0021・新たな発見
Side:イシス
鬱陶しい蛇からは逃げつつ、草を手に入れ魔物を狩っていく。ある程度の魔物を倒して確保できたので、一旦森を出る為に河原の方へ移動を開始。何となくで方角を覚えているが、最悪は拠点に戻るしかない。
それも情けないので出来る限りは自力で戻りたいところだ。方位磁針でもあれば方角が分かるんだが、俺はサバイバル技術とか碌に知らないからなぁ。知識とかあんまり無いみたいだし。
適当だがこっちだろうというアバウトな感覚のまま歩いていくと、森の中に開けた場所があった。明らかに向かうべき方角を間違えているのだが、そこにあったのは集落だ。それも堀が掘られて塀がある集落。
塀と言うか丸太が並んでいるだけだが、明らかに人工物であり知的生命体が住んでいるとしか思えない物だ。丸太の塀は隙間が空いているので中は見えるんだが、家っぽい物はあるんだが誰も外に出ていない。
いったい何が住んでいるんだと思っていたら、骨組みに草を被せただけのような住居から出てきたのは、緑色の皮膚の子供だった。
…………ゴブリンか? 何だかそれっぽい感じがするんだが、それが本当かは分からない。少なくともゴブリンと言われれば納得する見た目ではある。後、見えているゴブリンは草を着ているんだが、胸元も隠しているという事はメスなのか?。
ゴブリンの生態になんて詳しくないから分からないが、ゴブリンってメスが居たんだな。ちょっと驚き。
それはそうと、果たしてコイツらがこの星の知的生命体なのかという疑問がある。どっちかっていうと魔王側じゃね? という思いが、ぶっちゃけ拭えない。だってさー、どう考えても悪役側じゃん? もちろん決め付けちゃいけないんだけど。
ここから見ているだけじゃ分からないし、正直に言ってどうこうする気も無いから、さっさと離れるかな。俺は集落の外側から離れ、別の方角へと進む。こうなったら色々と確認した方が良いだろう。
そう思ってウロウロとしていたのだが、何やら声が聞こえてきた。
「ギャーギャギャ? ギャギャギャッギャギャ?」
「ギャッギャギャギャー! ギャギャッギャーーー!!」
「ギャア! ギャギャギャーッギャギ!!」
何だかご機嫌なゴブリンが三体いるんだが、そのゴブリンが持っているのは猫? あの茶色い毛の猫を食うのかもしれないが、なんかあの猫おかしくね? ゴブリンに切られたのか血を流しているが、明らかにゴブリンを睨んでる。
何と言うか、あの猫に知性を感じるのは気のせいか? ………まあ、ゴブリンと猫。どっちが悪役じゃないかといえば猫なんだよなぁ。でもゴブリンが一般人で、猫が魔王の部下とか………無いか。
あからさまに猫を見る目が悪党面だもん、アレで一般人とかあり得んわ。という事でゴブリン君には死んでもらおう。
俺はナイフを浮かせ、ゴブリンの頭の上にセット。そして一気に頭に落とした。その結果を見届ける事なく俺は槍を持って突撃し、猫を持っているゴブリンの頭を突き刺す。
目と腕と足の【身体強化】に【武器強化】をした一撃はゴブリンの頭蓋を貫く。あっさりと死んだゴブリンの手から猫が落ちた。
先程見た時には睨んでいた気がするが、既に意識を手放したのか気絶している。俺は素早くゴブリンをアイテムバッグに回収し、猫を抱いて<時空の狭間>へと帰還。一旦帰る事にした。
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「お帰りなさい、イシス。それは……猫ですか?」
「ただいま、ヌン。この猫は緑色の皮膚をした人間っぽい見た目のヤツ。俺の知識ではゴブリンと呼ばれるヤツなんだが、そいつが捕まえていた猫だ。どっちがどうかは分からなかったんだが、ゴブリンを殺して猫を回収してきた」
「そうですか。そのゴブリンの側が守るべき原住民の可能性もあるので気をつけて下さい」
「分かってる。ゴブリンは森の中に集落を作ってたし、それなりには知恵が回るみたいなんだよ。とはいえ、なぁ……。あれがこの星の反魔王側かというと、分からないと言うしかない。ハッキリ言って情報が無さ過ぎる」
「その猫に【念話】を付与するしかありませんね。魔力を使って会話というか、意思の疎通が出来るようになります。知恵が無いなら<肉体改造薬>を作って飲ませるしかないでしょう」
「そういう事も可能なのか。それはともかく、この猫を<生物修復装置>で治そうと思う」
「それが良いでしょう。仮にここの事がバレても大した意味はありません。<時空の旅人>は一人だけですからね。その一人を何とかしなければ、どうにもなりませんので」
「それって、見つかったら俺が追っかけ回されるじゃんか」
「ええ。ですが最終的に必ず勝つでしょう? だって死んでも蘇るんですし、捕らえられても<時空の狭間>に戻ってくれば済むんです。最後には必ず勝てるんですよ」
「それまでの痛みと苦しみは凄い事になりそうだけどな。っと、着いた」
俺は<生物修復装置>に猫を入れ、治療と【念話】の付与のボタンを押して後は任せる。まだ死んでいないので余裕で治せるだろう。
仮に死んでいても肉体は修復できるらしい。ただし時間が経っていると記憶の欠損が激しく、元の人格には戻らないそうだ。
俺は猫が回復するまでの間、<物品作製装置>に行って箱の中に獲物などを入れていく。栄養剤が幾つか作れるようになっているので、とりあえずは安心だ。飲みたくはないが、健康の為には已む無しというところだろう。
「イシス、あの猫の治療が終わりました」
「え? もう? えらい早いが、もしかして大した傷じゃなかったのかね」
「<生物修復装置>であれば、死にかけの傷でもすぐに終わります。時間が掛かるのは改造や付与などですね。それも複雑なものであればある程に時間が掛かります」
「という事は【念話】っていうのは簡単なんだな。俺も後で付与しておいた方が良いか」
「イシスは既に付与されていますよ? 原住民との意思疎通の為には必要ですからね」
「持ってたのかよ!」
「まだ原住民との邂逅もしていませんでしたし、必要になってからの方が理解しやすいのですよ」
「まあ、言いたい事は分かる」
<生物修復装置>の部屋を開けて中に入ると、猫が「ニャーニャー」鳴いていた。どうやら目を覚ましたらしい。俺は外から「開け」と言い蓋を開けてやると、中から猫が飛び出してきて引っ掻いてきた。
着ていた革鎧の表面が切り裂かれたので驚いたが、俺は猫に落ち着くように言う。
「おいおい、落ち着け。お前はゴブリンに殺されかかってただろう。それを助けたのが俺だ。攻撃されても困るぞ」
「フーーーーッ!!!!」
完全にこっちを敵認定しているうえ、えらい毛が逆立ってるなぁ。これじゃ落ち着かせるのは難しいか。興奮してるみたいだし、暴れるだけ暴れさせた方が良いのかもしれん。
「イシス、【念話】です。魔力を繋いで心で語りかけて下さい。そうすれば意思の疎通が出来ます」
「そうだった。【念話】というのを付与したんだったな。すぐに繋いでみる」
俺は薄くした魔力の紐を猫に繋いで念じてみる。
『聞こえるか? 俺の声が聞こえていたら返事をしろ』
「『ニャーーーーッ!?!?』」
駄目だ、混乱してやがる。いったいどうすれば、この猫を落ち着かせる事が出来るんだ? このままだとパニクったままになるし、全く意思の疎通なんて出来やしないぞ。
もう一度やってみて駄目なら、方法を変えるしかないな。
『聞こえるか? 俺の声が聞こえていたら、とりあえず落ち着け。ここにはお前を害する者は居ない』
『………ニャー』
何とか通じたか?。




