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0022・猫の集落




 Side:イシス



 『まず、俺がお前を発見した時には、既にあの緑色の皮膚の奴等に連れて行かれるところだった。そして、お前さんは大きな怪我をしていたんだ。俺はそれを助けて治療したんだが、連れて行かれるまでは覚えてるか?』


 『ニャ』


 『そうか。覚えてるなら話は早い。俺は助けたものの、何故お前さんが連れて行かれる最中だったのか分からないんだが、そこのところを説明してもらえるか?』


 『ニャ!? ニャア、ニャニャニャ、ニャニャッニャン』


 『成る程。お前さんは集落の警戒要員だったんだが、そこを捕らえられてしまい、あの緑色の奴等に食われる寸前だったと。警戒していたお前さんがやられたって事は、その集落は相当マズいんじゃないのか?』


 『ニャ!! ニャニャニャンニャーニャニャ!!!』


 『あー、うん。助けるのは構わないんだが、俺はお前さん達の集落が何処にあるのか分からん。道案内を頼めるか?』


 『ニャ!』


 「ヌン。この猫の住む集落があるらしいが、さっき箱に入れてたゴブリン? が猫の集落を襲ってる可能性が高いらしい。どう考えてもそっちが魔王側だと思うんで潰そうと思う。ついでに情報も得て来るよ」


 「分かりました。あまり強くはなさそうですが、代わりに知恵が回りそうです。十分に気をつけて下さい」


 「了解」



 俺は<生物修復装置>の部屋を出ると、猫も周りを見回しながら出てくる。そのまま魔法陣部屋へと進み、俺と猫が魔法陣に乗る。目の前の景色が歪み、気付いた時にはいつもの河原に居た。



 「ニャ!?」


 『ここは河原なんだが、ここから集落までの道は分かるか?』


 「『ニャー………ニャア!』」



 【念話】にも声にも両方出てるが、そこは気にしなくてもいいだろう。


 猫が走り出したので、俺も一緒に移動する。猫は最初に川下へと走り出したので、俺も川下に走りながらついていく。ここが何処なのか調べつつだからか、そこまで速くはないな。


 そのまま走って行くと森が切れたので、あの森はそこまで大きくは無かったらしい。どうやらそれで魔物の数が多くなかったんだと分かる。そのまま走って行くと、途中で右に曲がったので場所は分かってるっぽいな。


 更にそのまま走って行くと、堀のある場所を発見した。おまけに土壁なんかも作られている。明らかに人工物なんだが、もしかして猫の集落ってアレか? 洞窟とか地面の穴を想像してたんだが……予想以上にしっかりしてるぞ。


 それでも中から「グギャグギャ」聞こえるので、どうやらゴブリンに襲われているらしい。猫は堀をジャンプして越え、土壁の上に乗って中に入って行ってしまった。何処か開いている場所を探そうかと思ったが、そんな場所は無さそうだ。


 なので足に【身体強化】をし、一気に跳んで土壁を越えて中に入る。すると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図だった。地面には切り裂かれ潰された猫の死体。そしてその中で暴れ回るゴブリンども。特に二回りほど大きいゴブリンが暴れ回っている。


 俺は槍を構えて突進し、そこらに居るゴブリンの頭を刺して回る。とにかく頭さえ潰してしまえば一撃で勝てるので、俺は容赦なく殺戮していく。その間にもチラリと見るが、大きなゴブリンに次々と猫が殺されている。


 しかし小さなというか、普通のゴブリンも猫を襲っているので倒さざるを得ない。特に大きなゴブリンには多数の猫が群がっていて手が出せないんだ。迂闊に攻撃すると、猫まで傷付けかねない。


 なのでゴブリンを倒しつつ、それを援護にしている。実際それだけじゃなく、俺も襲われてるしな。


 別にチキンだという訳でもなく、大きなゴブリンにビビっている訳でもない。多分だけどアイツはカミナリグマぐらいの強さしかしていないだろう。それは何となくで分かるんだよ。



 「「「「「「「ニャー!!!」」」」」」」


 「グゥォォォォォォォ!!!!」



 それでも加わらないのは、多くの猫が必死に戦ってるからだ。アレの邪魔をするのはどうなのかと俺は思ってしまう。良い悪いは別にして、戦士の矜持で戦ってる以上は邪魔をするべきじゃない。


 実際に鬼気迫る表情で戦っている以上、その戦いに横から割り込むのは流石にはばかられる。なので俺としては邪魔なザコの掃討に力を入れている訳だ。それなりに大きな土地だが、集落内に建物とかは一切無い。


 猫だから建物というか住宅をわざわざ建てたりはしないか。そんな事を考えつつも、分かりやすい緑色の皮膚の奴等を殺していく。薄く魔力を通しているが、流石は熊の牙製。簡単には欠けたり折れたりしない。


 ゴブリンの数も減ってきて、ようやく終わりが見えかけた頃、気付けば大きなゴブリンの周りには殆ど猫が居なかった。この集落で見た猫の毛は黒とか白とか黄色とか灰色だった。何故か茶色の毛の猫は一匹も居なかったんだよな。


 そして大きなゴブリンの周りで戦ってる猫の中に、まだ茶色い毛の猫が残っている。あいつは頑張って戦っているらしい。しかし大きなゴブリンが振り回している木の棍棒が邪魔で、なかなか近づけないみたいだ。


 そして最後のゴブリンをブチ殺し、やっと大きなゴブリンに対処できると思ったら、ちょうどそのタイミングで茶色の毛の猫が吹き飛ばされているのが見えた。


 俺は【身体強化】をしてすぐに猫を拾い、大きなゴブリンを見据えながら<時空の狭間>へと戻る。


 目の前の景色が歪んでくるが、大きなゴブリンの顔も歪んでわらっていた。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「お帰りなさい、イシス。……また傷ついたのですか?」


 「猫の集落に行ったら、ゴブリンの群れに襲われていたんだ。中に一体大きなゴブリンが居てな、そいつとの戦いで棍棒の直撃を受けた。もう一度治す」


 「それは構いませんが、その集落の猫は?」


 「おそらく全滅だ。といっても着いた時にはまだ居たんだけどな。大きなゴブリンとの戦いでどんどんと殺されていったよ」


 「その時、イシスは何をしていたんですか?」


 「周りのゴブリンの掃討。大きなゴブリンには多くの猫が群がっていて、攻撃しようものなら巻き込む可能性が高かったんだよ。なので介入は出来なかった。とても止められるような状況でもなかったしな」


 「そうですか。それなら仕方ありませんね」


 「ああ。猫の戦士? みたいなのが自分の矜持で戦ってるんだ。それの邪魔は流石に出来ないさ。それに集落をメチャクチャにされてるんだ、自分の手でブチ殺さないと気が済まないだろう」



 俺は<生物修復装置>に猫を入れて、治療を選択する。後は猫の治療が終わるまで放っておくだけだ。そこまで疲れてないからいいが、それでも仮眠はとろう。そう思って床に寝転がると、俺はすぐに意識を失った。


 …

 ……

 ………


 「ニャー!! ニャー!! ニャニャニャーッ!!!」


 「うん? 猫の鳴き声?」



 俺は五月蝿い猫の鳴き声で起こされたので仕方なく起きる。辺りを見回してようやく理解したが、ここは<生物修復装置>の部屋だ。そして猫を連れて一旦<時空の狭間>に戻ってきたのを思い出した。


 猫は拠点の時間が止まっているのを知らないから慌ててるんだろうけど、ここでの時間は止まっているから気にしなくてもいいのにな。それはともかく開けてやるか。



 「開け」



 俺がそう一言を発すると、すぐにカプセルの蓋が開き、慌てたような様子で猫が出てきた。俺はそんな猫をキャッチし、【念話】で語りかける。



 『心配しなくても、ここの時間は止まっている。なので大きなゴブリンは集落に居るままだ。それ以外のゴブリンは俺が殺した』


 『ニャ!? ……ニャー! ニャニャ!!』


 『何故、助けなかったって? 戦士達が戦士の矜持で戦ってるのに、俺が介入して倒して納得するのか? 俺にはとてもそうは見えなかったがな』


 『…………ニャー』



 どうやら猫も俺の意見に納得したらしい。あれだけ苛烈に攻めたりしてたもんなぁ。あの状態で横取りされたら、間違いなくキレるだろうよ。戦士であれば、ある程にな。


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