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0019・魔力が増えるという事




 Side:イシス



 服作りも終わった俺は、魔法陣の部屋へと移動しつつ気になっていた事をヌンに聞く。



 「そういえば、ヌン。前任者は能力が低くて苦労をしたと紙に書いてあったんだが、それは本当か?」


 「はい。前任者の時空間固定能力は、<時空の旅人>に成れるギリギリでしかありませんでした。前任者の前任者が拾ってきた者で、死に掛けていた前任者を助ける為に<時空の旅人>にしたのです」


 「そういう経緯だったのか。しかしモンスターの星とか悪魔の星で苦労したと書いてあったが、俺が元居た星……というか、俺自身の事はサッパリなんだが、元の星に関しては色々と覚えてるんだよ」


 「そうですか。それで?」


 「ああ、実はな……前任者が俺の元居た惑星で行った指令って何なんだ? そもそも俺が元居た惑星は魔物やモンスターなんて居ないんだぞ? しかも恐らく滅ぼされたって事は無いだろうし」


 「前任者の最後の指令ですか。それは確か、ある国のトップの暗殺だったと思います。「この惑星での指令は簡単なうえ、能力が異常に高いヤツを見つけた!」と喜んでいましたし、その話の中でそう言っていました」


 「うん? 俺って時空間固定能力ってヤツが高いのか? ギリギリだった前任者よりは高いんだろうけど、激低だった前任者の「異常に高い」は当てにならないなー」


 「実際にイシスの時空間固定能力は、歴代の<時空の旅人>でもトップクラスですよ。一番か二番かというぐらいの高い能力です。ですので、これからどんな場所に行くのか、私も楽しみにしているんですよ」


 「低い能力者だと似たような所で、似たような指令ばかりが下るのか? もしかして」


 「ええ。残念ながら、その通りです。前任者は本当につまらない指令ばかりで……。可哀想だとは思いましたけど持って生まれた能力ですし、何より前任者の前任の所為ですからねえ。たまには善い事をしようとした結果ですし」


 「碌なもんじゃないな。たまには善行を、で<時空の旅人>にされるのかよ。過酷過ぎるだろ。それはもう死なせてやった方が良かったんじゃないか? 俺はそう思うぞ」


 「その後の苦労を知れば確かにその通りですけど、前任者の前任はそれを知らない訳ですから……。自分は善い事をした、って感じで引退しましたよ。だから全く知らないでしょう」


 「うわぁ……本当に碌でもねぇ」



 ちょうど魔法陣部屋に居たんだが、ヌンの言葉を聞いて、むしろ前任者に同情したわ。前任者の前任こそが諸悪の根源かよ。本当に碌な事をしないな。やっぱり浅い善意って人の為にならねえわ。


 俺の元居た星の誰かが暗殺されたらしいが、俺の中にそれに該当する記憶が無い。という事は、表沙汰にはならなかったんだろうなー。要人暗殺になる訳だし、内々に処理されるか。普通は。


 ま、記憶に無い事は横に置いておくとして、そろそろ惑星に移動しよう



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 転送されてきた俺は、先程と同じく登る方向へと進んで行く。草木を取りながら移動して行こうと思ったのだが、ここで予想外の出来事が発生。魔力が増えた所為で、手加減が難しくなった。


 今までは1の感覚で出ていた魔力が、今では0.5で出る感じ。単純に換算しても倍の力が出てしまっている。御蔭で木の根元だけじゃなく、結構な範囲の土が軟らかくなってしまった。おそらく別の1~2本の木の根元がやられたと思う。


 仕方なく押し倒せる木は押し倒し、アイテムバッグに収納していく。魔力を放射して様子見をするのだが、今まで以上に遠くへと魔力が飛んだ。それは良いのだが、せっかく魚で努力したのに、その努力を嘲笑うかの如く沢山の魔力を放出してしまっている。


 必死になって薄くしようとしているのだが、増えた魔力が結構多く、そう簡単には薄く出来ない。あまりにも薄くしようとし過ぎると、今度は魔力がブツブツ切れる感じで出てしまうんだ。薄く広がってくれない。


 立ち止まって練習していると、魔力の放射に反応があったので河原へ退避する。槍を構えて待っていると、現れたのはウサギが三羽だった。姿を現したウサギは、相変わらず牙を見せて俺を威嚇してくる。


 その威嚇も何度も見れば圧は感じなくなるもので、俺はさっさと右のウサギに【ヒートバレット】を発射した。今までと同じように発射した【ヒートバレット】は、首に吸いこまれるように入り、ウサギの喉を大きく抉る。



 「ギュボッ!?」


 「「ギィ?」」



 右のウサギの首が大きく抉れ、それを見て唖然とする残りのウサギ二匹。俺はすぐに二匹のウサギに【ヒートバレット】を発射し、喉を深く抉る。右のウサギと同じく喉を抉られた二匹は、途端に苦しんで暴れ出した。


 <魔力増強薬>を一回飲むだけで、ここまで威力が変わるのか。いや、その分だけ魔力を篭めてるんだけど、それだけ篭めてもまったく問題ない。それが感覚で分かる。


 苦しんでいるウサギの頭に槍を突き刺すものの、多少の抵抗があっただけで、至極あっさりと貫いた。魔力で強化もしていないのに威力が高いな。流石は熊の牙だと思うが、それを示すぐらいには強かったんだから納得ではある。


 とどめを刺したウサギを収納し、再び草木を取りながら登り道を進んで行く。再び魔力の放射に別の魔力が引っ掛かったので、すぐに河原に出て槍を構える。すると、カミナリグマがやってきた。



 「グルルルルル……!!!」



 コイツが一番の強者ではあるが、俺も強くはなっている。おそらくだけど過剰に魔力を篭めたら、咆哮を受けても勝てる筈だ。


 俺は槍を突き付けながらも【ヒートバレット】を準備し、今までよりも遥かに魔力を篭めていく。その魔力に気付いたんだろうか、熊がいきなり俺に突進してきた。俺はその行動に慌てて【ヒートバレット】を撃ち込んでしまい、顔ではなく右肩に当たってしまった。



 「グォォォォォォッ!?!?」



 右肩だったといっても篭めた魔力は多い。カミナリグマの右肩を抉った【ヒートバレット】は、その威力と熱の高さで相当のダメージを与えたようだ。実際に熊の右肩がハッキリと抉れているのが見える。


 俺は目と腕に【身体強化】を使うと、熊の牙の槍にも薄く魔力を流し、一気に接近して頭を貫く。今回は熊の牙の槍だったからか、折れる事も弾かれる事も無く、深々と熊の頭部に突き刺さった。


 確実に脳にまで達しているであろう槍を抜くと、前回と同じくおびただしい血を噴出し始めた。熊がビクビクと痙攣している間に回りこみ、アイテムバッグを開けてさっさと収納してしまう。


 流石に血を浴びたくないというのもあるけど、血の臭いで何が寄ってくるか分からない。一旦、川を下って逃げよう。



 「ふぅ……。ここまで来れば他の魔物が寄ってきたりはしないだろう。それにしても、前回とは比べ物にならないぐらいに簡単だったな。やはり魔力が増えてるのが大きいんだろう。ヌンが魔力を増やせと言う筈だよ」



 ここまで違うとは思わなかったけど……うん? 上の方から狼が来てる? どうやら熊の血の臭いに引かれて川まで出てきたんだな。二匹ぐらいなら余裕で倒せるから、今の内に倒してしまおう。


 俺は【ウィンドバレット】を準備し、ある程度の距離まで近付いてきた狼に発射しようとすると、狼が止まって唸り始めた。これもしかして、一定以上の魔力を篭めると魔物に見つかる?。


 もしそうなら厄介だな……。仕方なく試しにブッ放してみると、回避しようとした狼の頭に直撃。その一撃で頭を貫いたらしく、どっと血を噴出し始めた。どうやら見つかっても速い弾速であれば問題ないみたいだ。


 それでも見つかるのは厄介だし、何か方法を考えた方が良いかな?。


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