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0018・魔力増強薬




 Side:イシス



 俺はいまだに血を噴出する熊をアイテムバッグに収納し、すぐに<時空の狭間>へと帰還する。正直に言って、戦闘時間は短いものの死闘だった。一つでも何かを間違えていれば死んでいたし、カミナリグマがすぐに襲い掛かってきていたら死んでいた。


 本当の意味でギリギリの戦いだったので、すぐに休みたい。魔力もそれなりに消費したが、それ以上に安心して気を抜きたいんだ。死闘ってあんなに疲れるもんなんだって初めて知ったよ。


 目の前の景色が歪んでいくのに安堵しながら、俺は転送されていった。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「お帰りなさい、イシス。随分と早かったですね」


 「ああ。とはいえ、休みたい。まさかあそこまで大変だとは思わなかったし、一つ間違えれば死んでいたぞ。死闘って本当にあるんだな。時間にしてみれば短いんだろうが、命の危険が迫っている戦いは本当にシャレにならねえよ」


 「どうやらそこまで疲れるほどの相手が出てきたようですね。それでも今のイシスで勝てるのですから、そこまで強い魔物ではないのでしょう」


 「………いや、まあ、分かるんだけどさ。言い方ってものがあるでしょうよ、ヌンさんさぁ」


 「言い方を変えても内容は変わりませんし、それでは意味がありませんよ。むしろ現実をハッキリ示した方が良いと思います。それでも勝ったのですから、良かったじゃないですか」


 「まあ、そうなんだけどな。しっかし、やっぱり熊は強いわ。狼の牙の槍を魔力で薄く強化したけど、頭蓋骨に跳ね返されて滑っただけだったし。それに更に魔力を篭めたら貫いたものの、一回でコレだぜ?」


 「槍の穂先が欠けてますね。頭蓋骨は貫いたものの折れましたか。その熊の頭蓋骨は結構な強度をしているのか、それとも魔力で強化していたかですね」


 「熱湯をぶつけてやった後だから、そんな余裕は無かったと思うぞ? 顔面に熱湯の細かい粒を食らって悶えてたし」


 「熱湯の粒?」


 「最初に【ヒートバレット】を放ったんだけど、それは魔力を乗せた咆哮みたいなので散らされたんだ。で、その後で連射してみたら、二発目は左手で潰されたよ。で、川近くから熱湯をぶつけてやったんだ。【ボイルドウォーターボール】って感じだな」


 「それも咆哮で散らされたのですが、残った物理的なお湯が熊の顔に掛かったと?」


 「そう。そして顔面にお湯を浴びた熊が悶え苦しんだって訳だ。その隙に頭に槍を突き出したんだが、あっさり弾かれたってわけ。で、二度目に多くの魔力を篭めたら、今度は穂先が折れました」


 「成る程。イシスが降り立った山の中で、おそらく一番強いのがその熊でしょうね。狼もなかなかの大きさでしたが、おそらく群れで狩りをするのでしょうし、そうなると個の強さで一番は熊しかいないでしょう。後はイシスがまだ遭っていないかです」


 「会ってないのは嫌だなぁ。熊以上が居るとか勘弁してくれって言いたくなる。……よいしょっと。とにかく座ってても仕方ないから、<物品作製装置>の部屋に行くよ」



 俺は疲れた感じで歩きつつ<物品作製装置>の部屋へ行くと、箱の中に熊と槍を突っ込む。その後パネルを操作して作れる物を調べると、何と<魔力増強薬>が作製可能になっていた。


 最後の一つであった、<魔力濃縮反応液>というのが熊の体の中にあったらしい。俺は<魔力増強薬>をタップして、木のコップを指定して作製。出てきた<魔力増強薬>は、木のコップの中で紫色に輝いていた。



 「どう考えても「毒です」と言わんばかりの見た目だな。コレが<魔力増強薬>ねえ……」


 「イシス。<生物修復装置>に入ってから飲む事をお薦めします。効果を出来るだけ逃さないようにするには、それが一番良いですからね」


 「ああ、最適化とかいうヤツか。確かにそれを考えたら、最初から<生物修復装置>に入っている方が良いな」



 俺は<魔力増強薬>が入ったコップを持って、<生物修復装置>のある部屋へと移動。コップを床に置いて全て脱ぎ、装置の外から最適化をウィンドウから指定。中に入ってから一気に飲み干した。



 「紫色に輝く怪しい薬の癖に、見た目に反して味が無いとは……。いったいどういう代物なん、だ?」



 ドクン! ドクン! と俺の体の鼓動がやけに大きく聞こえる。酒を飲んだ時よりも強く、まるで俺の体が暴走しているように鼓動が激しくなり、しかもそれは強さをどんどんと増していく。



 「なん、だ、コレ? どう、なって、るんだ。グゥ……キ、ツい! 体のこ、どうが、うるさ、い」



 俺の体の中で「ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!」と脈打ち、それが更に加速していく。俺は遂に耐えられなくなり、意識を手放した。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「………う? あ、あー? ………ここは<生物修復装置>の中か。とりあえず「開け」」



 俺は目を覚まし、とりあえず開けるように言うと自動で開く。体を起こして<生物修復装置>から出ると、床に服や装備が散らばっているのが見えた。………どういう事だ?。



 「目を覚ましましたか、イシス。9時間21分36秒ほど眠っていましたよ? 随分と長い間寝ていましたが、死闘とやらで疲れていたのでしょう」


 「死闘? ……そういえばカミナリグマとの死闘を終えて帰ってきたんだっけ。で、………そうだ! <魔力増強薬>!!」


 「忘れていたのですか? <生物修復装置>に入ってから<魔力増強薬>を飲み、その後、9時間21分36秒眠っていたのです。最適化は完了していますので、魔力は増えていますよ」


 「そうか……。それは良いんだが、何だあの薬。酒を飲んだ時以上に体が五月蝿かったし、まるで暴走状態のようになってたぞ」


 「それは体内に入った大量の魔力が、イシスの体に吸収される際にそう感じるのでしょう。今まで以上の魔力が一気に流入する訳ですからね」


 「ああ、そういうもんなのか。魔力が増えたのはありがたいが、<魔力増強薬>を作るにはカミナリグマを倒さなきゃいけないんだよなぁ。それをどうにかしなきゃいけないんだが、魔力が増えたから楽になるか?」


 「楽にはなるでしょう。それと、<魔力増強薬>も効かなくなるので注意してください。それ以上の魔力を求めるなら、更に効果の強い<魔力増強薬>を作るしかありません」


 「それも大変だなーと思うけど、更に魔力を増やせるだけマシか。すぐに頭打ちじゃ、この先大変だもんなぁ。それとストレージは使えるようになったかな?」



 俺はその場でストレージを作ってみるが、やはり微妙に魔力が減っている感覚がする。当たり前だけど、空間に関わる【魔術】がそう簡単に使える訳がないか。今はまだアイテムバッグのお世話になるしかないな。前任者よ、感謝してやる。


 服を着て装備を整えたら、俺は<物品作製装置>の部屋に行って槍を作製する。穂先が欠けて駄目になったからな、次は熊の牙で作ろう。



 「相変わらず指定したらすぐに出来るんだが、それはともかくとして狼の牙より重いな? それに………いや、魔力の通りは狼の牙と同じぐらいか」



 魔力の通りはそれなりに良い。それよりも硬さとか鋭さだ。同じ熊を相手にして使えるなら問題無い。ただ、使えない可能性もあるので、そこはもう一度熊と戦って調べるしかないな。


 どのみち<魔力増強薬>の為に、熊とは戦うしかないんだ。どうこう言ったって始まらない。……っと、今思い出したけど、そろそろ服を変えようと思ってたんだ。まずは服を脱いで作製するか。


 俺は適当な繊維で作ったシャツとズボンを作る。そしてそれを着ると、代わりに着ていた服とズボンは箱の中へ。不思議素材の服だったが、原住民に怪しまれる服はマズい。あの山だって原住民が来ない保証は無いからな。


 ばったり出くわした時におかしな素材の服を着ていると、言い訳が難しいんだ。だから今の内に怪しまれない服に変えようと思ってたんだよ。


 コレで多分だけど大丈夫だろう。


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