機感を持ったか? こいつは殺されても復活するってんで、随分と頭のおかしい戦い方をしていたからなぁ。



 「おら! お前の相手は俺だろうが!!」



 後ろからヤツの体を槍で刺すが、俺の方には見向きもしない。明らかに自分にとって危険なのが、槍じゃなくて浄化だと分かってやがる。



 「ガァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 「バステト、一旦退け!」


 「ニャア!!」



 バステトは【黒の力】を少し浄化した後、すぐに攻撃をかわす為に横へと跳んだ。その御蔭で【黒の力】の蹴りは空を切ったが、まさかここまで一気にターゲットが変わるとは予想外だったな。


 俺は再び自分にターゲットを向けさせるべく、ヤツの体に魔力の紐を伸ばし、干渉して喰らうように【黒の力】を消す。対消滅するような形で【黒の力】が減ると、今度は俺に対して憎しみの篭もる目を向けてきた。



 「やっと俺の方を向いたか。そうそう、お前の相手は俺だろうが。余所見していいなんて誰も言ってないぜ?」


 「グルァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 「あー、うるせえ、うるせえ」



 俺は意図的に余裕の態度を崩さずに戦う。コイツにはその方が効くと何となく分かるからだ。伊達にさっきまで戦ってた訳じゃないしな。


 さて、ここからが勝負所だ。俺達の完全勝利で終わらせるぞ。


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